スバル・ソルテラET-HS(4WD)
いつもより先へ いつもより遠くへ 2024.03.26 試乗記 スバルの電気自動車(BEV)「ソルテラ」に、スバルのドライブアプリ「SUBAROAD(スバロード)」をつないで、行く先は晩冬の伊豆半島! ユニークな道案内に定評のあるSUBAROADの選んだ道とは? 伊豆のワインディングロードを健脚のBEVが駆ける!BEVでスバルのドライブアプリを体験
大幅な改良を受けた(参照)ソルテラの試乗である。インテリアの変更や充電機能の改善、先進運転支援システム「SUBARU Safety Sense」のアップデートなどが行われた。スバルがトヨタと共同開発したBEVの最新型をテストするわけだが、もうひとつお題がある。スバルが手がけたドライブアプリ、SUBAROADを体験するというミッションだ。
ドライブをサポートするアプリだが、地図機能や渋滞情報が利用できるといったものではない。スバルが考える新しいドライブ体験を提案することが目的になっている。利用者が最大限にドライブを楽しむためのツールなのだ。目的地に向けてルート案内するが、効率は考慮外である。「いつもとは違う道、いつもより遠くへ」「近道よりも、面白い道を走りたい」というキャッチコピーが示すとおり、移動の過程をエンジョイすることを目指している。
SUBAROADアプリは「App Store」「Google Play」から無料でダウンロードできる。各種設定を行ったら、ドライブプランを選択。2024年3月末の時点では北海道から広島まで19のコースが設定されており(ただし、能登半島地震により石川ルートは選択不能となっている)、今後エリアを拡大する予定だ。今回の試乗で選んだのは、伊豆半島のど真ん中を南へと駆け抜けるコース。「愛車と一体となって半島の突端(とったん)まで駆け抜けるアドベンチャーツーリング」と説明されていて、ワインディングロードと海岸線ドライブが組み合わされている。
出発地点は「道の駅伊豆ゲートウェイ函南」で、下田の「あいあい岬」までの120kmを走る。走行時間は2時間50分だ。試しにGoogleマップで検索してみたところ、最速ルートとして75.6km、所要時間1時間30分が示された。SUBAROADは40km以上の遠回りを奨励していることになる。
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ワインディングも機敏に走る
ドライブを始める前に、道中で聴きたい曲をチョイスする。BGMなしを選ぶこともできるが、SUBAROADアプリは音楽と一体化したサービスなのだからそれではもったいない。音楽ストリーミングサービスの「AWA」と提携しているので、サジェストに従って選ぶのが楽ちんだ。「旅の始まりに聴きたい曲は?」「テンションを上げたいときに聴く曲は?」などのテーマに沿って曲を選んでいく。コースによってテーマが変わるらしく、「天城を越えながら聴きたい曲は?」という設問もあった。もちろん、石川さゆりの『天城越え』一択である。
東京でコース設定を終えると、まずは出発地点まで道案内してくれる。ソルテラはApple CarPlayに対応しており、iPhoneを接続するとディスプレイにAppleマップが表示されてナビゲーションが始まった。東京・恵比寿から道の駅伊豆ゲートウェイ函南までは約130km。SUBAROADのドライブコースと合わせて約250kmになる。BEVの遠出では途中で電欠になることが心配だが、ソルテラは容量71.4kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載していて、「ET-HS」グレードの一充電走行距離は487km。実際に走行できる距離が“6掛け”程度だとしても、十分余裕がある。
道の駅に着くと画面が切り替わり、いよいよSUBAROADがスタート。案内役は「スバ男」である。アプリで設定した名前がこれだったのだ。自由に決められるからたとえば大谷翔平と名づけることも可能で、命名センスが問われることになる。スバ男は最初の目的地が多賀駐車場であることを教えた後に、安全運転を心がけるように優しく言い聞かせた。道中ではコースの豆知識や観光スポットの情報を披露してくれることもあり、頼もしい相棒になる。
普通ならそのまま南下するが、スバ男は東に行くように指示する。韮山峠料金所から伊豆スカイラインに入り、眺めのいいワインディングロードを走ろうというわけだ。ソルテラは重いバッテリーを積んでいて車両重量は2tを超えているが、身のこなしは意外なほど軽やか。レスポンスのいいモーター駆動の特性を生かし、コーナーからの素早い立ち上がりが心地いい。低重心を利して高い路面追従性が得られていることを実感する。
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姉妹車にはない改良のポイント
今回の改良で、ソルテラには「オーバルステアリングホイール」が採用された。姉妹車の「トヨタbZ4X」には設定されない独自仕様である。楕円(だえん)というよりは角の丸い四角形のような形状で、コックピットに未来感を添えている。切れ角を把握しやすいメリットもあり、使いやすいと感じた。上下がカットされていることで、ステアリングホイールの上から見るタイプのメーターとの相性がいい。
左右にパドルが装備されていて、アクセルオフ時の回生ブレーキの利きをコントロールできる。最大レベルに達すると「S-PEDAL」モードになり、いわゆるワンペダルドライブ(ただし停車まではしない)を楽しめるようになる。タイトなコーナーではブレーキングも併用するが、リズミカルな運転で走りやすい。SUVとモーター駆動の組み合わせは、新しいかたちのスポーツ走行を可能にした。
多賀駐車場からは、相模湾を見渡せる。青い空と海を背景にすると、ソルテラのソリッドなフォルムが際立って見えた。SUVにありがちな威圧感や荒々しさがない、インテリジェントなたたずまいである。電気自動車は未来に向けての提案を示さなければならないのだから、むき出しの迫力に頼る従来の手法とは一線を画している。
スバ男が次の目的地として表示したのは「筏場のわさび田」。聞いたことのない名前だから、メジャーな観光スポットではないのだろう。県道59号を進むと、林のなかに広大なわさび田が出現した。後で調べてみたら、東京ドーム3個分の敷地に1500枚のわさび田が広がっているのだという。メインロードだけを走っていたら出会うことのない穴場である。スバ男の案内に感謝したが、その後に試練の道が待っていた。
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旅のルートはフレキシブルに変更可能
国士峠を越える道は、細くてセンターラインもない。どんどん道幅が狭まり、背の高い木々が太陽の光をさえぎって道は薄暗い。対向車が来ないことを祈りながら走っていると、最悪の事態に遭遇した。やってきたのは巨大なダンプカーである。なんとかすれ違うことのできる場所まで、100m近くバックしなければならなかった。確かに「アドベンチャーツーリング」と説明されてはいたが、これほどハードなのは想定外である。
ようやく国道414号に出て一安心。下田に向けて南へと走る。浄蓮の滝を過ぎて天城トンネルが近づくと、スピーカーから石川さゆりの歌声が! やはりこの曲を選んでよかったと思ったが、聞きどころの「♪あなたと越えたい天城越え」が流れてきたのはトンネルを過ぎた後だった。もう少し早いタイミングで始まっていればよかったのに。
次の目的地として示されていたのは「尾ヶ崎ウイング」だったが、予定よりかなり遅れていたのでスキップすることにした。SUBAROADは、ユーザーが都合に合わせてコースを変更することもできるのだ。逆に立ち寄り地点を追加することも可能で、フレキシブルなつくりになっている。
急いで最終目的地に向かったものの、市街地の渋滞で時間を浪費したせいで、あいあい岬に到着したのは午後6時。夕日の美しさで知られる名所だが、すでに日は没していた。SUBAROADアプリで示される所要時間はあくまで目安であり、余裕を持ってプランを立てたほうがよさそうである。
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BEVにも喜びはある
宿にはEV用駐車場の予約をしておいたので、一晩かけてゆっくり充電するとバッテリーは満杯に。帰路ではアドベンチャーは避け、最短距離で東京へと向かう。高速道路で巡航していると、あらためてソルテラの静粛性に感心した。パワーユニットが静かなのは当然だが、ロードノイズもよく抑えられている。
急ぐこともないので、レーダークルーズコントロールを使った安楽ドライブを決め込む。安全性能と運転支援機能の向上も改良のポイントで、最新のシステムが採用されている。新機能のなかでは、渋滞時に一定の条件下で手放し運転ができる「アドバンストドライブ」が役に立ちそうだ。作動条件に合う状況に遭遇しなかったので今回は試すことができなかったが、取材に同行したwebCG編集者は、「雨でレーダーが前走車を見失うことがあった」としつつも、恵比寿への帰路で大いにその恩恵にあずかったという。以前ほどニュースを耳にしなくなったものの、自動運転の技術は着実に進化し、少しずつ浸透している。
自動車の電動化が進むと、ドライブの楽しさが損なわれるのではないかと危惧するクルマ好きもいると聞く。それは取り越し苦労というものだ。BEVにはモーター駆動でしか実現できない面白さがあって、ワインディングロードでは内燃機関車とは違うドライブの快楽が得られる。航続距離の不安も解消しつつあり、インフラが整備されればさらに気楽さが増すはずだ。
どんなクルマに乗るかも重要だが、どんな道を走るかもドライブの価値を左右する。SUBAROADの「近道よりも、面白い道を走りたい」というビジョンは、運転を愛するすべてのドライバーの心に響くと思う。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
スバル・ソルテラET-HS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1650mm
ホイールベース:2850mm
車重:2050kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:109PS(80kW)/4535-1万2500rpm
フロントモーター最大トルク:169N・m(17.2kgf・m)/0-4535rpm
リアモーター最高出力:109PS(80kW)/4535-1万2500rpm
リアモーター最大トルク:169N・m(17.2kgf・m)/0-4535rpm
タイヤ:(前)235/50R20 104Q XL/(後)235/50R20 104Q XL(ヨコハマ・アイスガードiG70)
一充電走行距離:487km(WLTCモード)
交流電力量消費率:148Wh/km(WLTCモード)
価格:715万円/テスト車=770万円
オプション装備:ソーラールーフ(55万円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:4421km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:474.5km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.8km/kWh(車載電費計計測値)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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