高速道路の新たなETC割引制度「通勤パス」って使えそうなのか?
2024.04.17 デイリーコラム曜日を問わずに割引を受けられる
今年4月1日から、高速道路のETC割引に新しい制度が導入された。「えっ、どんな内容?」「全然知らないヨ!」と思ったドライバーも少なくないだろう。
今回導入されたのは、「通勤パス」という制度で、曜日や時間帯にかかわらず、指定区間を50%割引で利用できるものだ。目的は、地方都市の一般道で発生している通勤ラッシュの緩和。一般道の交通の一部を、空いている高速に誘導しようということだ。
同目的では、現在「ETC平日朝夕割引」という制度があり、朝夕の通勤時間帯(6~9時、17~20時)に最大100km走行分まで、朝、夕それぞれ最初の1回のみ、30%(月に5回から9回利用の場合)~50%(10回以上利用の場合)割り引いている。平日朝夕割引には事前の指定区間はなく、大都市近郊区間を除く全国の高速道路が対象。ETCマイレージ割引に登録済みなら自動的に割引が適用されるので、使い勝手はとてもいい。ただし利用時間が平日の朝夕に限られるという弱点があった。
新型コロナ禍後、社会情勢は大きく変化した。テレワークや時差出勤が常識になったため、それに対応すべく、曜日にかかわらず24時間の利用が対象になる通勤パスが、社会実験として一部区間に導入されたというわけだ。事前に車種・区間を指定して、前月内にネットで申し込めば、翌月初から月末までの1カ月間、一日最大3回まで(通勤の往復+買い物利用などの1回分)、通常の10回分の料金で、20回まで利用できる。
拡大 |
メリットは1つだけ
ただしこの割引、まだ社会実験にすぎず、期間は2025年3月末までの1年間。しかも今回は、下記のように対象区間が限られている。
【2024年度通勤パス対象区間】
北海道(道央道)札幌南ICと北広島IC~千歳ICのうちいずれか1つの区間
新潟県の主に新潟市内と長岡市内の区間(利用ICの制限あり)
山梨県(中央道)大月IC~長坂IC間(ICの制限あり)
石川県(北陸道)加賀IC~金沢森本ICの各IC間
香川県(高松道)白鳥大内IC~善通寺IC間(利用ICの制限あり)
長崎県(長崎道・長崎パイパス)長崎IC~大村IC間(利用ICの制限あり)
(詳細はNEXCO各社のホームページ参照のこと)
社会実験で効果が実証されれば、全国展開(大都市近郊区間を除く)される方向なので、「おれっちには全然カンケーないな」というわけでもないが、通勤パスは鉄道の定期券に近く、事前購入した区間以外の利用は割引対象外(他の割引が適用される条件に当てはまればそちらを適用)。現状の平日朝夕割引も最大割引率は50%なので、それほどおトクになるわけではなく、曜日にかかわらず24時間の利用が割引対象になる点が、唯一最大のメリットだ。
ないよりはマシだけれど……
例えば山梨県(中央道)の場合、一宮御坂IC-甲府昭和IC間(16.9km)の通勤パスを買ったとしよう。その場合、事前に10回分の料金6200円を支払って、20回分使えることになる。ただし、1回も利用しなくても、買った分は支払わなければならない。
片道310円、往復620円というのは、決して安い金額ではない。それだけあれば、ぎりぎりランチ代だって出る。もっと短くて安い区間もあるが、時間短縮効果はほんのわずかになる。利用するドライバーは、勤務先が経費で出してくれるとか、金銭的に余裕があるとか、かなり限られるだろう。
そもそも地方部では、通勤に高速道路を利用する習慣は「ない」と言っていい。今回の社会実験のモニター数も、各県先着順で500人(石川県のみ1000人)と非常に限られる。
この制度、ないよりはあったほうがいいが、全国展開後も、利用できる人はそれなりに限られるだろう。「それなり」でも一般道の混雑緩和効果はあるはずなので、利用しないドライバーにもメリットはあるが、事前購入制なのに平日朝夕割引と同じ最大50%割引という点は、かなり物足りない。
全部とは言わないが、交通容量に余裕のある区間は、70%引きくらいにしたらどうなのか。もともと地方の高速道路は、毎日利用するにはコスパが悪すぎる。7割引きくらいにすれば、それなりにインパクトのある制度になるはずだ。全国展開の際は再考を求めたい。
(文=清水草一/写真=NEXCO東日本/編集=藤沢 勝)
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
メルセデスの意地を見た! 新型「CLA」で注目したい自動車のテクノロジーNEW 2026.8.10 メルセデス・ベンツの新型「CLA」とそのBEV版「CLA with EQテクノロジー」には、同ブランドの未来をかけた新技術が多数盛り込まれている。なかでもメルセデスの矜持(きょうじ)が感じられる、注目のテクノロジーを紹介しよう。
-
日本メーカーは猛省せよ! 軽スーパーハイトワゴン初のEV「BYDラッコ」誕生の衝撃 2026.8.7 BYDが新型軽EV「ラッコ」を日本に導入! 軽スーパーハイトワゴンという人気ジャンル初のEVが、日本ではなく中国のメーカーから出てきたことを、私たちはどう考えるべきなのか。コスパの話にとどまらない、BYDラッコの真の衝撃について考えた。
-
補助金効果で爆売れ 納車が長期化する「ホンダ・スーパーONE」に代わるおススメのBEVは? 2026.8.6 場合によっては軽規格の電気自動車(BEV)「ホンダN-ONE e:」よりも安く乗れるとネット界隈で話題の「スーパーONE」。ただし、納車に時間かかると肝心の補助金が……。と、そんな人気のスーパーONEに代わるBEVを下町の中古車評論家がご紹介。
-
16年ぶりのフルモデルチェンジ 新型「日産エルグランド」の価格は妥当か? 2026.8.5 実に16年ぶりのフルモデルチェンジで登場した新型「日産エルグランド」。その価格は「X e-4ORCE」の689万7000円からとなっているが、はたしてこの設定は買い得なのだろうか。グレード間の装備差やライバル車との比較を通じて検証した。
-
「フェラーリ12チリンドリ マヌアーレ」の“MTごっこ”は、スーパーカーの新スタンダードになるか? 2026.8.3 フェラーリひさびさの3ペダルMT車として注目される「12チリンドリ マヌアーレ」は、実はDCTがベースの“なんちゃってMT車”だ。やはり、超ハイパワー車と伝統的なMTのコンビは無理なのか? 事情に詳しい西川 淳はこう考える。
-
NEW
ルノー・グランカングー クルール(前編)
2026.8.9ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIで、長年にわたりクルマの走りを鍛えてきた辰己英治さん。その彼が今回試乗するのは、まさかの「ルノー・カングー」、それもロングボディーの「グランカングー」だ。ミスター・スバルの目に、フランス発の“商用車”はどのように映るのだろうか? -
アウディQ3 TFSI 110kWアドバンスト(FF/7AT)【試乗記】
2026.8.8試乗記アウディのミドルサイズSUV「Q3」の新型が日本に上陸。デザインやインターフェイスは新しくなっているが、さまざまな事情によってクルマとしての基本コンポーネンツは先代を踏襲しているのが3代目の実情だ。果たしてそれが吉と出るか凶と出るか。FWDのエントリーグレードを試す。 -
日本メーカーは猛省せよ! 軽スーパーハイトワゴン初のEV「BYDラッコ」誕生の衝撃
2026.8.7デイリーコラムBYDが新型軽EV「ラッコ」を日本に導入! 軽スーパーハイトワゴンという人気ジャンル初のEVが、日本ではなく中国のメーカーから出てきたことを、私たちはどう考えるべきなのか。コスパの話にとどまらない、BYDラッコの真の衝撃について考えた。 -
スズキDR-Z4SM(5MT)【レビュー】
2026.8.7試乗記スズキ久々のスーパーモタードである「DR-Z4SM」に試乗! 最新の400cc級デュアルパーパスモデルをベースに、タイヤを17インチ化してオンロードでの機動性を突き詰めた一台は、今どき珍しいほどにアグレッシブで、強烈な個性を放つマシンに仕上がっていた。 -
おなじみの放談をLIVEで配信! 「あの多田哲哉のクルマQ&A」公開収録のお知らせ
2026.8.6From Our Staff元トヨタの多田哲哉さんが、自動車に関するさまざまな疑問・質問に答える「あの多田哲哉のクルマQ&A」。その貴重な話がLIVEで聞けるようになりました。参加希望者は、ぜひ概要をご覧ください。 -
補助金効果で爆売れ 納車が長期化する「ホンダ・スーパーONE」に代わるおススメのBEVは?
2026.8.6デイリーコラム場合によっては軽規格の電気自動車(BEV)「ホンダN-ONE e:」よりも安く乗れるとネット界隈で話題の「スーパーONE」。ただし、納車に時間かかると肝心の補助金が……。と、そんな人気のスーパーONEに代わるBEVを下町の中古車評論家がご紹介。




