クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

第287回:まっすぐ走るなんてナナマルじゃない!

2024.07.01 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

こっち方面へようこそ

担当サクライ君からメールが届いた。

「次回の首都高取材、『ランドクルーザー“70”』にご試乗いただけそうです。こちら、ご興味のほどいかがでしょう?」

正直興味はない。なにしろ私にはオフロード趣味がない。ヘビーデューティー系はなおさらだ。興味ゼロと言ってもいい。しかし興味がゼロだと逆に興味が湧いてくる。なので、いつものように「乗る乗る~!」と返信した。

当日、低いうなりとともにやってきたランクル“70”には、“モテないカーマニア初代チャンピオン”ことwebCGほった君も乗っていた。

サクライ:本日はこっち方面の専門家をご用意しました。
オレ:それはよかった! なにしろオレ、なんにも知らないからさ。よろしくね!
ほった:はい。こっち方面へようこそ。

今度のランクル“70”はエンジンがディーゼルになったという。私はディーゼルファンなので、そこは興味アリだ。早速エンジンをかける。

オレ:おおっ、昔ながらのキーを回す方式じゃん!
ほった:そうなんです。スターターボタンなんて軟弱なものはついてません。
オレ:さすが硬派! でもそれって、余計盗難に弱いんじゃ?
ほった:そこらへんはわかりません。
オレ:だよね。まあいいや、オレが買うわけじゃないし。

クルマを盗まれたくない軟弱者はフェラーリを買え! 誰も盗もうとしないよ~ん。

2023年11月に発売された「トヨタ・ランドクルーザー“70”」に夜の首都高で試乗。日本で同モデルが販売されるのは2015年以来8年ぶりとのこと。継続販売モデルとして導入されるものの、あらゆる面が進化しているようだ。いざ試乗!
2023年11月に発売された「トヨタ・ランドクルーザー“70”」に夜の首都高で試乗。日本で同モデルが販売されるのは2015年以来8年ぶりとのこと。継続販売モデルとして導入されるものの、あらゆる面が進化しているようだ。いざ試乗!拡大
どこからどう見ても「ランドクルーザー“70”」にしか見えない四角いボディー。そのサイズは全長×全幅×全高=4890×1870×1920mm、ホイールベースは2730mmとなる。水平・垂直基調のエクステリアデザインは、道具としての機能性を追求した証しだろう。
どこからどう見ても「ランドクルーザー“70”」にしか見えない四角いボディー。そのサイズは全長×全幅×全高=4890×1870×1920mm、ホイールベースは2730mmとなる。水平・垂直基調のエクステリアデザインは、道具としての機能性を追求した証しだろう。拡大
LEDの丸目ヘッドランプは日本市場専用のアイテム。従来型は角目だったので、多くのコアなファンは、新型「ランクル“70”」のフロントフェイスを歓迎しているようだ。
LEDの丸目ヘッドランプは日本市場専用のアイテム。従来型は角目だったので、多くのコアなファンは、新型「ランクル“70”」のフロントフェイスを歓迎しているようだ。拡大
今回“モテないカーマニア初代チャンピオン“ことwebCGほった君が、「ランクル」方面の専門家として首都高試乗取材に同行してくれた。
今回“モテないカーマニア初代チャンピオン“ことwebCGほった君が、「ランクル」方面の専門家として首都高試乗取材に同行してくれた。拡大
トヨタ の中古車webCG中古車検索

ランクル“70”は無敵?

東京・杉並の路地をランクル“70”で走りながら、私はいろいろと感銘を受けていた。

オレ:このエンジン、静かで滑らかだね!
ほった:そうなんです。すごくいいんです。
オレ:しかもこのクルマ、まっすぐ走りそうな気配がするよ!
ほった:そうなんです。まっすぐ走っちゃうんです。
オレ:10年くらい前に限定で出た(2014年8月25日に発売され、2015年6月30日までの期間限定生産)ナナマルは、ぜんぜんまっすぐ走らなくてビックリしたけど、サス形式、変わってないよね?
ほった:もちろん変わってません。男の四輪リジッドです。

四輪リジッドの“70”は首都高に乗り入れた。加速は軽快、速度を上げてもまっすぐ走る。従来型のランクル“70”は、昔の映画の運転シーンみたいに、ハンドルを左右にあてないとまっすぐ走らない貴重な存在だったけど、この“70”はその必要がナイ! 乗り心地もイイ! しかも静か! 室内も広い! ナビを除けばタッチパネルもナイ! ウルトラカイテキ!

辰巳PAに到着してエクステリアを眺める。真四角で実にカッコいい。これぞカッコをつけてないカッコよさ。モテるラガーマンのようだ。自分がもし女なら、こういうクルマを愛車に持つ飾り気のない男(例:ほった君)にほれるだろう。

しかも丸目! まるで「Gクラス」だ! でも今のGクラスはフロントが独立サス。四輪リジッドの“70”の勝利である。隣にGクラスが並んでも、上から目線で迎撃できるに違いない。ランクル“70”、無敵じゃん!

首都高に乗り入れた四輪リジッドの「ランクル“70”」。加速は軽快、速度を上げてもまっすぐ走る。サス形式が変わったかと思ったほどだ。前回期間限定で登場したランクル“70”に比べて、その洗練度はハンパない。
首都高に乗り入れた四輪リジッドの「ランクル“70”」。加速は軽快、速度を上げてもまっすぐ走る。サス形式が変わったかと思ったほどだ。前回期間限定で登場したランクル“70”に比べて、その洗練度はハンパない。拡大
パワーユニットは従来型のハイオクガソリン指定の4リッターV6から、最高出力204PS、最大トルク500N・mの2.8リッター直4ディーゼルターボ「1GD-FTV」エンジンに刷新された。トランスミッションは6段ATのみの設定だ。
パワーユニットは従来型のハイオクガソリン指定の4リッターV6から、最高出力204PS、最大トルク500N・mの2.8リッター直4ディーゼルターボ「1GD-FTV」エンジンに刷新された。トランスミッションは6段ATのみの設定だ。拡大
昭和感が漂うメーター。アナログもアナログ、デザインはもはや本格的なアナログといってもいいが、4.2インチTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイも組み込まれている。ディーゼルなので4500rpmからレッドゾーンが始まる。
昭和感が漂うメーター。アナログもアナログ、デザインはもはや本格的なアナログといってもいいが、4.2インチTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイも組み込まれている。ディーゼルなので4500rpmからレッドゾーンが始まる。拡大
従来モデルにあったボディー側のリアコンビランプがなくなり、バンパー埋め込み型のみに変更された。
従来モデルにあったボディー側のリアコンビランプがなくなり、バンパー埋め込み型のみに変更された。拡大

ありがとうほった君

帰路は“70”の助手席を体験した。ドライバーはほった君だ。

運転席同様、助手席もカイテキだった。見晴らしがいいので、若い女子気分で「海が見たいわ~」と言いたくなる。“70”に乗る飾り気のない男(≒ほった君)は、きっと飾り気のない海岸に乗りつけてくれることだろう。

オレ:それにしてもカイテキだね。
ほった:そうなんです。
オレ:「こんなのカイテキすぎる! ナナマルじゃない!」って怒る人はいないのかな?
ほった:どうなんでしょう。
オレ:硬派なランクルファンは、「こんなにまっすぐ走るのはニセモノだ!」くらい言ってもいいんじゃないだろうか。
ほった:そういう話はまだ聞いたことないですよ。

そうなのか……。

私は30年前を思い出していた。

当時、人生捨てる覚悟で1990年式「フェラーリ348tb」を買った私は、「フェラーリはまっすぐ走ってはいけない」と思っていた。

オレのフェラーリはまっすぐ走らなくて超怖いけど、エンジンが超絶甘美すぎてアクセルを戻せない。これぞ死と隣り合わせの快楽! ラクチンにまっすぐ走るフェラーリなんてニセモノだ! 「F355」に初めて乗った時は、「こんなのフェラーリじゃない!」と真剣に思った。ランクル界にそういう硬骨漢はいないのかあっ!

サクライ:やっぱクルマは、まっすぐ走ったほうがいいんじゃないですか。
オレ:まっすぐ走ったらやることなくてつまんないじゃん! 今のフェラーリみたいに!
ほった:それには同感です。

ありがとうほった君。じゃ宣言させてもらうよ。「こんなのナナマルじゃない!」って。ダッハハハハハハハハハ!

(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)

1984年、つまり昭和59年(!)に登場したままと言いたくなってしまうような四角いリアビュー。基本デザインはデビュー時のものを踏襲しているが、バックモニターや「Toyota Safety Sense」(プリクラッシュセーフティーやコンライト、ドライブスタートコントロールなど)を搭載し、先進運転支援装備の強化も図っている。
1984年、つまり昭和59年(!)に登場したままと言いたくなってしまうような四角いリアビュー。基本デザインはデビュー時のものを踏襲しているが、バックモニターや「Toyota Safety Sense」(プリクラッシュセーフティーやコンライト、ドライブスタートコントロールなど)を搭載し、先進運転支援装備の強化も図っている。拡大
四角い顔に丸目のヘッドランプ。この個性とリジッドサスがあれば、たとえ隣にメルセデスの「Gクラス」が並んでも、上から目線で迎撃できるに違いない。「ランクル“70”」、無敵じゃん!
四角い顔に丸目のヘッドランプ。この個性とリジッドサスがあれば、たとえ隣にメルセデスの「Gクラス」が並んでも、上から目線で迎撃できるに違いない。「ランクル“70”」、無敵じゃん!拡大
ナビを除けばタッチパネルもない、飾り気ゼロの仕事場的な「ランクル“70”」のインストゥルメントパネル。トランスファーレバーはセンターコンソールの右横に、フロントとリアに装備されるデフロックのスイッチは、ステアリングコラム左脇に備わっている。
ナビを除けばタッチパネルもない、飾り気ゼロの仕事場的な「ランクル“70”」のインストゥルメントパネル。トランスファーレバーはセンターコンソールの右横に、フロントとリアに装備されるデフロックのスイッチは、ステアリングコラム左脇に備わっている。拡大
「ランクル“70”」は真四角で実にカッコいい。これぞカッコをつけてないカッコよさ。自分がもし若い女子なら、こういうクルマを愛車に持つ飾り気のない、例えばwebCGほった君(写真左)のような男にほれるだろう。いや、知らんけど。
「ランクル“70”」は真四角で実にカッコいい。これぞカッコをつけてないカッコよさ。自分がもし若い女子なら、こういうクルマを愛車に持つ飾り気のない、例えばwebCGほった君(写真左)のような男にほれるだろう。いや、知らんけど。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

カーマニア人間国宝への道の新着記事
  • 第318回:種の多様性 2025.9.8 清水草一の話題の連載。ステランティスが激推しするマイルドハイブリッドパワートレインが、フレンチクーペSUV「プジョー408」にも搭載された。夜の首都高で筋金入りのカーマニアは、イタフラ系MHEVの増殖に何を感じたのか。
  • 第317回:「いつかはクラウン」はいつか 2025.8.25 清水草一の話題の連載。1955年に「トヨペット・クラウン」が誕生してから2025年で70周年を迎えた。16代目となる最新モデルはグローバルカーとなり、4タイプが出そろう。そんな日本を代表するモデルをカーマニアはどうみる?
  • 第316回:本国より100万円安いんです 2025.8.11 清水草一の話題の連載。夜の首都高にマイルドハイブリッドシステムを搭載した「アルファ・ロメオ・ジュニア」で出撃した。かつて「155」と「147」を所有したカーマニアは、最新のイタリアンコンパクトSUVになにを感じた?
  • 第315回:北極と南極 2025.7.28 清水草一の話題の連載。10年半ぶりにフルモデルチェンジした新型「ダイハツ・ムーヴ」で首都高に出撃。「フェラーリ328GTS」と「ダイハツ・タント」という自動車界の対極に位置する2台をガレージに並べるベテランカーマニアの印象は?
  • 第314回:カーマニアの奇遇 2025.7.14 清水草一の話題の連載。ある夏の休日、「アウディA5」の試乗をしつつ首都高・辰巳PAに向かうと、そこには愛車「フェラーリ328」を車両火災から救ってくれた恩人の姿が! 再会の奇跡を喜びつつ、あらためて感謝を伝えることができた。
カーマニア人間国宝への道の記事をもっとみる
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。