メルセデス・ベンツG580 with EQテクノロジー エディション1(4WD)
陸の王者の必殺技 2024.11.22 試乗記 “電気自動車(BEV)のGクラス”こと「メルセデス・ベンツG580 with EQテクノロジー」がついに日本に上陸。4輪個別に搭載されたモーターが生み出す圧倒的なトルクと、そのテクノロジーを生かした唯一無二の特殊能力を、特設オフロードコースで試した。あのGクラスのBEV
たとえ400km/h出せるといっても、実際にそれを体感するのは容易ではない。それに比べて、平らで広い空き地があれば目の前でグルグル回れる「G-TURN」は分かりやすい、というか見せつけやすい。関取が土俵上でバク転してみせるぐらいの強烈なインパクトだ。4つのタイヤを別々に動かせればその場で転回することも可能、という話はずいぶんと前から言われてきたし、実際に限られた環境で使用される特殊な車両はすでに存在するが、目の前でガーッと回転するのは泣く子も黙るメルセデスのGクラス。しかも当然ながらオフロードでの卓越した走破性とオンロードでの快適な走行性能を併せ持ったうえでの話だ。Gクラス初のBEVとはまさにとんでもないクルマである。
それにしても長いネーミングだ。3年前にプロトタイプとしてお披露目されたときは「EQG」と呼ばれていたが、今後はこの3文字ネーミングは見直されるらしい。「EQ」の小さなバッジはフロントフェンダーにあるものの、BEVだという主張は(おそらく意図的に)ごく控えめだ。ツルリとしたせっけんのようなフォルムの「EQS」などとは対照的である。フロントグリルのブラックパネル(オプション)がなければ、識別点は空力向上目的のリアフェンダー前のスリットなどごくわずかで、エンジン車の「G450d」や「G63」と簡単には見分けがつかない。ただしバックドアにスペアタイヤの代わりに収納ボックスが装備されていればそれがG580である(修理キットは後席下にあり)。
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4輪個別制御の4WD
見た目はこれまでのGクラスとほとんど同じではあるが、G580は4輪を個別の4基のモーターで駆動するBEVである。モーター1基(それぞれに低速ギア付き)の最高出力と最大トルクは147PSと291N・mで、システムトータルの最高出力は587PS、最大トルクは1164N・mというものすごさ。最新のGクラスのなかでは最強だ。
改造したフレームに収まる駆動用バッテリー容量は116.0kWhで一充電走行距離(WLTCモード)は530kmと発表されている。ただしそのぶん車重は3120kgと3tを軽く超える。V8ツインターボ搭載の「G63ローンチエディション」(2570kg)と比べてもさらに500kg以上重い。オプション装備を加えていったら普通乗用車登録枠からはみ出してしまうのではないかと心配になるほどだ。それでも0-100km/h加速は4.7秒という(G63は4.3秒)からちょっと恐ろしいとさえ感じる。
今のところ発売されているのは導入記念特別仕様車の「エディション1」のみ。ブルーのアクセントが織り込まれたカーボントリムなど特別な装備が盛り込まれているとはいえ、車両価格は2635万円。補助金がどうの、という庶民には端から無縁である。
G-TURNって何だ?
4基のモーターを独立制御することによって可能となったのが注目のG-TURNである。戦車のようにキャタピラー(履帯)を備える車両が左右の履帯を逆回転させることによってその場で回転するのと同じ、いわゆる「超信地旋回」である。狭い道で方向転換する場合に有用だろうが、ただし起動するにはちょっと面倒な手順がある(むしろ簡単では問題だろう)。
まずローレンジと「ロック(岩場)」モードを選び、ダッシュ中央のG-TURNスイッチを押し、ステアリングホイールを真っすぐ保持したまま回転したい方向のパドルを引きながらスロットルペダルを踏む、という具合だ。そのまま保持し続ければ2回転(720°)で停止する。また平たんな場所でなければ起動しないため、林道を登っている途中などでは使いづらいと思われるが、そもそも公道では使用不可とされている。でも、スキー場の駐車場などでグルグル回る人が出てくるのだろうなあ。炎上しないようにくれぐれも周囲に配慮していただきたいものだ。
同じく公道使用不可の「G-STEERING」という機能もある。「ランドクルーザー“300”」のターンアシストと同様、片側の駆動輪を抑えて回転半径を小さくするというものだ(最小回転半径は6.3m)。こちらは普通にステアリングホイールを切って回る。G-TURNもG-STEERINGも駆動系やタイヤへのストレスは大丈夫なのだろうか、と不安にもなるが(G-TURNを行った地面は派手にほっくりかえされていた)、メルセデスが市販したということは万全の対策を施してあるということなのだろう。
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最強の上の最強
富士山麓のオフロードコースで4輪を個別に制御できることの優位性をまざまざと実感できた。もちろん、内燃機関(ICE)版のGクラスにはローレンジと、センターに加えて前後アクスルにもデフロック機構が備わっており、それらを適切に使えばどんな悪路もものともしない最強オフローダーではあるのだが、BEVのG580はそもそも4輪を個別に制御できるのでちょっと次元が違う。
例えばホイールが完全に浮いてしまうような場面でも(ICEではデフロックしなければ反対側の車輪に駆動力が伝わらない)、何事もなく進む。同じモーグル路や急斜面でICEモデルも試してみたが、前後中央のデフをすべてロックすれば問題なく登るとはいえ、G580の安定感とは明らかな違いがあった。オフロードクロール機能(速度を3段階切り替え可能)を使ってゆっくりと着実に、まるでスリップなしに進むフールプルーフさは4輪個別制御ならではだ。さらにバッテリーパックを密閉してフレーム内に収めたことで最大渡河水深は850mm(G450dは700mm)とさらに向上。バッテリーパックの下にはCFRP製の頑丈なアンダーガードが備わり、床面がフラットになったことで地上高も250mm(G450dは230mm)に増しているという。
とはいえオンロードではやはりその重量を意識しないわけにはいかない。ゴツゴツした突き上げやドシンバシンといったラフな振動とは無縁ながら、場合によっては上下動が残る。他モデルと基本的に同じ前:ダブルウイッシュボーン/後ろ:リジッド(ドディオン)の足まわりは滑らかに動いているが、重さを抑え切れない感じだ。ちなみにG580からG63に乗り換えたら、軽快に敏しょうにしかもフラットに走ることにびっくりした。こちらも2500kg以上の重量級だというのに、今回エンジン車はISG付きのマイルドハイブリッドとなり、G63はアクティブスタビライザーの「AMGアクティブライドコントロール」を搭載したことでさらに洗練された。ただしローンチエディションのこちらは3080万円とさらに高い。ならばと、G-TURNという必殺技目当てでG580を選ぶ人がいてもまったく不思議ではない。でも本当に気をつけてくださいね。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツG580 with EQテクノロジー エディション1
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4730×1985×1990mm
ホイールベース:2890mm
車重:3120kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機×2
リアモーター:交流同期電動機×2
フロントモーター最高出力:147PS(108kW)/3542-1万0328rpm<1基あたり>
フロントモーター最大トルク:291N・m(29.7kgf・m)/111-3542rpm<1基あたり>
リアモーター最高出力:147PS(108kW)/3542-1万0328rpm<1基あたり>
リアモーター最大トルク:291N・m(29.7kgf・m)/111-3542rpm<1基あたり>
システム最高出力:587PS(432kW)
システム最大トルク:1164N・m(118.7kgf・m)
タイヤ:(前)275/50R20 113V XL/(後)275/50R20 113V XL(ファルケン・アゼニスFK520)
一充電走行距離:530km(WLTCモード)
交流電力量消費率:262Wh/km(WLTCモード)
価格:2635万円/テスト車=2635万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:853km
テスト形態:ロード&オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

高平 高輝
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