ルネサンスイヤー到来! 2025年はニッポン発のフルハイブリッドが世界を席巻する
2025.01.15 デイリーコラムストロングハイブリッドに追い風
昨2024年は電気自動車(BEV)需要の一服感が世界的に広がったこともあって、最近は「今後しばらくは、充電インフラに頼らずにCO2削減できる、非プラグインのストロングハイブリッドが主流になるのではないか」という空気感が広がっている。実際、ストロングハイブリッド世界最大手ともいえるトヨタは、認証不正や資材高騰などの逆風を受けながらも、堅調な経営が続いている。
また、この2025年1月20日には、あのドナルド・トランプ前アメリカ大統領が再就任となる。かねて「シェールガスを掘りまくれ!」と公言してきたトランプ氏が新大統領となって、原油価格が多少は下がったとしても、さすがに大排気量V8がわが物顔で走り回る時代が再来するとも思えない。トランプ新大統領が国外自動車メーカーにどのような態度をとるつもりかは不透明だが、普通に考えれば、この2025年も、ストロングハイブリッドの需要は底堅いと思われる。もっといえば、トランプ新大統領が前評判どおりに、BEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)への優遇政策を撤回することになれば、ストロングハイブリッドにさらに追い風が吹く可能性もある。
その意味では、昔から“ハイブリッド大国”を自認してきた日本のクルマ産業は、まさにわが世の春……といいたいところだが、そのハイブリッド大国を支えているのは、約30年前の初代「プリウス」で独自のストロングハイブリッドをモノにしたトヨタと、そのトヨタを必死に追いかけてきたホンダと日産……という、実質3社だけといってもいい。
ハイブリッドという言葉には、マイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドも含まれるが、一般的なイメージはやはり、電気とエンジンを複雑に融合したトヨタ方式に代表されるストロングハイブリッド(もしくはフルハイブリッド)だ。ホンダと日産にしても、トヨタに対抗できる独自のストロングハイブリッド商品にたどり着いたのは、最近のことだ。ホンダが現在の「e:HEV」の原型となる「スポーツハイブリッドi-MMD」を発売したのは今から12年前、日産が「e-POWER」を商品化したのは8年前のことである。
3社以外のハイブリッドの現状
現在ストロングハイブリッドで明確に商売ができている日本メーカーは、事実上、この3社だけだ。マツダはかつて「アクセラ」にトヨタ製ストロングハイブリッドを積んだが、販売が振るわず1世代で撤退した。三菱の「アウトランダー」や「エクリプス クロス」のハイブリッドは高度なものだが、あくまで4WDのPHEVである。スバルの従来型「e-BOXER」やマツダの「Mハイブリッド」も電気走行は可能だが、あくまで限定的で、実体はほぼマイルドハイブリッドといっていい。スズキがいくつかの軽自動車に採用していた「EVクリープ走行」機能も、最新ラインナップでは封印されている。
そのなかでは、スズキが先代の「スイフト ハイブリッド」で実用化したシステムは、トヨタ、ホンダ、日産以外でそれなりに成功した希少なストロングハイブリッドだが、新型スイフトには搭載が見送られて、「エスクード ハイブリッド」も国内販売終了。唯一残った「ソリオ ハイブリッド」も、先ごろの東京オートサロン2025で先行公開された仕様変更モデルをもって廃止されてしまった。残るは、ほそぼそ(?)と生産される「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」の「eスマートハイブリッド」だけである。
しかし、この2025年は、昨今のBEV普及の一服感とトランプ大統領再就任をまるで予知していたかのように、国内メーカーから次々と新型ストロングハイブリッドが出てくる。世界ではつい最近まで「天下を取るのはBEV、ハイブリッドはオワコン」といわれて、各社とも表向きはBEV戦略を進めつつ、裏ではしっかりストロングハイブリッドも準備していたとなれば、そのしたたかさに感心する。
急速なハイブリッド化が見込めるスバル
そんな2025年の新ストロングハイブリッドの先鋒(せんぽう)となるのは、言うまでもなく、昨2024年秋に国内発表も済ませたスバルの「クロストレックS:HEV」である。ただ、クロストレックの車格に、この2.5リッターベースのS:HEVはいささか過剰気味で、このパワートレインの大本命は、アメリカで発表済みの新型「フォレスター」とみるのが自然だ。そんな新型フォレスターは国内発売も秒読みといわれており、クロストレックに続いてフォレスター、さらには「レイバック」にもS:HEVが搭載されたりしたら、スバルも晴れてハイブリッド大国の一員となるだろう。
スバルのS:HEVに加えて、すでに2025年中の国内市場投入確定といえるのが、新型「プレリュード」に搭載されて世に出るというホンダの新世代e:HEVだ。聞けば、スポーツライクな“変速感”を強める「ホンダS+ Shift(エスプラスシフト)」と呼ばれる新機軸を搭載するという。これは究極の純エンジン車ともいえる「シビック タイプR」も手がけるホンダが、あらためてスポーツハイブリッドの可能性を追求しはじめたということでもある。
ホンダといえば、三部敏宏社長が掲げた「2040年までに全新車をBEVもしくは燃料電池車にする」というフル電動化宣言を、欧州各社がBEV計画を軌道修正するなかでも、引っ込めていない。それについて新世代BEV「Honda 0シリーズ」の開発責任者にたずねたところ、「まずBEVをやらない選択肢は今もありません。ただ、BEVのようなハードルの高い新規事業は、まずはトップがドーンとブチ上げないと、なにも進まないんです」とニヤリ。その表情からは、ホンダの本音は現在の公式宣言とはちょっとちがっていて、トップと現場はあうんの呼吸で動いているのではないか……とも思わせる。もちろん、ホントのところは不明だけれど。
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マツダのハイブリッドは「CX-5」に搭載
最後はマツダだ。マツダは現在、北米向け「CX-50」にもトヨタ製ストロングハイブリッドを搭載するが、国内導入予定はまったくない。マツダといえば最近は直列6気筒エンジンを積んだラージ商品群や「ロータリーEV」が話題となったが、じつは2022年秋に発表された「2030 VISION」のなかで「2025~2027年に独自の新ハイブリッド導入」をうたっていた。そして、昨2024年5月の「2024年3月期通期決算発表」において、毛籠勝弘社長は、その新型ストロングハイブリッドの開発は順調に進んでいて、まずは次期「CX-5」に搭載予定であることを明言した。
CX-5はマツダ最大のグローバル商品であり、そのスクープ記事は海外でも盛んに配信されている。それによると、新型CX-5はこの2025年内にもグローバル発表されて、2025年末~2026年に順次市場投入されていくという見立てが大半である。
スバルのS:HEVもトヨタの技術がベースとはいえ、モノ自体はスバル独自。トヨタ、ホンダ、日産に加えて、スバルとマツダも独自のストロングハイブリッドを手がけるとなれば、2025年はいわばストロングハイブリッドのルネサンス(復興)イヤーとなり、日本はついに“本物のハイブリッド大国”と化す。あとは頭に血がのぼったトランプさんが「ジャパニーズハイブリッド排除!」なんて言い出さないことを祈るばかりだ。
(文=佐野弘宗/写真=トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車、スズキ、ダイハツ工業、スバル、マツダ、アメリカ合衆国/編集=藤沢 勝)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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