第305回:禍福はあざなえる縄の如し
2025.03.10 カーマニア人間国宝への道負け組にお金を払う者はすべて勇者
あらゆるものの評価は、時とともに変わる。クルマも同じである。登場時は絶賛され、次第に評価が落ちるクルマもあれば、その逆もある。「アルファ・ロメオ・ジュリア」は、典型的な後者である。
登場時は、スタイリングが「まるでBMW」と酷評された。アルファ・ロメオとして約30年ぶりのFRセダンだったのに! 莫大(ばくだい)な費用をかけてシャシーを新開発したのに!
そりゃまぁ確かにアルファファンとしては、購入をためらう部分はあった。なにしろ真横から見るとほぼ「3シリーズ」なので……。かつて、初代「三菱ディアマンテ」に自分が投げかけたのと同種の視線を感じてしまいそうで、乗るのが怖かった。
ジュリアの登場から約7年。現在では、そういったネガティブな評価はすっかり風化し、逆に売れなかったが故のマイナー感が、カーマニアのココロに刺さる。セダン真冬の時代ゆえ、ほぼ3シリーズみたいなフォルムも、FRのスポーツセダンというだけで貴重になり、細かいことはどうでもよくなった。
街でたまーにジュリアを見かけると、反射的に「シブイ!」と感じるし、オーナーに対しては「男!」という尊敬を抱く。負け組にお金を払う者は、すべて勇者なのである。
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7年ぶりの「ジュリア クアドリフォリオ」
走りに関してジュリアは、生粋のどころか、ウルトライタリアンなスポーツセダンだった。なにしろステアリングをこぶし1個分切るだけで横っ飛びするほど、動きがシャープなのだ。それは、当時私が乗っていた「フェラーリ458イタリア」とほぼ同種の、UFOのようなステアリングレスポンス。曲がりすぎてコワイ! これに乗る資格があるのは、リスクを愛するカーマニアだけ! と、感銘を受けたものだ。
なかでも510PSの2.9リッターV6ターボを積む「クアドリフォリオ」は、まるでフェラーリのコンパクトセダン。その咆哮(ほうこう)は、「フェラーリ488GTB」のV8ターボよりはるかに官能的で、「フェラーリの母(アルファ・ロメオ)がフェラーリを超えた!」と確信したほどだ。488がハズレだったとも言えますが。
あれから7年。この7年間、ジュリア クアドリフォリオに乗る機会は、ただの一度も訪れなかったが、お元気なのだろうか。
そう思っていたら、なんとJAIA(日本自動車輸入組合)が主催する報道関係者向けの試乗会に出展されるとのこと。急いで試乗希望にマルを付けて編集部に提出し、めでたくかなった。
で、7年ぶりのジュリア クアドリフォリオはどうだったのか。
昔のまんまでしたー!
変わらないってスバラシイ
一昨年乗ったジュリアの2リッター直4ターボモデルは、とってもフツーになっててビックリしたけど、クアドリフォリオは、ほぼ何も変わっていなかった。相変わらずステアリングはウルトラクイックだし、エンジンは昔ながらの爆音を奏でつつレッド手前まで突き抜けた。この危険な香り、涙が出るぜ! うおおおお~~~ん。
今のご時世、変わらないって貴重! 変わらないってスバラシイ! ずっと変わらずいてネ、クアドリフォリオさん!
とはいうものの、「じゃ買うのか」と言われたら、お高くて、とてもじゃないけど買えません。
この日に試乗したクアドリフォリオ、正確にいくらなのかよくわからないが(スマン)、1400万円くらいのようだ(編集部注:正しくは車両本体価格1387万円です)。
そんだけ出せば、15年前なら「カウンタック」が買えた。私は2010年に1500万円で「25thアニバーサリー」を買っている。「それを言っちゃぁおしまいよ」とは思うけど。
ちょっと調べてみたら、7年前の登場時、クアドリフォリオのお値段は1132万円だったようだ。昨今の諸物価高騰や円安の進行を考えれば、この程度の値上げは「踏ん張ってるネ!」なほうだけど、なにせ当方の収入が減る一方なので、購入の可能性は光の速度で遠ざかっている。
いや、そんな個人的な事情はどうでもいい。クアドリフォリオさんが変わらずに元気でいてくれただけで、カーマニアとしてシアワセだ。んで2026年に予定どおり後継モデルが登場し、電動化されたら不シアワセだ。禍福はあざなえる縄の如し。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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