F1ドライバー角田裕毅はレッドブルで必ず成功する! これだけの理由
2025.04.03 デイリーコラム素直に喜べない? 角田裕毅のレッドブル昇格
去る3月27日、レーシングブルズの角田裕毅が今年のF1第3戦日本GPからレッドブルをドライブすることが発表されると、世界中のメディアやファンが一斉に色めき立ち、発表から1週間たっても各方面で議論が絶えないでいる。
レッドブルといえば、優勝122回、タイトル総獲得数は14を数える強豪。しかも昨季はコンストラクターズチャンピオンこそ逃したが、マックス・フェルスタッペンが4年連続でチャンピオンとなった、現役のトップチームによるシーズン途中の電撃移籍なのだから騒がないほうがおかしい。しかも角田にとって初戦は母国でのレース、走り慣れた鈴鹿サーキットとなれば、日本のファンの間では初の表彰台だ、いやポディウムの頂点で君が代を流してくれと期待する声もいよいよ大きくなるというものだ。
しかし一方で、角田のレッドブル入りを不安視する向きも実に多い。それは角田自身の資質を問うというより、フェルスタッペンのチームメイトになることがいかに困難をともなうものなのかという、これまでの経緯からきている。
レッドブルでのフェルスタッペンのチームメイトは角田で6人目。各人の参戦レース数を見れば、今回リアム・ローソンがたったの2レースでジュニアチームのレーシングブルズに降格となったことがいかに異例だったかがわかる。
- ダニエル・リカルド:68戦(2016年スペイン〜2018年アブダビ)
- ピエール・ガスリー:12戦(2019年オーストラリア〜2019年ハンガリー)
- アレクサンダー・アルボン:26戦(2019年ベルギー〜2020年アブダビ)
- セルジオ・ペレス:90戦(2021年バーレーン〜2024年アブダビ)
- リアム・ローソン:2戦(2025年オーストラリア、中国)
- 角田裕毅(2025年日本〜)
ローソン同様、2019年のガスリーも苦戦が続き、シーズン半ばで降格という屈辱を味わった。ペレスに至っては、昨季途中に陥ったスランプから抜け出せず、チームから契約解除を言い渡されて放出されるという憂き目にあったことは記憶に新しい。
フェルスタッペンの隣のシートは呪(のろ)われている。ということはもちろんないが、彼の特異なドライビングスタイルと、それに合わせて開発されてきたレッドブルのマシン特性が、他者を寄せ付けなくなっているというのは想像に難くない。
フェルスタッペンとレッドブルの「特異性」
フェルスタッペンは、コーナリング時にフロントがしっかり食いつくマシンを好む。前がしっかり路面を捉えるのだが、反面リアの挙動は非常にナーバスになり、ちょっとしたミスでスピンしてしまうほどデリケートな運転が求められるということは、かつてのチームメイトたちも証言している。
例えばローソンは、今季型「レッドブルRB21」について「フロンティー(前がしっかりしているの意)」と語っており、「自信をもってドライブするのが難しい」とインタビューで答えている。
またフェルスタッペンのドライビングを「コンピューターのマウスの感度を最高にしたようなもの」と説いたのは、2019年途中から1年半レッドブルに在籍したアレクサンダー・アルボン。「カーソルがあちこち素早く動いてコントロールしにくくなるのと同じなんだ」。
極めてシャープな乗り味のレッドブルを、卓越したコントロール技術で手なずけて勝利を重ねてきたフェルスタッペンだったが、昨季半ばからは王者をもってしても扱いに苦労するマシンになってしまう。
2024年の「RB20」は、24戦でフェルスタッペンが9勝したものの、このうち7勝は開幕から10戦で記録したもので、シーズン後半は予測不能な挙動、あまりにもピーキーで狭い作動領域に手を焼くこととなった。そしてその進化版たる「RB21」でのフェルスタッペンの戦績は、開幕戦オーストラリアGPで予選3位、決勝2位。第2戦中国GPでは予選、決勝とも4位だった。チャンピオンシップでは、マクラーレンのランド・ノリスに8点差をつけられての2位であるが、5連覇を目指すチャンピオンは、「いまのレッドブルは4番目の遅さ」と危機感を募らせている。
角田は、かように芳しくない状況のレッドブルに加入することになる。しかもテストなしのぶっつけ本番、さらに母国ファンの前で期待に応えんとするプレッシャーと、理想的とはいえないなかでのレッドブルデビューとなるのだから、ファンとて「うまくいかないのでは?」と心配になるのもよくわかる。
しかし、である。われらがユーキにそんな心配は必要ない、と断言しておこうではないか。
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角田が「成功」するであろう理由
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、今回のドライバー交代の理由を、「フェルスタッペンのドライバーズタイトル防衛と、コンストラクターズチャンピオンの奪還のため」としている。この側面から角田の起用を考えると、あながち的が外れているとは思えない。
【経験の豊かさ】
2023年、2024年の合計で11戦しかレースに出場できていなかったローソンに比べると、次の日本GPで90戦目を迎える角田には豊富な経験がある。レッドブル系2チームのなかでは、200戦を超えるフェルスタッペンに次ぐベテランが角田。まだ開発途上のRB21のパフォーマンスを向上させるのに寄与できるドライバーとしての起用には理がある。
この経験を生かすためには、まずはレッドブルのエンジニアとコミュニケーションを図ることだ。角田の欠点として、よくレース中に無線で激高することが挙げられたが、最近はそんなシーンは見られない。真に価値ある情報は怒りではなく、ドライバーが冷静に感じ取ったマシンやタイヤ、レースの状況であるということを、いまの角田はちゃんと理解している。
【一貫した速さ・安定感】
今季2戦で角田が見せた、特に予選での圧倒的な速さは中団勢のなかでも群を抜いていた。開幕戦オーストラリアGPで予選5位、第2戦中国GPではスプリント予選8位。本予選でも9位に食い込み、また100kmで争われるスプリントでは6位入賞を果たしている。肝心のレースでは、チーム側の不手際が続きポイントこそないが、昨季から続くこの一貫した速さと安定感は、角田の強力な武器となる。
【アブダビテストでの走り】
2024年の最終戦アブダビGP直後のテストで、角田はジュニアチーム在籍4年目にして初めてトップチームのレッドブルをドライブ。フェルスタッペンにタイトルをもたらしたRB20で落ち着いた走りを見せ、無事にプログラムを終えた。
シーズン中にはフェルスタッペンをして悪戦苦闘したマシンをドライブした後、「自分のドライビングスタイルにマシンは合っていたし、苦労することもなかった」とクールに言い放っていたのが印象的だった。
2025年3月30日に行われたHonda青山本社ビル グランドフィナーレに登壇した際、「あれはセールストークでしたけど」と本音(?)を漏らして会場を沸かせていたが、仮に多少話を盛ったとしても、「苦労はなかった」と答えるだけの自信が彼にはあるということだ。
【良くも悪くも後がない】
角田とレーシングブルズの契約は2025年までで、来季レッドブル系のどちらかのチームに残るのか、それとも他に移籍するのかは決まっていない。今回のレッドブル昇格の結果次第で、F1キャリアが途絶えてしまう危険性もなくはないのだが、とはいえこのことは実は角田にとって好都合なことでもある。後がないからこそ、全開で攻めるしかない。失うものはないのだ。
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後がないのは、レッドブルも同じ
今回のローソンの降格、そして角田の昇格も、あるいはピーキーで乗りこなすことが難しいマシンも、すべてはチームとしてのレッドブル自体が引き起こした問題であり、ドライバーは誰も悪くはないということに皆気がついている。厳しい言い方だがホーナー代表にしろ、人事権を握るアドバイザーのヘルムート・マルコにしろ、自らのマネジメント能力のなさをドライバー交代で隠しているようなものなのだ。
そしてレッドブルが最も恐れているであろうことは、今季タイトルを逃すことではなく、チームの支柱であるフェルスタッペンを失うことである。
フェルスタッペンは、フェルナンド・アロンソやルイス・ハミルトンといった40代でも現役を続行するドライバーとは異なり、長期にわたりF1を戦う意志がないことを公言している。現在のような苦戦が続けば、まさかの早期引退だって想定しなければならない。後がないのは、角田のみならず。レッドブルも同じようなものである。
マルコは「角田は今シーズンいっぱいレッドブルをドライブするだろう」と口にしているらしいが、そんな約束が本当に守られるかどうか、多分に疑わしいことも皆わかっている。
だからこそ、あえて言いたい。マルコが何を言おうが、ホーナーが角田をどう評価するかは忘れて、全力を出し切った先に、角田の新たな道は開けるのだと。彼には、期待されていることに応えるだけのポテンシャルがあることを、われわれは5年もかけて見てきたのだから。
(文=柄谷悠人/写真=Getty Images / Red Bull Content Pool)
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柄谷 悠人
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