トヨタ・クラウン エステートZ(4WD/CVT)/クラウン エステートRS(4WD/CVT)
欠けていたピース 2025.04.08 試乗記 16代目「トヨタ・クラウン」にシリーズ第4弾となる「エステート」が登場。真打ちは遅れてやってくるのが相場だが、果たしてクラウンの場合はどうだろうか。ハイブリッドモデルの「Z」とプラグインハイブリッドモデルの「RS」を試す。お待たせしすぎて登場
「お待たせいたしました。お待たせしすぎたかもしれません」という懐かしいフレーズを思い出してしまった。2022年7月に16代目クラウンが4車種になることが発表され、同年9月に第1弾として「クロスオーバー」が登場。2023年10月に「スポーツ」、11月に「セダン」が続き、エステートは2023年度内に発売されることになっていた。型式認証の問題が発覚したこともあってスケジュールが遅延していたが、ようやくすべての車種がそろったことになる。
「クラウン群」が完成し、エステートをお披露目するとともに4タイプすべてを集めた試乗会が行われた。それぞれの違いを確認しながら4台が共有するクラウンの本質を見極めようという趣向だ。エステートは「大人のアクティブキャビン」という位置づけで、「ワゴンとSUVの融合」と説明されている。クロスオーバーが「セダンとSUVの融合」だったから、血筋は近いようだ。
4台を並べて眺めてみると、デザイナーは強い使命感と気概を胸に持てる技を注ぎ込んだのだと感じさせられる。統一感と個性という相反する要素を盛り込まなければならないのだから、簡単ではない。特にセダンはプラットフォームが異なるので、困難があっただろう。他のモデルより重厚さや品格が前面に出ているようにも見えるが、それでも同じグループに属していることは伝わった。エステートはクロスオーバーとの共通性は見られるものの、機能性を重視したフォルムだ。ルーフが後方まで伸ばされていることで、収納力の高さが形から見て取れる。
エステートと名乗っていても、かつてのクラウンに存在したステーションワゴンが無味乾燥で事務的なイメージだったのとは別物である。基本はSUVであり、流麗なフォルムになっている。目を引くのはヒジを置けるようなショルダーの造形だ。キャビンが狭くなってしまいそうだが、実際にはほぼ同じ大きさだという。クロスオーバーの全幅が1840mmなのに対し、エステートはスポーツと同じ1880mmである。キャビンを狭めたのではなく、ショルダーを張り出させたのだ。
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荷室がくつろぎスペースに
荷室に関してはもちろん大きなアドバンテージがある。クロスオーバーは独立したトランクスペースを持つセダン型で容量は450リッター。エステートは通常でも570リッターで、リアシートを倒せば1470リッターの大容量になる。アクティブライフをアピールするのだから、レジャーやアウトドアに対応した積載能力は必須項目だ。大きさよりも注目すべきなのが、新機構の「ラゲッジルーム拡張ボード」。リアシートを格納した後に展開することで、完全にフラットなスペースを出現させる仕組みである。
溝や隙間をうまくカバーしていて、積載した物が落ちてしまうリスクは少ない。奥行きは2mにもなり、大人が寝っ転がることもできそうだ。さらに、荷室をくつろぎスペースとして利用するための装備まで用意されている。デッキテーブルと引き出し式のデッキチェアで、腰掛けてお茶でも楽しもうということなのだろうか。「ホンダN-BOXジョイ」あたりが採用しそうなアイデアだが、もちろん高い質感を確保している。そういえば新型「フォルクスワーゲン・パサート」は荷室に花束やケーキの置き場所をつくっていた。高級車でも使い勝手を高めてユーザーの要求に応えることが求められる時代なのだ。
ダッシュボードやメーターなどは、他のモデルとほぼ同じである。成り立ちの異なるセダンも共通の意匠になっていて、目隠しして運転席に連れてこられたらどのモデルに乗っているか分からないかもしれない。シートやドアトリム、センターコンソールの素材は必要十分な上質さを備えていて、機能性もしっかり担保されている。特に感動を覚えるようなしつらえがあるわけではないが、ゴージャスさを見せつけるような振る舞いをしないのがクラウンである。
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後席乗員への配慮
クラウンはどのモデルにも2.5リッターハイブリッドがあるが、それぞれにもうひとつ別のパワーユニットがプラスされている。クロスオーバーは2.4リッターターボのハイブリッド、セダンは燃料電池で、スポーツとエステートはともにプラグインハイブリッドだ。セダンは後輪駆動のみだが、ほかはすべてモーターを使った4WDのE-Fourである。
最初に乗ったのは、ハイブリッドモデル。こちらは短時間の試乗だったが、思いのほか勇ましい振る舞いをすることに驚かされた。説明会で示された走りの個性を分類した図ではエステートはセダンに次いでどっしりしていることになっていたのだが、なかなかどうして活発なキャラクターである。後輪操舵システムの「DRS」が搭載されているのはクロスオーバーやスポーツと同じで、エステートに合わせたセッティングが行われているという。
エステートの全高は1625mmで、クロスオーバーの1540mmを上回る。シリーズ一番のノッポなのだが、山道を走っていても背の高さは気にならなかった。回生能力が高いのか、下り坂ではバッテリーの残量をかなり回復できた。おかげでモーターだけで走る状態が長く、メーター表示ではEV走行の割合は40%ほど。その間は静けさに包まれて走る。ロードノイズはそれなりにあるはずだが、きっちり遮音されていた。
ドライバーとしては走行モードで「スポーツ」を選びたくなるが、後席に人を乗せているなら「リアコンフォート」がオススメの選択肢だ。文字どおり後席乗員の快適性を優先していて、ドライバーの乗り心地にも効果があるという。DRSと電子制御サスペンションのAVSが後席優先の制御に変わり、上質な走りを演出するわけだ。リアコンフォートモードはクラウン スポーツには設定されておらず、エステートが同乗者への配慮を重んじていることが分かる。
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高速道路コースを指定した意味
高速道路主体の長距離試乗コースが用意されていたのがプラグインハイブリッドモデルだ。エステートのアピールポイントである「ロングドライブでも疲れを感じさせない、心地いい走り」を体験するための設定である。ハイブリッドモデルと比べると、走りだしから明確な違いを感じた。ハイブリッドの勇ましさは影を潜め、力を秘めながらも泰然としている。乗り心地はさらに落ち着いたものになり、路面の細かい振動を拾わない上質さがありがたい。
コースに高速道路を指定したかった理由はよく分かった。真っすぐ走ることが愉快なのだ。直進性の高さが快感を生んでいる。山道では前輪と逆相に働いたDRSは高速巡航では同相となり、鉄壁の車両安定性を演出する。ドライバー以上に広い後席でくつろぐ乗員にとってメリットとなる。静粛性、快適性、上質さを合わせて「クラウンネス」と呼ぶトヨタの考えは、エステートに色濃く表れていた。
クロスオーバーの発売から3年であり、最初期のユーザーは車検を迎える時期である。図らずも好都合なタイミングになったわけで、実際に乗り換え需要があるらしい。久しく途絶えていたクラウンのワゴンを心待ちにしていた人々は少なくないのだ。1980年代から1990年代にかけて、ワゴンブームと呼ばれた時代があった。レジャーユースの主役として脚光を浴びたのだ。ミニバンやSUVに押されて影が薄くなっていたが、クラウン エステートは新たなワゴン像を提示しようとしている。
クラウン群を完成させるにあたって、最後に他の3モデルにはない魅力を持つ絶妙なピースを示して見せたのは見事だ。これが真打ちなのかもしれない。3年待たせたのは、それをアピールするための巧妙な戦略だったのではないか、とつい深読みしてしまった。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
トヨタ・クラウン エステートZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1880×1625mm
ホイールベース:2850mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:190PS(140kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:236N・m(24.1kgf・m)/4300-4500rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:243PS(179kW)
タイヤ:(前)235/45R21 95W/(後)235/45R21 95W(ミシュランeプライマシー)
燃費:20.3km/リッター(WLTCモード)
価格:635万円/テスト車=665万9100円
オプション装備:ボディーカラー<ブラック×エモーショナルレッドIII>(9万9000円)/デジタルキー(3万3000円)/パノラマルーフ<電動シェード&挟み込み防止機能付き>(11万円) ※以下、販売店オプション フロアマット<エクセレントタイプ>(6万7100円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1253km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・クラウン エステートRS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1880×1625mm
ホイールベース:2850mm
車重:2080kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:177PS(130kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:219N・m(22.3kgf・m)/3600rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:306PS(225kW)
タイヤ:(前)235/45R21 97W/(後)235/45R21 97W(ミシュランeプライマシー)
ハイブリッド燃料消費率:20.0km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:89km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:89km(WLTCモード)
交流電力量消費率:167Wh/km(WLTCモード)
価格:810万円/テスト車=822万2100円
オプション装備:ボディーカラー<プレシャスメタル×マッシブグレー>(5万5000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<エクセレントタイプ>(6万7100円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1520km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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