これでライバル追撃なるか!? 「ホンダ・ステップワゴン」一部改良の○と×
2025.05.23 デイリーコラム「エアー」はホントに受け入れられていたの?
ひと月を超える長~いじらし期間を経て、2025年5月15日に正式発表された「ホンダ・ステップワゴン」の改良モデル。その外装は変更ナシとされているが、実は唯一、手が加わった箇所があるのはご存じだろうか? 今回は、それにからめたお話である。
あらためて、ホンダのミドルクラス箱型ミニバン、ステップワゴンが一部改良を受けた。現行型の登場は2022年春なので(参照)、ちょうど3年でのテコ入れ。通常なら大きなマイナーチェンジがあってもおかしくない時期だ。実際、先代ではデビューから2年半のタイミングで、ハイブリッド車の設定&先進運転支援システム(ADAS)「ホンダセンシング」の全車適用という大改良があった。しかし、今回の変更内容は既報のとおり。トピックはシンプルデザインの豪華グレード「エアーEX」の追加と、全車を対象とした装備の充実が主。乗り心地や燃費といった性能面や、デザインについてはひとまず置いておいて、ラインナップと機能の強化で商品力アップを図った格好だ。
これについてのホンダの言い分も、既報のとおり。要は、「スッキリさわやか系のエアーが想像以上にお客さまに受け入れられたので、より競争力の高い仕様を設定することにした」という感じである。……ホントにそうなの? もしそれが事実なら、オラオラ系ばかりが売れるミニバンの現状を憂う記者としては、うれしい限りなのだが。
そう思ってエアーの販売比率を尋ねたところ、「全体の15%程度で、先代とほぼ変わらず」という回答でずっコケた。いや待て。それってエアーが受け入れられてるって言えるの!? ポジティブにとらえれば、「好意的な声は寄せられているけれど、販売にはつながらなかったので、そうしたお客の要望に応える新グレードを用意しました」ということなのだろうか……。いや、まぁ、そういうことにしておきましょ。
それにしてもである。記者にはひとつ疑問がある。そもそもなぜ、いままでエアーにEXのような上級グレードがなかったのだろう?
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ちょっとチグハグだったこれまでの扱い
ホンダは今回のEXの追加で、エアー系のグレードの販売比率を、全体の3割程度まで引き上げたいとしている。この目標値は現行型のデビュー時と同じもので、要はホンダは、当初は“素”のエアーだけで販売の3割を占めると考えていたのだ。
実際、虚飾を配したシンプルなエクステリアに、開放的でくつろげる色味の車内空間と、「#素敵(すてき)な暮らし」という現行のグランドコンセプトを体現していたのは、「スパーダ」よりむしろエアーのほうだった。事前取材会で会場に展示されていた“1分の1カット模型”もエアーのものだったし、とにかくホンダは、これをただの廉価グレードではなく、6代目ステップワゴンを象徴するモデルと考えていたようだ。
しかし、そうなるとイマイチわからないのがその仕様。新設定のエアーEXは、革巻きのステアリングホイールに、シフトパドル/減速パドル、1列目シートヒーター、2列目シートオットマン、トリプルゾーンフルオートエアコン、パワーテールゲート、ブラインドスポットモニター、2・3列目USBポート等々の採用がトピックで、つまりは既存のエアーでは、これらがことごとく非装備だったのだ。なんならオプションですら選べなかったりした。
なかでもブラインドスポットモニター……ホンダいわく「お客さまから追加の要望が一番多かった機能」とのことだが……については、マジで採用を想定していなかったようで、既存のエアーではリアバンパーまわりにセンサーを収める空間すらなかったそうな。そこで今回の改良では、リア左右縁のパネルの形状を変更し、どうにかセンサーを積んだという。本稿冒頭で述べた「改良モデル唯一のデザインの変更点」というのは、実はこれだった。
正直なところ、こうした当初のエアーの扱い、「新生ステップワゴンのイメージリーダーなのに、すっぴん仕様しかない」という実情については、記者もずーっと不思議に思っていた。なんなら、webCGのまわりにもこれを指摘するジャーナリストはいた(参照)。われわれですらそうだったのだから、果たしてホンダのマーケティングともあろうお方が、シートヒーターも分割エアコンも電動ゲートも後席用USBもないミニバンが、このご時世に3割も売れると本気で思っていたのだろうか? ホントは、より利ザヤの大きなスパーダ系に誘導しようってハラだったんじゃないの? ……なんて、今も邪推している次第である。タイムマシンが実装されたら、3年前に戻ってその辺を聞いてみましょ。
いずれにせよ、エアーの装備はEXでようやく競争力を得た感がある。スタートはむしろここからで、現行ステップワゴンでホンダが世に問うた「シンプルでクリーンなミニバン」の是非は、今後見えてくるのでしょう。これでダメなら、やっぱりミニバンはオラオラ系が正義ということで、今度こそあきらめよう(笑)。
ライバルの動向が気にかかる
うーむ、どうしよう。もう変更箇所の話が終わってしまったぞ。なにせ今回は、読者諸氏の大好きなメカ関連の変更がないからな。
正直なところ、個人的には2024年12月に発表された次世代パワートレイン技術の、一部の先行投入は想像していた(制御系とかね)。あるいは「シビック」から進んでいる、ハイブリッド用エンジンの直噴化とか。
また、こちらはまったく手が入らなかったというわけではないが、ADASについても後退出庫サポート機能と急アクセル抑制機能が追加されたくらいで、大きな改良はなかった様子。ここは、ハンズオフ走行や下道での運転アシスト機能を実装しているライバルに譲るところだったので、ちょっと残念だ。この辺を思うと、ひょっとしたら来年以降、もう一発デカい改良があるのかもしれない。
いっぽうのデザインについては、こちらは「オラオラ教に改宗してなくて、ホントによかった!」という無責任な安堵(あんど)と、「まったくなんにも変えなくて、ホントによかったの?」という不安が、ないまぜになっている感じだ。確かにこの意匠はステップワゴンの生命線だが、ミニバンマーケットは、ギラギラしたクルマがないとお店に来てさえもらえない非情な戦場だ。実際、販売現場からは「もう少しイカツいの、できませんか?」という要望もあったという。そうでなくても、お化粧直しで鮮度を保つのは自動車ビジネスの習い。控えめ路線は維持しつつ、新規感を出す手直しをしてもよかったんじゃないかと、そんな風に考えてしまった。
こうしたデザイン面を含め、ステップワゴンの今回の改良に関しては、余計なお世話でしょうけど「ここは変えなくてよかったの?」と端々で思ってしまった。単品で見れば商品力のアップは確かだが、競合車種に目をやれば、「トヨタ・ノア/ヴォクシー」などはほぼ同時期のモデルチェンジだったので(参照)、あちらも程なくテコ入れの可能性がある。それでノア/ヴォクが超進化を遂げたりしたら、ステップワゴンの存在はかすんじゃうんじゃないか……と、ひとごとながらハラハラしているのだ。
確かに競合他車も魅力的だけど、ライバルを超える車内の広さに、“酔いづらさ”にも配慮したガラスエリアやインテリアの建て付けなど、ステップワゴンには大家族の移動基地として真面目につくられたよさがあると思う。そもそもクリーンなスタイルの箱型ミニバンってだけでも、今日では国産で唯一の存在なのだ。ホンダは「万年4位」なんて自嘲しているが、個人的にはもうちょっと目立ってもいいと思うし、ホンダも欲張っていいと思うのだけど……。皆さん、いかがでしょう?
(文=webCG堀田/写真=webCG、本田技研工業/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
-
「アプライドD」で何が変わった? スバルの「インプレッサ」と「クロストレック」の進化を探るNEW 2026.10.8 スバルが「インプレッサ」と「クロストレック」の改良モデル「アプライドD」を発表した。モデルライフの折り返し地点となる今回の改良では、ラインナップの刷新がトピック。その内容とスバルの狙いを、スバリスト玉川ニコ氏が解説する。
-
咆哮なき電気自動車「ジャガーTYPE 01(タイプ01)」に“ジャガーの魂”は宿るのか? 2026.10.7 いよいよ正式デビューを飾った、新生ジャガーのラグジュアリー4ドアGT「TYPE 01(タイプ01)」。いったいどんなクルマなのか、従来のファンも納得できる“ジャガーらしさ”はあるのか? 先行チェックした西川 淳がリポートする。
-
人件費不要の自動運転タクシー導入! で、料金はどうなる? 2026.10.5 運転手がいない完全無人の自動運転タクシーが、2027年中に国内で運用される見通しとなった。では、われわれユーザーが享受できる具体的な恩恵は? 望ましい料金とは? 清水草一はこう考える。
-
メーカー団体もついに本気になった? 日本における「自動運転」の未来と現在地 2026.10.2 日本の自動車メーカー14社で構成される日本自動車工業会が、記者会見で「自動運転」の普及・実装へ向けた取り組みを発表した。彼らは、どのようなロードマップで自動運転の社会実装を考えており、そこにはどのような課題があるのか?
-
安いのは分かってる 軽スーパーハイトBEV「BYDラッコ」のお買い得度を検証する 2026.10.1 BYDの軽スーパーハイトBEV「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。すでに各所で報じられているとおり安いのは間違いないが、装備内容等も考慮したうえでの買い得度はどんなものか。ライバル車との比較を通じて検証した。
-
NEW
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】
2026.10.8試乗記フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。 -
NEW
「アプライドD」で何が変わった? スバルの「インプレッサ」と「クロストレック」の進化を探る
2026.10.8デイリーコラムスバルが「インプレッサ」と「クロストレック」の改良モデル「アプライドD」を発表した。モデルライフの折り返し地点となる今回の改良では、ラインナップの刷新がトピック。その内容とスバルの狙いを、スバリスト玉川ニコ氏が解説する。 -
“クルマづくりのプロ”の話をライブで配信! 「あの多田哲哉のクルマQ&A」公開収録のお知らせ
2026.10.7From Our Staff元トヨタの多田哲哉さんが、自動車に関するさまざまな疑問・質問に答える「あの多田哲哉のクルマQ&A」。その話がライブで聞けて質問もできる公開収録を、10月15日(木)の夜、19時半から実施します。 -
咆哮なき電気自動車「ジャガーTYPE 01(タイプ01)」に“ジャガーの魂”は宿るのか?
2026.10.7デイリーコラムいよいよ正式デビューを飾った、新生ジャガーのラグジュアリー4ドアGT「TYPE 01(タイプ01)」。いったいどんなクルマなのか、従来のファンも納得できる“ジャガーらしさ”はあるのか? 先行チェックした西川 淳がリポートする。 -
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】
2026.10.7試乗記新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。 -
第131回:新型三菱パジェロ(後編) ―レトロブームには頼らない? 最新のデザイントレンドを追求した三菱の思惑―
2026.10.7カーデザイン曼荼羅正式発表を間近に控え、ますますファンの間で話題が盛り上がっている新型「三菱パジェロ」。歴史的な旗艦の復活だというのに、三菱があえてレトロブームに乗らなかった理由とは? カーデザインの識者とともに、新型パジェロに見る最新のデザイントレンドを探る。












































