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「レクサスGX」の国内販売がスタート 「ランドクルーザー」とはどこが違うのか

2025.05.29 デイリーコラム 佐野 弘宗
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国内初登場ながらグローバルでは3代目

2025年4月3日、「レクサスGX」のカタログモデルがついに国内発売となった。そこから約1年さかのぼる2024年4月16日には、先行発売限定車の「GX550“オーバートレイル+”」を発表するとともに、「2024年秋ごろをめどに通常販売」としていたが、結果的には、そこから半年、もしくはそれ以上ずれ込んでのスタートとなった。

今回発売されたのは3.4リッターV6ツインターボ搭載の「GX550」のみで、中国などで展開されはじめた2.4リッター直4ターボのハイブリッドとなる「GX550h」はひとまず未設定。そもそもの発売の遅れも含めて、世界的な人気と部品調達の問題から、GXも供給体制の構築に時間がかかっているようだ。

そんなGXのカタログモデルの車両本体価格は、先行限定車としても販売された“オーバートレイル+”が1195万円、そこから「E-KDSS」などの悪路走破機能が省かれるかわりに、3列目シートや高級なセミアニリン本革シート、22インチホイールなどの装備が追加される“バージョンL”が1270万円だ。

今回が国内初登場となるレクサスGXだが、グローバルでは通算3代目で、以前から“「ランドクルーザープラド」のレクサス版”として知られてきた。新型GXも「GA-F」プラットフォームという基本骨格や“独立フレーム構造SUVの2番手”というブランド内でのポジション、そして直線基調のスタイリングなどなど、プラドの事実上の後継機種となるトヨタの「ランドクルーザー“250”」(以下、ランクル250)との共通点が多い。つまり、レクサスGXもこれまで同様に“ランクル250のレクサス版”と考えるとわかりやすい。

……となると、気になるのが価格だ。繰り返しになるが、現在日本仕様のGXの上級モデルは1270万円の7人乗り“バージョンL”で、ランクル250で同様のコンセプトを持つ最上級モデルは2.8リッターディーゼルを積む「ZX」。その本体価格は735万円。2台の価格を比較すると、金額にして535万円、率にして73%ほどGXのほうが高い。GXは1000万円をゆうに超える価格設定もあって、「高すぎでは?」という指摘があるのも事実だ。

2024年6月に100台の台数限定で導入された2列シート5人乗り仕様の「GX550“OVERTRAIL+”」に続き、2025年4月にカタログモデルとして販売が開始された「レクサスGX」。レクサスのラインナップでは「LX」と「RX」の間に位置づけられるSUVで、「ザ・プレミアム・オフローダー」をコンセプトに開発された。
2024年6月に100台の台数限定で導入された2列シート5人乗り仕様の「GX550“OVERTRAIL+”」に続き、2025年4月にカタログモデルとして販売が開始された「レクサスGX」。レクサスのラインナップでは「LX」と「RX」の間に位置づけられるSUVで、「ザ・プレミアム・オフローダー」をコンセプトに開発された。拡大
「GX550“オーバートレイル+”」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4970×2000×1925mm、ホイールベースは2850mm。“オーバートレイル+”は、本格オフローダーとしての機能やデザインを追求したというモデルで、標準仕様よりも20mmワイドなトレッドや18インチホイール、ブラックのアーチモールとミラーカバーなどが特徴となる。
「GX550“オーバートレイル+”」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4970×2000×1925mm、ホイールベースは2850mm。“オーバートレイル+”は、本格オフローダーとしての機能やデザインを追求したというモデルで、標準仕様よりも20mmワイドなトレッドや18インチホイール、ブラックのアーチモールとミラーカバーなどが特徴となる。拡大
「森の中にたたずむモダンで快適な別荘」をイメージしたというインテリア。インストゥルメントパネルは水平基調のシンプルなデザインでまとめられ、14インチディスプレイを低めに配置するなど、オフロード走行時の視認性にも配慮されている。
「森の中にたたずむモダンで快適な別荘」をイメージしたというインテリア。インストゥルメントパネルは水平基調のシンプルなデザインでまとめられ、14インチディスプレイを低めに配置するなど、オフロード走行時の視認性にも配慮されている。拡大
「レクサスGX」の車台は「レクサスLX」や「トヨタ・ランドクルーザー」でも定評のあるGA-Fプラットフォーム。3.5リッターV6ツインターボエンジンに10段ATを組み合わせたパワートレインを搭載している。
「レクサスGX」の車台は「レクサスLX」や「トヨタ・ランドクルーザー」でも定評のあるGA-Fプラットフォーム。3.5リッターV6ツインターボエンジンに10段ATを組み合わせたパワートレインを搭載している。拡大
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GXはコスパに優れる?

では、GXやランクル250のひとつ上のクラスとなるLXとランドクルーザーの“300”(以下、ランクル300)を比較してみる。ランクル300は2022年1月の受注停止時で、最上級の「ZX」ガソリンモデルの本体価格は730万円だった。同時期のLX600(の標準モデル)は1250万円だから、LXはランクル300に対して、金額にして520万円高、率にすると71%高という計算になる。

つまり、GXとランクル250、そしてLXとランクル300の本体価格差は、少なくとも率ではほぼ同等なのだ。ちなみに、LX600の現在の本体価格は1450万円、ランクル300も先ごろの一部改良でZXガソリンが743万6000円に値上がりして、最新の価格差は706万4000円高、95%高まで拡大している。しかし、これはいまだに新規受注停止中のランクル300が値上げ幅を最小限に抑えているためで、本来ならもっと大幅に値上げされるのが自然だろう。

LXとランクル300で比較対象となっているLX600とランクル300のZXガソリン車では、エンジンを含むパワートレインは共通だ。また、油圧とエアスプリングを組み合わせた車高調整サスペンション「AHC」はLX専用だが、電子制御可変ダンパーの「AVS」はランクルZXにも標準で装備される。

いっぽう、GX550のエンジンもLX600やランクル300のガソリン車と共通の3.4リッターV6ターボだが、ランクル250は全車4気筒で、上級モデルは2.8リッター直4ディーゼルとなる。一般的にはガソリンエンジンよりディーゼルエンジンのほうがコスト高とされるが、さすがに今回のV6と直4だと、GXの3.4リッターV6ターボのほうが原価は高いだろう。

ATもGXの10段に対して、ランクル250のそれは8段。しかも、GXにはランクル250に設定のないAVS(そのうえナビ連動型)まで標準装備される。こうして見ていくと、これだけ高度なメカニズムを装備しつつも、LXとランクル300とほぼ同等の価格差にとどまるGXは、逆に安いくらいなのでは……という評価も成り立つ。

冷静に観察していくと、GXが高いというより「ランクル250は意外と安くない」という印象すら抱かされてしまう。ランクル250の開発テーマには“質実剛健”や“原点回帰”のほか“良品廉価”もあった……と聞くと、最後の良品廉価にはちょっと納得しかねる部分もある。

ただ、先代GXとプラドは頂点のランクル(先代は「200」)やLXとプラットフォームから別物だったが、新型GXやランクル250は基本骨格となるGA-FプラットフォームもLXやランクル300と共有する。さらに、2850mmというホイールベースも全車共通。つまりランクル250も先代にあたるプラドよりはハードウエアは明らかにグレードアップしている。こうしたことから、ランクル250がプラド時代より高めの価格設定となってしまうのは、ある意味しかたない。

「ランドクルーザープラド」の後継モデルとして2023年8月に世界初公開された「ランドクルーザー"250"」。「ランクルの中核モデルとして質実剛健を追求し、ユーザーの生活と実用を支えるという原点に回帰した」と紹介される。
「ランドクルーザープラド」の後継モデルとして2023年8月に世界初公開された「ランドクルーザー"250"」。「ランクルの中核モデルとして質実剛健を追求し、ユーザーの生活と実用を支えるという原点に回帰した」と紹介される。拡大
「ランドクルーザー“300”」は、2021年8月に登場したランクルのフラッグシップモデル。2025年3月に一部改良が施され、衝突被害軽減ブレーキの機能の強化やイベントデータレコーダーの装備、盗難防止機能の拡充などが図られた。
「ランドクルーザー“300”」は、2021年8月に登場したランクルのフラッグシップモデル。2025年3月に一部改良が施され、衝突被害軽減ブレーキの機能の強化やイベントデータレコーダーの装備、盗難防止機能の拡充などが図られた。拡大
2022年1月に導入が開始されたレクサスの最上級SUV「LX」。2025年3月に一部改良が行われ、3.5リッターV6ツインターボエンジンと10段ATの間にクラッチ付きのモータージェネレーターを搭載するハイブリッドモデル「LX700h」(写真)も新たにラインナップに加わった。
2022年1月に導入が開始されたレクサスの最上級SUV「LX」。2025年3月に一部改良が行われ、3.5リッターV6ツインターボエンジンと10段ATの間にクラッチ付きのモータージェネレーターを搭載するハイブリッドモデル「LX700h」(写真)も新たにラインナップに加わった。拡大
5人乗りで前後2列のシート配置となる「GX550“オーバートレイル+”」の荷室容量は、2列目シート使用時で1063リッター。2列目シートを折り畳むと(写真の状態)1947リッターに拡大できる。
5人乗りで前後2列のシート配置となる「GX550“オーバートレイル+”」の荷室容量は、2列目シート使用時で1063リッター。2列目シートを折り畳むと(写真の状態)1947リッターに拡大できる。拡大
カタログモデルとして3列シートの7人乗りモデル「GX550“バージョンL”」も登場。内装色は写真の「ブラック」または「サドルタン」の2種類から選択できる。「GX550“オーバートレイル+”」が1195万円であるの対してこちらの車両本体価格は1270万円となる。
カタログモデルとして3列シートの7人乗りモデル「GX550“バージョンL”」も登場。内装色は写真の「ブラック」または「サドルタン」の2種類から選択できる。「GX550“オーバートレイル+”」が1195万円であるの対してこちらの車両本体価格は1270万円となる。拡大

デザインと予算で選べる本格SUV

そもそも、クルマという商品の値段は、原価だけで決まるものではない。ブランド内でのヒエラルキー、競合車との関係、それが販売される市場の相場観……などを総合的に判断して定められる。たとえばエンジンにしても、同じ形式であれば、排気量が小さいからといって必ずしも原価が安くなるわけではない。排気量が大きくても生産台数が多ければ、原価が逆転するケースもある。

しかし、それを市場に出す場合には、原価はどうあれ、排気量が大きくて高性能なほうが価格も高くないと、商品力との整合性がとれない。そのうえで、トータルでうまく利益を出す手腕が、自動車メーカーには問われるわけだ。

繰り返すが、レクサスGXは今回が国内初導入。国内での適正価格もいまだ模索状態ともいえ、ランクル250との価格差もひとまずLXとランクル300のそれと同じレベルにしてみた……というのが現状なのかもしれない。

また、GX550の比較対象としたディーゼルの「ZX」こそ735万円という高級車価格をうたうランクル250も、エントリーグレードの「GX」なら同じディーゼルでも200万円以上安い520万円となる。さらにガソリンの「VX」なら、ディーゼルの同グレードより100万円近く安い545万円の正札をさげる。ランクル250ほどの立派な車格で500万円台前半なら、この物価高の昨今、良品廉価というキーワードにも少しは説得力が出るというものだ。

先行したランクル300やレクサスLX、そしてランクル250、さらには最新のGX……と出そろったトヨタ/レクサスのGA-Fプラットフォーム車は、自慢の悪路走破性にしても、アプローチやデパーチャー、ランプブレークオーバーといった対地障害角度や最大安定傾斜角、そして登坂角度といった指標はすべて同等といっていい。

だから、この4台は装備とデザインの好み、そしてなによりご予算で選んでおけば後悔はないのでは……という話である。ただ、現状で割安感があるGXは、遠くない将来に価格も上げられるかもしれないので、急いだほうが……と思ったら、GXもこの2025年5月現在の納期が「販売店にお問い合わせください」となっている。ああもどかしい!

(文=佐野弘宗/写真=トヨタ自動車/編集=櫻井健一)

スクエアなシルエットや大きく張り出したフェンダー、オフロードイメージを“スピンドル表現”として反映したフロントフェイスなどが特徴とされた「GX550」。写真は22インチホイールを標準で装備する“バージョンL”。
スクエアなシルエットや大きく張り出したフェンダー、オフロードイメージを“スピンドル表現”として反映したフロントフェイスなどが特徴とされた「GX550」。写真は22インチホイールを標準で装備する“バージョンL”。拡大
「GX550“バージョンL”」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4960×1980×1920mm。「GX550“オーバートレイル+”」よりも全長が10mm短く、全幅が20mm狭く、全高が5mm低い設定だ。
「GX550“バージョンL”」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4960×1980×1920mm。「GX550“オーバートレイル+”」よりも全長が10mm短く、全幅が20mm狭く、全高が5mm低い設定だ。拡大
張り出した前後フェンダーが醸し出す安定感あるスタンスと、金属の塊から削り出したようなサイドからつながるフォルムにより、タフでモダンなプロポーションを実現したと紹介される「GX550」のリアビュー。被視認性を高めるために高い位置に配置されたリアコンビランプも特徴だ。
張り出した前後フェンダーが醸し出す安定感あるスタンスと、金属の塊から削り出したようなサイドからつながるフォルムにより、タフでモダンなプロポーションを実現したと紹介される「GX550」のリアビュー。被視認性を高めるために高い位置に配置されたリアコンビランプも特徴だ。拡大
「GX550」に採用された「GA-Fプラットフォーム」と、フロントに縦置きされた最高出力353PS、最大トルク650N・mを発生する3.5リッターV6ツインターボエンジン。トランスミッションは10段ATを組み合わせている。トランスファーのセンターディファレンシャルには、トルセンLSDやセンターデフロックを内蔵する。
 
「GX550」に採用された「GA-Fプラットフォーム」と、フロントに縦置きされた最高出力353PS、最大トルク650N・mを発生する3.5リッターV6ツインターボエンジン。トランスミッションは10段ATを組み合わせている。トランスファーのセンターディファレンシャルには、トルセンLSDやセンターデフロックを内蔵する。
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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