第323回:タダほど安いものはない
2025.11.17 カーマニア人間国宝への道輸入車としてはだいぶ安い
「今度、『シトロエンC3ハイブリッド』にお乗りになりますか」
サクライ君からのメールに、「C3ってどんなんだっけ」と思って確認したら、いつの間にかフルモデルチェンジしていて、「これがシトロエン!?」「何やってんだ!」と怒鳴りたくなるデザインだった。パワートレインは、例のステランティスが大量採用中の1.2リッター直3ターボにマイルドハイブリッドを組み合わせたもの。メカ的にも目新しさはない。
ああ、オレが大好きだったシトロエンC3は終わった……。
しかしまぁ、どのように終わったのか、ファンとして確認しなくては。なので、即座に「乗る乗る~」と返信した。
当日夜8時。いつものようにサクライ君が自宅にやってきた。
夜の住宅街にたたずむ新型C3は、暗くてよく見えないなりに「猛烈にフツーでなんの特徴もない」という印象だった。シトロエンのデザインがこれじゃどうにもならない。
オレ:いったいどうしてC3は、こんなんなっちゃったんだろね。
サクライ:でもこれ、超絶安いんです。
オレ:いくらだっけ。
サクライ:339万円からです。以前乗っていただいた「アルファ・ロメオ・ジュニア」や「プジョー408」は、これより100万円、200万円は高いので、C3はお買い得です。
オレ:でもこれは一番上のグレードでしょ。もっと高いんじゃない?
サクライ:それでも364万円です。
オレ:そう……。じゃ輸入車としてはだいぶ安いね。
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ACCとマッサージ機能は必須
とはいうものの、シトロエンは安いから買うクルマじゃない。オシャレだから買うのだ。この猛烈にフツーでなんの特徴もないカタチで364万円は高いっ! これなら「ホンダN-BOX」にターボ付けて乗ったほうが300倍シアワセになれそうだ。
まあいい。とにかく走りだしてみよう。
オレ:(ボディーが)軽いから走りが軽やかだね。
サクライ:でしょう。
オレ:このマイルドハイブリッド、だんだん好きになってきたよ。
サクライ:僕もです。ただC3の場合は、最高出力がほかより低くて、101PSなんです。
オレ:それは大丈夫でしょ。オレ、同じ1.2リッター直3ターボの初代「シトロエンDS3」に乗ってたけど、110PSでぜんぜん気持ちよく加速したもん。
新型C3は、首都高に合流すべくフル加速した。やっぱり十分速かったし、エンジンフィールも気持ちよかった。
オレ:乗り心地、いいね。
サクライ:シートがいいですよね。ただこのクルマ、値段が安いだけに、ACCがついていません。フツーのクルコンです。
オレ:えっ! それは中高年カーマニアにとって致命的!
サクライ:ですよね。
ソレ:それじゃ遠くに行けないよ! スーパーに行くだけならN-BOXのほうが500倍いいじゃん! ACCもついてるし。コレ、シートにマッサージ機能もついてないでしょ?
サクライ:もちろんついてません。シンプルに割り切ってますから。
カーマニアも年をとると、いろいろとラクチン装備が欲しくなる。欲しくなるというより必須になる。なにしろいま乗ってるクルマについていてとってもラクで快適なのだから、それがなくなったら買い替える意味がゼロどころかマイナスだ。
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愛車の買い替え候補は?
オレ:オレさ、ホントいうと、「プジョー508」を、もっと小さくて視点の高いクルマに買い替えたいんだよね。でもいい候補がないんだ。ACCとかマッサージとかちゃんとついてて、安くて小さいのが。
サクライ:いえ、ありますよ。
オレ:えっ、なに?
サクライ:「BMW 218dアクティブツアラー」です。
オレ:それってサクライ君の愛車じゃない!
サクライ:そうです。
オレ:超カッコ悪いじゃない!
サクライ:超カッコ悪いですか(笑)。けど、ACCはもちろん、マッサージもついてますよ。
オレ:ええっ!! マッサージがついてるの!?
サクライ:僕はそういうの使わないので知らなかったんですけど、この間、ついてることを発見しました。
オレ:そりゃスゴイ!!
マッサージがついていると聞いて、がぜん目が輝く中高年カーマニア。われながら堕落の極致だが、これが老人力である。
辰巳PAに到着し、照明の下で新型C3をマジマジと眺めた。
オレ:うーん、このカタチはフォルクスワーゲンの「Tクロス」に近いな。
サクライ:いえ、Tクロスのほうがぜんぜんいいと思います。
オレ:Tクロスもイケてないけどね。
サクライ:どうせイケてないなら、2シリーズ アクティブツアラーですよ。人気ないから中古も激安ですし。
結論が出た。C3もTクロスも2シリーズ アクティブツアラーもいらない! 当分508に乗り続ける! だって断然イケてるし、ACCもマッサージもついてるから! しかもタダ! タダほど安いものはない。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一/車両協力=ステランティス ジャパン)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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