第864回:冬の北海道で「CR-V/ZR-V/ヴェゼル」にイッキ乗り! ホンダ製4WDの実力に迫る
2026.03.09 エディターから一言 拡大 |
氷雪に覆われた冬の北海道で、新型「CR-V」をはじめとするホンダのSUV 3兄弟に試乗。かつては実力を疑われたこともあるというホンダ製4WDだが、今日における仕上がりはどれほどのものか? 厳しい環境のもとで、そのコントロール性を確かめた。
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ホンダのSUV製品群を支える「リアルタイムAWD」
先日ご報告した新型ホンダCR-Vの雪上試乗会(参照)がおこなわれた「鷹栖プルービンググラウンド」には、主役のCR-Vのほかに、じつは「ZR-V」と「ヴェゼル」も持ち込まれていた。この“大・中・小”ともいえるSUVトリオは、欧州や豪州でもメインストリームを張る、ホンダのグローバルな主力製品群である。
ホンダの国内ラインナップは、長らくSUVが手薄だったのはご承知のとおりだ。先代CR-Vの販売が終了して、事実上の後継機種(当時)とされたZR-Vが発売されるまでの2023年1月~4月などは、SUVはヴェゼル一択だったくらいだ。しかし、いまではインドから輸入される「WR-V」が加わり、タイからあらためてCR-Vも上陸。さらに燃料電池車「CR-V e:FCEV」も……2026年中の生産終了とされているものの、一応は現行モデルとして公式ウェブサイトに記載されている。ヴェゼルのみだった2023年初頭と比較すると、わずか3年で、ホンダのSUVはあからさまに充実した。まあ、せっかく売り出しても、あっさり引っ込めるクセがあるホンダゆえ、この状態がいつまで続くかは定かでないが(笑)。
そんな国内向けSUVのうち、真冬の鷹栖にCR-V、ZR-V、ヴェゼルの3台が顔をそろえた理由は明白だ。いま四輪駆動が選べるSUVが、この3台だからである。WR-VとCR-V e:FCEVにはFWDの用意しかない。
これらの最新ホンダSUVに使われる4WDは、すべて「リアルタイムAWD」と称されるものである。構造的には、エンジン横置きのFFをベースに、リアタイヤへの継ぎ手に電子制御多板クラッチを使ったスタンバイ式(あるいはオンデマンド式)の4WDで、路面や走行状況に応じて積極的にリアに駆動力を配分する点は、現代の乗用4WDの典型といっていい。最新のリアルタイムAWDは、車速やスロットル開度、舵角、ヨーレートなどをセンシングしながら、前後駆動配分を後輪フリーの100:0からフルロックの50:50まで、柔軟にコントロールする。
「ホンダの4WDは走らない」という風評の理由
このように、リアルタイムAWDは機構的に他社の4WDになんら劣るところはない。しかし、日本ではいまだに「ホンダの4WDは走らない」という風評を払しょくできないでいるのもまた事実だ。その最大の理由は、ホンダの乗用4WDの歴史にあるといっていい。ホンダが切り替え不要のスタンバイ式4WDを初採用したのは、1987年発売の初代「シビックシャトル」だった。当時話題の新機軸だったビスカスカップリング(以下、ビスカス)を使った4WDで、それに与えられた商品名が「リアルタイム4WD」だった。
いっぽうで、当時ビスカスカップリングの使用には特許使用料が必要だったため、ホンダはそれを回避して、なおかつ消耗部品も少ない独自のシステムを開発する。それが「デュアルポンプ式」だ。その名のとおり、フロントポンプとリアポンプの2つのオイルポンプを搭載するのが特徴だった。前後輪の回転差が大きくなると、2つのポンプ間に油圧が発生して、それが多板クラッチを押しつけてリアに駆動を配分した。ただ、初期のデュアルポンプ式4WDは、駆動配分のレスポンスが他社のビスカス式4WDより明確に悪く、「ホンダの4WDは走破性が低い」が定説になってしまった。ちなみに、このデュアルポンプ式も、商品名はリアルタイム4WDだった。
今日につながるリアルタイムAWDの原型は、2011年デビューの4代目CR-Vで世に出た。多板クラッチを作動させる油圧ポンプをモーター駆動による電子制御式とすることで、前後輪の回転差にとらわれない積極的な駆動配分を可能にするとともに、ポンプを減らすことで小型・軽量化も実現した。商品名もリアルタイム“4WD”からリアルタイム“AWD”に変更された。
以降、ホンダの4WDはデュアルポンプ式からリアルタイムAWDに順次切り替えられて、いま日本で売られるホンダ車の4WDは、この電子制御リアルタイムAWDか、(特許が切れた)ビスカス式4WDのどちらかだ。
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滑りやすい路面でも積極的にコントロールできる
というわけで、最新のリアルタイムAWDを搭載するSUVトリオを、真冬の鷹栖で乗り比べることができたが、その走破性とコントロール性の高さに感心するととともに、3台のキャラクターがきれいに分かれているのに感心した。フラッグシップのCR-Vが1~2クラス上と錯覚させるほどの静粛性と重厚なフラットライドを披露したかと思えば、最小のヴェゼルは、雪上でもホットハッチのように軽快に振り回せるのが楽しかった。そして中間のZR-Vはまさに「シビック」を思わせるタイトなスポーツカー風味が印象的だった。
今回のような滑りやすい路面では、徹底して挙動を安定させるのを優先するメーカーもあるなか、ホンダは軽快かつシャープにターンインして、しかるべきタイミングでアクセルを踏み込むと、おあつらえ向きの弱オーバーステアにも持ち込める。この抜群のコントロール性がいかにもマニアックで楽しい。とくにアクセルオフでのターンインのしやすさという意味では、個人的には、ホンダのリアルタイムAWDとスバルの「アクティブトルクスプリットAWD」が国産4WDの双璧と思った。
ともに油圧多板クラッチ式の電子制御4WDだが、スバルは伝統的にフルタイム四輪駆動を是としており、ターンインでのコントロール性のキモをうかがうと、駆動配分に加えて「サスペンションチューン」との回答だった。対するホンダは、アクセルオンでは四輪駆動を基本とするものの、アクセルオフ時には、今回のような雪道でも一時的にリアへの駆動配分をカットして、回頭性の高いFWD状態にするという。同じような目的でも、そこにいたる手法は各社で微妙に異なるのが面白い。
いずれにしても、ホンダのリアルタイムAWDはもはや他社に引けを取らないどころか、コントロール性の高さはちょっとしたもの。初期のデュアルポンプの記憶のまま、ホンダの4WDをあなどるのは、惜しいというほかない。
(文=佐野弘宗/写真=本田技研工業、webCG/編集=堀田剛資)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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