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【スペック】全長×全幅×全高=4740×1775×1650mm/ホイールベース=2750mm/車重=1610kg/駆動方式=4WD/2リッター水平対向4 DOHC16バルブターボ(225ps/5600rpm、33.2kgm/4400rpm)/価格=359万1000円(テスト車=389万250円/リアビューカメラ付きHDDナビゲーションシステム=26万7750円/特別色サテンホワイトパール=3万1500円)

スバル・エクシーガ2.0GT tuned by STI(4WD/5AT)【試乗記】

プロの仕事 2009.11.24 試乗記 笹目 二朗 スバル・エクシーガ2.0GT tuned by STI(4WD/5AT)
……389万250円

スバルの7シーター「エクシーガ」に、スポーティな“STIバージョン”が追加された。専用パーツがもたらす、その走りやいかに?
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ミニバンでモータースポーツ!?

STIとは、「スバルテクニカインターナショナル」の略。スバル車のチューニングを手掛ける会社である。世界ラリー選手権(WRC)をはじめとする活躍で、モータースポーツ界では有名な呼称であるが、それなら、どうして7人乗りのワゴン車でSTIなのか? と、いぶかしがる向きもあろう。

しかし、モータースポーツというものは、必ずしも競走だけの世界ではないし、速く走ることだけがクルマを楽しむ術ではない。
スポーツは、道具を使って行うものであれば、その良し悪しは大切な要素だ。多くの場合、道具はレギュレーションによって管理され、その範囲内で個々人にとって使いやすいよう微調整されるが、必ずしも先鋭化されたものとは限らない。実用品を使ったスポーツでも、ルールさえあれば、競技としては成立する。
そんな風に考えてみると、7人乗りワゴン車のレースなども実際にやったら面白いかもしれないし、これだけ市場に出回っている重心が高いクルマの更なる進化発展に役立つはずだ。

さて、道具の扱いやすさは、スポーツの気持ちよさや記録に直接結びつくのだが、製品としての道具の質は一般的にバラツキも多い。量産品ならば避けられない部分でもある。
クルマの場合は、各部の入力に対する出力をグラフにしたとき、行きと帰りで同じ線上をたどらない“差”が生ずる(ヒステリシス)。この幅がチューニングカーでは小さいのだ。具体的な一例としては、サスペンションブッシュなどゴム部品の変形が挙げられる。これを変形しないように詰めるのは比較的容易だが、単純に詰めたり、固めて剛体にすればいいというのは愚の骨頂。文字では簡単に表せない、繊細なチューニングを施したのが、このSTIバージョンというわけだ。


スバル・エクシーガ2.0GT tuned by STI(4WD/5AT)【試乗記】の画像 拡大
運転席まわりの様子。tuned by STIの専用装備として、本革巻きのMOMO製ステアリングホイールやSTIロゴ入りシフトレバーが備わる。
運転席まわりの様子。tuned by STIの専用装備として、本革巻きのMOMO製ステアリングホイールやSTIロゴ入りシフトレバーが備わる。 拡大
メーターも専用品。220km/hスケールでSTIのロゴ入りとなる。
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秘密は“カタログの外”に

カタログに並ぶSTIの専用パーツそのものは、“素人向け”でしかない。実際の効用などわけもわからず、仲間同志でウンチクを述べる際の手助けにしかならない。モノを交換しさえすればクルマはよくなると信じている初心者には、それでも十分かもしれない。
が、このtuned by STIとノーマルとの価格差は約60万円。パーツ交換だけならこんなに費用は掛からないわけで、300台限定の意味は、そんなに単純ではない。そこには、造り手がカタログに書かない“秘密のノウハウ”が含まれているのだ。

スーパーチャージャーやターボチャージャーを付加してパワーを稼ぐのは、チューニングカーメーカーの常套手段であるが、それだけで事足れりとする雑なチューニングでは、すぐにお里が知れてしまう。物を交換するだけではダメなのであり、そのあとのチューニングこそがキモなのだ。
大抵のメーカーには、ブランド化された固有のスペシャリストを名乗る会社が付帯している。STIももちろんその種の会社ではあるが、チューニングは走り込むほどに真価を発見できる内容になっている。

その最たるものは、リアサスペンションのラテラルリンク内側の取り付け部に付加された、アシスト部品のピロボール化だ。詳しくいうと、サスペンションをマウントしているメンバーのボディへの取り付けに際して、天地に固定されているピンの下方を動かないようにする棒にひと工夫加えている。通常ならば、ムクの鉄材で固定するが、tuned by STIでは寸法を変えることなく角度変化だけ許すピロボールを使う。この部分の角度変化など微々たるものに過ぎないが、実際にこのパーツに交換してみると、確実に限界付近のコントロール性が良くなるというのだ。


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エンジンそのものには手が入らず、アウトプットはベースモデルと変わらない。エンジンルームの奥には、STI製のフレキシブルタワーバーが備わる。
エンジンそのものには手が入らず、アウトプットはベースモデルと変わらない。エンジンルームの奥には、STI製のフレキシブルタワーバーが備わる。 拡大
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誰でも選べる

高速を主体としたこの日の試乗コースでは、十分にその差を確認できたとは言い難いが、その昔同じような課題でいろいろ実験してきた自分の経験から、開発者の気持ちは十分に理解できる。そんな微細領域にまでこだわって造っているのかと思うと、このエクシーガtuned by STIの価値は一層高いものに思われる。
ノーマルのエクシーガを買おうと思っている人で、その量産車的な造りに飽き足らないユーザーは素直に選択候補に入れてもよし。単にSTIというネームに憧れて買うならば、結果的にそれもよしだ。

このクルマは、敢えてノーマルとの差を考えたりせずとも、単純に気持ち良く乗れるクルマとして満足できるだろう。
操舵に対して余計に切れるわけではないが、スッと動きだす切りはじめのレスポンスが気持ちよく、戻した時にボディの無駄な動きが残らない。スポーツカーなどに要求されるレベルといえる。その身のこなしは、平坦路ではスムーズな水平移動に終始し、段差などタイヤから入力があればそれなりの動きは発生するが、また元のゼロラインへと向かう戻り方がスッキリしている。

エンジンそのものは手付かずだから、加速も絶対的なタイムはそう違わないのだろうが、スロットルの踏み込み加減に即応してサッと吹けて、はなせばスッと落ちる、この回転の上げ下げもブカブカした不感帯が少ない。あたかも一度バラして丁寧に組み直したような感触がある。
仕事としてマニュアルに従って忠実にこなす、というよりは、マニア的な好き者が自分で乗るならこうして乗りやすくする、という改良上手な人のクルマのような。そこにプロの仕事ぶりが感じられる。エクシーガのtuned by STIとはそんなクルマだ。

(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)

ホイールは、STIオリジナルの17インチ鋳造アルミ。
ホイールは、STIオリジナルの17インチ鋳造アルミ。 拡大
3列目の様子。スポーティ仕様でありながら、しっかり7人乗れるのがウリだ。
3列目の様子。スポーティ仕様でありながら、しっかり7人乗れるのがウリだ。 拡大
STIでは、いわゆる硬い乗り心地にすることなく、同乗する家族も気持ちよく過ごせるクルマを意識してチューニングを施したという。
STIでは、いわゆる硬い乗り心地にすることなく、同乗する家族も気持ちよく過ごせるクルマを意識してチューニングを施したという。 拡大
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