【スペック】全長×全幅×全高=4445×1735×1550mm/ホイールベース=2525mm/車重=1490kg/駆動方式=4WD/2.5リッター水平対向4DOHC16バルブ(265ps/5600rpm、38.5kgm/3600rpm)/車両本体価格=295.0万円(テスト車=311.0万円/スポーティパッケージ(リアスポイラー+濃色ガラス)+クリアビューパック(ヒーテッドドアミラー+ワイパーデアイサー+リアフォグランプ)のセット)

スバル・フォレスターSTiバージョン(6MT)【試乗記】

もったいない…… 2004.03.12 試乗記 大澤 俊博 スバル・フォレスターSTiバージョン(6MT) ……311.0万円 「スバル・フォレスター」のSTiバージョンが、フルモデルチェンジから2年を経て、ようやくリリースされた。「余裕と走りの両立」を目指したニューバージョンに、『webCG』オオサワが箱根で乗った。


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“クロスオーバー”の運転席とは思えない(?)、サイドサポートの大きなバケットシート。サポート性はもちろん高く、滑らないアルカンタラ表皮も手伝って、ドライバーをガッチリとホールドする。

“クロスオーバー”の運転席とは思えない(?)、サイドサポートの大きなバケットシート。サポート性はもちろん高く、滑らないアルカンタラ表皮も手伝って、ドライバーをガッチリとホールドする。 拡大
マイナーチェンジで、リアシートにリクライン機構が付いた。座面が前にスライドして、シートバックとの角度を変化させる。エンジニア氏によれば「ストラットの張り出しが大きく、シートバックが動かせない」とのこと。基本設計から、フォレスターは「走り」を向いていた、ということだ。

マイナーチェンジで、リアシートにリクライン機構が付いた。座面が前にスライドして、シートバックとの角度を変化させる。エンジニア氏によれば「ストラットの張り出しが大きく、シートバックが動かせない」とのこと。基本設計から、フォレスターは「走り」を向いていた、ということだ。 拡大

コンセプトは「余裕と走りの両立」

2002年2月にフルモデルチェンジした「スバル・フォレスター」が、04年2月に初のマイナーチェンジを受けた。一部改良の眼目は、コンビネーションメーターの意匠変更や、リアシートにリクラインが付いたこと。あわせて、スバルのモータースポーツ部門、STiがチューンしたスペシャル版「フォレスターSTiバージョン」の追加が発表された。

フォレスターSTiバージョンの初登場は、先代にさかのぼる。2000年5月の「S/tb-STi」がそれで、オン&オフロードを走る“クロスオーバー”の先駆車らしく、オールシーズンタイヤを履く4段AT仕様だった。同年12月27日に、サマータイヤ装着のローダウン仕様「S/tb-STi II」、01年1月に5段MT仕様の「タイプM」が加わった。
オンロードスペシャルを出し惜しみした(?)先代とは異なり、新型フォレスターのSTi版は、2.5リッターターボ+6段MTモデルのアグレッシブな仕様で登場。大きめな排気量によって中低速トルクを太らせ、「クロスオーバーらしい余裕とスポーティな走りを両立した」というのが、スバルとSTiの主張である。
「STiバージョン」と聞くと、「インプレッサWRX STi」や、200台限定の「インプレッサS202」など、ハイレベルなチューンドカー(?)を思い浮かべるが、しかし、スパルタンなクルマだけじゃない。先代レガシィB4のチューン版「S401」は、“上級スポーツセダン”の謳い文句どおり、高い運動性能としなやかなフィールを兼ね備えるグランドツアラーだった。新型フォレスターSTiバージョンのコンセプトも、インプレッサ系というよりS401に近い。

スペシャルバージョンたる新型フォレスターSTiだが、見た目はそれほど“スペシャル”ではない。ノーマル比40mmローダウンされたボディは、街乗りやタワーパーキングを考慮した「クロススポーツ」と同じで、いまとなっては見慣れたモノ。STi版の専用ボディパーツも、前後のエアロバンパーなど最小限である。先代フォレスターSTiより1インチ大きい、225/45R18サイズのタイヤ(ブリヂストン・ポテンザRE030)と、ホイールから覗くゴールドカラーのブレンボ製ブレーキポッドが、さりげなくスペシャルを主張する。

ワゴンのユーティリティ性は、ノーマルフォレスターと同じ。写真をクリックすると、シートアレンジが見られます。

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ATが欲しい

新型フォレスターのインテリアは、質感が上がっただけでなく、アウトドアユースを意識した、撥水シート表皮の「バックパックパッケージ」(ほかに、「カジュアル」と「ユーロ」がある)など、楽しげな演出も加わった。が、黒を基調にまとめられたSTiの内装はちょっと地味だ。乗り降りに苦労するほど、大きなサイドサポートのついた専用バケットシート、チェリーレッドのステッチが施された革巻きステアリングホイール、6段MTのシフトノブにアルミペダル……。ドライバー中心につくられた、ストイックな室内である。

目につくところがそっけないぶん(?)、中身はスバルとSTiらしいく、濃い。2.5リッターターボは、北米仕様の「インプレッサWRX」が搭載するユニットで、国内での採用は初めてだ。最高出力は265ps/6500rpmに“抑えられる”が、最大トルクはレガシィシリーズの「GT spec.B」を3.5kgm上まわり、38.5kgm/3800rpmを発生する。
エンジン同様、インプレッサWRX STi譲りの6段MTは、トルクアップに合わせてギア比を変更。ローとファイナルはインプレッサと同じだが、2〜6速が高めに振られた。

箱根ターンパイクを目指して西湘バイパスを走り出すと、案の定というべきか、もの凄く速かった。38.5kgmの最大トルクに対し、車重は「ワゴンGT spec.B」の30kg増しの1490kg。全開加速のすさまじさはご想像いただけるでしょう。タービンが「キィィィィーン」と派手に空気を吸い込み……。
やや渋さはあるが、ショートストロークでカチッと決まるシフトフィールが好ましく、シフトチェンジのたびに聞こえるブローオフバルブの息継ぎが、いかにもハイパフォーマンスカーらしい。6速での100km/h巡航は2200rpmと低く、2000rpm以上まわっていればアクセルを踏むだけで、ターボの太いトルクが味わえる。
ただ、6段MTは、コンセプトの「余裕」が薄まる気がした。クラッチは大容量で、“普通の”クルマに較べてガツンと繋がるから、低速で滑らかに走るのに気を遣う。高速やワインディングで、コキコキ決まる6段MTを自粛し、アクセルに足をそっと乗せて走るのも、精神的にツラいものがある。かなり「走り」に振ったアイテムだ。気持ちのうえでの“余裕”を演出するなら、5段ATもアリなんじゃないでしょうか。

STiらしいけど……

エンジンに合わせてチューンされた足まわりは、低速でやや突き上げるものの、ボディはフラット。コーナリング時のロールも、予想ほどはすくなくはく、ガチガチのスパルタンとは一線を画す。フロント4ポッド、リア2ポッドのブレンボ製が奢られたブレーキは、文句のつけどころがない。ストッピングパワーもコントロール性も素晴らしい。
驚いたのは、アクセルの微妙なオン・オフでも、予想外に大きく姿勢が変化すること。ペダルが動かない程度のアクセルオフで、助手席のカメラマンが感知できるほどノーズがインを向く。やたら速いクルマだけに、ちょっとコワい。

フォレスターは、5ナンバー枠の適度なボディサイズ、高めの視点とロードクリアランスによる運転のしやすさ、乗員と積載のバランスがとれたいいワゴンだと思う。普通に乗るには2リッターNAで十分。ノーマルターボでもかなり速い。STiバージョンはもっと速くてもイイんですけど……、余裕がなくなっちゃったのが、もったいない気がした。

(文=webCGオオサワ/写真=清水健太/2004年3月)

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