スバル・フォレスター2.0XT EyeSight(4WD/CVT)
ますます人気が高まる予感 2016.01.11 試乗記 大幅改良を受けたスバルのミドルサイズSUV「フォレスター」。ターボエンジンを搭載した最上級グレードに試乗し、従来モデルからの進化の度合いを確かめた。降雪地域のユーザーの強い味方
試乗前のプレゼンで、現在のスバルSUVラインナップがチャートで紹介された。そこには最低地上高という、ちょっとマニアックな数字まで記されていた。
本格派SUVの指標といわれる200mmを下回るのは、ミニバンから派生した「クロスオーバー7」だけで、「レガシィアウトバック」や「XV」でさえ200mmを確保する。そしてトップに君臨するのが、今回試乗するフォレスターで、220mmをマークしていた。
現在の4WDの多くは、電子制御デバイスを活用している。おかげで1、2輪が路面から離れたりしても、駆動力が抜けたりすることがなく、スムーズに走破できることが当然になりつつある。
でもそれが全能かというと、そうではない。例えば雪国で、除雪が追いつかないほど大量の雪が短時間に降り、最低地上高を超える積雪になってしまえば、どんなに高度な電子制御デバイスも宝の持ち腐れになる。こういう場合に大事なのは、路面から床下までのクリアランスなのである。
大げさだなんて言うなかれ。1年前に海外のあるメディアが発表した、世界で積雪が多い都市のベスト3(ワースト3?)は青森市、札幌市、富山市で、日本が表彰台を独占していたのだから。ちなみにトップの青森市は年間765cmも雪が積もるという。
スバルのSUVが十分な最低地上高を確保しているのは、北部に積雪地を抱える群馬県で開発されたことが関係しているのかもしれない。それが雪国のユーザーに伝わって、根強い支持を受けているのだろう。
変わらぬ意匠は自信の表れ
プレゼンを終え、予約してあったターボエンジン搭載の「2.0XT EyeSight」のもとへ。旧型との違いは、グリルの意匠や灯火(とうか)類の光らせ方、アルミホイールの造形などにとどまる。北米では納車まで3カ月待ちという、スバル人気をアウトバックとともに支える稼ぎ頭だけあって、“激変”は不要だったようだ。
サイドシルまでカバーした、衣服の裾を汚さないドアパネルに好感を抱きつつ、キャビンに入る。まず感じたのは視界の良さだ。インストゥルメントパネルとサイドウィンドウの下端がほぼそろっていて、エンジンフードがしっかり確認できる。
インパネは同日試乗したXV同様、ピアノブラックなどを活用して落ち着き感を高めている。インパネからセンターコンソールにかけての造形がたくましくなり、SUVぽくなっていることにも気付いた。
適度な張りがある前席に対し、ふっかりした座り心地の後席は、身長170cmの僕なら足が組めるほどの空間を持つ。窓から床までの高さが印象的な荷室は、ゲート側から後席の背もたれを倒すことができる。シンプルながら使いやすい空間だ。
走り始めてまず感じたのは静かさ。水平対向4気筒のノイズだけでなく、ロードノイズも抑え込まれている。現行「レガシィ」が登場したときに、旧型を含めた従来のスバル車よりこの面が格段にアップしていて、さすが最上級車だと感心したものだが、新型フォレスターはそれに近いレベルに達していた。
エンジンの性格は以前と似ていて、ターボは2000rpmあたりから利きはじめるものの、最近の直噴ターボとしてはトルクの立ち上がりまでに少し“待ち”がある。加減速をひんぱんに行うシーンでは、「SIドライブ」を「S」モードに切り替えたほうが、スロットルやCVTのレスポンスが鋭くなって走りやすい。
さらにモードを「S#」に切り替えると、CVTなのに段を切って加速してくれる。他のモードでは6段だったマニュアルモードがS#では8段になるなど、凝ったシステムだ。こうなると次はサスペンション連動の切り替えが欲しい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
定評のある走破性能はそのままに
新型フォレスターでは「アイサイト」が最新のバージョン3に進化したほか、前走車や対向車の有無に応じてハイビームの照射範囲をコントロールする機能や、斜め後方の車両検知機能などからなる「アドバンスドセイフティパッケージ」が2.0XT EyeSightに標準、それ以外のグレードにオプションで設定された。安全のスバルのイメージをさらに高めたという印象だ。
これまでのフォレスター、特に18インチのホイール/タイヤを履く車種は、乗り心地がゴツゴツしていたが、新型はかなりまろやかになった。その分、コーナーでのロールは以前より目立つようになった気もするけれど、水平対向エンジンが生み出す低重心感覚は健在だ。
そのうえで、ステアリングのギア比が速められたことが功を奏して、身のこなしは軽快になった。そしてコーナリング中にアクセルを踏み込むと、2.0XT EyeSightのみに追加されたトルクベクタリングのおかげか、旋回力が強まっていくのが分かる。
フォレスターの4WDシステムは、MT仕様を除いて動力伝達機構に電子制御多板クラッチを用いており、前後トルク配分は60:40と前輪主導だ。その中でターボ車にふさわしいスポーティーさを演出するために、トルクベクタリングは良い仕事をしていた。
適度なアップダウンのあるダートで「Xモード」も試した。滑りやすい登りでは、そのままでは発進でタイヤが一瞬ズルッと空転するのに対し、Xモードを選ぶとスムーズに発進できる。一方下り坂ではヒルディセントコントロールが効くので、安心して進むことができた。
起伏がさらに激しくなれば、200mmを超える最低地上高も走破性に貢献してくれるだろう。なのに舗装路では、今まで以上の快適性とドライビングの楽しさが享受できる。相反する性能をさらに高いレベルで両立させた新型フォレスター。広大な北米大陸や日本の豪雪地帯でさらなる支持を集めそうだ。
(文=森口将之/写真=向後一宏)
テスト車のデータ
スバル・フォレスター2.0XT EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1795×1735mm
ホイールベース:2640mm
車重:1610kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:280ps(206kW)/5700rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/2000-5600rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98H/(後)225/55R18 98H(ブリヂストン・デューラーH/L400)
燃費:13.2km/リッター(JC08モード)
価格:312万8760円/テスト車=378万7560円
オプション装備:ボディーカラー<ヴェネチアンレッド・パール>(3万2400円)/ハーマンカードンサウンドシステム&SDナビゲーション+本革シート+大型サンルーフ+ルーフレール(62万6400円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1149km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
NEW
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。 -
新生アルピナは成功するか? その将来とBMWとの関係について考える
2026.6.1デイリーコラム具体的なデザインスタディーも公開され、いよいよ市場展開が見えてきた新生アルピナ。将来的な成功の“確度”やいかに? BMWによる新たなアルピナ像について、両ブランドに詳しい西川 淳が詳しく解説する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】
2026.6.1試乗記「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。 -
日産リーフB7 G(前編)
2026.5.31思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産リーフ」に試乗。初代のデビューから15年余りを経て生まれた3代目はスタイリングも中身も刷新。苦境にある日産を立て直す重責を担っている。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。










































