ルノー・ルーテシア ルノースポール トロフィー(FF/6AT)/プジョー208GTi(FF/6MT)/フォルクスワーゲン・ポロGTI(FF/6MT)/フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/6MT)(後編)
安心して攻められる 2016.01.21 試乗記 レーシングドライバー谷口信輝による「ルノー・ルーテシア ルノースポール トロフィー」のサーキット試乗。後編では、フォルクスワーゲンが誇る2台のホットハッチ「ポロGTI」「ゴルフGTI」との比較を通じてわかった、走りの質を報告する。やる気を感じる「ポロGTI」
(前編からのつづき)
ルノー・ルーテシア ルノースポール トロフィー(以下、R.S.トロフィー)で1分21秒972、「プジョー208GTi」で1分22秒963を記録した谷口信輝が続いて操ったのは、フォルクスワーゲンのポロGTIとゴルフGTI。
このとき、路面はやや乾き始めていたものの、完全にドライになった部分はほとんどなく、まだぐっしょりとぬれたところがそこかしこに残っている状態だった。
ここで谷口はポロGTIで1分23秒200を、続くゴルフGTIで1分21秒434のベストタイムをマーク。ポロGTIの記録はルーテシアに1.3秒ほど届かなかったが、2リッターターボエンジンを搭載するゴルフGTIは1.6リッターターボを積むルーテシアR.S.トロフィーのタイムをコンマ5秒ほどしのいで見せた。
しかし、この結果は谷口にとって意外なものだったらしい。
「あれ、ポロは208にも負けちゃったんですか? おかしいなあ。ポロもゴルフもサスペンションは硬めで、クルマの動きはシャープ。208が純正ダンパーだとしたら、ポロとゴルフには社外品のダンパーがついているんじゃないかと思うくらい、しっかりした足まわりでした。エンジンにしても、走り始めたときのエキゾーストノートは結構大きめで、やる気を感じさせるものだったし、動き出しも全然悪くなかったんです。だから、タイムが208に及ばなかったのは意外だなあ」
やがてサーキットでの走りを振り返るうち、谷口にはポロのタイムが208に届かなかった理由が徐々に見えてきたらしい。
「たぶん、ポロのエンジンは、中低速域のピックアップはいいんだけれど、高速の伸びが足りないんじゃないかな。だから、区間区間で少しずつ208に後れをとっていったと考えると、少し納得できますよね」
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フォルクスワーゲンの思想が見える
続いて、ポロGTIとゴルフGTIに共通するサスペンションの設定について谷口は指摘を始めた。
「基本的にはポロもゴルフもしっかりした足まわりで、走り始めの安心感は強いんです。ただ、旋回ブレーキを使う5~7コーナーでは、どうしてもリア内輪の接地性が薄くなってしまう。これはどのモデルでも起こる話ですが、ポロとゴルフは特にその傾向が強くて、結果的になにが起きるかというと、リア荷重を外輪だけでは支えきれなくなってパーンとアウト側に滑り出しそうになる。すると、ここでESPがガガガガガッて働いてオーバーステアを打ち消してしまうんです」
「おそらく2台とも、フロントのスプリングは柔らかめで、ダンパーでロールスピードを抑え込む設定なんでしょう。だからロールスピードは速くないけれど、大きな横Gをかけると絶対的なロール量が多くなって、リア内輪が浮いてしまう。もうちょっとロール量を抑えるか、リアのリバウンドストロークを伸ばせば解消できると思うんですが……」
これまたフォルクスワーゲンの名誉のために付け加えておくと、彼らは安全性を重視し、基本的なハンドリング特性をアンダーステアに設定するのを伝統としている。
ただ、それだけだとコーナリングの楽しさが味わえない状況も出てくるので、リアのリバウンドストロークを制限することで、攻め込んだときのみオーバーステア傾向となる味付けとしているのだ。ところが、この設定とESPがある種“ケンカする”格好になって、谷口が指摘するような症状が現れたものと推測される。
いずれにせよ、フォルクスワーゲンが安全性とファン・トゥ・ドライブをはかりにかけたうえで最良と思うバランスを探った結果が、ポロとゴルフの足まわりであることは間違いないだろう。
「ルーテシアR.S.」はバランスがいい
とはいえ、袖ヶ浦フォレストレースウェイという限られたシチュエーションでテストした範囲でいえば、4台の中で谷口が最も気に入ったのは明らかにルーテシアR.S.トロフィーだった。
「繰り返しになるけれど、旋回ブレーキで進入する5~7コーナーでどんどん攻めたくなるのはルーテシアだけ。もちろん、このクルマも内輪の接地感は薄くなるけれど、オーバーステアがどばっと出ることもなければカウンターステアが必要になるほどリアが滑るわけでもない。うま~くステアリングを切っていくと、リアがちょっと“ずれる”かな? くらいの感覚はあるけれど、カウンターなんか要らないし、電子デバイスが働いている感じもしない。ドライバーの邪魔をしないんですよ」
「それにルーテシアは、仮に攻め過ぎちゃって狙ったラインから外れたとしても、自分でそれをコントロールすることができる。だからこそ、もっと攻めたくなる。これがほかのモデルだと、滑り始めた途端にバーンと流れてしまう。もちろん、一発で即ダメになるわけじゃないけれど、そんな感じがしちゃうんです。だから攻めきれないっていうか、物足りなさを感じちゃうんでしょうね」
「でも、ルーテシアだったら信頼できる。これが今日、僕が一番気に入ったポイント。ラップタイムがどうこう、シフトスピードがどうこうって話だけじゃありません。ルーテシアはコーナリング時の信頼感もいいし、ブレーキング時の安定性もいい。つまり、トータルバランスが高いんです。その点でルーテシアは、ぶっちぎりの存在でしたね」
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“わかってる人”が作ったクルマ
ちなみに、4台の試乗を終えた谷口は、最後にもう一度ルーテシア ルノースポール トロフィーでタイムアタックを行い、1分20秒583というこの日のファステストタイムを記録した。
もっとも、次第に乾きつつある路面コンディションがこのタイムを記録するうえで大きく影響したことは否めない事実。同じタイミングで残る3台を走らせれば、いずれも確実にタイムアップを果たしたことだろう。だから、ここで示したタイムは必ずしも絶対的なものではないとご理解いただきたい。
ところで、どうしてルーテシアR.S.トロフィーはレーシングドライバーがサーキットで攻めても操りがいのあるホットハッチに仕上がっていたのだろうか? 最後にこの点を谷口に聞いた。
「やっぱり、走りをわかっている人たちが作ったクルマだからじゃないですか。細かい話だけれど、ルーテシアはシートのサポートがいいだけじゃなく、インテリア全体でドライバーの体をどう支えるか、みたいなことまで考え抜かれているように思います。ほかのモデルだと、シートのサポートが足りないから膝で体を支えなければならないんだけれど、そうすると車内の突起物が足にぶつかって痛かったりする。ルーテシアはそういうところが一切気にならなかった。その点でも、信頼のおけるクルマです」
「それで、値段は300万円ちょっとなんでしょ? もしもこの手のクルマを買うとなったら、ボクはたぶん、ルーテシアを買うでしょうね。そのくらい、気に入りました」
(語り=谷口信輝/まとめ=大谷達也<Little Wing>/写真=田村 弥/取材協力=袖ヶ浦フォレストレースウェイ)
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テスト車のデータ
ルノー・ルーテシア ルノースポール トロフィー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4105×1750×1435mm
ホイールベース:2600mm
車重:1290kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:220ps(162kW)/6050rpm
最大トルク:26.5kgm(260Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)205/40ZR18 86Y/(後)205/40ZR18 86Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:--km/リッター
価格:329万5000円/テスト車=337万960円
オプション装備:フロアマット(3万240円)/ETC車載器(1万4400円)/エマージェンシーキット(3万1320円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:3426km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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プジョー208GTi
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3975×1740×1470mm
ホイールベース:2540mm
車重:1200kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:208ps(153kW)/6000rpm
最大トルク:30.6kgm(300Nm)/3000rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88V/(後)205/45R17 88V(ミシュラン・パイロット エグザルト)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:322万円/テスト車=346万2460円
オプション装備:ボディーカラー<オレンジ・パワー>(4万8600円)/専用ナビゲーション<ETCユニット付き>(19万3860円)
テスト車の年式:2015年型
テスト車の走行距離:1392km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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フォルクスワーゲン・ポロGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1685×1445mm
ホイールベース:2470mm
車重:1240kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:192ps(141kW)/5400-6200rpm
最大トルク:32.6kgm(320Nm)/1450-4200rpm
タイヤ:(前)215/40R17 87Y/(後)215/40R17 87Y(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:15.9km/リッター(JC08モード)
価格:327万5000円/テスト車=363万6260円
オプション装備:714SDCWパッケージ+LEDヘッドライトパッケージ(36万1260円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1556km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4275×1800×1470mm
ホイールベース:2635mm
車重:1390kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:220ps(162kW)/4500-6200rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1500-4400rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:389万円/テスト車=428万9600円
オプション装備:DCCパッケージ+Discover Proパッケージ(39万9600円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1589km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
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