第41回:最新ディーゼル4台イッキ乗り!
GLCクーペはレスポンスキング!?
2017.05.16
カーマニア人間国宝への道
静粛性と快適性は圧倒的
最新のディーゼルモデル4台イッキ乗りの3台目は、これまでの2台、「MINIクロスオーバー」と「プジョー308SW」とはまったく格違いの「メルセデス・ベンツGLC220d 4MATICクーペ スポーツ(本革仕様)」であります。
「220d」というだけに、排気量は2.2リッター(4気筒)。最高出力/最大トルクは170ps/400Nmと、スペック的にはMINIやプジョーと極めて近い。車重が2t近いので、そのぶん加速は大幅にゆったりのんびり系。それこそMINIやプジョーのような「グワワワワ!」という加速はないが、トルクが400Nmあるので、動力性能に痛痒(つうよう)を感じることもない。
このエンジンの圧倒的な静粛性と快適性には感動。これは4気筒の2リッター級ディーゼルとして究極の静かさ&振動の小ささだろう。
もちろん車格が高い分、遮音性能が凄(すご)いのは確かなのだが、ボンネットを開けてエンジンルームの脇にいても、MINIやプジョーよりかなり静かだった。
圧縮比は16.2で特に低いわけでもない。ナゼ? エンジンカバーの遮音性ですかね? メルセデスの説明文を読んでも、静粛性アップのために特別な技術が使われているという記述はないんですが、とにかく静かでした。
ディーゼルのレスポンスキングだ!
このエンジンは静かなだけでなく、レスポンスがガソリンエンジン並みにシャープなのが特徴だ。まぁATですし、それほどレスポンスがシャープでなくてもいいといえばいーんですが、レスポンスの重さはディーゼルの特質であり、人によっては欠点に映ることは間違いない。やっぱエンジンはシュンシュン回ってストッと回転落ちしてくれた方が気持ちいいので。
私がこれまで体験したディーゼルの中では、ヨーロッパで乗ったレンタカーの「ゴルフ1.6ディーゼル」がベストレスポンスだった。しかも5段MTだったので、抜群のレスポンスはドライバビリティーの向上にダイレクトに寄与していた。おかげでパワーの小ささ(105ps)はまったく感じず、逆にメッチャトルクフルに感じたものだ。やっぱりディーゼルでも、レスポンスの良さは善なのである!
実はそのゴルフ、例の排ガス不正モデルだったわけですが、不正を働いてまでフォルクスワーゲンが狙ったのは、コストダウンではなくレスポンスの向上だったといわれている。エンジンレスポンスはそこまでして追求したい要素なのですね!
で、メルセデスの4気筒2.2リッターディーゼルは、現状、ディーゼルのレスポンスキングではないだろうか。
重すぎるのは難点
で、メルセデス・ベンツGLC220d 4MATICクーペ スポーツ(本革仕様)のお値段は775万円。本革仕様をはずしても713万円。高すぎてどうにもなりません。
このエンジンを積んだ最安モデルを探すと、550万円の「C220dアバンギャルド」でした。
う~む550万円。新車では絶対買わないが、中古車なら真剣にいいかもしれない。エンジンの魅力に関しては、前述の静粛性とレスポンスでBMWの4気筒2リッターディーゼルをかなり上回っていると愚考します。
ただ私は、C220dには乗ったことがない。噂(うわさ)によれば、そっちはディーゼルらしい騒音と振動がもうちょっとあるらしい。やっぱりこの静かさは車体側の努力が主なのか? ただしレスポンスの良さは同じはず。それだけで十分魅力的だ。
GLCクーペに話を戻すと、このスタイリングは、メルセデスらしくどこかやぼったいけど十分スタイリッシュ。スポーティーであることはすなわちゼイタクなので、若干室内が狭くなることで、よりゼイタク感をアピールできる。完全にモードですね。
こういうSUVクーペというコンセプトについては、最初に出したのはBMWだったと思いますが、SUVブームに乗って今になって花が咲いているわけですね。
走りに関しては、エンジンその他はすべて文句ナシながら、やっぱ重すぎることが最大のマイナス点だった。1960kgもあっちゃさすがに。
(文=清水草一/写真=池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。