第106回:フェラーリ並みのオプション地獄
2018.10.09 カーマニア人間国宝への道N-BOXは特権階級!?
事実上の国民車である「ホンダN-BOX」の実像をプチ検証すべく、近所のホンダディーラーに出撃した私は、N-BOXカスタム(ターボ車)に試乗し、広報車より足がソフトであることを確認(個人の感想です)。そして、その狂ったような室内の広さにあらためて驚嘆(きょうたん)した。
が、それよりもっとウルトラ驚嘆したのは、当該試乗車の価格が、オプション込みで約250万円であることだった。
いまどきの軽自動車が、支払総額で200万円を超えるという話はよく聞くが、支払総額どころか、車両本体+オプションで250万円とはこれいかに。ちなみに諸経費はプラス15万円くらいですかね? ちゃんと計算できなくてスイマセンが。
つまり、支払総額だと265万円くらい(たぶん)。愛車のエリート特急(激安ド中古「BMW 320d」)の支払総額が255万円だったので、それより10万円も高い。
自ら“エリート”を名乗るわが愛車を軽々と上まわるとは、N-BOXは国民車というより特権階級ではなかろうか!? いつのまにニッポンの国民車は、こんなスーパーエリートになっていたんだ! と、超絶ウルトラ驚嘆するしかない。
いや、もちろんですね、バカスカ売れてるN-BOXが、みんなこんなに高価なはずはございますまい。
なにせこの試乗車、車両本体価格は169万8840円。そこにメーカーオプション約23万円、ディーラーオプション約57万円、合計で約80万円もくっついておったのです! おかげでお値段が約1.5倍に跳ね上がっていました。ウルトラスーパー驚嘆。
オプションはフェラーリ並み
近年フェラーリは、オプション装備のウルトラ充実により、実質的なクルマのお値段がウルトラ猛烈に高くなっている。オプションを最低300万円は付けないと、「納期が大変遅れることになります」とかなんとか、事実上の受注拒否にあうとも聞いている。
なじみの営業マンに見積もらせたら、「〇〇様にはこれくらいの装備がよろしいかと思います」とかなんとか、勝手にオプションが1000万円付いていて、「フザケルナ!」と激怒したものの、結局800万円付けたという話も耳にしたが、それとて、車両価格3000万円の世界での話。
車両価格の50%近くもオプションを付けるという話は、フェラーリでも聞いたことがない。N-BOXおそるべし。
「俺は男だ! 男一匹ふんどし一丁! クルマにけばけばしいオプションなど不要でござる!」
仮に私がN-BOXの新車を買うとなったら、そのように力強く言い放ちたいところだが、そんでもやっぱりバックモニターは欲しいなぁ。車庫入れの時、ちっちゃい子供を轢(ひ)いちゃったら大変なので……。
バックモニター付けるとなると、結局純正ナビを付けないとアカンつーことになる。それって最低10万5840円、一番高いヤツだと19万9800円! ヒエー! それだけで車両本体の1割くらいやんけ!
あと、どうせ付けるのでドラレコとETC車載器も付けたいっす。後付けするのめんどくさいので。いや、ETC車載器は2.0じゃなくてよかと! あればまったく無意味じゃけん! 素のETC車載器で十分でごわす!
いまどきの国民車おそるべし
しかし、それで節約できるのはわずか1万円ほど。暴れん坊将軍・吉宗の質素倹約令も、焼け石に水ですたい。
「男一匹ふんどし一丁!」な気持ちで臨んでも、なんだかんだで、オプション約20万円は最低線、ということになってしまいそうだ。猛省。
ところがあら不思議。中古車ならそういう恐怖とは無縁ですヨ! だって中古車の車両価格はオプション込みだから! あ~~~~、中古車ってステキだなぁ。その代わり、わけのわからん諸経費(=だまし討ち)が乗っかることが多いので覚悟召されよ。
話がそれた。とにかく国民車の新車を買う場合、車両本体価格にオプションを20万円ほど付けるのは宿命だと思ったほうがよさそうだ。涙が出ます。
その20万円を節約するためには、室内がもうちょっと狭くてもよくないか? つーかN-BOXはムダに広すぎないか? N-BOXをやめて「N-ONE」にしてもいいんじゃないか? と思いましたが、装備も考えると、N-ONEにしてもほんのちょっと安くなるだけ。なら広いほうがいいかなぁ……。家賃だって、プラス1万円で2割広くなるんなら、ぜってー広いほうを選ぶっしょ。日本人の貧乏性炸裂(さくれつ)ですまぬ。
しかもN-ONEには、まだホンダセンシングが付かない! オプションで30km/h以下で効くだけの、ないよりマシ程度の自動ブレーキしか付かないのだ。せっかく新車買うのにいまさらそんなの選ぶかよ! こちとらもうすぐ還暦なんだからよ!
ということで、結局N-BOXに舞い戻り、支払総額220万円くらいまで、ウルトラ楽勝で行ってしまうのですね。納得。いまどきの国民車おそるべし。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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