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スバル・フォレスター アドバンス(4WD/CVT)

スバルは分かっている 2018.12.13 試乗記 嶋田 智之 新型「フォレスター」のフルモデルチェンジから少し遅れて登場した、モーターアシスト機能付きパワーユニット「e-BOXER」搭載の「アドバンス」。刷新されたプラットフォームと進化したハイブリッドパワートレインの組み合わせは、どんな走りをもたらすのか。

進化は見えづらいが中身は大きく変わった

ものすごく個人的なことだけれど、スバル・フォレスターにはちょっとばかり好感を持っていた。というのも、実は親しい友人が、今となっては先代となった自然吸気エンジンのモデルを所有していることで、ステアリングを握る機会も少なくなく、そのたびに「うん、いいクルマだな」とほのかに感じさせられてきたからだ。

あらためて、なぜそんなふうに感じさせられてきたのか、考えてみた。おそらくそれは、乗っているときの感覚が“自然”だから、なのだと思う。それもありきたりの“自然”ではなくて、とても心地のいい“自然”。どこかが尖(とが)りすぎていたり落ち込みすぎていたりすることがなく、あらゆる要素のそれぞれが結構高いところにあって、巧みなバランスを描いていることで、余計な何かに気を持っていかれることがない。

スバルのお家芸であるフラット4エンジンは、重心高を低くすることができるうえに構成コンポーネンツを左右対称に配置することができるから、前後左右のバランスもいいのだけど、そこが変に強調されている感じもない。もちろん元気に走ろうと思えば応えてくれるだけの実力はそれなりにあるし、フラット4エンジンが生む独特の味わいなんかもあるのだけれど、それより角という角を上手に丸めたような“自然”なフィールが「いいクルマだな」とほんのり感じさせる。そんなクルマであるように思えるのだ。

2018年6月のフルモデルチェンジで5代目となったフォレスターの、それもメインストリームとなるe-BOXER搭載モデルはどうだろうか?

新型フォレスターはスタイリングが先代のイメージをかなり継承していることもあって、パッと見では進化の道筋が見えにくいようなところもあるが、中身はずいぶん変わっている。

5代目「フォレスター」のハイブリッドモデル「アドバンス」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4625×1815×1730mm(ルーフレール装着車)。ホイールベースは2670mmとなっている。


	5代目「フォレスター」のハイブリッドモデル「アドバンス」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4625×1815×1730mm(ルーフレール装着車)。ホイールベースは2670mmとなっている。
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新型「フォレスター」では、全車にLEDヘッドライトを採用。ポジションランプは水平対向エンジンのピストンの動きを表現した、スバルが「Cシェイプ」と呼ぶデザインを採用している。
新型「フォレスター」では、全車にLEDヘッドライトを採用。ポジションランプは水平対向エンジンのピストンの動きを表現した、スバルが「Cシェイプ」と呼ぶデザインを採用している。拡大
ヘッドライトと同様に、リアコンビネーションライトのデザインにも、「Cシェイプ」をモチーフとして採用。ロープホール付きのルーフレールはオプションとなっている。
ヘッドライトと同様に、リアコンビネーションライトのデザインにも、「Cシェイプ」をモチーフとして採用。ロープホール付きのルーフレールはオプションとなっている。拡大

新型「フォレスター」の最低地上高は220mm。アプローチアングル20.2度、ランプブレークオーバーアングル21.5度、ディパーチャーアングル25.8度を確保している。


	新型「フォレスター」の最低地上高は220mm。アプローチアングル20.2度、ランプブレークオーバーアングル21.5度、ディパーチャーアングル25.8度を確保している。
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スバル フォレスター の中古車

あえてハイブリッドとは言わない

最も大きいのは、2016年デビューの5代目「インプレッサ」から採用がスタートした「スバルグローバルプラットフォーム」が導入されていることだろう。車体や足まわり全体の剛性を70〜100%強化し、サスペンションそのものも改良。さらなる低重心化を図り、フレームワークを見直すことで路面の状況やGなどが生む入力の分散方法も一新するなど、設計の根っこの部分から全面刷新したスバルの新世代プラットフォームだ。開発には相当なチカラが注ぎ込まれている。

パワートレインも一新されている。従来の2リッター自然吸気と2リッター+ターボは設定がなく、2.5リッターの自然吸気エンジンと、フォレスターでは初となる2リッター自然吸気+モーターのハイブリッドユニットが搭載されている。

スバルはあえてハイブリッドとは言わずモーターアシストと表現しつつe-BOXERとネーミングしているが、従来の2リッターエンジンをベースにした最高出力145ps/最大トルク188Nmに同13.6ps/同65Nmのモーターを組み合わせた、いわゆるマイルドハイブリッドと呼ばれるシステムである。そしてトランスミッションは、すべてが「リニアトロニック」と呼ばれている7段マニュアルモード付きCVT、駆動は従来のものに改良を加えたアクティブトルクスプリットAWDだ。

ほかにも改良されたポイントは伝え切れないほどあるのだが、とにもかくにも、今回の試乗車はそのe-BOXERを搭載するモデル、アドバンスだった。インプレッサで高評価を得ていたスバルグローバルプラットフォームと、これまで「XVハイブリッド」に搭載されてきたシステムを大幅に進化させたe-BOXERの組み合わせがどんな印象を与えてくれるのか、興味津々だった。

走りはじめて最初に「おっ?」と思ったのが乗り心地のよさだったので、その辺りについて触れておくと、先代と比べてちゃんと体感できるくらいに快適さを増していた。サスペンションがしっかり動いている様子が伝わってきて、十分に滑らかにしてしなやかといえるフィール。しっとりしていて、当たりも優しい。車体の剛性が大幅に上がったことで、ダンパーやスプリングの働きを生かせるようになったことの表れだろう。

新型「フォレスター」は、「インプレッサ」「XV」に続く、「スバルグローバルプラットフォーム」を採用した第3弾となる。
新型「フォレスター」は、「インプレッサ」「XV」に続く、「スバルグローバルプラットフォーム」を採用した第3弾となる。拡大

「e-BOXER」のパワーユニットは、最高出力145ps、最大トルク188Nmを発生する2リッター水平対向直噴エンジンと、13.6ps、65Nmを発生する電動モーターの組み合わせ。駆動方式はスバルの特徴でもある「シンメトリカルAWD」を採用する。


	「e-BOXER」のパワーユニットは、最高出力145ps、最大トルク188Nmを発生する2リッター水平対向直噴エンジンと、13.6ps、65Nmを発生する電動モーターの組み合わせ。駆動方式はスバルの特徴でもある「シンメトリカルAWD」を採用する。
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左右にアナログ式、中央にデジタル式のインフォメーションディスプレイを配置するメーターデザインは他のグレードと基本的に共通だが、「Advance」のロゴをはじめ、ブルーのアクセントで差異化を図っている。
左右にアナログ式、中央にデジタル式のインフォメーションディスプレイを配置するメーターデザインは他のグレードと基本的に共通だが、「Advance」のロゴをはじめ、ブルーのアクセントで差異化を図っている。拡大
ダッシュボード中央上部に、マルチインフォメーションディスプレイを配置。「e-BOXER」のシステム作動状況を表示する。EV走行時やモーターアシスト走行時はグリーンで、回生ブレーキ作動時はブルーで、それぞれシステム部分が表示される。
ダッシュボード中央上部に、マルチインフォメーションディスプレイを配置。「e-BOXER」のシステム作動状況を表示する。EV走行時やモーターアシスト走行時はグリーンで、回生ブレーキ作動時はブルーで、それぞれシステム部分が表示される。拡大

自然なモーターアシスト

プラットフォームの進化は、もちろん“曲がる”ことにも効いている。フォレスターは代々、背の高いSUVにしては普通のセダンなどに近い感覚で曲がっていけるクルマだったが、新型はハンドリングがさらに向上していて、操作に対する反応もよくなっているし、コーナーにおけるクルマの動きの素直さも正確さも増している。前後にも左右にも無駄な動きはなく、すんなり気持ちよく曲がってくれるのだ。

そしてこのモデルのキモでもある、e-BOXER。バッテリーの充電が十分な状態でゆるやかにアクセルペダルを踏んでいくと、モーターのみのチカラでスルスルと走りだし、そのまま40km/hまではEV走行が可能だ。元気よくアクセルペダルを踏み込むとわりと早いタイミングでエンジンが始動するが、ペダルの踏み込み具合を抑えるドライビングに努めれば思いのほか長い距離をモーターのみで走ることができる。本格的なハイブリッドほど電気に頼った走りができるところまではいかないが、スバルの狙いはそこではないのだろう。

そんなふうに感じたのは、ペダルの踏み込み具合をそう気にすることなく走りはじめて、わりとすぐのことだった。通常の2リッター自然吸気エンジンと比べて力強い加速を示してくれるのもそうなのだが、そのフィーリングがとても自然なのだ。おそらく何も知らずに走らせたらモーターのアシストがあるクルマだということに気づかず、「2リッターにしてはチカラあるねぇ」なんて感じる人もいるかもしれない。

ドライブモードを「S(=スポーツ)」に切り替えると、ちょっとばかりドーピング感のあるトルクの立ち上がりを見せ、軽く背中を押されるような力強い加速を味わわせてくれるが、それでもいわゆる“電気ターボ”のような「やってます!」感はほとんどない。加速感も減速感もナチュラルで、無理なく気持ちいいのだ。とても大人っぽいのである。

左右対称にデザインされているインストゥルメントメントパネルは、他のグレードと同一形状。シルバーの加飾とトリコット色のアクセントの組み合わせが「フォレスター アドバンス」の専用デザインとなる。
左右対称にデザインされているインストゥルメントメントパネルは、他のグレードと同一形状。シルバーの加飾とトリコット色のアクセントの組み合わせが「フォレスター アドバンス」の専用デザインとなる。拡大
試乗車は、オプションの本革シートを装備していた。乗り降りがしやすい、運転席シート自動後退機能も「フォレスター アドバンス」に標準装備されている。
試乗車は、オプションの本革シートを装備していた。乗り降りがしやすい、運転席シート自動後退機能も「フォレスター アドバンス」に標準装備されている。拡大
リアシートのバックレストは、6:4の分割可倒式となる。ドアは前後とも、サイドシルまで覆った「クリーンサイドシル」を採用。ボディーに付いた汚れなどを気にせず乗り降りができる。
リアシートのバックレストは、6:4の分割可倒式となる。ドアは前後とも、サイドシルまで覆った「クリーンサイドシル」を採用。ボディーに付いた汚れなどを気にせず乗り降りができる。拡大
荷室は5人乗車の場合、2.5リッターエンジン搭載車では520リッターの容量となるが、「アドバンス」ではバッテリー搭載の関係で容量が509リッターとなる。
荷室は5人乗車の場合、2.5リッターエンジン搭載車では520リッターの容量となるが、「アドバンス」ではバッテリー搭載の関係で容量が509リッターとなる。拡大

安全装備の充実にも納得

そうそう、安全性を売りにするスバルなだけに、安全装備についても少し触れておくべきだろう。従来どおり「アイサイトVer.3」が標準装備されるのに加え、「アイサイト・ツーリングアシスト」が同じく全車に備わるようになった。これは追従機能付きのクルーズコントロール、車線維持機能、先行車追従操舵機能で構成されるシステムで、120km/hまでの車速域でステアリング、アクセル、ブレーキを自動制御してドライビングをサポートしてくれる。

フロント側を確認するカメラから前車が消えてしまいがちな、例えばワインディングロードのような場所ではアシストが切れがちになり、有効とはいえない──そもそもそうしたシチュエーションのためのモノじゃない──のだけど、高速道路を巡航するような場面では結構な助けとなってくれる。前車との車間の取り方や加減速などが、だいぶ人間の感覚に近づいている感じもある。ちなみに夜も深まった首都高速でも試してみたのだけど、不満らしい不満はなく、極めて楽チンに全く危なげもなくグルリと一周させてくれた。

もうひとつ。このアドバンスには「ドライバーモニタリングシステム」が備わっている。顔認証を利用してドライバーをモニタリングする仕組みで、居眠りや脇見を検知すると警告を与えてくれるというものだ。試しに脇見運転を装ってみると、メーターへの表示とサウンドでしっかり警告を与えてくれた。この顔認証は5人まで登録することができ、ドライバーがクルマに乗り込むと、シートポジションやミラーの位置、ディスプレイの表示などをあらかじめ設定しておいた各人のセットに自動的に合わせてくれるというもの。シートベルトを締め終わる頃にはポジション合わせも終わっているぐらい動作も速い。家族で1台のクルマを使うのであれば、とっても便利な機能である。

まぁそのあたりはうれしいプラスアルファであるが、ともあれフォレスターは、新型になっても「うん、いいクルマだな」と感じられるクルマだった。それも、まろやかで自然という素晴らしい持ち味を生かす方向で成し遂げられていた。ただひとつ違うのは、さまざまな要素のバランスの良さが、もう一段階大きな輪を描いているように感じられたこと。「分かっているなぁ」と膝をたたきたくなるような気分だった。

(文=嶋田智之/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

「アドバンス」のJC08モード燃費値は18.6km/リッター。操舵支援機能付きアダプティブクルーズコントロールを擁する「アイサイト・ツーリングアシスト」を標準装備している。
「アドバンス」のJC08モード燃費値は18.6km/リッター。操舵支援機能付きアダプティブクルーズコントロールを擁する「アイサイト・ツーリングアシスト」を標準装備している。拡大
試乗車は、前/後ろ225/55R18 98Vとなる「ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ」タイヤを装着していた。
試乗車は、前/後ろ225/55R18 98Vとなる「ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ」タイヤを装着していた。拡大
全車速追従機能付きクルーズコントロールの操作系は、ステアリングスポーク右側に集中配置。直観的に使いやすいスイッチデザインになっている。
全車速追従機能付きクルーズコントロールの操作系は、ステアリングスポーク右側に集中配置。直観的に使いやすいスイッチデザインになっている。拡大
発表当初は、受注モデルの約4割が「e-BOXER」と「ドライバーモニタリングシステム」を搭載するこの「アドバンス」グレードだったという。
発表当初は、受注モデルの約4割が「e-BOXER」と「ドライバーモニタリングシステム」を搭載するこの「アドバンス」グレードだったという。拡大

テスト車のデータ

スバル・フォレスター アドバンス

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4625×1815×1730mm
ホイールベース:2670mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145ps(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4000rpm
モーター最高出力:13.6ps(10kW)
モーター最大トルク:65Nm(6.6kgm)
タイヤ:(前)225/55R18 98V/(後)225/55R18 98V(ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ)
燃費:14.0km/リッター(WLTCモード)/18.6km/リッター(JC08モード)
価格:309万9600円/テスト車=343万4400円
オプション装備:本革シート(10万8000円)アイサイトセイフティプラス<視界拡張>(6万4800円)/パワーリアゲート(5万4000円)/大型サンルーフ(5万4000円)/ルーフレール<シルバー加飾ロープホール付き>(5万4000円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1712km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:173.6km
使用燃料:17.1リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.1km/リッター(満タン法)/10.8km/リッター(車載燃費計計測値)

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駆動用バッテリーは、従来型のニッケル水素からリチウムイオンに変更。荷室床面の、後輪車軸真上に搭載している。バッテリー搭載位置と形状の工夫で、荷室床面はフラットな形状になっている。
駆動用バッテリーは、従来型のニッケル水素からリチウムイオンに変更。荷室床面の、後輪車軸真上に搭載している。バッテリー搭載位置と形状の工夫で、荷室床面はフラットな形状になっている。拡大
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