第29回:敏腕カーライフアドバイザーの日々
2018.12.28 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして![]() |
ついに“この連載”を読んで「ダッジ・バイパー」を買ったという御仁が出現!? 友人のマイカー選びにも気さくに協力する“敏腕カーライフアドバイザー”(自称)ことwebCGほったが、ここ2年分のバイパーの維持費とともに、近況を振り返る。
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このテの相談、よく受けます
いつの間にか年の瀬である。
バイクで凍え、クリスマスに浮かれた街に唾を吐き、タワレコに行って「あれ? ○○ってCD出してたの?」と驚いてアルバムを1年分束買いする、そんな時期が今年も来てしまった。
当該連載もすっかり放置気味で申し訳ないが、もともと公開頻度については「暇を見て」というスタンスだったので、そこは平にご容赦ください。前回の記事公開以降も、北陸をハーレーダビッドソンで駆け回ったり(その1、その2)、浅間に行ったり雪を探したり、富士で電動レーサーに乗ったと思えばちょっと変わったバイクを取材したりと、東奔西走だったのだ。ホンダアクセスにいたっては、都合4度も取材した。週末のイベント取材も重なり、ここ最近は“ヘビ”にも“トラ”にもほとんど乗れず、久々にブレーキディスクのサビを見た。毎週のようにこんな記事が作れた2年前と比べると、「『webCG』も忙しくなったなぁ」と感慨深くなる。
そんなわけで、実をいうと今回もバイパーについてはあんまり書くネタがない。AUTO-Xに行ったり、ついに走行距離が5万マイルを超えたりしたのだが、いずれも、なんというか、旬を逸してしまった。仕方ないので2018年最後の記事では、旬とかどうでもいいお話をしたいと思う。
あれはまだ夏の時分の8月19日。休みの昼下がりにぐーたらしていたら、記者のスマホが鳴った。取ってみると、思い出すのもおぞましい中高時代の互いを知る、知古の友からのLINEであった。いわく「そろそろクルマ買い換えたいんだけど」。読めば現マイカーと同じ「2BOXタイプの軽」がいいとぬかす。ブルジョアのくせにケチな野郎だ。面倒だったので「『タント』とかじゃだめなの?」と返しておいた。
……面倒だったので、と書いたけど、実際、軽トールワゴンって箱型ミニバンと並んで満足度が高いのだ。長いこと中古車雑誌でバイヤーズガイドをつくってた記者が言うんだから間違いない。
軽自動車ってすばらしい
ところが悪友は、「機械式駐車場をよく使うので、車高1550mm未満の車種がいい」と言い出した。しかも「『ダイハツ・ミラ イ―ス』はどうかな?」と具体的な車種まで挙げてくるあたり、こやつ大真面目である。ぞんざいな扱いをしたら、仕返しでわが青春の痴態がネットの海に放出されかねない。仕方がないので、真面目に考えることとする。
それにしても、このギョーカイで碌(ろく)を食(は)んでいると、知人から“次のクルマ”について相談されることが多い。そして相談されることが増えるにつれ、「こう聞かれたら、この車種を紹介しよう」などと暇なときにシミュレートするようになるのである。そんなわけで、実は今回の相談案件についても、脳内ではすでに候補が決まっていた。悪友よ、仕方ないから秘蔵の一台を出してやろう。ミラも「アルト」もいいけれど、夫婦そろって超絶おしゃれな貴様には、このクルマがお似合いである。
「『ホンダN-ONE』の『RS』ですかね。『RS』以外のグレードは車高が1550mm超えちゃうので注意」
後日、悪友はチャイルドシート付きの「ホンダN-ONE RS」(ブリティッシュグリーン・パール&ブラック)でさっそうと同窓箱根ツアーに現れた。「クルマどうよ?」と尋ねたところ、車内の静かさやターボ車ならではの動力性能に大変ご満足いただけた様子。「機械駐に入れるたびに係員に車検証見せて、『ほら、車高1550mm以下でしょう!』て言わなきゃなんないのが面倒くさい」などと“N-ONE RSあるある”まで披露して、すっかりオーナーの顔であった。やれやれ、また一人オトコを幸せにしちまったぜ。
冗談はさておき、思うに軽自動車って、こうして人をハッピーにする能力にたけていると思う。バラエティー豊かで、便利で低燃費。安価でリセールがよく、機能的にもちゃんとしている。こんなクルマが“大衆車”としてあってくれる日本は、まこと幸せな国ではあるまいか。どうしたわけか日本カー・オブ・ザ・イヤーには一度も選ばれたことがないけれど、軽はもっと評価されていいと思う。
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この維持費は高いのか、安いのか
一方で、そんなけなげな軽自動車とは対極に位置しているのが、ウチのバイパーだ。2018年10月でわが家に来て満2年。ちょいとこれまでの維持費をはじいてみた結果がこちらである。
170万1049円
……おおう。さすがにすげえ。えげつねえ。クルマ好きの間では、支出の計算は絶望、そして自動車趣味の卒業につながる禁忌とされているが、なるほど確かに、これはヒザに来る。
なんでこんなもんを計算しようと思ったかというと、かつてガイド本をやっていたみぎりに覚えたのだが、2年というのが自動車の維持費を図る上での、ひとつの区切りになるからだ。理由はカンタンで、乗用車では車検が2年に1回だからである(2回以降の場合)。
ちなみに、この170万円の内訳はというと、
点検整備/修理代……67万9449円(車検時の点検整備含む)
税金……26万1600円(車検の印紙代も含む)
保険……16万8320円(任意+強制)
駐車場代……26万5616円(振込手数料&更新料含む)
ガソリン代……31万4314円
その他……1万1750円(ボディーカバー代)
こんな感じだ。
注目すべきは点検・修理代と保険料、ガソリン代で、普通につつましやかな軽自動車を買っていたら、維持費の差額でもう1台、ゲタ用の軽が買えた気がする。
ただ、だからといって「さすが先輩、維持費もぱねえっす」とは言えないところがバイパーのややこしいところ。他の回でも触れたと思うが、バイパーって修理や整備にかかる費用が、同世代の“このテのクルマ”としては安いのだ。
過日知り合った、さるバイパーオーナーいわく、「ステアリングラックで30万円は安いですよ。ポルシェだと70万円はしますから」とのこと。さすがはアメ車、その辺は優秀だなあと感心するとともに、サンプルで挙げられたポルシェの部品代に戦慄(せんりつ)した。まさかの2倍以上かよ。さすが先輩、ぱねえっす。
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この連載を読んでバイパー買ったの!?
ところで、このバイパーオーナー氏、なぜかようにポルシェの修理代に詳しいかというと、某自動車ディーラーの関係者だから。なのになぜバイパーなんてけったいなクルマを所望したかというと、なんと当連載を読んで「これなら買えるな」と判断したからだとか。記者の記事のどこにそんなポジティブ要素があったというのか。
しかもこの御仁、初参加のAUTO-X(アメ車中心の走行会ね)でパワステポンプが爆発したにもかかわらず、「大丈夫ですよ。重ステのクルマには乗ったことありますから」と言って、さっそうと“生ステバイパー”で宅へと帰っていった。いや、バイパーって前軸重が750kgあって、フロントタイヤの幅がノーマルでも275あるんですけど。ご購入の経緯といい、世の中には“剛の者”がいたものだ。こんなご時勢にわざわざ「バイパーを買おう!」と思い立つあたりからして、ホンモノのクルマ好きなのだろう。そしてその決断の原因(?)となれたことを、ギョーカイ関係者としてちょっと誇らしく思う。
先ほど紹介した“旧友×ホンダN-ONE”の話もそうだが、実は私、これまでにも幾人かの友や親類にクルマを薦め、購入に至らしめてきた実績がある。しかし自動車メディアなら、原稿と写真でもってマイカー購入を後押しするのがスジというものでしょう。ワタクシも、これでようやく半人前になれたかなといったところである。
ちなみにだが、これまでに記者が販売(?)したクルマは、中古車含め、BMW、スバル、スズキ、ダイハツ、日産、マツダ、そして今回のホンダである。メーカー&インポーターの皆さま、インセンティブお待ちしています。
(webCG ほった)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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