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第124回:買い物には言い訳が必要だ

2019.02.19 カーマニア人間国宝への道 清水 草一

3気筒のスーパーカー

これ以上のパフォーマンスの向上は、事実上無意味になってしまったスーパーカー業界。それでも各ブランド、相変わらずモアパワーで突き進んでいるが、そんな中、敢然とエコ&サステイナブルな方向へ舵(かじ)を切った「BMW i8」はスバラシイ! 

ところが、隣の駐車枠にクルマが止まってると、ドアがちゃんと開かなくて乗り降りが困難になるという悲劇! せっかく毎日でも乗れるハイブリッドスーパーカーなのにぃ!

もうひとつの気になる事実。それは、i8ってあんまり人気がないみたい……ってことだ。

i8のデザインはウルトラステキである。見た瞬間にほとんどの人が魅了される。パフォーマンスも十二分に高い。

ところが、いざとなるとみんなフェラーリやランボルギーニばかり買って、i8は買ってもらえていない(たぶん)!

i8がどれくらい売れてるか、実数は不明だが、東京でもめったに見ないので、間違いなくフェラーリやランボルギーニより売れてないだろう。

なぜか?

わが身に置き換えて考えてみりゃわかるけど、やっぱ人間、エンジンが3気筒のクルマに2000万円以上出すのって、なかなか勇気がいるんだよね。スピーカーからどんなにイイ合成音出してくれてもさ……。

だって、3気筒っていったら軽と同じだもん。直6ならセーフだった気がするが、3気筒に2000万オーバーはハードルが高すぎる。いや、ある意味、作り手の志が高すぎたのでしょう。

BMW i8ロードスター(写真=池之平昌信)
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「BMW i8」のバタフライドアには難点があった!(写真=池之平昌信)
「BMW i8」のバタフライドアには難点があった!(写真=池之平昌信)拡大
スタイルはいいし、パフォーマンスも高いのに……。(写真=池之平昌信)
スタイルはいいし、パフォーマンスも高いのに……。(写真=池之平昌信)拡大
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中古のi8はお買い得か!?

人間って、納得できる買い物をしたいんだよね。言い訳できる買い物を。「これは値段なりの価値があるんだ!」って自分を納得させたいのだ。大枚はたいて買った逸品が、見た目はイイけど中身がスカスカだとは思いたくない。

私も25年前に初めてフェラーリを買った時は、その重圧に苛(さいな)まれたものです。ひょっとして自分は、取り返しのつかないごくつぶしをやってしまったんじゃないかという罪悪感に悩みました。なにせ当時はバブル崩壊直後。「フェラーリは中身がスカスカだから暴落中」的な認識が一般的でした。

i8があまり人気がないことは、中古車相場を見れば一目瞭然だ。

3年落ちくらいのタマ(i8クーペ)が、1000万円以下で売られている。走行わずか1000kmのタマが1100万円。ほとんどたたき売りだ。これって下取りはいくらだったんだろう……。つい心配になってしまう。

新車同然のi8が1100万円で買えるとなりゃ、それは超お買い得なのかというと、これまた微妙だ。やっぱ3気筒だからなぁ。

考えてみると、わが赤い玉号(86年式『フェラーリ328GTS』)は、一昨年の購入時点でコミコミ980万円。30年落ちのフェラーリと、新車同然のi8が同じくらいの価格帯にあるわけですが、あなたならどっちを買いますか!? ゼヒ真剣に考えてみてください!

市場原理に照らせば、中古価格は神の見えざる手によって導かれているので、人気はほぼ同等になるはずだが、私なら迷うことなくフェラーリ328を選ぶ。だってi8と同じくらい? カッコいいし、エンジンはV8だし、本物のエンジンサウンドを奏でるし、なによりフェラーリだから! その名は神話そのものだ。

もちろん、「30年落ちのフェラーリなんて維持費が大変そうだからi8!」っていう人もいると思うけど、そういう人って結局、i8も買わないんじゃないだろうか。んで「セレナ」とか乗ってるんじゃないか。モノより思い出ってことで。

筆者が人生で初めて購入したフェラーリ、「348tb」。1163万円だった。
筆者が人生で初めて購入したフェラーリ、「348tb」。1163万円だった。拡大
「BMW i8ロードスター」(左)と「BMW i8クーペ」(右)。
「BMW i8ロードスター」(左)と「BMW i8クーペ」(右)。拡大
「BMW i8クーペ」のバタフライドアを跳ね上げた状態。
「BMW i8クーペ」のバタフライドアを跳ね上げた状態。拡大
筆者の愛車「フェラーリ328GTS」。(写真=池之平昌信)
筆者の愛車「フェラーリ328GTS」。(写真=池之平昌信)拡大

ランボルギーニ・ウルスに乗りたい!

とにかく、次世代のスーパーカー像を見事に具現してくれたBMW i8は、あまりにも志が高く時代に先んじすぎており、多くのカーマニアに「いいなぁ」とは思わせても、「血を売ってでも欲しい!」と思わせることはできなかった。

やっぱりスーパーカーはもう行き止まりなのか。未来はないのだろうか!?

そんな絶望感に打ちのめされていた時、あのクルマに試乗できることになりました。あのクルマとはアレですよ、「ランボルギーニ・ウルス」です!

実は不肖ワタクシ、ウルスの写真を見ただけで、久々のコーフンを覚えていた。「こりゃスゲエ!」みたいな血の高ぶりを。

多くのカーマニアは、SUVだという時点で「トンデモナイ!」って感じでしょうけど、その「トンデモナイ!」って感覚は、一般人がスーパーカーに抱く感情そのものだ!!

40年前のスーパーカーブーム当時、「カウンタック」を見た一般人は「なんてトンデモナイクルマだ!!!!」と思ったわけだよね。初めて『太陽の塔』を見た時みたいに。それこそがスーパーカーの本質ではないか!?

もちろん、他のランボルギーニもスゲエよ。「アヴェンタドール」も「ウラカン」もホントにスゲエ。でも、カウンタック以来40年前からあんな感じですごかったわけで、新たな感動はない。

取りあえず私は、「アヴェンタドールSVJ」よりも断然ウルスにコーフンし、「乗ってみたい!」と思っていたのだ。

(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

「ランボルギーニ・ウルス」と。
「ランボルギーニ・ウルス」と。拡大
ランボルギーニ・ウラカン
ランボルギーニ・ウラカン拡大
ランボルギーニ・アヴェンタドールSVJ
ランボルギーニ・アヴェンタドールSVJ拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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