第566回:ブランドの差別化に電動化……
「プジョーのいまとこれから」をトップに聞く
2019.03.30
エディターから一言
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プジョーのフラッグシップ「508」の日本上陸に合わせて、オートモビル・プジョーのCEOにしてグループPSA執行委員であるジャン=フィリップ・アンパラト氏が来日。発表会に続くインタビューの場で、新型508やプジョーブランドのこれからについて質問した。
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大切なのは「数年後の価値」
――新型プジョー508の品質が高いことに感銘を受けました。その割に価格がリーズナブルです。戦略的な設定でしょうか?
ジャン=フィリップ・アンパラト(以下、アンパラト):プジョー508のプロジェクトが始まったとき、われわれはキーとなるDNAを失いたくないと考えました。
ひとつは「デザインファースト」。508に用いられたファストバックスタイルは、市場で好意的に受け止められています。長い歴史を持つ自動車メーカーとして、ロードハンドリングのよさもDNAのひとつです。私自身、開発エンジニアたちに、ハンドリングに関しては「どんどん限界を超えろ」と発破をかけました。新しい508は、自動車業界における「ひとつのベンチマークになったのでは」と自負しております。ジャーナリストの人たち、お客さまがたには、とにかく「乗って」いただきたい。
価格に関しては、「安い」とは考えていません。ちょっと「残余価値」について話をさせてください。例えば英国。ここはリースの市場です。3年、4年、5年後の、クルマの価値が重要です。プジョー車に関しては、5、6年前と比較して、10~15%も上がっている。残余価値を守ることが、ブランドの信用につながるのです。一方で、販売時に大きな値引きはしない。この戦略は、最も優れたものではないかもしれませんが、過去5年間、素晴らしいフィードバックを返しています。
セダンは再び注目される
――PSAグループには、プジョーのほかに、シトロエン、DSといったブランドがあり、さらに最近ではオペル(ヴォクゾール)も加わりました。グループ内の、プジョーブランドの(独自性を貫くための)方向性についてお話しください。
アンパラト:ニューモデルを開発する際に、ガイドラインを設けています。ひとつは、「デザインに手を出すな」。提案されたデザインは、守られなければなりません。プジョーライオンの輝くシグニチャーを際立たせることも重要です。
2つ目は、新世代のインストゥルメントパネルたる「i-Cockpit(アイコックピット)」です。ニューモデルをリリースするたびに、アイコックピットも進化します。数年後には、自動運転に結びつくことでしょう。アイコックピットは、未来への予兆なのです。
3つ目は「シンプルな選択」です。お客さまは、自由にパワートレインを選びたいもの。国、都市、規制に応じて、最適なパワートレインをセレクトできるようにします。ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッド(PHV)、そして燃料電池車(FCV)も出てくることでしょう。パワートレインはさまざまです。しかし、それぞれを搭載するプジョー車は同じものです。
――展示された508のシートに座ってみました。インテリアは素晴らしいですが、リアシートは少々狭く感じられました。居住性について、どのように考えられていますか?
アンパラト:508はデザインファーストで開発されたクルマですからね。その結果として、ファストバックスタイルがあります。居住性については「誰が運転するのか?」を考える必要があるでしょう。大人数の家族連れのためのクルマなら、ステーションワゴン。ステータスとして運転するならセダンです。世界的にDセグメントのセダン市場は縮小していますが、その中でもファストバックは安定している。(需要があるので)売れ続けているのです。
私個人としては、ステーションワゴンが好きです。家族と休日を過ごすときはステーションワゴン。ひとりのときはセダンです。今後、CO2の排出規制はますます厳しくなります。CO2の排出を、従来の125gから95gに減らさなければならない。いまはSUVやミニバンが人気ですが、燃費、デザインの面から、再びセダンが脚光を浴びることでしょう。
ドイツ車にはないものを感じてほしい
――都市型SUV用の、または高性能セダンの付加価値としての四輪駆動システムについて、どうお考えですか?
アンパラト:今年2019年の終わりまでに、四輪駆動のクルマを出す予定です。具体的には、「308プラグインハイブリッド」に、e-AWDを搭載します。CO2の排出を抑えられる燃費のいいクルマです。1年後には、508のPHVバージョンが加わり、これも駆動方式にe-AWDを採用します。現在はクルマの電動化、EVへの移行が進行中で、歴史的にも大きな変動期です。プジョーにとって素晴らしい時期だと、ポジティブに捉えています。
――内外ともデザインは個性的です。では、ドライブフィールに「プジョーらしさ」はありますか? 最近のフランス車は、ドイツ車のドライブフィールに近づいているように感じられますが?
アンパラト:ドイツのブランドと比べられるのは、恥ずかしいことではありません。プジョーは「ラテン系のドイツ車」と言っていいのではないでしょうか。冗談ですがね。
ぜひ508を試乗してみてください。(フォルクスワーゲンの)「パサート」にも乗ってみてください。できたら都市部ではなく、山岳路がいい。ハンドリング、アイコックピットのダイレクトビジョン。ドイツ車には感じられないものがあるはずです。小径のステアリングホイールが、また違いを生み出している。ダイレクトなロードハンドリングは、プジョーのDNAなのです。
パワーユニットはユーザー次第
――電動モデルについて。大型車のEV化を図るメーカーが多い中で、プジョーはコンパクトな「208」から電動バージョンを発表しました。その理由を教えてください。
アンパラト:CO2の排出量をはじめ、規制は厳しくなる一方です。自動車メーカーは、自社のクルマをEVに切り替えていかないと未来はない。(2019年3月の)ジュネーブモーターショーで発表したように、プジョーでは今後、すべてのモデルを電動化していきます。その一方で、お客さまは、自分が欲しいパワートレインを選べるのです。
当面はエネルギーミックスを考慮する状況が続く中、果たして10万ユーロ(約1250万円)のEVを買える人が、どれだけいるでしょうか? われわれは実際にクルマを販売したい。そのために、208からEV化を始めたのです。自動車メーカーとして、利益と環境汚染をトレードオフすることは許されません。と同時に、お客さまが必要とするクルマを市場に出さなければならないのです。
――自社ラインナップの電動化を進める一方、ディーゼルエンジンについてはどうお考えですか?
アンパラト:エネルギーミックスの話ですね。5年前、プジョーでは60%がディーゼル、40%がガソリンでした。現在は、入れ替わって、40%がディーゼル、60%がガソリンになりました。もちろん、国によって比率は変わります。
PSAのパワートレインの戦略はシンプルです。電動化を進めていくし、ガソリン、ディーゼルエンジンの開発をやめるわけではない。サポートも続けます。「商用車はディーゼルでなければ」という市場があります。最終的には、消費者が決定を下すのです。「ディーゼルはもういらない」となるまで続けます。
(文=青木禎之/写真=webCG/編集=関 顕也)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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