注目のモデルがめじろ押し!? 2021年に登場する新型車を大予想!
2021.01.11 デイリーコラム東京モーターショーへ向けた各社の取り組みに期待
クルマ好きにとって年明け最初の楽しみであったカスタムカーの祭典「東京オートサロン2021」が中止となるなど、われわれの生活を一変させた新型コロナウイルス感染症の脅威は、いまだに出口が見えない状況だ。しかし、100年に一度といわれる大変革期を迎えている自動車は、その渦中にも着実な進歩を遂げている。先進的な運転支援技術や、環境負荷低減のために電動化技術を取り入れた新型車が、2020年にも続々と登場したことは記憶に新しい。もちろん、その流れは2021年も滞ることはない。そこで未来への前向きな思いも込め、今年デビューする新型車を大胆に予想してみた。
なかには、すでに正式発表や導入のスケジュールがアナウンスされているモデルもあるが、コロナ禍により遅延を余儀なくされる可能性は否定できない。実際、2020年に登場した車種でも、開発者からは「少なからずコロナの影響を受けた」という声が聞かれていた。一方で、今年は東京モーターショーが開催される年でもあり、各社がそこに照準を合わせて開発を進めていることは間違いない。プロトタイプを含め、さまざまな車種がお披露目されることに期待したい。
■トヨタは今年も注目車種が盛りだくさん
2025年をめどに車種を大幅削減する方針を打ち出しているトヨタだが、今年もしっかりと期待のニューモデルが控えている。まずはスバルとの共同開発車である「トヨタ86」だ。姉妹車の「スバルBRZ」は北米仕様が発表され、2021年秋の北米発売も予告されている。ただ86に関しては、現時点での動きはない。それどころか、BRZは現行型の生産・受注を終了しているが、86のほうはいまだに現行型を新車で注文可能なのだ。とはいえ、こうした状態もさすがに長く続くとは思えず、年内には新型86も公開されるだろう。
もう一台、動向が気になるのが、コンパクトハイブリッド車の「アクア」だ。「ヴィッツ」とはオーバーラップする部分もあったが、新顔の「ヤリス」とはユーテリティー面で差別化が図れている。今年で登場から丸10年を迎える古株だが、依然として販売台数は少なくない。その機能性と手ごろなサイズにファンも多いだけに、2代目もありそうだ。またトヨタの新たな世界戦略SUV「カローラ クロス」の日本導入のうわさもある。「ヤリス クロス」の好調を思えば、その可能性は十分に考えられるだろう。
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2021年も主役はやはりSUV
■重大な使命を帯びた新型「レクサスNX」
レクサスの期待の星は、新型「NX」だ。すでに現行型は登場から7年目となり、SUV市場の活況を考慮すれば、まさに「今でしょ!」と言いたくなる。新型NXにはレクサスだけでなく「トヨタRAV4/ハリアー」の知見も取り入れられ、より魅力的なSUVとなるだろう。さらにこのモデルには、レクサス初のプラグインハイブリッド車(PHV)も設定されるとみられる。ただ、「RAV4 PHV」の受注が一時停止されている現状を鑑みると、NXのPHV版の投入は、2022年以降となりそうだ。
■新型「エクストレイル」は反撃ののろしとなるか?
すでにクロスオーバータイプの電気自動車(EV)である「アリア」の投入を予告している日産だが、最大の目玉といえば新型「エクストレイル」だ。すでに北米版である「ローグ」はデビュー済み。次期型のエクストレイルはこの新型ローグを基本とするとみられ、サイズアップとともに、デザインもSUVらしさを強調した力強いものに刷新されそうだ。
またクルマ好きとして目が離せないモデルといえば、2020年に次期型の存在が明かされた「フェアレディZ」だ。ピュアエンジン車の置かれる状況が厳しさを増すだけに、日産としても一刻も早く市場投入を図るだろう。もちろん主戦場は北米となるだけに、海外での動向にも注視したい。
■新型「アウトランダー」の日本導入時期が気になる
三菱自動車は、2021年2月に新型「アウトランダー」を発表する。基本構造を日産ローグと共有するとうわさされるが、仮にそうであったとしても、新型ローグの方向性を見る限り、高い走破性は現行型からしっかり受け継がれそうだ。
ただ、三菱は昨年末にタイでの現行型「アウトランダーPHEV」の現地生産を発表したばかりで、グローバルでは当面、新旧モデルが併売される様子。さらに新型アウトランダーの市場投入については「米国、カナダ、プエルトリコをはじめ、グローバルに順次……」とアナウンスしている。日本導入のタイミングが気になるところだ。
ピュアエンジンのスポーツカーに乗れるのもこれが最後?
■ホンダはあの大ヒット車をモデルチェンジ
ホンダの注目は、コンパクトSUVの大ヒット作「ヴェゼル」だ。新型も初代同様に「フィット」ベースとみられ、扱いやすいサイズと走りのよさが売りとなりそう。特に2モーターとなるハイブリッド仕様は、よりスポーティーな仕上げとなりそうだ。また既存のモデルではあるが、兄貴分の「CR-V」にはPHV投入の可能性が大。電動化に積極的なホンダだが、PHVが「クラリティPHEV」のみでは、販売だけでなく電動化戦略のPRとしても弱いのが正直なところ……。トヨタRAV4 PHVの人気も、新しいPHVの日本導入を後押しするかもしれない。
■スバルの注目は「BRZ」と「アウトバック」
2021年におけるスバルの話題といえば、やはり新型BRZ。東京オートサロンでのプロトタイプのお披露目が期待されたが、残念ながらイベント自体が中止となってしまった。ただ、北米仕様の発売タイミングを考慮すると、東京モーターショーが日本正式発表の“本命”、そして年末の発売が予想される。ピュアエンジンの最後のBRZとなることは確実なので、いち早く手にしたいというファンも多いはず。希少性を増すピュアなFRクーペとして、トヨタ86とともに“将来的な価値”も期待される。
スバルの新型車はほかにもある。それが新型「アウトバック」だ。セダンこそ消えたが、「レガシィ」の伝統はアウトバックが受け継ぐ。デビュー済みの北米仕様は従来モデルより大型化しているが、入手した情報によると、日本仕様はこの国の道路事情に適したサイズにリデザインされるという。スポーツ路線の「レヴォーグ」に対し、上級クロスオーバーワゴンとすることでしっかりとすみ分けも図られ、シックな大人向けのスバル車となりそうだ。なお、本年1月24日で「S4」の受注終了を迎える「WRX」シリーズだが、こちらも新型を開発中。ただ年内はティザーにとどまり、本格的な動きが見られるのは2022年となるだろう。
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軽乗用車はスーパーハイトワゴン“以外”の車種に注目
■時期的には「スズキ・アルト」の刷新が予想されるが……
スズキは、モデルライフを考えると「アルト」の動向が気になるが、いまや軽セダン=背の低い軽乗用車のニーズは縮小傾向にあるため、モデルライフが延長される可能性も高い。一方、軽市場で人気を得ているのがスーパーハイトワゴンで、今ではハイトワゴンですら存在感は下降気味。スズキでも、看板車種であるはずの「ワゴンR」の影が薄くなっている。販売のテコ入れを狙ったマイナーチェンジが行われる可能性は高そうだ。
■DNGAの導入による「ダイハツ・ムーヴ」の進化に期待
DNGA世代の新型車が好評を博すダイハツでは、ハイトワゴンの現行「ムーヴ」が登場より7年目に突入。フルモデルチェンジが期待される。2019年投入の現行「タント」は走りのよさにも定評があるだけに、同じDNGAプラットフォームの採用による、ムーヴの進化に期待がふくらむ。
■マツダは既存モデルの磨き上げが中心
目下ブランド価値の向上に注力しているマツダだが、今年はフルモデルチェンジや新型車の投入はないだろう。これはマツダの中期経営計画から予測されるもので、彼らは2021年までを「足場固めの期間」と定めているのだ。その間は、既存車種の磨き上げが中心となる。次期型でのFR化が予想される「マツダ6」だけでなく、「マツダ2」も現行型の熟成が進められるはずだ。
しかし、注目車種がゼロかといえばさにあらず。個性派クロスオーバークーペである「MX-30」のEV版が、この1月末に発売されるという。マツダ渾身(こんしん)のEVがどのような味つけとなっているか、非常に楽しみだ。
カムバックをアナウンスしたあのブランドだが……
■ドイツ勢もその他の輸入車も注目車種がめじろ押し
最後に輸入車を見ていこう。今年最大の目玉といえば、“ゴルフ8”こと新型「フォルクスワーゲン・ゴルフ」だ。今春、日本上陸を果たす。新型「ポロ」や「Tロック」などと同様にカジュアルスポーティー路線を強めたゴルフ8は、いかなる進化を見せてくれるのか。今から楽しみだ。また同じドイツ勢では、アウディのコンパクトモデルである「A3」シリーズ、そしてメルセデス・ベンツのフラッグシップサルーン「Sクラス」もフルモデルチェンジを迎える。
このほかにも、2020年内に全車種の電動化シフトを実現したボルボは、ついにEVである「XC40リチャージ」を日本に投入。米国車では新型「シボレー・コルベット」の納車開始に加え、キャデラックのフラッグシップSUV「エスカレード」の新型導入もアナウンスされる。最後に、ブランドとして日本への参入を予告しているのがドイツのオペルだ。グループPSAの傘下に収まり、日本への再上陸に挑む。ただ現状を踏まえると、リスケジュールとなる可能性もあるだろう。
■今年も自動車市場を盛り上げてほしい
昨年の取材でつかんだ情報を含め、さまざまな観点から2021年に登場する新型車を予測してみたが、興味を引かれるモデルはあっただろうか? 電動車だけでなく、86やBRZのように今のうちに味わっておきたいモデルもあったことに、予想を立てた私自身、励まされているところである。
これらの中には、モデルライフなどから鑑みた推測にすぎないものも含まれ、逆に期待は寄せつつも「これは無理かな」と省いたものもある。自動車メーカー各社には、そうした予想を超えてくれることを願い、厳しい時代のいちクルマ好きからのエールとしたい。
(文=大音安弘/写真=スズキ、スバル、ダイハツ工業、ダイムラー、トヨタ自動車、日産自動車、フォルクスワーゲン、本田技研工業、マツダ、三菱自動車、webCG/編集=堀田剛資)

大音 安弘
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