第659回:セダン不人気などどこ吹く風? 絶好調な輸入車セダン5選
2021.10.18 エディターから一言 拡大 |
新車市場を見渡すと、国内外のブランドを問わず相変わらずホットなのはハッチバックとSUVである。国産ブランドのセダンはその多くが生産終了となり、かつての勢いは感じられない。しかしそのいっぽうで、輸入ブランドのセダンに、まだまだ根強い人気があるのも事実。セダン離れが叫ばれて久しいが、変わらず高い支持を集めている輸入セダン5モデルを紹介する。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スカイラインよりビーエム
JAIA(日本自動車輸入組合)が発表した「外国メーカー車モデル別新車登録台数順位の推移」(暦年)によれば、2020年の上位20傑のうち1位~3位はCセグメントの「MINI」と「メルセデス・ベンツAクラス」、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」であり、4位がコンパクトSUVの「フォルクスワーゲンTクロス」。5位にやっと「BMW 3シリーズ」が入ってくるぐらいのものなのだ。SUVやコンパクトハッチの人気が高いのは、国内/国外ブランドを問わない現在の市況傾向といえるだろう。
その3シリーズにしてもセダンとステーションワゴンの「ツーリング」を合算した数字なので、3シリーズのセダン単体で見れば決して「バカ売れ!」「絶好調!」「うれしい悲鳴が止まりません!」というわけでもない。
とはいえ……同じ2020年における、国産セダンの状況を見れば「日産スカイライン」が月平均320台程度しか売れず、「日産シーマ」に至っては月平均約10台という「スーパーカー並みか、それ以下」という状況だ。
前述のJAIAが発表した統計によれば、2020年に最も売れた輸入セダンはBMW 3シリーズと考えられる。2020年1月~12月の新車登録台数は8505台とのことだが、BMWはモデルごとの販売内訳を正式発表していない。
関係筋にリサーチを行った筆者の見立てによれば、そのうち4割は「ツーリング」と呼ばれるステーションワゴンであるはずなので、3シリーズにおけるセダンの登録台数は8505×0.6=5103。ざっくり5000台以上はセダンとなりそうだ。クルマ好きが思う、スポーツセダン=BMW 3シリーズというイメージは間違っていないと思う。
同年の日産スカイラインの登録台数が3891台なので、その3割増しで売れたといえる。日本人は、良くも悪くもスカイラインよりビーエムを選んだのである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
さすがのメルセデス・ベンツ
JAIAの統計では、続く6位が「ボルボ60シリーズ」の7112台。おそらくはその大半がSUVの「XC60」で、それに加えてまあまあの数の「V60」が売れているはずなので、セダンの「S60」はせいぜい1割=700台ぐらいか? それにしても「日産フーガ」と同じぐらいは売れていることになる。
テーマに沿ってセダンに注目してみると、BMW 3シリーズの次に好調だったのは、全体9位の「メルセデス・ベンツCクラス」である。2020年の登録台数は6689台とのこと。W205のモデル末期どころかド末期であったことを思えば(新型の日本上陸は2021年6月)、この数字はスゴイと言わざるを得ない。
ボディータイプごとの販売台数は未公表だが、輸入元の販売関係者にヒアリングしたところ、W205/S205のモデルライフを通しての販売比率は、おおよそW205型のセダン2に対してS205型のステーションワゴンが1の割合だったという。これは歴代Cクラスでもほぼ共通するものだ。ステーションワゴンを4割程度と多めに見積もっても、6689×0.6=4013で「4000台強」がセダンで占められた計算だ。
日産スカイラインと似た数字ではあるものの、筆者の体感ではCクラス セダンのほうがスカイラインの4倍ぐらいは見かけるような気もする。Cクラスのスターティングプライスが650万円以上であることと(スカイラインは435万円から)、販売拠点数の違いを考えれば感心するしかない。
拡大 |
拡大 |
以下、全体の10位から14位までは主にSUVとハッチバックが続くのだが、15位に「メルセデス・ベンツEクラス」が入ってくる。最新モデルは2020年9月に登場。Eクラス全体で4658台の登録があったが、ステーションワゴンが2割から3割の間ぐらいを占めるという。そしてワゴンのうちの1割か2割が「E220d 4MATICオールテレイン」だろうか。
となるとEクラス セダンは4658×0.7=3260で「少なく見積もっても3200台以上は売れた」ということになる。度々の繰り返しで恐縮だが日産シーマの2020年の販売台数がスーパーカー並みの108台なので、大したものである。ブランド力とマーケティングの大勝利といっていいだろう。
アウディの主力はCセグメントに移行
以降の16位から20位にはコンパクトハッチバックやSUVが入っており、21位以下のデータは未公表である。そのため、5選のうち残る2車種については「大手中古車情報サイトの掲載台数の多さ」を「絶好調」の根拠にしよう──と思ったが、中古車の掲載台数が多いということは「売れずにシコってる」という可能性も考えられるため、それを判断基準にするのは危険か。
ランキング15位のメルセデス・ベンツEクラスのセダンを追いかけるのは「アウディA3セダン」だろうか。2020年のJAIAデータによれば、A3シリーズは4800台で全体の14位に入っている。こちらもモデル末期にもかかわらず、この台数は立派だ。その8割ぐらいはハッチバックの「A3スポーツバック」と「S3スポーツバック」であるはずなので、A3セダンの2020年における登録台数は(たぶん)960台程度。だがその割に、よく見かけるような気がするのだ。
Cセグハッチのセダン版というのは、どこか寸足らずであったり、トランク部分を後付けしました感バリバリのフォルムになったりする場合が多いのだが、A3セダンの場合は「バランスのよい美しいセダン」をつくり上げることに成功している。
それゆえ、ダウンサイジングブームのなか、Cセグコンパクトセダンを求める層(の中でも比較的新車購入予算に余裕がある層)の受け皿になっているとも考えられる。加えて「教習車としても使われているから」というのも、筆者がA3セダンを妙によく見かける気がする理由……かもしれない。
ちなみに2021年4月に導入が開始された新型A3シリーズも好調で、四半期ごとの販売台数と販売ランキングは2021年4月~6月が1362台の13位、同7月~9月が1582台の11位となっており、今後は通年でのランキングが楽しみだ。
最後の1車種は……順当にいけばドイツDセグ御三家の一角である「アウディA4」のセダンということになるのだろう。だが筆者のフィールドワークによれば、A4の場合はBMWやメルセデス・ベンツとは反対にステーションワゴンである「アバント」の比率がなぜか圧倒的で、セダンは少なめである。いや「少ない」とは言い過ぎかもしれないが、それであればA3セダンのほうがまだ見かける印象がある。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ラグジュアリーセダンも好調をキープ
最後の1モデルは何であろうか? 「プジョー508」はスタイリッシュに大変身を遂げたが「絶対に違う」という感じで、BMWの「5シリーズ」や「7シリーズ」もJAIAのランキング上位20位には顔を出していない。アウディの「A6」や「A8」も同様で、マセラティやアルファ・ロメオといったイタリアンブランド、そして事実上キャデラックだけになってしまったアメリカンブランドも「街で見かけないわけではないが……」という印象だ。
では何か? そう、セダン人気を支えていると思われるラスボスは「メルセデス・ベンツSクラス」である。最新モデルは2021年1月に日本導入が開始され、四半期ごとの販売台数と販売ランキングは2021年1月~3月が1502台の12位、同4月~6月が1359台の14位、同7月~9月が1101台の19位と、1300万円スタートのプライス設定にもかかわらず堂々の20位入りを果たしている。
法人需要という手堅い販売ラインがあるのも強みで、このままの調子が続けば、通年でのベスト20位入りも確実だろう。そして中古車市場での人気もほどほどに高い──ということで、絶好調な輸入車セダン5選の最終ランナーは、新旧さまざまな世代のメルセデス・ベンツSクラスということにさせていただく。
こうして見ていくと、SUV旋風が吹き荒れる新車市場にあっても輸入車のセダンは相変わらずの存在感がある。ただし、輸入車のセダンが好調なのではなく、固定ファンが多いドイツのプレミアムブランドが「流行に左右されない強さを持っている」と分析することもできる。ではなぜ歴史もネームバリューもある国産セダンが壊滅的なまでに売れなくなったのか? それについては、もしも機会があれば次回以降にご報告したい。
(文=玉川ニコ/写真=BMWジャパン、メルセデス・ベンツ日本、アウディ ジャパン、花村英典、webCG/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
-
第879回:メルセデスがうたう「想像以上」は本当か? フル電動の新型「メルセデス・ベンツCLA」に1000km乗ってわかったこと 2026.10.27 フルモデルチェンジした「メルセデス・ベンツCLA」の中でも本命とされるのが「CLA with EQテクノロジー」。新世代EVをアピールするメーカーのうたい文句は本当なのか、北海道で1000km乗って確かめた。
-
第878回:スタッドレスタイヤなのにドライとウエット性能を強化? 「ミシュランX-ICE SNOW+」の走りを試す 2026.10.23 2026年8月に発売された「ミシュランX-ICE SNOW+」は、氷雪路でのパフォーマンスはそのままに、ドライ/ウエット路面での性能向上を目指したという最新スタッドレスタイヤだ。冬道のさまざまな路面状況において安心感を提供するという、その走りを報告する。
-
第877回:大矢アキオ ロレンツォ視点のパリモーターショー2026 「ケーキを食べればいいじゃない」の革命前夜か 2026.10.22 大矢アキオによるパリモーターショー2026の会場リポート。モーターショー不要論が叫ばれた数年前と比べて出展メーカー数は回復しているものの、訪問者の行動を見ると、やはり時代が変わったことを痛感する。自動車業界に革命が起きる日は意外と近いのかもしれない。
-
第876回:“ヨコハマ史上最高”が目白押し SUV向けスタッドレスタイヤの新製品「アイスガード8 SUV」を試す 2026.10.2 2026年9月1日に販売が開始された横浜ゴムのSUV用スタッドレスタイヤ「アイスガード8 SUV」。従来製品との比較で氷上性能を14%、雪上性能を4%、耐摩耗性能を11%アップさせたというその実力を、一足先に冬のテストコースで確かめた。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
NEW
ホンダ・スーパーONE(前編)
2026.11.1ミスター・スバル 辰己英治の目利き辰己英治さんが今回試すのは、ヤンチャないでたちの「ホンダ・スーパーONE」。軽規格の電気自動車(EV)「N-ONE e:」をベースに走りを鍛えた、電気で走るスポーツコンパクトだ。見た目にも楽しさがあふれる一台の魅力に、“ミスター・スバル”が迫る。 -
思わずなでたくなってくる 丸いデザインのクルマ特集
2026.11.1日刊!名車列伝最近のクルマのデザインは、シャープなラインが特徴だったり、造形そのものが複雑だったり……。今月は、つるりと丸い、シンプルなエクステリアが印象的な世界の名車を日替わりで紹介します。 -
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】
2026.10.31試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。 -
「BYDラッコ」がアジアにはばたく!? ニッポンの軽自動車規格が海外勢に奪われる日
2026.10.30デイリーコラム中国のBYDが、軽BEVの「ラッコ」を日本以外でも販売すると発表! 日本独自のスモールカー規格は、はたして海外でも受け入れられるのか? 本家・日本のメーカーが、海外展開に及び腰だった理由とは? BYDが食指を動かす、軽自動車の秘めた可能性を探る。 -
メルセデスのトップからのまさかの転身 BMW日本法人の上野金太郎社長にインタビュー
2026.10.29デイリーコラムメルセデス・ベンツ日本からビー・エム・ダブリューのトップへ。いわば巨人の四番から阪神の四番のような異例の転身を遂げた上野金太郎社長。両ブランドの文化や製品の違い、今後の販売戦略などについて話を聞いた。 -
ボルボEX90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(後編)
2026.10.29あの多田哲哉の自動車放談ボルボの新世代EV「EX90」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが試乗。ちょっと気になったところと、クルマとしての魅力を感じたポイントについて熱く語る。
















































