BMW 530eラグジュアリー エディションジョイ+(FR/8AT)
こういうのが粋 2022.02.14 試乗記 電気自動車(BEV)のラインナップを拡大中のBMWだが、現時点ではより現実的な選択肢であるプラグインハイブリッド車(PHEV)の強化も忘れてはいない。「530eラグジュアリー エディションジョイ+」は装備面ではいささか地味ではあるものの、乗ると実に味わい深い一台だった。何だか端正で品がいい
さりげなくて品よくすがすがしいたたずまい。BMWのメディア向け試乗車にしてはちょっと地味な雰囲気だが、それはことさらにスポーティーを主張しない18インチのホイールのせいか、あるいはおとなしいグレーのボディーカラーのせいだろうか。いやいや、いつものクルマと違うところが他にもあるような、などと眺めてようやく気がついた。この530eには色つきガラス、BMWで言うところの「サンプロテクションガラス」が装備されていないのである。おかげですっきり見通しがよく軽快感がある。近ごろではどんなクルマでも濃い色つきガラスが当たり前だが、考え直したほうがよさそうだ。
PHEVの530eには「ラグジュアリー」と「Mスポーツ」の2車種が設定されているが、さらにそれぞれに「エディションジョイ+」という仕様が設けられている。エディションジョイ+は2年ほど前からクリーンエネルギー車(ディーゼル、PHEVおよびBEV)の一部に設定されているモデルで、この530eの場合では車両本体価格は825万円とスタンダードのラグジュアリーよりもおよそ50万円安いにもかかわらず、何らかの装備を簡略化して値段を下げたいわゆるお買い得モデルではなく、各種環境対応車の一層の販促のためのプロモーションモデルという位置づけらしい。
ご存じのように、性急と思えるほどにBEVを推進するEUにしても、現実問題として手厚い補助金がなければBEVはまだまだ売れない。実際に販売されて登録されなければCO2排出量の企業別平均値にはカウントされないから、××年までに全モデルをEV化します! と旗を振っても目の前のペナルティーを免れることはできないのだ。当然、もっと価格が安くなって利便性が向上して普及するまでは(本当にそうなるかは別にして)、少しでも排出量を減らすためにPHEVなどもそろえなければならないのが実情だ。
トータル出力もパワーアップ
現行G30型「5シリーズ」は2017年にモデルチェンジした7世代目で、2020年秋にはマイナーチェンジモデルが日本に導入された。前述のようにエディションジョイ+は、リアウィンドウやサイドウィンドウがダークティンテッドではないことが唯一の違いらしい。ちなみに、一見地味なグレーのボディーカラーは「ベルニーナグレー アンバーエフェクト」というオプションカラーで、光線の具合によって微妙に色合いを変える凝ったメタリックである。こういう仕様を選べるのはなかなかの上級者である。もちろん、他のグレード同様、一体化されたキドニーグリルやよりシャープなデザインになったヘッドライトなどが新しく、ハンズオフ機能を持つ運転支援システムやインフォテインメントシステムも最新世代にアップデートされている。
530eは2リッターガソリン4気筒ターボユニットに外部充電できるリチウムイオン電池とモーターを加えたPHEVである。内燃エンジンは従来どおり「523i」に搭載されるものと基本的に同じで、184PS/5000rpmと300N・m(30.6kgf・m)/1350-4000rpmを発生、モーターは80kW(109PS)と265N・mを生み出す。両方を合わせたシステム最高出力は292PS、同最大トルクは420N・mという。同じく252PSだったマイナーチェンジ前の従来型(「iパフォーマンス」というサブネームがついていた)に比べてパワーアップしており、リチウムイオン電池の電力量も10.8kWhと若干増やされている(従来型は9.2kWh)。EV走行距離はWLTCモードで54kmとされている。PHEVとしての燃費はWLTCモードで12.8km/リッターと発表されているから、数値そのものはまったく目を引くものではない。むしろ普通の523iのほうが上回るぐらいであり、実用燃費よりもCO2排出量の低減が狙いであることが分かる。ちなみにヨーロッパ製PHEVらしく充電は普通充電にのみ対応している。
エンジンが気持ちいい
燃費の数値だけに躍起になっていないらしいことは走りっぷりに表れている。PHEVゆえに仕方がないことだが、車重1910kgというヘビー級にしては足取りが軽やかですがすがしく、むしろ踏めばかなりの俊足といえる。現行型のデータは見つけられなかったが、従来型でも0-100km/h加速は6.2秒と言われていたから、新型はそれを上回るはずだ。
さらに好感が持てるのは、普通に走っている際に、モーターによる電動走行からエンジンが始動してハイブリッド走行になる受け渡しが滑らかなこと。まったく耳につかないというのではなく、エンジンが回り始めた際の落差が小さいのだ。ハイブリッド車ではエンジンがかかった途端に(大体は加速が必要な時だ)やかましくなって、しかも耳障りで苦し気なノイズを出すものが多いから、いきおいエンジンを回さないよう、スロットルペダルを深く踏み込まないように気を使うものがほとんどだが、530eの場合はエンジンそのものが健康的に回るうえになかなかの快音でもあり、積極的に回そうという気にもなる。燃費のためにアトキンソンサイクルエンジンを採用したハイブリッド車とは目指すところが違うというわけだ。
さりげなく乗る人になりたい
BMWにしてはおとなしいルックスながら(しつこくてすみません)、もちろんダイナミックな面でも旦那仕様であるはずはなく、ハンドリングも鈍重という感じはまったくない。
タイヤも18インチ(ピレリのランフラットタイヤ)で十分、というより積極的にこのラグジュアリーを薦めたいほど。今や大径タイヤだから乗り心地がキツイという時代ではないけれど、“薄い”タイヤを履くモデルよりも明らかに穏当で快適だ。場合によってはコツコツとした突き上げを感じるものの、ほとんどの状況でしなやかでフラットであり、また一般道でちょいと飛ばす限りではまったく不足はない。
せっかくのBMWならパリッパリのスポーティー仕様にしたいという気持ちは分からないでもないが、PHEVにしては燃費がそれほど目覚ましくないという点をいったん脇に置けば、まっとうなセダンとして出色の出来栄えである。オジサンはこういうセダンにさりげなく乗りたい。いや、このように一見おとなしいが、やるときゃやるよ、というオジサンになりたいのである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
BMW 530eラグジュアリー エディションジョイ+
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4975×1870×1485mm
ホイールベース:2975mm
車重:1910kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:184PS(135kW)/5000rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1350-4000rpm
モーター最高出力:109PS(80kW)/3140rpm
モーター最大トルク:265N・m(27.0kgf・m)/1500rpm
システム最高出力:292PS(215kW)
システム最大トルク:420N・m(42.8kgf・m)
タイヤ:(前)245/45R18 100Y/(後)245/45R18 100Y(ピレリPゼロ)※ランフラットタイヤ
ハイブリッド燃料消費率:12.8km/リッター(WLTCモード)
価格:825万円/テスト車=893万8000円
オプション装備:ボディーカラー<ベルニーナグレー アンバーエフェクト>(10万円)/BMWインディビジュアル メリノレザー<スモークホワイト/ブラック>(0円)/イノベーションパッケージ(19万2000円)/ステアリングホイールヒーティング(4万1000円)/BMWインディビジュアル レザーフィニッシュダッシュボード(6万8000円)/harman/kardonサラウンドサウンドシステム(6万8000円)/BMWインディビジュアル アルカンターラアンソラジットルーフライニング(21万9000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2563km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:353.2km
使用燃料:35.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.0km/リッター(満タン法)/10.2km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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