第687回:走りと質感がステキな(ほぼ)5ナンバーサイズ車5選
2022.05.23 エディターから一言 拡大 |
今のクルマは大きすぎるとお嘆きのカーマニアは多いはず。かくいう筆者もそのひとりだ。そこで今回は、カーマニアも納得の魅力を有すると思われる(ほぼ)5ナンバーサイズ車をピックアップしてみた。だが、その結果には、自分で選んでいながら大いに驚くこととなった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
住宅街における真のドライビングプレジャーとは?
いきなりの私事で恐縮だが、つい先ごろ自宅兼事務所の引っ越しを行った。新居(といっても中古のあばらや)がある場所は、東京23区内であるにもかかわらず豊かな自然に囲まれており、環境という面では大いに満足している。だが自然豊かな場所であるだけに、近隣の道路も昔風というか、端的に言ってしまえば「細くて狭くて非常に走りづらい」といったニュアンスなのだ。
これまで、全幅1795mmの愛車「スバル・レヴォーグ」に乗っていて「車幅が広いから走りづらい」と感じたことは一度もなかったのだが、新居に移ってからは「5ナンバーサイズ車への買い替え欲」に取りつかれている。ヤマト運輸さんのトラックや電柱などをスイスイかわせることこそが、21世紀の住宅街における真のドライビングプレジャーなのではないか……と(勝手に)思うに至ったのだ。
とはいえ「車幅が狭いクルマなら何でもいい」というわけでは決してない。「5ナンバーサイズであり、なおかつ、筆者のようなカーマニア(?)をうならせるだけの走行性能と質感を持ち合わせた一台」こそが今、私に求められているのだ。
ということで、極めて個人的な事情に基づく話で恐縮ではあるが、類似のことを考えている方も少なくなかろうという読みのもと、「走りと質感がステキな(ほぼ)5ナンバーサイズ車」を5モデル挙げてみることにしよう。
なお、中古車までを候補に入れるとキリがなくなってしまうため、今や希少な「新車で買える(ほぼ)5ナンバーサイズ車」に絞ったうえで話を進めることとする。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
その1:日産ノート オーラ
「お前は何を言っているんだ?」とお思いの方もいらっしゃろう。なぜならば、そう「日産ノート オーラ」は5ナンバーサイズ車ではないからだ。具体的には、全長4045mmと全高1525mmというのはまぁいいとして、ノート オーラの全幅は1735mmである。
それゆえ「なぜオーラのほうを挙げるんだ? 素直に全幅1695mmの『ノート』を挙げとけや!」というご批判もあろうことは重々承知している。
しかし……ノートとノート オーラの間には「微妙なれどデカい違い」があるゆえに、ここはひとつ「ノートじゃなくてオーラ!」ということでお許しいただきたいのだ。
リアフェンダーが微妙にふくよかであることによる、全体的なフォルムの落ち着きと色香。トレッドが20mm広いことによる、スタビリティーの良さや後輪のバタつき感のなさ。そしてインテリア各部の、ノートを明らかに上回る質感……等々から考えると、「やはりここはノートじゃなくてオーラで!」としか思えないのである。
全幅1735mの3ナンバー車である日産ノート オーラだが、そのおしゃれっぷりとクラスレスな走りがあれば、40mmぶんのストレスなど確実に相殺できるだろう。
拡大 |
拡大 |
その2:スズキ・スイフト
一部では「在日ヨーロピアンコンパクト」とも呼ばれている「スズキ・スイフト」でも、筆者は大いに満足できるはずだ。適度にけれん味のある内外装デザインと、どこかちょっと昔のフランス車っぽい乗り味は、「中古欧州車マニア→本格スバリスト(見習い)」というクルマ好き人生をたどった筆者にはピタリとハマることが予想される。
また小ぶりとはいえハッチバックなので、後ろに人が乗るとき以外はリアシートを倒しておけば荷物もたっぷり積めて、おおむねレヴォーグと同様の使い方もできるはず。
グレード的にはフルハイブリッドの「ハイブリッドSZ」にするか、それともエンスーらしく「RS」の5段MTでキメるかは悩むところだが、乗り心地重視でいくならやはりハイブリッドSZが有力候補である。
拡大 |
拡大 |
その3:スズキ・スイフトスポーツ
これまた日産ノート オーラと同じく全幅1735mmの3ナンバーサイズ車なのだが、最高出力140PSのK14C型1.4リッター直4ターボエンジンを6段MTで操るのはあまりにも快感であり、1t切りの車重970kgでありながら鬼のように剛性感が高いボディーにも、思わずほれぼれする。
3ナンバーサイズではあるが、ここはひとつ「名誉5ナンバー車」として候補に入れるほかあるまい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
その4:スズキ・ソリオ バンディット
とはいえノート オーラやスイフトなどのBセグハッチバック車では車内スペースが手狭すぎると感じられる局面も、人生においてはあるはず。
そんなときには「箱型のクルマ」を買うのが一番なわけだが、あいにく箱型のクルマにはカーマニアをうならせるモデルがあまりない──のだが、スズキの「ソリオ」は別だ。現行型のソリオであれば、「走る喜び」と「積む楽しみ」とを相当高い次元で両立できることを、webCGをお読みの各位であればよくご存じだろう。
だが素のソリオだとビジュアルおよび雰囲気が──申し訳ないが──けっこう所帯じみているという点に、個人的には抵抗を覚える。
が、ソリオのいわゆるカスタム系に相当する「バンディット」であれば、所帯じみたニュアンスはかなり軽減される。
そして、この手のクルマのカスタムというのは一般的にマイルドヤンキー臭が強いのが、まぁ難点といえば難点なのだが、現行型のソリオ バンディットは、ホンダの「N-WGNカスタム」と並んで「マイルドヤンキーっぽくないカスタム」の2大巨頭。よくわからないが代官山あたりの超絶しゃれたヘアサロンに乗りつけても、おそらくは違和感なしであろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
その5:スズキ・ジムニーシエラ
言わずと知れた「ジムニー」の登録車版である。1.5リッター直4自然吸気エンジンは少々眠く、燃費もさほどよろしくはない。だが「ジムニーシエラ」のこの素晴らしいビジュアルがあれば、たぶん私はすべてを許せるだろう。
まぁ軽のジムニーでも全然OKなのだが、オフロードを本籍地とするラダーフレーム車であるジムニーは、舗装路での乗り心地は決して良好ではない(現行型はそんなに悪くはないですが)。
しかしトレッドをガバっと拡大したジムニーシエラのほうは、高速道路などでの乗り心地もまずまず快適。コンクリートジャングルという名の荒野を行く筆者(←要は出無精のインドア派)の毎日を、全幅1645mmのボディーでもって素晴らしく盛り上げてくれるだろう。ううむ、本当に欲しい一台である。ボディーカラーは「ミディアムグレー」が好きです!
ピックアップした車両のうち4台がスズキではあるが、それは偶然。決して狙ったものではなく、私はスズキの回し者でもない。あくまでもカーマニアが納得できる「走りと質感がステキな(ほぼ)5ナンバーサイズ」というフィルターを通してみた結果にすぎない。
となれば、クルマのサイズがどんどん大きくなる現代にあって、スズキのクルマづくりは注目に値するのではないかとあらためて思う。
(文=玉川ニコ/写真=花村英典、日産自動車、スズキ/編集=櫻井健一)

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
-
第856回:「断トツ」の氷上性能が進化 冬の北海道でブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「ブリザックWZ-1」を試す 2025.12.19 2025年7月に登場したブリヂストンの「ブリザックWZ-1」は、降雪地域で圧倒的な支持を得てきた「VRX3」の後継となるプレミアムスタッドレスタイヤ。「エンライトン」と呼ばれる新たな設計基盤技術を用いて進化したその実力を確かめるべく、冬の北海道・旭川に飛んだ。
-
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末 2025.11.26 「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。
-
第854回:ハーレーダビッドソンでライディングを学べ! 「スキルライダートレーニング」体験記 2025.11.21 アメリカの名門バイクメーカー、ハーレーダビッドソンが、日本でライディングレッスンを開講! その体験取材を通し、ハーレーに特化したプログラムと少人数による講習のありがたみを実感した。これでアナタも、アメリカンクルーザーを自由自在に操れる!?
-
第853回:ホンダが、スズキが、中・印メーカーが覇を競う! 世界最大のバイクの祭典「EICMA 2025」見聞録 2025.11.18 世界最大級の規模を誇る、モーターサイクルと関連商品の展示会「EICMA(エイクマ/ミラノモーターサイクルショー)」。会場の話題をさらった日本メーカーのバイクとは? 伸長を続ける中国/インド勢の勢いとは? ライターの河野正士がリポートする。
-
第852回:『風雲! たけし城』みたいなクロカン競技 「ディフェンダートロフィー」の日本予選をリポート 2025.11.18 「ディフェンダー」の名を冠したアドベンチャーコンペティション「ディフェンダートロフィー」の日本予選が開催された。オフロードを走るだけでなく、ドライバー自身の精神力と体力も問われる競技内容になっているのが特徴だ。世界大会への切符を手にしたのは誰だ?
-
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】
2025.12.30試乗記ホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。といってもただのリバイバルではなく、ハイブリッドシステムや可変ダンパー、疑似変速機構などの最新メカニズムを搭載し、24年分(以上!?)の進化を果たしての見事な復活だ。果たしてその仕上がりは? -
BMW M235 xDriveグランクーペ(前編)
2025.12.28ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルで、STIで、クルマの走りを鍛えてきた辰己英治が、BMWのコンパクトスポーツセダン「M235 xDriveグランクーペ」に試乗。長らくFRを是としてきた彼らの手になる “FFベース”の4WDスポーツは、ミスタースバルの目にどう映るのだろうか? -
ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECHリミテッド【試乗記】
2025.12.27試乗記マイナーチェンジした「ルノー・キャプチャー」に、台数200台の限定モデル「リミテッド」が登場。悪路での走破性を高めた走行モードの追加と、オールシーズンタイヤの採用を特徴とするフレンチコンパクトSUVの走りを、ロングドライブで確かめた。 -
『webCG』スタッフの「2025年○と×」
2025.12.26From Our Staff『webCG』の制作に携わるスタッフにとって、2025年はどんな年だったのでしょうか? 年末恒例の「○と×」で、各人の良かったこと、良くなかったこと(?)を報告します。 -
激動だった2025年の自動車業界を大総括! 今年があのメーカーの転換点になる……かも?
2025.12.26デイリーコラムトランプ関税に、EUによるエンジン車禁止の撤回など、さまざまなニュースが飛び交った自動車業界。なかでも特筆すべきトピックとはなにか? 長年にわたり業界を観察してきたモータージャーナリストが、地味だけれど見過ごしてはいけない2025年のニュースを語る。 -
第942回:「デメオ劇場」は続いていた! 前ルノーCEOの功績と近況
2025.12.25マッキナ あらモーダ!長年にわたり欧州の自動車メーカーで辣腕(らつわん)を振るい、2025年9月に高級ブランドグループのCEOに転身したルカ・デメオ氏。読者諸氏のあいだでも親しまれていたであろう重鎮の近況を、ルノー時代の功績とともに、欧州在住の大矢アキオ氏が解説する。

















































