第690回:モータースポーツ直系の実力 グッドイヤーの新スポーツタイヤ「イーグルF1スーパースポーツ」を試す
2022.06.07 エディターから一言 拡大 |
サーキット走行も見据えたグッドイヤーの新フラッグシップスポーツタイヤ「EAGLE F1 SUPERSPORT(イーグルF1スーパースポーツ)」が上陸。歴代最強をうたうモータースポーツ直系のパフォーマンスを、ワインディングロードで確かめた。
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新たなフラッグシップモデル
“グッドイヤー”と聞いて、私が真っ先に思い浮かべるのが、スポーツタイヤの「EAGLE(イーグル)」シリーズ。1000分の1秒を競うレーシングカーと、世界に名だたるスポーツカーの足元を支えてきた、憧れのブランドである。
市販車向けのハイパフォーマンスタイヤでは、これまで「EAGLE F1 ASYMMETRIC(イーグルF1アシンメトリック)」がトップモデルとしての役割を担ってきたが、そのさらに上を行く性能により、新たなフラッグシップモデルとして登場したのが今回試走したイーグルF1スーパースポーツである。
現行の「イーグルF1アシンメトリック5」がトータルバランスに優れたUHP(ウルトラ・ハイ・パフォーマンス)であるのに対し、最新作のイーグルF1スーパースポーツは“ウルトラUHP”としてサーキット走行までをカバーするのが異なるところ。つまりUHPのイーグルF1アシンメトリック5を超えるのが、イーグルF1スーパースポーツというわけだ。
それは、モータースポーツで培ってきた技術により、さらなるドライグリップ性能とハンドリング性能で、より高いレベルのスポーツドライビング体験をスポーツカーオーナーにもたらす自信作なのだ。
新テクノロジーでさらなる高性能化を目指す
ハイパフォーマンスカーの性能を余すところなく引き出すために、高いドライグリップ性能とダイレクトなハンドリング性能を手に入れたというイーグルF1スーパースポーツには、さまざまな新技術が投入されている。
具体的には、グリップ性能を向上させるための「デュアルプラステクノロジー」と「パワーショルダーテクノロジー」、ハンドリングに寄与する「パワーラインカバーテクノロジー」と「ハイフォースコンストラクションテクノロジー」である。
ドライ走行を支えるアウター部と、ウエット走行で効果を発揮するセンターブロックを組み合わせたU字型コンパウンドを採用することで、優れたドライグリップとウエットグリップを両立するのがデュアルプラステクノロジー。また、外側の大型ショルダーブロックがコーナリング時の接地面積を最大化させ、グリップ力を高めるのが、パワーショルダーテクノロジーだ。
アラミドとナイロン素材を組み合わせた層を加えることで、遠心力によるトレッド変形を抑え、安定した接地形状を維持するのがパワーラインカバーテクノロジー。そして、高剛性のカーカスをトレッド面まで巻き上げた強化型サイドウォールにより、タイヤの変形を抑え、シャープなハンドリング性能をもたらすのがハイフォースコンストラクションテクノロジーである。
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速さだけではない魅力
さて、今回の試走イベントは、サーキットではなく、箱根エリアの公道が舞台。前述のとおり、イーグルF1スーパースポーツはサーキット走行を視野に入れたタイヤだが、そうはいっても実際に走るのは公道がほとんどということから、この判断がなされたという。試走用の車両は、最高出力280PSの2リッター直4ターボエンジンを積む「アルファ・ロメオ・ジュリア ヴェローチェ」で、フロントに225/45ZR18、リアに255/40ZR18サイズが装着されていた。
ウルトラ・ハイ・パフォーマンスにさらにウルトラがつくタイヤだけに身構えて走りだすと、「あれっ」というくらいマイルドな路面とのコンタクトに肩透かしをくらう。タイヤの剛性は高いものの不快な硬さはなく、目地段差を越える場面でも、思いのほかうまくショックを遮断している。そのうえ、ロードノイズもスポーツタイヤとは思えないレベルに抑えられている。ドイツでは一日にアウトバーンを数百km走ることがザラにあるが、快適性が高いうえに、中立付近の舵の据わりも良く、これなら長距離をハイスピードで移動しても、疲労は少ないに違いない。
一方、イーグルF1スーパースポーツを手に入れたジュリア ヴェローチェの走りは楽しさにあふれていた。ステアリングをわずかに切っただけでもクルマは即座に向きを変える。コーナーでは吸い付くように路面を捉え、思いのほかクイックな動きで駆け抜けることが可能だ。この日の路面はドライコンディションに恵まれたが、グリップの限界はほど遠く、どんなシチュエーションでも狙いどおりのラインをトレースすることができた。
イベントでは同時にイーグルF1アシンメトリック5を試すことができたが、それに比べてイーグルF1スーパースポーツはグリップとハンドリング、そして快適性をさらに高い次元でバランスさせている印象。ウルトラUHPといっても神経質な部分はなく、スポーツドライビングを楽しみたい人にはうってつけのスポーツタイヤといえるだろう。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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