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第256回:燃費フェチの行き着く先

2023.04.17 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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新型「プリウス」で首都高燃費アタック

新型「トヨタ・プリウス」のフォルムはまるでスーパーカーだ! 長年スーパーカーを乗り継いでいる者として大感動! ただ、なかなか乗る機会が巡ってこなかった。

なんとか貸していただいた試乗車両は「E-Four」を採用する4WD車。“元祖・燃費兵器”たるプリウスにとって、4WDはムダなゼイタク装備だが仕方ない。4WDのほうが走りはいいとも聞いているので、取りあえず首都高に出撃した。

まずは普通に試乗したところ、驚いたことに、新型プリウスの走りはスーパーカーではなくプリウスのままだった。もうちょっとスーパーになったと誤解していたが、先代プリウスの2割増しって感じで、相変わらずプリウスだったのだ。もちろん大変よくできているが、どんないいクルマも、期待値が高すぎると評価が低くなってしまう。注意が必要ですね。

期待値をさらに下回ったのは燃費だ。もともと「新型プリウスは燃費を捨て、デザインと走りを優先した」とは聞いていたが、フツーに走って19km/リッターしか出なかった。ってことは、FFモデルでも21km/リッターくらいか。燃費フェチとして失意のどん底である。

よし、得意の首都高燃費アタックだ! すいた首都高をフツーに流せば、どんなクルマもベストに近い燃費が出る。以前「ヤリス ハイブリッド」では38.8km/リッターが出た。新型プリウスのE-Fourはどうか。

血のにじむようなじんわりとしたアクセルワークの末、出た平均燃費値は「29.1km/L」。ってことはFFモデルで32km/リッターくらいだろう。やっぱり物足りない~!

私の脳裏には、つい数週間前、あるクルマで行った首都高燃費アタックの感動がよみがえっていた。

それは、「レクサスIS500」である。

話題の新型「トヨタ・プリウス」に試乗。「今度のプリウスは燃費を捨て、デザインと走りを優先した」と聞いていたが、得意の首都高燃費アタックでその実力を確かめてみた。
話題の新型「トヨタ・プリウス」に試乗。「今度のプリウスは燃費を捨て、デザインと走りを優先した」と聞いていたが、得意の首都高燃費アタックでその実力を確かめてみた。拡大
普通に試乗したところ、もちろん大変よくできているが、驚いたことに新型「プリウス」の走りは、スーパーカーではなくプリウスのままだった。当たり前か。(写真=池之平昌信)
普通に試乗したところ、もちろん大変よくできているが、驚いたことに新型「プリウス」の走りは、スーパーカーではなくプリウスのままだった。当たり前か。(写真=池之平昌信)拡大
血のにじむようなじんわりとしたアクセルワークの末、新型「プリウス」の首都高燃費アタックで出た数値は、29.1km/リッターだった。
血のにじむようなじんわりとしたアクセルワークの末、新型「プリウス」の首都高燃費アタックで出た数値は、29.1km/リッターだった。拡大
今回試乗した4WDの「プリウスZ」。リアモーターは、従来の7.2PSから41PSへと大幅にパワーアップされている。4WDであることを示す「E-Four」のエンブレムは、フロント左ドアにしか付かないので、パッと見で駆動方式を言い当てるのは難しい。(写真=池之平昌信)
今回試乗した4WDの「プリウスZ」。リアモーターは、従来の7.2PSから41PSへと大幅にパワーアップされている。4WDであることを示す「E-Four」のエンブレムは、フロント左ドアにしか付かないので、パッと見で駆動方式を言い当てるのは難しい。(写真=池之平昌信)拡大
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5リッターV8自然吸気の驚異的な燃費

IS500の走りのすばらしさは、すでに十二分に理解していたが、ところでこのクルマって、燃費はどれくらいなんだろう。WLTCモード燃費は9.0km/リッター。WLTC市街地モードだと5.5km/リッターとかなりの極悪ぶりだが、首都高燃費アタックでどれくらい出るのか。

いつものように、首都高・永福ランプの入口手前で燃費計をリセットし、じんわりと加速して本線に合流。ドライブモードはもちろん「ECO」である。そのままひたすらクルマの流れに乗って淡々と走る。

燃費計の数値は、流すにつれてじわじわ上昇し、三宅坂トンネル付近でついに表示が「15.0km/L」を超えた! すげえっ! 5リッターV8自然吸気で15km/リッターオーバー! ありえない! かつて4.5リッターV8自然吸気の「フェラーリ458イタリア」で高速道路を淡々と走り、6.4km/リッターしか出せなかった私としては、驚天動地の数字である。

その後燃費計の数値は、微妙な上り坂によって若干下落し、辰巳PA到着時には「14.5km/L」に落ちていたが、それでも十分すごすぎる! このパワーで、この快感で、頑張ればこの燃費が出るなんて、あまりにも期待値を上回りまくり! なんだかんだ言って私は重度の燃費フェチ。燃費がいいクルマが大好きなのである。

自宅に戻り、IS500を自家用車の“ちょいワル特急”こと「プジョー508 GT BlueHDi」の隣に並べてみると、サイズ感は非常に近い。全長×全幅×全高ともにほとんど同じだ。仮に抽選に当たってIS500を買ったとすると、同じようなセダンを2台並べておくのはムダすぎる。ちょいワル特急とはサヨナラしなければならない。私はその別れに耐えられるのか。軽油で平均18km/リッター走ってくれるコイツと別れて、ハイオクで平均ひとケタ/リッターのIS500で幸福になれるのか。燃費フェチとして! そんな思いも湧いた。

新型「プリウス」の試乗にさかのぼること数週間、首都高で「レクサスIS500」のステアリングを握った。IS500のWLTCモード燃費は9.0km/リッター、WLTC市街地モードだと5.5km/リッターと極悪だが、果たして首都高燃費アタックの結果やいかに。
新型「プリウス」の試乗にさかのぼること数週間、首都高で「レクサスIS500」のステアリングを握った。IS500のWLTCモード燃費は9.0km/リッター、WLTC市街地モードだと5.5km/リッターと極悪だが、果たして首都高燃費アタックの結果やいかに。拡大
首都高で「レクサスIS500」の燃費アタックを行った。ドライブモードはもちろん「ECO」。気合はガンガンに入っているが、ひたすらクルマの流れに乗って淡々と走ることを心がけた。
首都高で「レクサスIS500」の燃費アタックを行った。ドライブモードはもちろん「ECO」。気合はガンガンに入っているが、ひたすらクルマの流れに乗って淡々と走ることを心がけた。拡大
5リッターV8自然吸気エンジンで14.5km/リッターの燃費値は、十分スゴイ! かつて4.5リッターV8自然吸気の「フェラーリ458イタリア」で高速道路を淡々と走り、6.4km/リッターしか出せなかったことを考えれば驚くしかない。
5リッターV8自然吸気エンジンで14.5km/リッターの燃費値は、十分スゴイ! かつて4.5リッターV8自然吸気の「フェラーリ458イタリア」で高速道路を淡々と走り、6.4km/リッターしか出せなかったことを考えれば驚くしかない。拡大
「レクサスIS500」(写真左)とわが愛車“ちょいワル特急”こと「プジョー508 GT BlueHDi」のツーショット。両車のサイズ感はとても近い。
「レクサスIS500」(写真左)とわが愛車“ちょいワル特急”こと「プジョー508 GT BlueHDi」のツーショット。両車のサイズ感はとても近い。拡大

燃費フェチとしての結論は?

今回は、新型プリウスをちょいワル特急の隣に並べてみた。

全長と全幅はプリウスのほうがやや小さいが、全高はほとんど同じ。カッコ優先の4枚ドア車という点も同じだ。フロントピラーが斜め前の視界を邪魔する点も似ている。

で、プリウスと508、どっちがカッコいいかといえば、私としては、「508のほうが断然カッコいい」と一瞬で結論が出た。

確かにプリウスはスーパーカーみたいなフォルムで、フロントウィンドウなんざ私の「フェラーリ328」より寝ているが、カッコよさはそれだけじゃ決まらない。プリウスはスーパーカーフォルムとはいえ、全高はスーパーカーより30cmくらい高い。そのぶん胴が太く、ボディーの絞りも弱い。つまり、オバケのQ太郎体形なのである。スカしたオバQのプリウスよりも、スカしたフレンチファストバックの508のほうがイケている。

燃料代も、レギュラーガソリンで21km/リッターvs軽油で18km/リッターなら、軽油で18km/リッターのほうが安い。

結局オレって、プジョー508が大好きなんじゃないか!

いや、IS500が抽選で当たったら買いますよ。涙をのんでちょいワル特急とお別れします。でもプリウスは買いません。プリウスより断然ヤリス ハイブリッドだ! 燃費フェチとして!

(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

新型「プリウス」(写真左)を“ちょいワル特急”こと「プジョー508 GT BlueHDi」の隣に並べてみた。全長と全幅はプリウスのほうがやや小さいが、全高はほとんど同じだった。
新型「プリウス」(写真左)を“ちょいワル特急”こと「プジョー508 GT BlueHDi」の隣に並べてみた。全長と全幅はプリウスのほうがやや小さいが、全高はほとんど同じだった。拡大
“黒まむしスッポン丸”こと、1989年モデルの愛車「フェラーリ328GTS」(写真手前)と新型「プリウス」(写真奥)を並べてみた。確かにプリウスはスーパーカーみたいなフォルムで、フロントウィンドウは328GTSよりも寝ている。
“黒まむしスッポン丸”こと、1989年モデルの愛車「フェラーリ328GTS」(写真手前)と新型「プリウス」(写真奥)を並べてみた。確かにプリウスはスーパーカーみたいなフォルムで、フロントウィンドウは328GTSよりも寝ている。拡大
新型「プリウス」はフロントピラーが斜め前の視界を邪魔する点でも、“ちょいワル特急”こと「508 GT BlueHDi」に似ている。
新型「プリウス」はフロントピラーが斜め前の視界を邪魔する点でも、“ちょいワル特急”こと「508 GT BlueHDi」に似ている。拡大
結局「オレって『プジョー508』が大好きなんじゃないか!」という結論に達しました。でも、「レクサスIS500」が抽選で当たったら買い替えます!
結局「オレって『プジョー508』が大好きなんじゃないか!」という結論に達しました。でも、「レクサスIS500」が抽選で当たったら買い替えます!拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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