第266回:カーマニアとデリカミニ
2023.09.04 カーマニア人間国宝への道これは軽ハイトワゴンのタイガーI戦車だ
クルマ好きの間で、「三菱デリカミニ」が大好評だ。私も一目で好きになった。クルマ好き以外の一般ユーザーにも好評だろうとは思うが、いまのところ販売台数はそれほど爆発していないし、工場出荷時期めども4~5カ月とそんなに長くない。デリカミニ人気の高まりは、クルマ好き層が突出していると推測される。
なぜクルマ好きはデリカミニに引かれるのか。理由はスペックにはないことは確かだ。デリカミニはライバルと比べ、パワーはほぼ同じで車両重量が一番重い。「ダイハツ・タント ファンクロス」の4WDターボが990kgなのに対して、デリカミニの4WDターボ「Tプレミアム」は1060kgもある。
おそらくデリカミニ人気は、見た目の第一印象が99%ではないか。多くのクルマ好きは、デリカミニに一目ぼれしたのである。なぜならデリカミニは、とっても古典的にカッコいいから!
四角いボディーに、いかつい顔。グリルはジープ的な縦スロットで、半円形のヘッドライトは「目」そのものだ。タフな軍用車のイメージだが、なぜかかわいいのである。
私を含め、カーマニアの多くはミリタリーファンも兼ねているが、ミリタリーファンは、大抵タイガーI戦車が大好きだ。いかつかわいいデリカミニは、軽ハイトワゴンのタイガーI。一目ぼれするのは当然だろう。
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白黒の2トーンも似合う
というわけで、軽タイガー戦車・デリカミニに乗って、ひとり首都高に出撃した。
当日はレインボーブリッジ開通30周年記念週間で、黄色のライトアップ日だった。初日はエメラルドグリーン、その後紫、青、緑ときて5日目である。デリカミニに黄色の設定はないが、黄色いレインボーブリッジを見るのは初めて。その後はオレンジ、江戸紫ときてレインボーカラーでシメとなった。
初日と2日目は、ちょいワル特急こと愛車の「プジョー508」で出撃したが、エメラルドグリーンは大変素晴らしく、逆に紫は微妙だった。デリカミニも、おそらく紫色は似合うまい。
これまでレインボーブリッジの夜景は、「レインボーブリッジから見る東京の夜景がステキ」という方向だったが、エメラルドグリーンのレインボーブリッジは、「レインボーブリッジの夜景がステキ」に変わっていた。クルマのボディーカラーと同じで、ライトアップも色は重要。東京タワーやスカイツリーも、色によって印象が大きく変わる。
ちなみにお借りしたデリカミニの外板色は、白黒の2トーン。特に軍用車っぽくはないけれど、意外と似合っている。グレードは最上級のTプレミアム(4WDターボモデル)である。
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死ぬまでこってりガッツリ系
デリカミニの走りは、全方位的に満足できるもので、黄色くライトアップされたレインボーブリッジを、軽やかに駆け抜けた。
私は2022年初め、「ダイハツ・タントスローパー」(福祉車両)を購入したが、当時はダイハツの新型シャシーDNGAを採用したタントが、軽ハイトワゴンのなかでベストな操縦性を持っていた(断言)。王者「ホンダN-BOX」と箱根のワインディングロードで比較したが、舵の効きがぜんぜん違った。さすがTNGAの流れをくむDNGAである。
しかしデリカミニのフィーリングは、タントをも上回っていた。ボディーは大変しっかりしており、足まわりはしなやかでスタビリティーが高い。舵の効きに関しても、タントと遜色ない。
もともと日産・三菱連合の軽プラットフォームは、かなり性能が高かったが、デリカミニは、タイヤ径の拡大(4WDモデル)に対応すべく三菱が改良を加えたことで、カーマニア的に弱点のない仕上がりになっている。
先般新型が公開された王者N-BOXも、シンプルなデザインがカーマニアの心に刺さり、私も「タントから買い替えたいなぁ」とすら思ったが、デリカミニと比較した時、より魅力的なのはどちらだろう。
セカンドカーとしてなら新型N-BOXもいいが、老後、クルマを1台しか持てなくなるとしたら、デリカミニを選ぶだろう。やっぱりカーマニアなので、うまい素うどんだけじゃ満足できない。死ぬまでこってりのガッツリ系なタイガー戦車で自己主張したい! よって、デリカミニにも福祉車両の設定を望む。カーマニアの目に涙。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=櫻井健一)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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