ジャパンモビリティショーを彩るコンセプトカー それぞれの製品化の可能性を探る
2023.11.03 デイリーコラム未発売モデルがズラリ
絶賛開催中のジャパンモビリティショー(JMS)2023だが、前身の東京モーターショーとの最大のちがいは「クルマだけでなく、すべての移動手段が対象」ということだ。しかし、フタを開けてみると、既存の自動車メーカーが、市販されていないコンセプトカーやプロトタイプカーを大量投入。思っていた以上に濃厚な“伝統的モーターショー感”は、旧来型クルマオタクの筆者には素直にうれしい。
実際、自動車メーカーが持ち込んだコンセプトカーやプロトタイプカーにあたる“未発売モデル”も、前回にあたる東京モーターショー2019のときより明らかに多い。一般的にクルマと呼ばれるタイプ=2人乗り以上の四輪乗用車および小型商用車に限定しても、自動車メーカーのブースに置かれる未発売車はざっと数えて40台近くもあり、前回の約30台より大幅に増えている。そこに電動キックスケーターに代表される最近話題の「特定小型原動機付自転車」に相当する二輪~三輪タイプも含めれば、その数はさらに膨れ上がる。
JMS/東京モーターショーを主催する日本自動車工業会(自工会)のトップは、前回の2019年も今回の2023年も、トヨタの豊田章男会長(2019年当時は社長)だ。トヨタ/レクサスに加えて、その完全子会社であるダイハツやトヨタ車体が、前回も今回も、多くのコンセプト/プロトタイプを展示しているのは、章男会長の意向によるところも大きいのだろう。
ただ、今回の特徴は、自工会全体の危機感のあらわれか、トヨタ直系メーカー以外も多くの未発売モデルを持ち込んでいることだ。たとえば、日産のコンセプトカーは前回の2台から5台に増えているし、前回は国内向けの市販確定モデル3台をならべただけだったホンダにいたっては、未発売の四輪車だけで7台(ソニー・ホンダモビリティの「アフィーラ」も加えれば8台!)という激増ぶりである。
スズキの2車種は発売が既定路線
とはいえ、コンセプトとかプロトタイプを名乗るクルマでも、その実像はさまざま。そこで、本稿では現在開催中のJMS2023で見ることができる未発売グルマを“プロトタイプとは名ばかりの、もう完全に仕上がっている発売秒読みグルマ”“近未来を見据えた本気のコンセプトカー”、そして“ただの絵に描いたモチ?”という3種類に勝手に分類してみた。
というわけで、まずは、あえて“発売確率100%!”と言い切ってしまいたい発売秒読みグルマをピックアップしてみる。
なかでも注目は、スズキがいきなり2台同時に展示した「スイフト」と「スペーシア」だ。現時点ではほかのコンセプトカーと同じく参考出品車を名乗るが、ガラスなどには部品番号も入っており、すでに量産試作車段階の完成車というほかない。どちらも年内もしくは年明け早々に、このまんま発売されると見て間違いない。
トヨタの「IMV 0」も現時点ではいかにもコンセプト然とした顔をしているが、クルマ自体は昨2022年12月にタイで初公開された世界戦略ピックアップである。今回はさらに量産車に近づいており、東南アジア向けにはこのまま発売されるのだろう。JMS2023に持ち込まれた理由は、量産型の世界初公開に加えて「日本市場での可能性を見極めるため」でもあるという。今のところ日本発売は本当に未定のようだが、今回は期待も込めて、あえて発売確率“ほぼ”100%と申し上げたい。
また、ホンダの「クルーズ・オリジン」は一般販売こそされないが、2026年初頭に東京都心部でのスタートを目指す自動運転タクシーの、日本向け量産モデルの試作車そのものらしい。その意味では発売確率100%といいたかった。ただ、モビリティショー開幕直後の10月26日、同事業をホンダと合弁展開予定のGMクルーズが北米でテスト中だった自動運転タクシー(オリジンとは別タイプ)が衝突事故を起こして、運行停止になったと報じられた。いきなり出ばなをくじかれたのはなんとも残念だが、はたして……。
発売が有力視されるコンセプトカーは?
続いては、展示されているクルマ自体はまだまだ未完成だが、発売……というか実現確率50%以上(?)と見られる“本気のコンセプトカー”をいくつかご紹介したい。
まず、ホンダの「プレリュード コンセプト」は、内装も確認できない状態だが、三部敏宏ホンダ社長が「現在、鋭意開発を進めています」と明言した。伝えられるところでは2020年代半ば=2年以内の発売を目指しているらしい。
「このご時世に2ドアクーぺ?」と思わなくもないが、考えてみると、現行「シビック」には先代まであったクーペの用意が世界的にない。今回のコンセプトの開発担当者の山上智行氏は現行シビックの開発責任者でもある。さらにスリーサイズやいかにもFF的なプロポーションから見てもベースはシビックだろう。こうした数々の状況証拠(?)から考えると、これは北米向けシビック クーペの事実上の後継機種と見るのが妥当。発売時期を考えても、デザインはほぼ確定だろう。さらに、わざわざJMSで公開したのは、プレリュードの名で国内発売も予定しているということか。
また、レクサスの電気自動車(BEV)セダン「LF-ZC」も現時点では完全なデザインコンセプトっぽいが、「2026年の市場導入を予定」と明言。BMWの「ビジョン ノイエクラッセ」同様に、このサイズ感や基本プロポーションを受け継いだ市販モデルが開発中である可能性がきわめて高い。
スズキのBEV「eVX」は今年1月のインドの「オートエキスポ2023」に続いての展示だ。2025年の発売を目指すとしているから、すでに市販型に近そうだ。さらに今回初めて持ち込まれた「eWX」は軽サイズのBEVだが、今年初頭にスズキが発表した「2030年度に向けた成長戦略」では、いわゆる軽ハイトワゴン型BEVの国内発売も含まれており、このデザインが意外に実体に近いのかもしれない。
これ以外でも「メルセデス・コンセプトEQG」が発売秒読みであることを、当のメルセデスが正式に公表している。トヨタ車体の「グローバルハイエースBEV」はホイールベースやプロポーションは既存のグローバルハイエース(日本名:グランエース)そのもの。コンセプト風の偽装をしつつ、中身は開発中の試作車そのものとしても不思議ではない。
水を差すのは恐縮ですが……
また、今回で印象的なのは、自工会で「みんなでスポーツカーを出そう!」という合意があったのか、華やかなスポーツカーがやけに多いことだ。まあ、三菱の「D:Xコンセプト」は正面からのスポーツカーとはいいがたいが、これが「今後はオフ(ロード)に特化する」と宣言しているに等しい(?)三菱にとってのスポーツカーといわれれば、うなずくしかない。
ただ、正直なところ、先述のプレリュード以外の各社のスポーツコンセプトは、ほぼすべて実現確率がかぎりなくゼロに近い“絵に描いたモチ?”というのが筆者の実感だ。
「マツダ・アイコニックSP」や「トヨタFT-Se」は、サイズやデザイン的にマニア心を盛大にくすぐってくれるぶん、これを商品化・量産化するのは困難をきわめるのは想像にかたくない。また次期「GT-R」? あるいは「スカイラインスーパーシルエット」の再来? との呼び声高い「日産ハイパーフォース」も、これ以外の日産コンセプト群を含めて、実現性は見るからに乏しい。あえて意地悪にいわせていただくと“既存商品の後継っぽいカタチを、ノリだけで描きなぐった?”デザインにしか見えない。
このなかでダイハツの「ビジョン コペン」だけはやけにリアルで、もしかしたら“トヨタとの協業”をもくろんだ提案なのかもしれない。ただ、この種のスモールFRスポーツカーこそが、採算性や衝突安全性などで実現がもっともむずかしいのが現実でもある。
……と、最後はやけに夢のない話になってしまったが、JMS2023はまだまだ絶賛開催中。ぜひとも足を運んで「出してくれたら自分は買う!」と、現地で宣言してみてほしい。さすれば、まさかの市販化も夢じゃない?
(文=佐野弘宗/写真=日本自動車工業会、webCG/編集=藤沢 勝)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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