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2023年は何が売れた? クルマの販売実績から世相を見る

2023.12.25 デイリーコラム 清水 草一
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ホンダが誇る小さな巨人「N-BOX」。2023年10月にデビューした新型も絶好調で、国内販売台数トップの座を明け渡す兆しは見えない。
ホンダが誇る小さな巨人「N-BOX」。2023年10月にデビューした新型も絶好調で、国内販売台数トップの座を明け渡す兆しは見えない。拡大
軽規格のEV「日産サクラ」は3万台超えの大健闘。そういえば、2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞した優等生だったっけ。
軽規格のEV「日産サクラ」は3万台超えの大健闘。そういえば、2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞した優等生だったっけ。拡大
「三菱eKクロスEV」は姉妹車である「日産サクラ」に差をつけられている。しかし、家電量販店のヤマダデンキで買えるようになったのは、2023年のトピックのひとつだった。
「三菱eKクロスEV」は姉妹車である「日産サクラ」に差をつけられている。しかし、家電量販店のヤマダデンキで買えるようになったのは、2023年のトピックのひとつだった。拡大

小さな2車種が大健闘

2023年も押し詰まりましたね。かつての大みそかは家族そろって紅白歌合戦を見たものですが、近年はあまり見る気が起きません。そこでカーマニアにオススメしたいのは、紅白を横目で見ながら、乗用車の販売台数で脳内合戦を行うことです。年内に発表されるのは、11月までの数字ですが、販売ランキングを眺めているだけで、3時間くらいは楽しめます。

今年も販売台数トップに君臨したのは、「ホンダN-BOX」でした。10月にフルモデルチェンジを受けたので、新型が占める台数は本年合計の一部にすぎませんが、21万1704台(2023年1月~11月)を売ってトップ。10月以降も好調で、月に2万台以上が売れています。個人的には、新型は先代よりデザインがスッキリして、シンプルかつ合理的で走りもホンモノの、すばらしいクルマになったと思っています。軽ゆえに国内専用ですが、世界に胸を張れる国民車ではないでしょうか!

軽自動車の統計では、軽EVの「日産サクラ」が、3万4698台売れて15位に食い込んでいるのが注目されます。この台数、ベースになった「デイズ」(ガソリン車)とほとんど変わらないんですね。サクラは、国内のEV販売台数の約4割を占めていますが、全体でもそこそこ上位にきているわけです。

一方、姉妹車の「三菱eKクロスEV」は6671台。サクラとの差がじわじわ広がっています。原因は主に、エクステリアとインテリアの質感の差だとみています。

軽自動車を除くいわゆる「登録車」で最も売れたのは「トヨタ・ヤリス」。とはいえ、その数値には「ヤリス」(写真)だけでなく、その他「ヤリス〇〇〇」「〇〇〇ヤリス」も含まれている。
軽自動車を除くいわゆる「登録車」で最も売れたのは「トヨタ・ヤリス」。とはいえ、その数値には「ヤリス」(写真)だけでなく、その他「ヤリス〇〇〇」「〇〇〇ヤリス」も含まれている。拡大
「ノア」(写真左)に「ヴォクシー」(同右)、そして「シエンタ」など、トヨタのミニバンは絶好調。その強さを存分に見せつけた。
「ノア」(写真左)に「ヴォクシー」(同右)、そして「シエンタ」など、トヨタのミニバンは絶好調。その強さを存分に見せつけた。拡大
タイプの異なる4車種展開で大変な話題となった新世代「トヨタ・クラウン」だが、実際の販売台数を見るに、その先鋒(せんぽう)たる「クラウン クロスオーバー」だけではまだ起死回生とはいえそうにない。
タイプの異なる4車種展開で大変な話題となった新世代「トヨタ・クラウン」だが、実際の販売台数を見るに、その先鋒(せんぽう)たる「クラウン クロスオーバー」だけではまだ起死回生とはいえそうにない。拡大
2024年には4タイプが市場にそろう新世代「クラウン」。多様な選択肢でどのようなセールスを展開するか、ここからが本番である。
2024年には4タイプが市場にそろう新世代「クラウン」。多様な選択肢でどのようなセールスを展開するか、ここからが本番である。拡大

軽以外はトヨタ、トヨタ!

登録車では、「トヨタ・ヤリス」が18万0155台で首位でした。軽を含む全体でも2位にあたりますが、ご承知のように“ヤリスの販売台数”は、「ヤリス」と「GRヤリス」「ヤリス クロス」の合計数。このうち一番売れたのはヤリス クロスでした。

2位の「トヨタ・カローラ」も、「カローラ」「カローラ スポーツ」「カローラ ツーリング」「カローラ アクシオ」「カローラ フィールダー」の合計なので、一種の統計ドーピングです。

となると本物の1位は、11万1748台の「トヨタ・シエンタ」ということになりますが、真実の首位は、「トヨタ・ノア/ヴォクシー」(姉妹車合計で17万5949台)ですかね? 乗用車の通称名にはいろいろカラクリがあるので、実態を突き止めるべく足し算や引き算をやっていると、あっという間に紅白も中盤を迎えていることでしょう。

ここからはカーマニア的な考察に移りたいと思います。最近なにかと話題のセダンですが、今年一番売れたセダンは何か!?

言うまでもなく「トヨタ・クラウン」(3万9108台)です。先代末期は年間2万台前後だったので、約2倍に増えました。といっても先代のピークにあたる2018年には約5万台、先々代ピークの2013年は8万台強を売ったので、それよりは減っています。「クラウン クロスオーバー」だけでは、クラウンの退潮は食い止め切れていないってことですね。先日「クラウン セダン」と「クラウン スポーツ」が発表されたので、本番は2024年から。楽しみですね。

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いろんな真実が見えてくる

そしてこの先は、自販連の統計では数字が出てこない、マニアの世界に入ります。マニアの世界ゆえ、11月の数字はまだ反映できていませんが、お許しください。

クラウン以外のセダンの販売台数(2023年1月~10月)を見ると、カローラ(セダン)は辛うじて1万台を超えましたが、3位「トヨタ・カムリ」(年内で販売終了)、4位「レクサスIS」ともに1万台未満。トヨタ以外の国産セダンでは、「マツダ3セダン」が2954台でトップで、「日産スカイライン」が1773台でそれに続き、「マツダ6セダン」は1219台、すでに販売が終了している「ホンダ・アコード」が257台。セダンの退潮には全然歯止めがかかっていません! ガックリ。

入手が極めて困難だった国産スポーツカーたちはどうか。今年1月~10月の販売台数を見ると、「日産GT-R」は645台、「フェアレディZ」は841台でした。GT-Rは特別なスポーツカーなので理解できますが、Zの少なさはいったいどういうことか。約6000台の受注が入っているといわれますが、国内への割り当てが年1000台程度だとすると、それをさばくだけで6年はかかります。「円安でアメリカで売ったほうがもうかるから、そっちに流しているんだろう」という陰謀論がささやかれていますが、あちらでの2023年1月~9月の販売台数は1309台(米国日産発表)。市場規模を考えれば、「アメリカ優先」はフェイク情報ということになります。

つまり真実は、「日産がZの販売見通しを完全に見誤った」あるいは「最初から売る気がなく、今後もない」ということになるでしょう。ちなみにGT-Rの米国販売(2023年1月~9月)は312台で、日本の半分程度。最新のGT-Rの人気が爆発しているのは、日本国内だけのようです。

2023年の国内自動車販売を見ると、結局のところ、人気モデルや人気のカテゴリーにあまり大きな変化はなかったわけですが、それでも細かく見ると、大変興味深い真実が見えてきます。カーマニアなら深堀りして楽しんでいるうちに、『ゆく年くる年』が始まっていることでしょう。

(文=清水草一/写真=本田技研工業、日産自動車、三菱自動車、トヨタ自動車、花村英典、webCG/編集=関 顕也)

2023年の国内販売台数からは、しばしば耳にする「セダンばなれ」の傾向も見て取れる。写真は2023年12月をもって国内での販売が終了する「トヨタ・カムリ」。
2023年の国内販売台数からは、しばしば耳にする「セダンばなれ」の傾向も見て取れる。写真は2023年12月をもって国内での販売が終了する「トヨタ・カムリ」。拡大
「ホンダ・アコード」も2023年の販売実績は見るも無残。2024年春に発売される新型(写真)で巻き返しなるか!?
「ホンダ・アコード」も2023年の販売実績は見るも無残。2024年春に発売される新型(写真)で巻き返しなるか!?拡大
本文にもあるとおり、話題の新型「フェアレディZ」の販売は滞っている。2023年12月中旬の時点で、オフィシャルサイトには、受注過多でデリバリーに時間を要するため、注文を一時停止する旨が記載されている。
本文にもあるとおり、話題の新型「フェアレディZ」の販売は滞っている。2023年12月中旬の時点で、オフィシャルサイトには、受注過多でデリバリーに時間を要するため、注文を一時停止する旨が記載されている。拡大
YouTubeなどでも「アメリカで大人気!」に見える「日産GT-R」だが、実際の販売台数を見ると、国内の半分程度とさほどでもない。数字は真実を物語る。
YouTubeなどでも「アメリカで大人気!」に見える「日産GT-R」だが、実際の販売台数を見ると、国内の半分程度とさほどでもない。数字は真実を物語る。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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