「ミラノ」「ローマ」に「トリノ」もある! イタリアの都市は車名になるのに「トーキョー」がないのはどうしてか?
2024.01.08 デイリーコラムアルファとフェラーリの愛ゆえに……
アルファ・ロメオが2024年4月に新型モデルを発表するという。その名も「ミラノ」。電動モデルながら「ミト」の後継というから、“量販モデル”不足のブランドにとっては待望の一台になりそう(特にディーラーには)。ミトといえばミラノ(Mi lano)―トリノ(To rino)の意味だったから、車名からして後継モデルにふさわしい。
ところでミラノといえばイタリア第2の都市名だ。英語ではミラン(ちなみにトリノはトューリン)。アルファ・ロメオ発祥の地域でもある。アルファ・ロメオ・ミラノなんて、語感が反則的にかっこいい。マツダ・ヒロシマじゃこうはいかない(と、少なくとも日本人の私は思ってしまう)。ヒロシマだって世界中の人々にとっては日本で東京や京都と並んで有名な都市の名前だというのに。
せめて国産ブランドくらい日本の街を名前に使ってもよさそうなもんだが、トーキョーとかキョート、オーサカ、サッポロ、あ、サッポロはその昔、「プリマス・サッポロ」ってのがあった。「ギャランΣ(シグマ)」のプリマス版でサッポロオリンピックにちなんで名づけたらしいけれど……。日本のメーカーはもちろん、海外ブランドでも日本の街の車名で思い出すのはサッポロくらいだ。
とはいえ、選ばれないのは何も日本の都市名に限った話じゃない。アメリカンブランドのニューヨークやロサンゼルス、サンフランシスコは聞いたことがないし、デトロイトもない(「クライスラー・ニューヨーカー」や大正時代の電気自動車「デトロイト号」はあったけれど)。フレンチのパリやマルセイユも知らない。英国車にロンドン、ドイツ車にベルリン、スウェーデン車にストックホルムもなかった。いや、ひょっとするとその昔に有名な都市名が使われたことがあったかもしれないけれど、少なくとも近年の有名ブランドにはないはず。レースで有名な名前(ルマンとかブルックランズとか)を別にすれば。
それに引き換えイタリアンブランド、アルファのみならず跳ね馬あたりの自国愛・地域愛はかなりのものだ。かのブランドには「ローマ」「モデナ」「モンツァ」「ポルトフィーノ」「マラネッロ」「フィオラーノ」(サブネーム)がある。自国だけじゃない。大事なビッグマーケットを意識した「アメリカ」や「カリフォルニア」などもあった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
キーは「ラテン」と「観光地」
ちなみにイタリアの友人にフェラーリがそういう名称を好んでつけることについてどう思うかと聞いてみたところ、とても誇らしいことでしかもイメージとよく合っていると言っていた。例えばローマは美しい街並みとクルマとの共通性があるし、ポルトフィーノならアクティブで若々しいイメージが重なっていると。とはいえそれはフェラーリに限った話で、アルファ・ロメオに関してはミラノ人の彼にとってもさほど印象的ではないらしい。似合うか似合わないか、意見が分かれるところだ、と。なるほどフェラーリくらい飛び抜けて名の立ったブランドにもなると、シンプルな名づけもかえってカッコいい。
逆にイタリアやスペイン、フランスの地名を使う他国のブランドも少なくない。有名どころでいえば、「ダッジ・モナコ」「キャデラック・セビル」「リンカーン・ヴェルサイユ」「ビュイック・リヴィエラ」「フォード・トリノ」「日産ムラーノ」などなど。
こうしてあらためて考えてみれば、自国か他国かにかかわらず、車名として選ばれる名前としてはラテン系の語感が好まれてきたことがわかる。なかでもイタリア、フランス、スペインといえば観光スポットとしても憧れの国だ。グローバルブランドの車名として、特にヨーロッパ以外の国が産するモデル用にそういった名称が好んで選ばれる感覚はなんとなくわかる。
日本のメーカーにしても自国愛がないわけじゃないだろう。けれども世界市場に目を向けた時、あまりにも日本的なイメージでは通用しないと考えたのではなかったか。「サムライ」(スズキ)や「ショーグン」(三菱)といった昔からよく知られていた日本語ならまだしも、地名となると言語的に響かない、発音しづらい、なんの名前かさっぱりわからないといった理由で選ばれなかったのだと思う。ましてやトーキョーやキョートには自動車メーカーがない(工場はあるから、三菱キョートくらいはあってもおかしくないけれど)。
そもそもブランド名は創始者に関わる名字であることが多い。そこで日本メーカーであることをアピールできれば、車名そのものは世界の人々が親しみやすい語感を、と考えるのが普通だったのだと思う。さらには日本人独特の言霊信仰などもあって、日本語で具体的な場所を特定できる名前は使いづらかった可能性もある。
もっともこれだけ世界的な日本ブームになってくると、今後は海外ブランド、特にアジア系の新興ブランドが日本の都市名を使ってくる可能性もあるかもしれない。彼らが日本に憧れを持ち続けてくれれば、の話だけれども。
(文=西川 淳/写真=アルファ・ロメオ、フェラーリ、ゼネラルモーターズ、日産自動車、スズキ、webCG/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
-
アルファ・ロメオやDS、マセラティの未来やいかに? ステランティスが発表した新戦略を読み解くNEW 2026.6.26 再起を図るステランティスが、新CEOのもとで新しい次世代戦略を発表。地域主導とブランド構成の再構築を軸とした改革によって、私たちが親しんだアルファ・ロメオやDS、マセラティなどはどうなるのか? 欧州通のジャーナリストが考察する。
-
新型「マツダCX-5」が登場 絶版となった先代ディーゼル車の中古価格はどうなる? 2026.6.25 新型「マツダCX-5」の販売が開始され、これまでCX-5の人気をけん引してきたディーゼル車が絶版となった。となれば、先代ディーゼル車の中古車価格は下落か、それとも高騰か。下町の中古車評論家が今後の相場を予想する。
-
国内には2台のみ!? ピニンファリーナの幻の傑作クーペにイベントで遭遇 2026.6.24 「今回はすごいレア車が来ますよ」と聞いて出向いた旧車イベント。そこに展示されていたのはまさにレア車中のレア車、日本には存在しないと思っていたほどの一台だった。フィアットがフルラインメーカーだった時代のある大型クーペにまつわるストーリーをお届けする。
-
「マツダ2」の生産終了と新型「CX-3」のタイ生産を公表 マツダの次世代コンパクトカー戦略を探る 2026.6.22 「マツダ2」を2026年8月に生産終了し、新型「CX-3」をタイで生産すると公表しているマツダ。コンセプトカー「ビジョンXコンパクト」をベースとするデザインが採用されるとうわさされる、マツダの次世代コンパクトカー戦略を探る。
-
これがスバルの生存戦略! 最新BEV「トレイルシーカー」の工場にみる日本メーカーの生きる道 2026.6.19 話題の最新BEV「スバル・トレイルシーカー」「トヨタbZ4Xツーリング」を生産する、スバルの矢島工場を見学。高度な混流生産を可能にした彼らの独自技術と、その狙いとは? 市場の変化をチャンスに変える、生き残りをかけたスバルの技術革新をリポートする。
-
NEW
アルファ・ロメオやDS、マセラティの未来やいかに? ステランティスが発表した新戦略を読み解く
2026.6.26デイリーコラム再起を図るステランティスが、新CEOのもとで新しい次世代戦略を発表。地域主導とブランド構成の再構築を軸とした改革によって、私たちが親しんだアルファ・ロメオやDS、マセラティなどはどうなるのか? 欧州通のジャーナリストが考察する。 -
NEW
モルビデリC252V(6MT)
2026.6.26JAIA輸入二輪車試乗会2026イタリアのモルビデリが中国の資本のもとで復活! 試乗した250ccクラスのクルーザー「C252V」は、かつての中国製品のイメージとは一線を画す、完成度の高いマシンに仕上がっていた。再生とともにグローバルブランドへと脱皮した、名門の実力に迫る。 -
第967回:初代「トヨタ・クラウン」や“ヨタハチ”が「ミッレミリア」を走った!
2026.6.25マッキナ あらモーダ!イタリアの歴史あるヒストリックカーラリー「ミッレミリア」に、日本のクルマが初めて参加! 石畳の道を行く初代「トヨペット・クラウン」に「トヨタ・スポーツ800」「2000GT」「スープラ」の姿を、現地在住の大矢アキオがリポートする。 -
新型「マツダCX-5」が登場 絶版となった先代ディーゼル車の中古価格はどうなる?
2026.6.25デイリーコラム新型「マツダCX-5」の販売が開始され、これまでCX-5の人気をけん引してきたディーゼル車が絶版となった。となれば、先代ディーゼル車の中古車価格は下落か、それとも高騰か。下町の中古車評論家が今後の相場を予想する。 -
アストンマーティンDBX S(4WD/9AT)【試乗記】
2026.6.24試乗記「SUVの形をしたGT」こと「アストンマーティンDBX」が、さらに高性能な「DBX S」に進化。より機敏なフットワークと、よりパワフルなエンジンを得たハイパフォーマンスSUVは、どのような体験を提供してくれるのか? 飛ぶがごとく走る英国の巨獣の実力に触れた。 -
第117回:激論! BEVスーパースポーツ(後編) ―“変顔デザイン”の「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」は20年後に評価される!?―
2026.6.24カーデザイン曼荼羅「フェラーリ・ルーチェ」に「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」と、立て続けにデビューしては物議を醸す電気自動車のスーパースポーツ。その造形美が理解されないのは、私たちが既存の価値観にとらわれているからなのか? カーデザインの識者と考えた。





































