クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

第14回:レクサスLBX(後編)

2024.02.21 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

最近のトヨタは“引き算”もうまい

出すところは出して、引っ込めるところは引っ込める! 小さいながらも超絶グラマー(死語?)なデザインの「レクサスLBX」に対して、意外なところから刺客が登場。LBXと広島の“あのクルマ”を比較し、いつもの3人が論争を繰り広げる!

前編に戻る)

webCGほった(以下、ほった):前回の渕野さんのハナシ、理解できました?

清水草一(以下、清水):そうね……。言われてみればそうかなーくらい(笑)。

渕野健太郎(以下、渕野):あのショルダー部はですね、プランビュー、要するに上面から見てもかなり抑揚がついてるんですよ。リアドアの前あたりまでぎゅーっと絞ってて。

清水:確かに、すんごい絞ってますね。

渕野:そうなんですよ。いっぽうで、上のほうではこれだけ特殊なことをしている代わりに、ボディーの下の部分はわりかし普通というか、そんなに動きがないんです。こういうところもLBXのミソかなと思います。少し前のトヨタ/レクサスだったら、おそらく下まわりも大きく動かして、結果的に「おなかいっぱい!」な印象になりがちでしたけど、最近は引き算にも長(た)けていると思います。

ほった:いいところで引いてるんですね。

渕野:顔まわりは「スピンドルグリル」からの発展形ですけど、こちらも時代にあったスマートな押し出し感というか、カタマリ重視というか、グリルが全然主張していない。そういうところも、個人的にはすごくいいと思うんですけど、どうですか?

清水:いやー、顔は複雑すぎると思います。顔の上半分はヘッドライト含めマクラーレンでしょ(笑)。で、スピンドルグリルは、ただの台形になっちゃったとしか見えないんですよ。えーっと、なんて言いましたっけ? このグリル。

ほった:「ユニファイドスピンドル」ですね。unifiedって、要するに「まとめられた」って意味らしいですけど。

清水:むしろ「ぼかされた」じゃないの?

ほった:フチをぼかして、顔全体をまとめたんじゃないですか。

デビューとともに話題沸騰中の「レクサスLBX」。抑揚のあるそのデザインは、素晴らしいものなのか? それともちょっとやりすぎか?
デビューとともに話題沸騰中の「レクサスLBX」。抑揚のあるそのデザインは、素晴らしいものなのか? それともちょっとやりすぎか?拡大
「LBX」を俯瞰(ふかん)で見たところ。ショルダー部は複数のキャラクターラインが斜めに走っているだけでなく、リアドアパネルまでボディーを絞り、そこからボンと膨らませているのだ。
「LBX」を俯瞰(ふかん)で見たところ。ショルダー部は複数のキャラクターラインが斜めに走っているだけでなく、リアドアパネルまでボディーを絞り、そこからボンと膨らませているのだ。拡大
抑揚のあるショルダー部の造形に対し、車体下部のデザインはいたって普通。「トヨタ・クラウン スポーツ」などと比べると、かなり基本に忠実だ。
抑揚のあるショルダー部の造形に対し、車体下部のデザインはいたって普通。「トヨタ・クラウン スポーツ」などと比べると、かなり基本に忠実だ。拡大
新しいフロントマスクのコンセプト「ユニファイドスピンドル」が用いられた「LBX」の顔まわり。フロントグリルの格子とバンパー側の模様に連続性を持たせた“シームレスグリル”と、低く構えたフードの組み合わせで、「低重心で見ごたえある存在感」を表現しているという。
新しいフロントマスクのコンセプト「ユニファイドスピンドル」が用いられた「LBX」の顔まわり。フロントグリルの格子とバンパー側の模様に連続性を持たせた“シームレスグリル”と、低く構えたフードの組み合わせで、「低重心で見ごたえある存在感」を表現しているという。拡大
2023年9月の「LEXUS SHOWCASE」より、「LBX」(写真向かって右)と「LM」(同左)と、レクサスインターナショナルの渡辺 剛プレジデント。「ユニファイドスピンドル」は、今後さまざまな車種に取り入れられていくようだ。(写真:荒川正幸)
2023年9月の「LEXUS SHOWCASE」より、「LBX」(写真向かって右)と「LM」(同左)と、レクサスインターナショナルの渡辺 剛プレジデント。「ユニファイドスピンドル」は、今後さまざまな車種に取り入れられていくようだ。(写真:荒川正幸)拡大
レクサス の中古車webCG中古車検索

広島の“あのクルマ”に似てない?

ほった:このクルマに関しては横浜の試乗会にお邪魔しているので(参照)、Kカメラマン撮り下ろしの写真があります。こちらが外光の下で収めた、LBXのお姿です。

渕野:やっぱりショルダーの動きをより感じますね、室内より。

ほった:ですね。光の具合でキャラクターの向きの変化がよくわかる。

渕野:リフレクション(反射や映り込み)がね、結構ダイナミックに見えると思うんですよ。

清水:リアフェンダーがぐわって張り出してる感じは、最近のトヨタの得意技ですよね。

渕野:クラウン スポーツ」あたりよりは自然じゃないですか?

ほった:これはカメラマンさんの指摘だったんですけども、「実際にも膨らんでるんだけど、さらに膨らんで見えるよう、いろいろと仕掛けを入れてるっぽい」とのことでした。

渕野:そうですね。とはいえ、そもそも「ヤリス クロス」ベースで、そこから全幅で60mm、片側で30mmももらってますから。

清水:いや、そんなことよりもですよ! 私はですね、LBXを見て「マツダCX-3」を思い起こしたんですよ。CX-3のデザインが大好きだったんです。今でもまだ売ってますけど(笑)。とてもかっこいいと思ってるんです。

渕野:いや、私もかっこいいと思ってますよ。

清水:ですか(笑)? スポーティーでコンパクトで、そのぶん室内は狭いけど、コンセプト的にはだいぶLBXに近いんじゃないかなと思うんですけど。

渕野:自分もCX-3はすごくいいと思いますよ。あの小さいサイズで、シルエットに躍動感があるし、スタンスもすごくいいです。

清水:サイズの割にロングノーズに見えますよね。古典的なカッコよさがあるんじゃないかな。

渕野:マツダはデミオもロングノーズに見せようとしてましたし、CX-3も似たようなディメンションですから、実際、ノーズが長いんじゃないですか。FR信仰じゃないけど(笑)、マツダにはノーズが長いほうがカッコいいっていう考えがあるんだと思います。

清水:ね? LBXよりCX-3のデザインのほうがよくないですか?

横浜の市街地を行く「LBX」の図。 
ほった「光の具合もあって、ショルダー部のベクトルの変化がわかりやすいですね」 
(写真:向後一宏)
横浜の市街地を行く「LBX」の図。 
	ほった「光の具合もあって、ショルダー部のベクトルの変化がわかりやすいですね」 
	(写真:向後一宏)拡大
光の加減や背景の映り込みもあって、屋外で見るとボディーパネルのうねりやキャラクターの向きの変化が、よりわかりやすい。(写真:向後一宏)
光の加減や背景の映り込みもあって、屋外で見るとボディーパネルのうねりやキャラクターの向きの変化が、よりわかりやすい。(写真:向後一宏)拡大
「レクサスLBX」のデザインのキモである、リアフェンダーの張り出し。抑揚のあるデザインを実現するため、LBXは同じ「GA-B」プラットフォームのSUV「トヨタ・ヤリス クロス」より、60mmも全幅が大きい。(写真:向後一宏)
「レクサスLBX」のデザインのキモである、リアフェンダーの張り出し。抑揚のあるデザインを実現するため、LBXは同じ「GA-B」プラットフォームのSUV「トヨタ・ヤリス クロス」より、60mmも全幅が大きい。(写真:向後一宏)拡大
「レクサスLBX」と同じBセグメントのコンパクトSUV「マツダCX-3」。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4275×1765×1550mm(一部のモデルは全幅=1780mm)と、LBXよりやや全長が長く、全幅が狭い。(写真:荒川正幸)
「レクサスLBX」と同じBセグメントのコンパクトSUV「マツダCX-3」。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4275×1765×1550mm(一部のモデルは全幅=1780mm)と、LBXよりやや全長が長く、全幅が狭い。(写真:荒川正幸)拡大

レクサスLBX vs. マツダCX-3

ほった:僭越ながら、ワタシはこっち(LBX)のほうが断然好きですね。CX-3も憎からず思ってますけど、「C3コルベット」を神とあがめるワタシにとって、張り出しは正義なのです。LBXと比べちゃうと、あれでもまだメリハリが足りない。

清水:全幅でハンディがあるからね。でも、LBXの半額ぐらいで買えるんだよ! 結構内装も頑張ってるし、値段が半分だったら絶対こっちじゃないかな?

渕野:なるほどね(笑)。

ほった:でも、インパクトもお値段に比例して半分って感じでしたよね?

清水:あんまり受けなかったよね。今となってはもうほとんど存在感がない。

渕野:いや、自分もCX-3はすごくいいと思いますけど……。あとはブランド力ですかね、やっぱり。

清水:真横から見ると、ルーフラインなんてLBXとそっくりでしょ。顔も古典的なイケメンで、LBXの不機嫌ヅラよりずっといいなって思うんですけど。

ほった:そういうところより、両車で一番違うのはやっぱリアフェンダーの張り出しでしょう。CX-3にはボリューム感とか肉肉しさが足りない。

渕野:それは全幅の差ですからしょうがないでしょう。むしろこれぐらいの車幅でもCX-3はちゃんとしたスタンスがとれているから、むやみに広げる必要はないですよ、このクラスですし。

清水:応援ありがとうございます(笑)。LBXを見てもすごく素晴らしいとは思わなくて、むしろ「CX-3はよかったなぁ」ってのが頭に浮かんだんですよ。まだ生きてますけど。

渕野:言わんとしてることはわかります。ただクルマは、コンセプトとエクステリアとインテリアの3つががっしり組み合わさって魅力が出るものなので、そういう総合力の点で、やはりLBXは非常に優れていると思います。内装がすごくいいんですよ。レクサスのなかで一番かな? と思いました。最近出たクルマのなかでも一番かもしれない。

「マツダCX-3」のリアクオータービュー。 
清水「これでもまだ抑揚が足りないと申すか!?」 
ほった「コンパクトSUVだからこれで十分ではあるんですけど、『レクサスLBX』の場合は、高級車ですからね」 
(写真:向後一宏)
「マツダCX-3」のリアクオータービュー。 
	清水「これでもまだ抑揚が足りないと申すか!?」 
	ほった「コンパクトSUVだからこれで十分ではあるんですけど、『レクサスLBX』の場合は、高級車ですからね」 
	(写真:向後一宏)拡大
「マツダCX-3」(上)と「レクサスLBX」(下)のサイドビュー。ルーフラインやCピラーの処理、やや立ち気味のAピラーなど、両車のデザインには共通する部分が少なくない。
「マツダCX-3」(上)と「レクサスLBX」(下)のサイドビュー。ルーフラインやCピラーの処理、やや立ち気味のAピラーなど、両車のデザインには共通する部分が少なくない。拡大
プロポーションにおける「レクサスLBX」と「マツダCX-3」の大きな違いは、やはりリアフェンダーの迫力だ。この写真と、本稿1ページ2枚目の写真を比べればわかりやすいが、スポーツカーばりにフェンダーが張り出したLBXに対し、CX-3のそれは実に控えめだ。
プロポーションにおける「レクサスLBX」と「マツダCX-3」の大きな違いは、やはりリアフェンダーの迫力だ。この写真と、本稿1ページ2枚目の写真を比べればわかりやすいが、スポーツカーばりにフェンダーが張り出したLBXに対し、CX-3のそれは実に控えめだ。拡大
清水「わかったかねほった君! コンパクトSUVがこんなプリプリしたお尻である必要はないのだよ!」 
ほった「そんなビンボーくさいこと言っててどうすんですか。これ、レクサスですよ?」
清水「わかったかねほった君! コンパクトSUVがこんなプリプリしたお尻である必要はないのだよ!」 
	ほった「そんなビンボーくさいこと言っててどうすんですか。これ、レクサスですよ?」拡大

余計なことはしていない

渕野:インテリアのデザインって、大きく分けると「解放感を強調するか」「囲まれ感を強調するか」なんですけど、このクルマは囲まれ感のほうです。それを実現するために、ドアトリムからインストゥルメントパネルの流れ、つながりのよさを徹底してるんですよ。ダッシュボードの助手席前の断面は見たことない形状です。革巻きのオーナメントから下が、全部“下向き”になっているじゃないですか。

清水:はー、確かに。

渕野:下向きのダッシュボードがドアトリムとつながってるので、囲まれ感がすごく強調される。こういう断面は普通あまり使いません。本来は、ダッシュボードの真ん中ぐらいを一番張り出させるものなんですが、このクルマでは、すごく高いところにダッシュボードのピークがある。そのぶんグローブボックスはコンパクトですけど、それを差し引いたとしても、とにかく居心地のよさが感じられました。自分はインテリアは専門ではないんですけども、そのあたりはすごく面白い。実際、試乗してどうでしたか? このインテリア。

ほった:基本的にはおっしゃるとおりで、すごく居心地がいいなと思いました。そりゃ重箱の隅をつつけば、細かい素材の質感とか気になるところもありますけど、造形とかデザインの部分はワタシ的には◎です。高級車だけど、厚かましい感じがないところがいいですね。

渕野:そうなんですよ。変にデザインのためのデザインをしていなくて、「あるべきところにある」っていうものだけで構成してるんです。

ほった:そうそう。余計なお世話がない感じ。

渕野:エクステリアとインテリアを総合的に考えると、やっぱりLBXはすごくいい。

清水:CX-3の中古が4台買えるお値段ですけどねぇ……。

ほった:どういうイチャモンですか、それ(笑)。

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=トヨタ自動車、荒川正幸、向後一宏/編集=堀田剛資)

適度な包まれ感のある「LBX」のインテリア。他のレクサス車と比べるとデザインはいたってシンプルで、奇をてらったところはない。
適度な包まれ感のある「LBX」のインテリア。他のレクサス車と比べるとデザインはいたってシンプルで、奇をてらったところはない。拡大
包まれ感を強調するインテリアのキモのひとつが、助手席側のダッシュボード。ご覧のとおり“下を向いている”のだ。
包まれ感を強調するインテリアのキモのひとつが、助手席側のダッシュボード。ご覧のとおり“下を向いている”のだ。拡大
「LBX」(左ハンドル仕様)の助手席の写真だが、ここではダッシュボードの“横顔”のほうにご注目。張り出しがほとんどなく、面が下を向いているのがよくわかる。
「LBX」(左ハンドル仕様)の助手席の写真だが、ここではダッシュボードの“横顔”のほうにご注目。張り出しがほとんどなく、面が下を向いているのがよくわかる。拡大
既述の助手席側ダッシュボードの“向き”に加え、ダッシュボードとドアトリムのオーナメントには連続性がもたされており、またドア側のインナーパネルには十分な“迎え”の量が確保されている。両者が曲面でひとつながりとなったように見せることで、内装の一体感、車内の包まれ感を強調しているのだ。
既述の助手席側ダッシュボードの“向き”に加え、ダッシュボードとドアトリムのオーナメントには連続性がもたされており、またドア側のインナーパネルには十分な“迎え”の量が確保されている。両者が曲面でひとつながりとなったように見せることで、内装の一体感、車内の包まれ感を強調しているのだ。拡大
コンセプト、エクステリア、インテリアを総合的に見ても、高いレベルにある「レクサスLBX」。好き嫌いがハッキリ分かれる意匠ではあるが、「デザインがいいクルマ」と評すべき一台なのは間違いないだろう。
コンセプト、エクステリア、インテリアを総合的に見ても、高いレベルにある「レクサスLBX」。好き嫌いがハッキリ分かれる意匠ではあるが、「デザインがいいクルマ」と評すべき一台なのは間違いないだろう。拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

カーデザイン曼荼羅の新着記事
カーデザイン曼荼羅の記事をもっとみる
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。