第20回:MINIクーパー/カントリーマン(後編)
2024.04.10 カーデザイン曼荼羅MINIの呪縛がとうとう解けた!
“新時代のMINI”といえば、SUVの「カントリーマン」も忘れてはいけない。矛盾に満ちた「MINI史上最大」というフレーズが面白いニューモデルの完成度と、新しいMINIファミリーのちょっとユニークなブランド価値を、この道20年の元カーデザイナーが語る。
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渕野健太郎(以下、渕野):「MINIクーパー」はこんなところにして、次はカントリーマンですね。新型は「MINIクロスオーバー」から改名されて、MINIカントリーマンになりました。
webCGほった(以下、ほった):カントリーマアムみたいな名前になりましたね。
清水草一(以下、清水):MINIカントリーマアムもいいね(笑)。
ほった:おいしそう。
清水:もともとクロスオーバーって名前だったのは日本だけでしょ。カントリーマンのほうがほのぼのした感じでいいよ。
渕野:名前の良しあしはさて置き、これが初代、そして2代目です(写真を見せつつ)。
ほった:これもなぁ、初代が一番よかったんだよなあ。
渕野:自分もそう思います。やっぱりボディーが大きくなると、いろんな邪念が入ってきますよね(笑)。
清水:いやいや。クロスオーバーは初代からぜんぜん邪念入ってますよ! 僕は初代も2代目も邪念だらけに見える!
ほった:商品企画としては、それはもう邪念のカタマリですよ! でも初代が一番コンパクトで、まだしもMINIだったじゃないですか。
清水:いやぁ、初代・2代目はムリやり「これはMINIですぅ」って言い訳してるようなデザインだった!
渕野:でも、今回のカントリーマンは完全に普通のSUV ですよ。
清水:そう! もう完全にMINIじゃなくなったんで、よかったなぁと思うんですよ。呪縛が解かれてるんで(参照)。
渕野:ああ、そういうことですか。
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新鮮で、しかもSUVらしい
清水:先代までは、ムリにMINIっぽくしてたでしょ? 丸目を微妙に変形させたヘッドライト形状がそれを象徴してたけど、今回はついにそれを捨てた。
渕野:そういう考え方もありますよね。寸法的にも解放されて、ずいぶん大きくなりましたけど、おかげで自分みたいな子供2人の4人家族でも十分使えそうなクルマになった。MINIのなかでは、そういうのは初めてじゃないかな。これは商品性が高いと思います。
ただ、やっぱりMINIには“軽さ”が欲しいんですよ、彼らは「ゴーカートフィーリング」って言ってますけど。視覚的にも、初代や2代目ってやっぱりオーバーハングの部分が軽いんですよね。フロントタイヤからヘッドランプまでの距離も短い。でも、新型は完全にSUVなんです。先ほど「呪縛が解かれてる」っておっしゃいましたけど、まさにそうで、カントリーマンにはMINIの呪縛がない。いっそBMWのバッジ付けりゃいいのにって思うほどですよ(笑)。
清水:中身は「BMW X1」だよね?
ほった:そうです。
渕野:X1よりこっちのほうがいいかなとは思いますけど。
清水:確かにデザイン的には。X1って走りはいいけど、デザインがどうにも。その点カントリーマンには新鮮さもある。
渕野:そうですね。例えばサイドビューを見ると、ドアのカットラインに沿って下からぐるっとのぼってくるキャラクターラインがあるじゃないですか。こういうことは、普通のクルマではあんまりやらないんです。でもMINIだからこそ、ちょっとよそとは違うというか、面白さがあるというか、そういうところをねらってやってるんですね。一方で、ボディーの面取りの仕方とかは、やっぱもう普通のSUVの手法なんです。カクカクしたヘッドランプもあって、これまでのMINIにはなかった表情をしている。
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“カタチ”ではなく“体験”でブランドを構築する
ほった:なんだか、雰囲気的にみんな高評価な感じですね、今回は。
渕野:ただ、このCピラーのフタみたいな装飾がね……。
ほった:ああ、そこ。
渕野:ここ、実は室内側にはなにもない。機能のないただの加飾なんですよ。
ほった:デザインのためだけに、せっかくの窓が一部埋まっているんですよね。昔のMINIだったら、絶対なにかしら仕掛けてた。内装に片っ端から遊び心をぶち込んでくるようなブランドだったから。
渕野:でも、そういう点を除くとカントリーマンはかなりいいと思います。
清水:悪くないですよ。
渕野:クルマ単体のデザインとしては、内外装ともにものすごくまとまっていて、質感も高いと感じました。あとは、MINIっていうブランドへの考え方の違いで、見る人によって評価がぜんぜん変わってくるんじゃないかな。
清水:MINIらしさが薄まったことに対して、どう感じるかですね。
渕野:その「MINIらしさ」という点については、ひとつ思うところがあるんですよ。例えばカントリーマンにも、クーパーと同じ例の丸いディスプレイが使われていて、イルミネーションとプロジェクターで空間のイメチェンもできるんです。そういう“体験”の部分を共通化することで、新しいMINIではクルマの形を使い分けても、共通のブランド観を持たせられると考えたんじゃないですかね。だから、デザイン面でカントリーマンは大胆に変えられたのかもしれない。体験価値でブランドの共通性を出すっていうのは、新しい考えですよね。
ほった:新しい考えだし、実際に説得力があったですよね。言葉尻では、ほかのメーカーもそれっぽいことを言ってきたと思うんですよ。でも、発表会で実車に触れて、いろいろイジって、ここまで説得力があったのは初めてでした。
渕野:「UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイン」って、どのメーカーも専門の部署みたいなものを持ってるんですけど、クルマに関しては正直“こじつけ”みたいなところが多かった。でも、MINIはしっくりきたんですよね。「没入感」という言葉を使って表現していましたけど、そのために走行音や電装品の作動音にもこだわっている。UXがちゃんとしてるから、これだけ形の違うクーパーとカントリーマンでも、「乗るとMINI!」なんですよ。MINIっていうブランドだからこそ、できることなのかもしれませんけど。
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呪縛から逃れて、普通になっちゃった?
ほった:さっき「カントリーマンはMINIの呪縛から逃れた」っていう話をしていましたけど、個人的にはクーパーのほうも、結構MINIの呪縛から逃れた感はあると思うんですよね。
昔のMiniって、例えばボンネットはほとんどスラントしていなくて、それをヘッドランプの丸い峰が挟んでて、Aピラーも立ち気味だった。BMW MINIも、今まではどうにかして現代のクルマでその面影を再現しようとしてたんですよね。ボンネットの“間”とか、クーパーの白いストライプを前提にデザインしてた感じがするでしょ? そんななかで、新型のクーパーでは初めて「そういうの全部やめました」っていうデザインになったと思うんですよ。Aピラーもだいぶ寝てるし。
渕野:確かにピラー、結構寝てますね。先代と比べても。
ほった:顔つきもとにかくシンプルだから、今までみたいにストライプを引いても、たぶんそこまで似合わない。MINIはMINIなんだけど、「今までの手法でクルマをつくるのはやめよう」っていうのがすごく感じられて、それは元Mini乗りとしてもすごくいいと思うわけです。だからクーパーはすごくステキ。しかしカントリーマン、お前はダメだぁ。“脱・MINI”はいいけど、その結果が普通のSUVじゃつまらないでしょ!(泣)。
清水:俺はカントリーマン支持派。
ほった:いーや、許しません。……まぁ、質感というかイイモノ感は、相変わらずスゴかった、それだけを理由に買ってもいいってレベルでスゴかったと思いますけど。インテリアも、クーパーともどもまさかホントにメーターをなくすとは。
渕野:丸いディスプレイに全部集約されてるんですよね。すべてを必要最小限にしようというところでしょうか。そういう点も含めて、新しいMINIは完成されてます。だから「ツッコミどころが少ない」っていうのはありますよね。
清水:あんまり語る部分がないんですよね……。
ほった:ホントは興味ないんでしょ!
清水:そんなことないよ! MINIはシンプルなほうがいい!
(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=BMW、webCG/編集=堀田剛資)
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渕野 健太郎
プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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