第19回:MINIクーパー/カントリーマン(前編)
2024.04.03 カーデザイン曼荼羅ボディーの巨大化に待った! をかける
MINI新時代の幕開けを告げる、新しいデザインの「MINIクーパー/カントリーマン」。すっきりシンプルになったクーパーのイメージは有識者の目にどう映るのか? 過去3世代の流れと決別し、新しい挑戦に臨む次世代のMINIを、元カーデザイナーが読み解く。
渕野健太郎(以下、渕野):この間、ホッタさんと一緒に新型MINIの発表会に行ってきました(参照)。
清水草一(以下、清水):中年カーマニア2名で(笑)。
webCGほった(以下、ほった):おっと清水さん、そいつぁハラスメント案件ですぜ。相談窓口に連絡しなきゃ。
渕野:(無視)こちらがクーパーです。今回のモデルチェンジで、“クーパー”はグレード名じゃなくて、3ドアモデルを指すモデル名になったんです。で、こっちがカントリーマン。室内で、しかも結構近い距離で見ただけなので、あんまりプロポーションの話をするのは難しいかなとは思うんですけど……。
(歴代MINIの写真を出す)この流れを見ると、BMWの傘下になって以降のMINI 4世代については、顔はあんまり変わってないんです。ただ、初代のプロポーションを見ると、「こんなにオーバーハング短かったっけ!?」っていうぐらい、すごく軽快さがあるんですよ。
ほった:初代が一番軽快でしたね。
渕野:BMW MINIのデザインは初代で完成されていたような感じがします。そこから2代目、3代目になっていくうちに、衝突安全とかのさまざまな要件で、顔が大きくなって、フロントオーバーハングもどんどん長くなっている。車体もちょっとずつ大きくなっていきました。
清水:初代が出たときは、元祖に比べるとあまりにも大きかったので、「これはミニじゃない、デブだ」なんて思いましたけど、そこからさらに肥大化が続いて、なんとも思わなくなったなぁ。
ほった:デブだなんて、またもハラスメント案件ですな。不適切にもほどがある(笑)。
渕野:ただ、新型は従来型より10mm全長が短いんですよね。大型化は止まって、ディテールが逆にシンプルになった。もともとフロントフェンダーに謎の装飾や加飾がありましたけど、そういうのをすべて排除して、「オリジナルのMiniのよさを出そうとしたのかな」という気がして、個人的にはすごくいいなと感じています。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
一台でいろんなイメージの車内空間を楽しめる
渕野:ただね、新型はBEVモデルとICE(内燃機=エンジン)モデルで、全然別のクルマなんですよ。
ほった:そうなんすよ。
渕野:(写真を示しつつ)BEVのクルマはこれなんですけど、ICE車はこれです。ICE車もデザインは従来型から変えてるんですが、骨格は受け継いでるみたいなんですよね。
ほった:ホイールベースがBEVとICEで違うんですよね。
渕野:ホイールベースも違うし、ボンネットの開き方も違います。BEVはヘッドランプの上から開く、まぁよくある普通の分割ですけど、ICE車は以前のMINIと同じ開き方で、ヘッドランプのフチも含めてぜんぶがボンネットフードになってる。ドアハンドルも、ICEはグリップ型、BEVはつるっとした新形状で、全然違うんですよね。内装も、BEVとICEとでちょっと違います。
この新型に関しては、最初にBEVの計画だけがあって、急いでICE車を付け足したんじゃないのかな? なんて想像しました。
清水:MINIは100%BEVブランドになる予定だからね。
ほった:3ドアはこの代で完全BEV化するつもりだったんだけど、最近のBEVの伸び悩みを見て、あわてて軌道修正したのかもしれませんね。
渕野:今回、自分が一番魅力に感じたのは、ダッシュボードの丸いディスプレイなんですよ。もうこれだけで欲しくなりました。いろいろなモードがあって、いろんな空間の演出が用意されてるんです。新しいMINIは、ダッシュボードにプロジェクターで模様を映してるんですけど、それがスポーツモードだとかコンフォートモードだとかで変えられる。
ほった:一台のクルマで、いろんなイメージのインテリアを楽しめるわけですね。
渕野:そういうことができる点も含めて、新しいMINIにはこれまでのとは違う価値観がありそうです。こういうの、デザイン用語で「UXデザイン」って言うんですけど、そういう“体験価値”の提供という意味でも、新型はすごくいいと思いました。
清水:それは実際に走らせて体験してみたいですねぇ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
前と後ろで印象が違う?
渕野:エクステリアデザインに関しては、まずはサイドビュー。ドアパネルの上のほうに結構強めのピークがあって、リフレクションの変化がしっかりと感じられる。それも、これまでのMINIにはなかったところです。こういう点を変えながら、MINIらしさをどう担保するかっていうのは、すごく難しかったろうなと思いますけど……。
清水:だいぶスポーティーに見えそうですね。
渕野:そうですね。ホイールハウスのアーチクラッディング、アーチモールとかが、今回こっち(BEV)にはない。ないんですけども、それでも結構スポーティーに見えるというか、タイヤがしっかり見える。タイヤの外径はでかくなったのかな?
ほった:少しだけ大きくなってるみたいですね。
渕野:リアのデザインは結構変わりましたね。初代から3代目までは似たような感じだったんだけど。MINIに関しては、フロントは変えようがないのかなと思うんですよ。だからリアでちょっと強めにイメージを変えたということでしょう。個人的には、ここもまとまりがいいと思います。素直にカッコイイなと思いました。
清水:後ろからだと、MINIに見えないかもしれない。これが新型「ランチア・イプシロン」? みたいな。
渕野:ただちょっと疑問なのが、前後のイメージの違いです。フロントは結構、下の部分を巻き込んだデザインなんです。もともとMINIのデザインは、みんなそうなんですけど。
清水:「巻き込んだ」というのは、バンパーの下側がすぼまっているってことですか?
渕野:そうです。だから真っ正面から見ても、結構タイヤが見えるんですよ。でもリアに関してはボディーの“ハの字”感が強くて、巻き込みが少ない。
ほった:ずーんと末広がりなんですね。台形というか、“かがみもち”スタイル。
渕野:フロントとリアで造形感がちょっと違って見えるんですよ。このあたりは外光の下でちゃんと見て、デザイナーの意図を見極めないといけないなと思っていたわけですが……。ところがですよ。写真で見たらICEのほうは、リアも従来型と同じで下側が巻き込んでるんです。
ほった:ICE車はたぶん、ベースが先代のままですからね。
渕野:オールニューのBEVは、リアフェンダーにタイヤの“はみ出し対策”のフィンを付けるのを避けたかったんじゃないかな。今回、このクルマのテーマは「シンプル」なんだと思います。だから余計な造形物を付けたくなかったのかもしれない。
清水:確かに、リアがスポーティーなのに比べると、フロントとバランスがとれてない感じはしますね。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
MINI新時代の幕開けか
渕野:清水さんはMINIって好きですか?
清水:いやー、オシャレすぎてダメです。某テーマパークの乗り物みたいに感じるんですよ。
ほった:ワタシは昔、オリジナルのMiniに乗ってたんですけど、新型も結構好きでしたよ。そもそも全然違うクルマだったから、仲間内でもわざわざ比較してイヤミを言うようなヤツはいなかったですし。それにクルマ自体、初代ニューMINIはイイモノ感がハンパなかったじゃないですか。
渕野:そうそう。
ほった:それが、2代目、3代目になると、顔とボディーのバランスが崩れて、だんだん劣化してくように感じました。インテリアデザインも、最初のが一番凝ってて、2代目、3代目って進むにつれて大味になってったんですよ。そういうなかで、この新型には「ここで一回リセットしようぜ」っていう意思がすごく見えたので、えらい好印象なんですよ。
渕野:自分も新型は好印象です。内装でも、これまでのMINIは円のモチーフがいっぱいあって、そこにくどさを感じていたんですよ。それが新型では、円はこのディスプレイだけなんですよ。すごくシンプルになりました。
清水:代を経るごとに、内外装ともにテーマパーク感がどんどん増してましたよね。カーマニアとしては、そこが気恥ずかしかった。
渕野:前まではおもちゃっぽい感じがありましたけど、今回はすごくいいです。
清水:まだBEVを買うつもりはないけれど、これは欲しいかもですね、少し。「フィアット500e」も形だけで欲しくなったけど。
ほった:フィアット500e、いいですよね~。個人的に「ホンダe」と並ぶBEV草創期の名機としたい。
清水:これもそんな感じですね。
渕野:いや……個人的には、買うとしたら、まだこっち(ICE車)かな。
ほった:え~~~っ(笑)!?
(後編へ続く)
(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=BMW、webCG/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

渕野 健太郎
プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第98回:「トヨタGR GT」と「レクサスLFAコンセプト」(前編) ―レースで勝つためなら歪なデザインも許される?― 2026.1.14 “世界のTOYOTA”の頂点を担う、「トヨタGR GT」と「レクサスLFAコンセプト」。話題騒然の2台のスーパースポーツを、カーデザインの識者と大検証! レースでの勝利に振り切ったGR GTの歪(いびつ)な造形は、果たしてアリや、ナシや?
-
第97回:僕たちはいつからマツダのコンセプトカーに冷めてしまったのか 2025.12.24 2台のコンセプトモデルを通し、いよいよ未来の「魂動デザイン」を見せてくれたマツダ。しかしイマイチ、私たちは以前のようには興奮できないのである。あまりに美しいマツダのショーカーに、私たちが冷めてしまった理由とは? カーデザインの識者と考えた。
-
第96回:レクサスとセンチュリー(後編) ―レクサスよどこへ行く!? 6輪ミニバンと走る通天閣が示した未来― 2025.12.17 業界をあっと言わせた、トヨタの新たな5ブランド戦略。しかし、センチュリーがブランドに“格上げ”されたとなると、気になるのが既存のプレミアムブランドであるレクサスの今後だ。新時代のレクサスに課せられた使命を、カーデザインの識者と考えた。
-
第95回:レクサスとセンチュリー(前編) ―モノマネじゃない、日本独自の高級車の成否― 2025.12.10 「One of One」の標語を掲げ、いちブランドへと独立を果たしたセンチュリー。その存在は、世界のハイエンドブランドと伍(ご)して渡り合うものとなり得るのか? ジャパンモビリティショーのショーカーから、そのポテンシャルをカーデザインの識者と考えた。
-
第94回:ジャパンモビリティショー大総括!(その3) ―刮目せよ! これが日本のカーデザインの最前線だ― 2025.12.3 100万人以上の来場者を集め、晴れやかに終幕した「ジャパンモビリティショー2025」。しかし、ショーの本質である“展示”そのものを観察すると、これは本当に成功だったのか? カーデザインの識者とともに、モビリティーの祭典を(3回目にしてホントに)総括する!
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。


















































