MINIジョンクーパーワークス カントリーマンALL4(4WD/7AT)
王さまのMINIはロバのMINI 2024.07.06 試乗記 「MINIカントリーマン」のトップモデル「ジョンクーパーワークス(JCW)ALL4」に試乗。ファンならば「JCW」の3文字に身構えるかもしれないが、この新型にその心配は不要。乗り味はどこまでいっても洗練されており、これこそが新世代MINIの真骨頂である。MINIだってSDGsを意識する
う~む。これはいい! MINI史上最大。新しいカントリーマンのハイライトはインテリアにあり。温かみがあって、アイデアに満ちている。ダッシュボードはニット調のファブリックで覆われている。リサイクルポリエステルという新素材で、メーターナセルがない。そのぶん、ドライバーの目の前は広々している。でもって、ダッシュボード中央には大きな丸いガラスが1枚。鏡よ、鏡、鏡さん。世界で一番きれいなのはだあれ? と聞くためのモノではない。それはあなたです! と車載AIが答えてくれるようになる可能性は、もちろんある。けれど、いまのところ、速度や地図その他の情報を映し出す、直径240mmの有機ELディスプレイである。有機ELは薄いのが特徴だ。
手鏡のようなディスプレイの下にスイッチが5つ並んでいる。真ん中の丸っこいのがスタート/ストップで、これをキーのようにひねる。さすれば、先代から継承する、フロントの横置き2リッター直4ターボがグオンッ! と期待よりも控えめなサウンドを発して目を覚ます。最高出力317PS/5750rpm、最大トルク400N・m/2000-4500rpmを発生するこのエンジンは、兄弟車「BMW X1」の「M35i」用と同じだ。
スターターの右隣の平べったいスイッチがギアのセレクターで、センターコンソールには従来型のシフトレバーの代わりに赤いストラップの付いた箱がある。「MINI」と大書されたキーを入れておくのに好適なサイズだ。
ブラックに赤いステッチの入ったシート表皮は、いかにも高性能車風だけれど、本物のレザーではない。SDGsを意識して「ベスキン」という人工皮革が用いられている。ホントに本革はSDGsに反するのか? フェイクレザーのほうがホントにエコなのか? MINIに限らず、ファッション界も含めたプレミアムブランドの多くがそう主張をしているのだから、そうなのでしょう。できるところからやる。という姿勢は立派だ。ベスキンの質感はホンモノそっくりである。ただ本革ではない。という事実はある。ニセモノではなくて、別モノ。カニカマみたいなものでしょうか?
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MINIじゃない!? ような乗り味
ダッシュボードのギアのセレクターをDレンジに入れてアクセルを踏む。エクスペリエンスモードという、いわゆるドライブモードセレクトが付いており「グリーン」「コア」「ゴーカート」をはじめとしたたくさんのモードが設定されている。エンジンを始動すると自動的にコアモードになっており、これがデフォルト、MINIの核心的価値を表現している。
乗り心地はいい路面では快適といってよい。従来型と同じ、前:ストラット、後ろ:マルチリンクのサスペンションにはアダプティブダンパーが標準で付いている。MINIといえばラバーコーン、BMW MINIになってからは第1世代の硬い足を思い浮かべる筆者の場合、コアモードだと、とりわけ高速巡航時のストローク感とスムーズネスに仰天する。MINIじゃない!? ただ、タイヤは硬そうだ。JCWカントリーマンは245/40R20という、大径偏平サイズが標準で、この個体は「ピレリPゼロ」を装着している。そのせいか、鉄ゲタというのは大げさにしても、底が薄いスチール製のスニーカーを履いているみたいな感じがする。その代わり、コンドロイチンとグルコサミン、コラーゲンを日ごろからたっぷりとっている人、もしくは若い人の膝みたいにグルグルと足がよく動く。撮影地の山梨県の河口湖近辺の荒れた一般道だと、揺れて揺られて、ここは横須賀かといいたくなる。ああ。われながら、話が古すぎる。読者がついてこられない……。
ゴーカートモードを選ぶと、「ヒャッホー」とクルマが突如、楽しげに叫ぶ。エンジンサウンドががぜん大きくなり、快音が室内にとどろく。JCWカントリーマンは、SUVなのに、ちょっとしたワインディングロードを、腰くだけになることなく鮮やかに駆けぬける。JCWの最低地上高は186mmと、新型カントリーマンのほかの内燃機関モデルの202mmより低いスポーツサスペンションが標準設定されていることもある。
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JCWの名に臆する必要はありません
ステアリングは「クロスオーバー」を名乗っていた先代より若干穏やかになっている感じがする。ホイールベースが20mm延びたことも関係しているかもしれない。レスポンスのクイックさより、安心感が優先されている感じがする……ように思う。退屈になったわけではない。7段DCTは電光石火のシフトアップを披露し、減速時にはグオンッ、グオンッと自動でブリッピングしながらのダウンシフトというケレンでもって、筆者を魅了する。
ただし、3ドアのハッチバックしかなかった時代のJCWほどのすごみはない。これまた古い話で恐縮ながら、初期のJCWはサーキット走行を意識した台数限定の別格的高性能モデルだった。ところが新型カントリーマンのJCWは、ノーマルのモデルに対してこれまでの「クーパー」か「クーパーS」程度の性能差に思える。実は新型カントリーマンはJCWしか乗っておらず、「C」とか「D」とか「ALL4」とか、ほかのモデルとの比較は筆者の想像なのですけれど、JCWの名前に臆する必要はまるでない。足まわりもエンジンもフツウに使えるレベルにある。
ちなみにMINIとは不可分のクーパーというサブネームは2024年3月に発表された新型MINIから3ドア専用になった。それを知らないと、これはどうしたこと? あとから出るのでしょうか? と思って慌てることになる(筆者は知らなかったので、慌てた)。
「ALL4」なる4WDシステムのフィーリングについても記しておきたい。普段は前後トルク配分50:50で走行し、状況に応じてフロントに100%の駆動力を伝えるというこのシステムは、静止状態からアクセルをいきなりガバチョと踏み込むと、ステアリングが暴れる気配がある。ほんのつかの間、トルクステアがあって、その後、落ち着く。いかにも高性能車に乗っている感はある。これはステアリングがビビッドである、という演出なのかもしれない。だけど、そんな演出、4WDでする必要がある? とも思う。あ。MINIだから必要なのか。開発者に実際のところを確認してみたい。
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よいところを褒めました
そもそもSUVでゴーカートモードというのはマンガみたいな世界観、といってよい。ゴーカートというのはサスペンションのない、極限まで重心の低い乗り物なのだからして、それを最低地上高が性能の指針となるSUVで実現するのは無理でしょう。という小理屈を剛腕でねじ伏せている。技術という剛腕で。だから、出来上がったものに乗ってみると、納得してしまう。ドライビングフィールがやっぱりMINIっぽい。CセグメントのSUVに成長してなお、メタMINI的世界をリアルに体験させてくれる。「フォルクスワーゲン・ティグアン」にほど近いサイズのSUVなのに、往年のMINIのようなキビキビ感を味わわせてくれるのだ。MINIのファンだったら抗しがたい。MINIのファンでなければ、抗すもなにも、すんなり受け入れられることだろう。
品質感も高い。「MINI CROSSOVERの伝統は新次元へ。MINI史上最大、THE NEW MINI COUNTRYMAN登場。」というオフィシャルウェブサイトのコピーがすべてを語っている。
実は……なんてカッコ悪いんだ!? 新型JCWカントリーマンを前にして、筆者もそう思ったひとりである。BMW X1の外板を替えることでMINI風に仕立てた。というより、X1にあれこれくっつけて、急きょ、無理やりMINI風に仕立て直した。という感じがする。あるいは、事情があって、MINIに仕立てられた替え玉が騒動を巻き起こすコメディー、もしくは視聴者参加型ドッキリのためのMINI……というような想像を膨らませもした。だけど、マイナス思考はなんにもいいことがない。だから、よいところを褒めることにした。
その一方、MINIの巨大化をこのまま放置しておいてよいのか。とも思う。みんなの声が集まれば、メーカーを動かすことだってできるはずだ。私も勇気を出して言います。王さまのMINIはロバのMINI。
(文=今尾直樹/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
MINIジョンクーパーワークス カントリーマンALL4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4445×1845×1640mm
ホイールベース:2690mm
車重:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:317PS(233kW)/5750rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2000-4500rpm
タイヤ:(前)245/40R20 99Y XL/(後)245/40R20 99Y XL(ピレリPゼロ)
燃費:--km/リッター
価格:667万円/テスト車=703万2000円
オプション装備:ボディーカラー<レジェンドグレー>(9万6000円)/べスキン/コードコンビネーションインテリア<JCWブラック>(0円)/Lパッケージ(23万2000円)/レッドスポーツストライプ(3万4000円)/ステアリングホイールヒーター(0円)/チリレッドルーフ&ミラーキャップ(0円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:3451km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:260.5km
使用燃料:25.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.4km/リッター(満タン法)/10.2km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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