「ホンダ・ヴェゼル」が2024年上半期SUV販売台数ナンバーワンに その強さの秘密はどこにある?
2024.07.18 デイリーコラムマイチェン後の販売が絶好調
2024年4月にマイナーチェンジが行われた「ホンダ・ヴェゼル」が絶好調だ。2024年上半期(1月~6月)の販売台数は4万4164台となり、同年上半期SUV新車販売台数で第1位を獲得した。そこで今回は、マイナーチェンジ版ヴェゼルの特徴と強みを、初代からの歴史を振り返りつつ分析していきたい……と思ったのだが、数字や背景を精査してみると、「ヴェゼルの好調」とそのマイナーチェンジには、さほど強い関連はないことも見えてきた。
とはいえまずはホンダ・ヴェゼルというクルマについて、簡単におさらいしておこう。
ヴェゼルは、初代モデルが2013年12月に発売されたコンパクトSUV。コンパクトといってもボディーサイズは全長×全幅×全高=4295×1770×1605mmで、コンパクトSUVとしては少し余裕のあるサイズ感といったところだろうか。パワーユニットは可変バルブタイミング機構付きの1.5リッター直4直噴ガソリンエンジンと、1.5リッター直4エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドユニット「スポーツハイブリッドi-DCD」の2種類で、ともに駆動方式にはFFと4WDが用意された。
2018年2月には内外装デザインに小変更を加えるなどのマイナーチェンジを行い、翌2019年1月には1.5リッター直4ガソリンターボエンジンを追加。そして2021年4月、現行型である2代目ヴェゼルへとフルモデルチェンジが行われた。
2代目ヴェゼルのボディーサイズは全長×全幅×全高=4330×1790×1590mm(全高が1580mmのグレードもあり)と、初代と比べて35mm長く、20mm幅広く、そして15mm低いディメンションに。パワーユニットは最高出力118PSの1.5リッター直4自然吸気ガソリンエンジンと、1.5リッター直4エンジンをベースとする2モーター式ハイブリッドユニット「e:HEV」の2本立て。こちらの1.5リッターエンジンの最高出力は106PSで、駆動用モーターの最高出力は131PSとなっている。
そして2023年7月の価格改定(若干の値上げ)を経て、前述したとおり2024年4月、内外装のブラッシュアップと走りの質感や安全性能のアップデート、グレードの整理・追加を中心とするマイナーチェンジが行われた──というのが、これまでのヴェゼルの大まかなヒストリーだ。
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ヴェゼル躍進の理由は2つ
そうしたホンダ・ヴェゼルは、初代においては非常によく売れたコンパクトSUVだった。2013年12月に発売されると、翌2014年にはいきなり暦年SUV新車販売台数第1位の座を獲得。モデル末期となった2020年になると、さすがに暦年SUV新車販売台数第5位に沈んだが、それ以外は2017年と2018年の2位を除いて毎年“暦年SUV新車販売台数第1位”に輝いていたのが初代ヴェゼルだったのだ。
しかしそんなヴェゼルも、2代目となった現行型では「暦年1位」の座を獲得することはできず、2021年から2023年にかけては4位または5位に沈んだ。そして年間販売台数も5万2669台(2021年)、5万0736台(2022年)、5万9187台(2023年)にとどまった。
だが、1年間で5万台レベルの販売台数だった2代目ヴェゼルは2024年上半期、いきなり半年間だけで4万4164台を販売した。そして同年上半期SUV新車販売台数の第1位となったことで「マイナーチェンジ版ヴェゼル強し! その特徴と強みを分析せねば!」となったわけだが、冒頭で述べたとおり、ヴェゼルのいきなりの躍進とマイナーチェンジの間には、さほどの相関はないと考えられる。
そう言える理由は何か。2024年4月25日にマイナーチェンジ版が発売される前の同年1~4月の月間平均販売台数は7888台。それに対してマイチェン後にあたる5~6月の月間平均販売台数は6289台と、むしろ減少しており、マイナーチェンジ版の納車が本格化した6月に限って見ても6862台と、マイチェン前4カ月の平均台数を下回っているからだ。
ならば“ヴェゼル躍進”の理由は何なのかといえば、大きく分けて2つある。ひとつは、半導体などの供給正常化に伴う「生産台数の正常化」だ。
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日本にジャストフィットするSUV
2021年4月に発売された2代目ヴェゼルの販売台数が月間4000台から5000台レベル、少ない月では2000台レベルにとどまっていたのは、なにも「人気薄だったから」ではない。メーカーにオーダーは入っており、多数のバックオーダーも抱えていた。だがデビュー時期がちょうどコロナ禍と重なってしまったため半導体などが思うように入手できず、「つくろうにもつくれなかった」という問題があったのだ。
「主要な原材料の一部」に相当するものが著しく不足していた関係で、例えば2023年1~8月のヴェゼルの販売台数は、月平均で3787台にとどまってしまった。だが半導体などの供給が正常化しはじめた同年9月には5489台を販売し、10月には7085台、そして11月には9396台と、販売台数は2倍以上に増加。そしてその後も2024年1~4月は、本来ならばあまり売れないはずのマイチェン直前であったにもかかわらず、月平均で7888台が登録された。この時期は満足いく値引き額が提示されたケースも多かったようだが、それを差し引いて考えても、2代目ヴェゼルは「マイナーチェンジとは無関係に、半導体などの供給正常化に伴って2023年秋ごろから売れ始め(つまり正常に供給され始め)、そして今も売れ続けている」という結論になるのである。
そして、「なぜ2代目ヴェゼルは人気が高いのだろうか?」という疑問に対する答えが、そのまま「ヴェゼル躍進の理由その2」になる。
2代目ヴェゼルがよく売れる理由は、「大きすぎないが小さすぎでもない、しゃれた雰囲気があって走りも良く、それでいて価格も高すぎないSUV」という、けっこうな数の日本国民が求めるはずのクルマは、2代目ヴェゼル以外にはあまり存在していないから──である。
同じコンパクトSUVというカテゴリーに属する「トヨタ・ヤリス クロス」は手ごろなクルマだが、「やや小さすぎる」と感じる人も少なくないだろう。また同じく、ギリギリだがコンパクトクラスに入る「トヨタ・カローラ クロス」は、シンプルな過不足のないSUVだが、人によっては「しゃれた雰囲気が感じられないのが嫌」と思うかもしれない。そしてカローラ クロスとよく似たサイズ感の「スバル・クロストレック」はデザインやメカニズムは個性的だがブランドイメージ的にいささかマニアックであるため、マス層にはあまり刺さらない。ミドルサイズ以上の各SUVは当然ながら魅力的だが、「比較的コンパクトなサイズ」と「比較的手ごろな価格(300万円前後)」に限定してSUVの購入を検討しているユーザーの眼中には入らない。
ということで、ホンダ・ヴェゼルの躍進はある意味“必然”であり、その必然は、「ちょうどいいサイズ感とおしゃれなデザインを伴った、走りも燃費もいい他社製コンパクトSUV」が登場するまでしばらくの間、継続することだろう。
(文=玉川ニコ/写真=本田技研工業/編集=櫻井健一)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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