クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

トヨタGR86 RZ プロトタイプ(FR/6MT)/スバルBRZ S プロトタイプ(FR/6MT)

過ぎたるは猶及ばざるが如し 2024.07.17 試乗記 高平 高輝 今や希少な国産FRスポーツカー、すなわち「トヨタGR86」と「スバルBRZ」がそろってマイナーチェンジを敢行。前回の改良から間がないが、今回の主なメニューもまた「走行性能の進化」である。雨の富士スピードウェイでプロトタイプモデルを試した。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

矢継ぎ早のマイナーチェンジ

最初は何かの間違いだろうと思った。何しろ、GR86とスバルBRZは2023年9月にかなり大規模なマイナーチェンジを受けたばかりだ。しかも発表は9月22日だったが、発売は同年11月。いち早くニューモデルを紹介するのが仕事のわれわれでも、MT車にも「アイサイト」が備わった改良型GR86(参照)に試乗したのはつい先日のことなのである(webCG掲載は2024年4月)。それから3カ月でまたもマイナーチェンジとは「?」となるのも当然だろう。

ついでにちょっと復習しておくと、現行型のGR86/BRZにモデルチェンジしたのが2021年10月(BRZは同年7月)、翌2022年初夏に細かな改良(ライトスイッチなど)を受けてスバル流の呼称ではA型からB型に移行、そして2023年9月のマイナーチェンジで登場したのがC型、つまりモデルチェンジからほぼ3年で今回のD型まできてしまったことになる。何とも慌ただしいというか自由奔放というか、社会の常識でいえばコストや手間暇の理由からこれほど頻繁な変更は認められないと思うのだが、こだわりのGRはやはり特別扱いということだろうか。

より良いものを追求する年次改良といわれれば反論は難しいのだが、まだC型の納車待ちの方も少なくないと思われる。そんなユーザーにはどう説明すればいいのか心配にもなる。これぐらいの短期間ならば、もう少し何とかできなかったのか、と首をかしげたくなるのが正直な気持ちだ。開発生産やディーラーの現場だって、これほど目まぐるしいのは勘弁してよと言いたくなるだろう。もっとも、詳細な話までは聞けなかったが、モデルイヤーごとに微妙に変わる北米向けモデルのOBD要件に適合させるという背景もあったらしい。

2023年秋に続いてマイナーチェンジを受けた「トヨタGR86」。今回は最上級グレード「RZ」の6段MTモデルを試す。
2023年秋に続いてマイナーチェンジを受けた「トヨタGR86」。今回は最上級グレード「RZ」の6段MTモデルを試す。拡大
同じタイミングで「スバルBRZ」もマイナーチェンジ。中間グレード「S」の6段MTモデルに試乗した。
同じタイミングで「スバルBRZ」もマイナーチェンジ。中間グレード「S」の6段MTモデルに試乗した。拡大
どちらも外観上の変更点はデイタイムランニングライトの採用のみ。「BRZ」(写真)は「カップカーベーシック」以外の全グレードが、「GR86」は「RZ」グレードのみが装備する。
どちらも外観上の変更点はデイタイムランニングライトの採用のみ。「BRZ」(写真)は「カップカーベーシック」以外の全グレードが、「GR86」は「RZ」グレードのみが装備する。拡大
2.4リッター水平対向4気筒エンジンは最高出力235PSと最大トルク250N・mを発生。ここは変更なし。
2.4リッター水平対向4気筒エンジンは最高出力235PSと最大トルク250N・mを発生。ここは変更なし。拡大
トヨタ GR86 の中古車webCG中古車検索

またもマニアックな改良

年次とはいえないほどの短いインターバルでの今回の改良の変更点は何だか既視感のあるものだ。すなわちダンパー減衰力の見直しと電動パワーステアリング(EPS)のアシスト特性の変更、スロットル特性の変更、そしてAT車のマニュアルシフトダウン時の許容回転数拡大(一律に制限するのではなくスロットル開度や減速度などから総合的に制御)が主なメニューである。

登録前のプロトタイプゆえ試乗は富士スピードウェイのショートサーキットをGR86とBRZの新旧MT車(「RZ」と「S」)でそれぞれ3ラップずつに限られていたが、おあつらえ向き(?)に時折雨脚が強まるウエットコンディションのおかげでGR86とBRZの違いがより明確に感じられた。GR86は前回のマイナーチェンジでスロットル特性やVSCの制御が見直され(どちらも初期反応の鋭さを緩和する方向)、特にオプションのザックスダンパー付きはBRZよりも“テールハッピー”という評判を覆すようなしなやかで粘り強い接地感を身につけていたのだが、今回の最新型はまた一気にアグレッシブなキャラクターに舵を切ったようだ。

何しろびっくりするほどスロットルレスポンスが鋭い。ブリッピング操作をしやすいよう、またダイレクトかつリニアな走りを実現するためと説明されたが、最近では珍しいほど鋭敏なセッティングだ。ぬれたコーナーの立ち上がりで右足の操作に敏感に反応する様子は、年配のクルマ好きには“セナ足”で通じるあれだ。なるほど鋭く細かなスロットルコントロールができるが、あまり経験がないドライバーが一般道で乗るにはやはり過激ではないかと感じた。

「GR86」はスロットルレスポンスを向上させ、ブリッピング操作をしやすいセッティングに。接地感向上を目的にダンパーの減衰力特性を見直している。
「GR86」はスロットルレスポンスを向上させ、ブリッピング操作をしやすいセッティングに。接地感向上を目的にダンパーの減衰力特性を見直している。拡大
今回は機会がなかったが、「GR86」「BRZ」とも6段AT車はマニュアルでダウンシフトした際の許容エンジン回転数を引き上げている。つまりこれまでよりも高い回転域でダウンシフトが可能になった。
今回は機会がなかったが、「GR86」「BRZ」とも6段AT車はマニュアルでダウンシフトした際の許容エンジン回転数を引き上げている。つまりこれまでよりも高い回転域でダウンシフトが可能になった。拡大
メーターパネルにはタイヤ空気圧モニターが表示できるようになった。これは「GR86」の「RZ」と「SZ」グレードのみが対象。
メーターパネルにはタイヤ空気圧モニターが表示できるようになった。これは「GR86」の「RZ」と「SZ」グレードのみが対象。拡大
ウインカーレバーはソフトタッチ式から操作した先でいったん固定されるロック式に変わっている。
ウインカーレバーはソフトタッチ式から操作した先でいったん固定されるロック式に変わっている。拡大

モードを選べるBRZ

いっぽうのBRZはMT車に新たに「スポーツ」モードスイッチが加えられ、それをオンにした場合はスロットル特性がシャープになる。AT車にはすでにスポーツモードスイッチが備わっていたが、あちらはATのシフトプログラムを変更するもの、こちらはスロットルマッピングをよりアグレッシブに切り替えるもの(アクティブサウンドコントロールの音量も変化する)。

それでも乗り比べるとGR86ほど激しいセッティングではないようだ。もちろん、スバルのスポーツモードがぬるいというわけではなく、もっと言えば私などはノーマルモードでも十分コントロールしやすいではないかと思うほどである。サーキットゆえに乗り心地は正直判別できなかったが、同じペースで走っても後輪が粘り強く路面を捉えるのはやはりBRZのほうが上手で、そういう足まわりには鋭敏すぎないスロットル特性がふさわしいと感じた。ちなみに2023年に追加された最上級グレード「STI Sport」のダンパーは変更なしである。

GR86はモータースポーツとのダイレクトな関係をより強調するためにとがった戦闘的なキャラクターを明確にしたかったのかもしれないが、一貫しているスバルに比べて現行型にモデルチェンジしてから右に行ったり左に戻ったりという印象が否めない。ただそのあたりはGR86の開発陣も承知のうえのようで「以前のセッティングのほうが好みだという方もいるでしょう」と潔い。

「BRZ」もダンパーの減衰力特性を変更。スポーツ走行時の安定感と普段使いにおける乗り心地の両立を図っている。
「BRZ」もダンパーの減衰力特性を変更。スポーツ走行時の安定感と普段使いにおける乗り心地の両立を図っている。拡大
6段MT車の「スポーツ」モードスイッチは「BRZ」のみが採用。これをアクティブにしたときだけスロットルレスポンスが鋭くなるところが「GR86」との違いだ。
6段MT車の「スポーツ」モードスイッチは「BRZ」のみが採用。これをアクティブにしたときだけスロットルレスポンスが鋭くなるところが「GR86」との違いだ。拡大
「GR86」も「BRZ」も電動パワーステアリングの特性を変更。前者は限界域でのフィーリングを、後者は全域での操作性を向上させたとのことだが、どちらも低速域で軽くなったのは同じで、街なかでは楽になりそうだ。
「GR86」も「BRZ」も電動パワーステアリングの特性を変更。前者は限界域でのフィーリングを、後者は全域での操作性を向上させたとのことだが、どちらも低速域で軽くなったのは同じで、街なかでは楽になりそうだ。拡大

はっきり違う立ち位置

高負荷時のリニアなアシストやカウンターステア時の扱いやすさを目指して設定を最適化したというEPSはどちらも低速で明らかに軽くなった。ほかにもGR86はタイヤ空気圧警報システム(RZおよび「SZ」)とデイタイムランニングライト(RZ)を採用、BRZも同様にデイタイムランニングライトを装備(「カップカーベーシック」を除く)、また両車ともウインカーレバーがいわゆるソフトタッチ式から一般的なロック式に変更されている。ソフトタッチ式は戻す際に行き過ぎて使いにくいとユーザーから不評だったらしい。

サーキット走行やジムカーナで思い切り振り回すにはGR86の鋭く刺激的なスロットルレスポンスは頼もしく、もちろん楽しいだろう。しかも最初の「86」とは違って刺激的だが粗野ではない。それでも、あえてBRZのようなモード切り替えスイッチさえ付けなかったGR86は、一般道ではちょっと敏感すぎるかもしれない。それゆえ日常使用をメインにしている現在のGR86ユーザーはそれほど悔しがる必要はないように思う(もちろん一般道では未試乗だが)。GR86とBRZを直接比較して選ぶユーザーは案外少ないのではないかと思うが、両者の立ち位置の差がこれまで以上に明確になったことは確かである。

(文=高平高輝/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝)

「GR86」に新たに設定された特別仕様車「RZ“Ridge Green Limited(リッジグリーンリミテッド)”」は200台限定で抽選販売される。
「GR86」に新たに設定された特別仕様車「RZ“Ridge Green Limited(リッジグリーンリミテッド)”」は200台限定で抽選販売される。拡大
ブロンズ塗装の専用ホイールを装備。bremboのブレーキとザックスのダンパーも標準で装備する。
ブロンズ塗装の専用ホイールを装備。bremboのブレーキとザックスのダンパーも標準で装備する。拡大
インテリアカラーは「ブラック×タン」で落ち着いた印象に。これをカタログモデルにも設定してほしい。
インテリアカラーは「ブラック×タン」で落ち着いた印象に。これをカタログモデルにも設定してほしい。拡大
ドアの内張りには「Ridge Green Limited」のステッチがあしらわれる。
ドアの内張りには「Ridge Green Limited」のステッチがあしらわれる。拡大
トヨタGR86 RZ プロトタイプ
トヨタGR86 RZ プロトタイプ拡大
 
トヨタGR86 RZ プロトタイプ(FR/6MT)/スバルBRZ S プロトタイプ(FR/6MT)【試乗記】の画像拡大

テスト車のデータ

トヨタGR86 RZ プロトタイプ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4265×1775×1310mm
ホイールベース:2575mm
車重:1270kg
駆動方式:FR
エンジン:2.4リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:235PS(173kW)/7000rpm
最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/3700rpm
タイヤ:(前)215/40R18 85Y/(後)225/40R18 92W(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:11.9km/リッター(WLTCモード)
価格:351万8000円/テスト車=351万8000円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

スバルBRZ S プロトタイプ
スバルBRZ S プロトタイプ拡大
 
トヨタGR86 RZ プロトタイプ(FR/6MT)/スバルBRZ S プロトタイプ(FR/6MT)【試乗記】の画像拡大

スバルBRZ S プロトタイプ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4265×1775×1310mm
ホイールベース:2575mm
車重:1270kg
駆動方式:FR
エンジン:2.4リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:235PS(173kW)/7000rpm
最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/3700rpm
タイヤ:(前)215/40R18 85Y/(後)225/40R18 92W(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:11.9km/リッター(WLTCモード)
価格:350万9000円/テスト車=350万9000円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

試乗記の新着記事
  • BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】 2025.9.15 フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。
  • スズキ・アルト ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.13 「スズキ・アルト」のマイナーチェンジモデルが登場。前後のバンパーデザインなどの目に見える部分はもちろんのこと、見えないところも大きく変えてくるのが最新のスズキ流アップデートだ。最上級グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。
  • トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”【試乗記】 2025.9.12 レースやラリーで鍛えられた4WDスポーツ「トヨタGRヤリス」が、2025年モデルに進化。強化されたシャシーや新しいパワートレイン制御、新設定のエアロパーツは、その走りにどのような変化をもたらしたのか? クローズドコースで遠慮なく確かめた。
  • トヨタ・カローラ クロスZ(4WD/CVT)【試乗記】 2025.9.10 「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジモデルが登場。一目で分かるのはデザイン変更だが、真に注目すべきはその乗り味の進化だ。特に初期型オーナーは「まさかここまで」と驚くに違いない。最上級グレード「Z」の4WDモデルを試す。
  • ホンダ・レブル250 SエディションE-Clutch(6MT)【レビュー】 2025.9.9 クラッチ操作はバイクにお任せ! ホンダ自慢の「E-Clutch」を搭載した「レブル250」に試乗。和製クルーザーの不動の人気モデルは、先進の自動クラッチシステムを得て、どんなマシンに進化したのか? まさに「鬼に金棒」な一台の走りを報告する。
試乗記の記事をもっとみる
トヨタ GR86 の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。