BEVから高性能モデルまで出そろった新世代MINI それぞれの特徴を探る
2024.12.19 デイリーコラム出そろったMINIの最新ラインナップ
日本におけるモデル別輸入車販売ランキングで、このところ常にトップの座に君臨するのがMINIである。「いやいや、BMWのプロデュースになってからのMINIは、もはや単一車種を指す名称ではなくてブランド全体を示すものでしょ」というツッコミも入りそうだが、とにかく日本人はMINIのことが大好きで、輸入車のなかでも目にする機会が多いという個人的な肌感覚とも合致する。そのMINIの各モデルがここ1年ほどで次々と世代交代。また新たな道を歩み始めている。
その端緒を開いたのは、2023年11月に日本への導入が発表された「カントリーマン」だ。MINIの源流ともいうべきハッチバックモデルを差し置いて(?)、ラインナップのなかでもSUV風味の強いこのモデルが真っ先に世代交代の火ぶたを切ったのは、今の時代ならではということだろうか。
MINIという言葉をボディーサイズと結びづけようとした場合、4.4m超という長さと1.8m超の幅に正直、違和感は拭えない。が、それゆえ室内空間にはゆとりがあって立派な5ドアのファミリーカーとして通用することも、数あるバリエーションのなかでこのモデルならではの特徴となる。
ガソリンエンジンにディーゼルエンジン、さらには後追いで新世代MINI最大の特徴といえるピュアEVも設定され、そのパワーユニットはより取り見取り。多くのモデルで4WD仕様も設定されるので、前身の「クロスオーバー」時代以上に豊富な選択肢が存在するのが新世代MINIの第1弾となったカントリーマンである。
これまで長らく“ゴーカートフィーリング”をキャッチフレーズとしてきたMINIのバリエーションだが、そうしたなかにあってこのモデルは、空間的にも乗り味的にも最も快適な一台。すなわち、3人以上で乗る機会が多いユーザーには素直に抵抗なく薦めたくなるMINIの筆頭なのである。
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完成の域に達したハッチバックモデル
そんなカントリーマンに次いで上陸を果たした新世代MINIが、ブランドを代表する存在でもあるハッチバックモデル。
これまではグレードを示すのに用いられてきた「クーパー」の名称が昇格(?)して車名が「MINIクーパー」となったことと、ピュアEV版が設定されたことが新世代モデルでの大きなトピックとなる。
派生バージョンである「コンバーチブル」も含め、そのエクステリアのデザインはBMWプロデュースとなった初代がローンチされた2001年の段階で「すでに完成されていた」と言われるだけあって、それから間もなく四半世紀を迎えようというタイミングで現れたこの最新世代モデルもこれまでのイメージを強く踏襲。何しろ、エンジン搭載版と前出のEV版では構造の全く異なるボディー骨格を用いるのに、パッと見の印象がウリふたつという点に、デザイン面における絶対の自信が表れている。
搭載パワーユニットにかかわらず揺すられ感の強い乗り味は、やはり今回もキャッチフレーズに用いる“ゴーカートフィーリング”を多分に意識したと解釈できる、今や「MINI独特」と表現できるチョッピーなもの。それは、リアシートに乗るゲストからはきっと苦情が出るに違いない(!)というレベルである。そんなテイストを幾度も世代交代を重ねながら見直そうとしないことも、すでにそれがひとつの記号として確立されていて、あえて継承したのではないかとさえ推察できるのである。
それらを含め、見ても乗っても“MINIらしさ”を最も濃厚に味わえるのがこのハッチバックモデル。なかでも、昨今バリエーションに加えられたハイパフォーマンスバージョン「ジョンクーパーワークス」は、きっとひと際強い個性を味わわせてくれることになるのだろうと、テストドライブへの期待が一杯だ。
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ピュアEV専用モデル「エースマン」も登場
そして、「このモデルの登場をもって新世代MINIのラインナップがひとまず完成」といえることになりそうなのが、バリエーション中で唯一のピュアEV専用として開発されたブランニューモデル「エースマン」である。
自らを“シティークロスオーバー”と紹介する新世代MINI第3弾のこのモデルのボディーサイズは全長×全幅×全高=4080×1755×1515mmで、絶対的に「小さい」とは言いにくいもののカントリーマンと比べるとひと回り以上コンパクトな一方で、ハッチバックの5ドアモデルよりはやや大柄。ちなみに、ハッチバックモデルのピュアEV版は3ドアモデルに限られ5ドアモデルに設定がなされないのは、このモデルとの競合を避けた結果と考えられる。
シンプルさが追求されたインテリア、特に巨大な丸型センターディスプレイを主役に置いたダッシュボードまわりのデザインはやはり新世代MINIに共通する文法で仕上げられていて、その点ではニューフェイスながらこれまで他のMINIバリエーションに親しんだユーザーが違和感を覚える可能性は限りなく低そうだ。
全高が低いこともあって一般的な機械式駐車場への進入も問題なくこなせることから、同じファミリーユース狙いのMINIファンであってもカントリーマンよりも購入へのハードルが低いと受け取る人も少なくないだろう。
特に自宅に充電設備を用意できて、かつ遠出の機会がさほど多くないといったユーザーに対しては、なるほど“都市型クロスオーバー”と自称するのも言い得て妙な、新しいMINIの選択肢として好適なブランニューモデルという印象なのである。
(文=河村康彦/写真=BMWジャパン/編集=櫻井健一)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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