第300回:ビッグなボディーにビッグなエンジン
2024.12.30 カーマニア人間国宝への道マツダのラージ商品群は売れている?
ホンダと日産が経営統合に向けて協議! マジすか学園! 三菱も合流を検討! ここで三菱が「やっぱりウチは入りません」ってなったらスゲェな! などと意味のないことを考えたりしたが、ところでマツダはどうなのだろう。
一応トヨタと提携してるけど、日本でのんきにカーマニア生活をしてると、その効果みたいなものはぜんぜん感じられない。あ、そういえば、ヨーロッパじゃ「ヤリス」を「マツダ2」として売ってるんだよな、とかその程度だ。
マツダは相変わらずわが道を行っている。デザイン命! ほぼ内燃エンジン命! ロータリーも復活! ただしまるっきり売れてない! 「MX-30ロータリーEV」の国内販売台数は月に数台! 2024年10月は1台だったみたい! うおおおお~ん。
そういえば「スカイアクティブX」はまだ生きているのか。ヘタすると月間販売台数0台なのか。これじゃ日産よりぜんぜん苦しくてもおかしくないが、突撃精神には感服だ。マツダさん、いつも応援してます! 初代「デミオ」しか買ったことないけど!
もう一つのマツダの新機軸、ラージ商品群はどうなのか。自販連の統計ページをのぞいてみると、売れてる! 2024年11月、「CX-80」の販売台数は2232台で、登録車の第28位! なんとマツダ車のトップ! すげえ! ラージなFRプラットフォーム車がトップなんて! 全長約5mなのに!
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CX-80の足はしなやかで楽チン
そんなCX-80に、遅まきながら試乗した。
CX-80は「CX-60」のロングホイールベース版だ。還暦カーマニアは、積む荷物も人数も少ないので、こんなにデカいクルマはまったく必要ない。CX-60で十分だけど、若い人(=還暦前)はビッグなクルマが好きなのね。
エンジンは直6ディーゼルがベストだ。なにしろ「今どき直6!」なのだから、それだけで涙が出る。スカイアクティブXやロータリーEVは大コケしたが、直6ディーゼルはがんばってる。
試乗したのは、個人的にはまったく不要な3列シートを備えた「CX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブスポーツ」。お値段は5万5000円の有償外板色「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」を含めて587万9500円と決して安くはないが、標準でほぼフル装備なので、試乗車は外板色以外のオプション代0円。今どきオプション0円ってだけで泣ける。うお~ん。
乗ってみると実にバカでかいが、最近はバカでかいSUVにも慣れたので、東京・杉並の細街路でもなんとかなった。内装の質感が高くてセレブ気分。CX-60より出足が重く感じるけど、理由はズバリ重いから(約170kg増)。自分には無意味な3列目シートを外して捨てたいけれど是非もなし。
重いかわりといってはなんだが、乗り心地はCX-60よりはるかにソフトで快適だ。
CX-60は足がガチガチ! と、自動車メディアに不評だった。距離を走ればかなりなじんでくるのを確認しているが、CX-80は最初からしなやかで楽チンである。
マツダは、「人馬一体の走り」の実現のため、CX-60にはああいうガチンコの足が必要だと判断したが、私くらいのカーマニアでも、そんなガチンコの足は要らない。CX-80のユル足がよかー。
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日産よりもマツダのほうが上
夜、いつものように首都高に出撃した。
街なかでは出足が重く感じたが、首都高には信号がないので問題ない。パワーやトルクがあり余ってはいないぶん、加速が欲しいときは多少回してやる必要があるのがうれしい。カーマニアは常に高回転域を重視するのである。
回したときの「スカイアクティブD 3.3」は、アメリカンV8のように「ふおおおおお~~~~ん」とダイナミックに吼(ほ)える。そんなに速くはないので、高級感のある咆哮(ほうこう)をじっくり楽しるのがよか。
全世界的にマルチシリンダーエンジンがめっきり減るなか、600万円以下で大排気量ストレート6が楽しめるんだから貴重な存在だ。しかも燃費がかなりイイ! この巨体で、首都高をゆっくり流せば17km/リッターくらいいきそうだ。ちょっとブチ回したらガックリ落ちてしまいましたが、それは是非もなし。スカイアクティブXやロータリーEVの穴を埋めるべく、このまま驀進(ばくしん)してほしい。
世間では日産がだいぶたたかれているが、技術的な失敗に関しては、マツダのほうがはるかに上をいっている。なにしろ0台とか1台なんだから、これ以上の大失敗はないよネ!
それでもマツダはたたかれない。マツダは武士(もののふ)だからである。常に討ち死にを覚悟のうえで突入している。それをたたくのは人の道に反する。大坂夏の陣における真田幸村を非難するようなものである。
ビッグなボディーにビッグなエンジンを積み、乗り心地も適度にワイルドなCX-80で首都高を流していると、ビッグダディーな気分だ。7人乗りなので子供6人までオッケーである(妻は家出)。そういえばビッグダディーって子供何人いるんだっけ。番組を一回も見てないのでわからないが、CX-80が2台あれば足りますか?
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一/車両協力=マツダ)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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