第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す
2026.06.19 エディターから一言 拡大 |
2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」(参照)と「プライマシー5エナジー」(参照)。従来製品で定評のあったそれぞれの特徴はそのままに、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能の向上をうたう両タイヤの走りを、クローズドコースで確かめた。
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ミシュランの看板タイヤに進化版が登場
電気自動車(BEV)に乗るようになってから、タイヤ選びが以前にも増して悩ましくなった。少しでも航続距離を伸ばしたいから低転がり抵抗は重視したい。しかし、だからといって操縦性や快適性を妥協するのは嫌だ。そんな欲張りな願いに応えてくれそうだと思ったのが、2026年1月に発表されたミシュランのパイロットスポーツ5エナジーとプライマシー5エナジーである。
環境性能と走行性能の両立をうたうこの新しいエナジーシリーズが、いよいよ発売となり、今回、GKNドライブラインジャパン プルービンググラウンドでその実力を確かめる機会を得た。
ミシュランでは、2030年までにタイヤのエネルギー効率を2020年比で10%改善し、2050年には「100%持続可能なタイヤの実現」を目標に掲げている。そのためには、これまでのようにエコタイヤだけで環境性能を追求するのではなく、スポーツタイヤやプレミアムコンフォートタイヤを含めた全セグメントで、低転がり抵抗性能を向上させるとともに、タイヤの高い性能が最後まで続くようにすることが重要と考えている。
そのあらわれが、今回追加設定されたパイロットスポーツ5エナジーとプライマシー5エナジーである。
スポーツドライビングを楽しむユーザーのためのパイロットスポーツ、快適性や静粛性を重視するプレミアムコンフォートタイヤのプライマシーは、どちらもミシュランにとっては看板モデルといえる重要なシリーズである。その名を冠した進化版たるエナジーが、環境性能を向上させながら、それぞれのブランドの特徴をいかに維持しているのか、実際の試走を通して確かめてみた。
違いがわからないオトコになる
まず試したのはパイロットスポーツ5エナジー。「パイロットスポーツEV」の後継モデルとして開発されたこのタイヤは、スポーツタイヤでありながら転がり抵抗性能「AAA」または「AA」を実現するとともに、ウエット性能や耐摩耗性も向上させたのが特徴だという。
その実現のために、ショルダー部にエネルギー効率の良い「エナジーパッシブコンパウンド」、センター部に高剛性かつハイグリップの「グリップアダプティブコンパウンド」を配置する「バイコンパウンドテクノロジー」を採用。さらに転がり抵抗を抑えるスリムベルトや、接地圧を均一化する「マックスタッチコンストラクション」なども投入されている。
試走には「トヨタbZ4X」を使い、「パイロットスポーツ4 SUV」とも比較したのだが、いい意味で、それほど大きな違いが感じられなかった。たとえば、40km/hでパイロンスラロームをするテストでは、パイロットスポーツ4 SUVと同様に、ステアリング操作に対するパイロットスポーツ5エナジーの応答は良好で、やや硬めの乗り心地で車両を支えてくれる。
ウエットのハンドリング路でも、スポーツタイヤらしく高いグリップ力を発揮しながら、限界域での挙動が穏やかでわかりやすい。厳密にいえば、パイロットスポーツ4 SUVのほうがわずかにスポーティーだが、パイロットスポーツ5エナジー単独で試走したとしたら、おそらく気づかないだろう。
一方、パイロットスポーツ5エナジーのほうがロードノイズは低めで、ミシュランによれば環境性能は上。にもかかわらず、グリップやハンドリング性能を諦めなくていいのはうれしいかぎりだ。
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プレミアムコンフォートタイヤにふさわしい性能
次に試したのがプライマシー5エナジー。BEVをターゲットにした「eプライマシー」の後継として開発されたプレミアムコンフォートタイヤだ。転がり抵抗性能は全サイズで最高グレード「AAA」を達成し、耐摩耗性やウエット性能も向上している。
これに貢献しているのが、新世代の「エナジーパッシブ2.0コンパウンド」やエネルギー損失を減らすトレッド構造の「スリムベルト」だ。そのうえ、サイズの異なるブロックを最適に配置する「ピアノアコースティックテクノロジー」やセンターの3本のリブに補強を入れる「サイレントリブテクノロジー」により、プライマシーシリーズ自慢の静粛性に磨きをかけたという。
プライマシー5エナジーの走りは「トヨタ・プリウス」で試すことができた。パイロットスポーツ5エナジーを装着した車両から乗り換えると、ロードノイズの小ささが際立つ。乗り心地もプライマシー5エナジーのほうが快適だが、コンフォートタイヤといっても引き締まった乗り心地は、いかにもミシュランらしい。
パイロンスラロームでも、プライマシー5エナジーは環境性能のコンフォートタイヤというイメージとは裏腹に舵角は最小ですみ、ステアリングを切り始めた瞬間からノーズが素直に向きを変えてくれるので運転が楽しい。高速のレーンチェンジでは、レーンチェンジ後の収まりもよく、安心してステアリング操作ができた。
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ウエット性能の高さもうれしい
ウエットのハンドリング路でも、プライマシー5エナジーはステアリングを切り始めたときの反応が素早く、コーナリングスピードも期待以上に高い。
興味深かったがウエット路面でのブレーキ性能。80km/hからフルブレーキで停止するまでの距離は、新品状態では29.43mだった。この短さも驚きだが、注目すべきは摩耗後の結果だ。残溝2mmまで摩耗したプライマシー5エナジーは1回目が43.11m、2回目が41.93m。平均で約42.5mと、思いのほか制動距離が短かったのだ。そのうえ残溝2mmでも制動時の挙動は安定しており、運転に
一般的にタイヤは摩耗が進むにつれて排水性能が低下し、ウエット性能も落ちていく。しかし今回の結果を見るかぎり、プライマシー5エナジーは摩耗後でも高い制動性能を維持していることがわかる。タイヤを最後まで安心して使い切れる性能も、ミシュランが取り組んでいるサステイナビリティー戦略のひとつなのである。
環境性能というと転がり抵抗や燃費の改善に目が向きがちだが、長く使えることもまた重要な要素である。プライマシー5エナジーは、低燃費性能や耐摩耗性だけでなく、摩耗後のウエット性能まで高いレベルで確保している。優れた走行性能と快適性、そして安全性と環境性能の調和を、あらためて確認できた試走会だった。
(文=生方 聡/写真=日本ミシュランタイヤ/編集=櫻井健一)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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