アウディQ7 3.6 FSIクワトロ(4WD/6AT)【試乗記】
見た目は派手に、中身は着実に 2009.10.26 試乗記 アウディQ7 3.6 FSIクワトロ(4WD/6AT)……800.0万円
デビューから3年が経過したアウディQ7にマイナーチェンジが施された。変更箇所はそう多くはないものの、新車登場時から“熟成は確実に進んだ”とリポーターは言う。
化粧直しの効果は大きい
面白いもので、アウディ「Q5」のデビュー以降、すでに登場から3年が経過している「Q7」の引き合いが増えているのだそうだ。Q5について調べるうちQ7に行き当たった、あるいはQ5を見に行ったらQ7があると知った、なんてところだろうか。いずれにせよフェイスリフト版Q7のデビューに、今が絶好のタイミングであることは間違いなさそうである。
新型Q7、実は変更点はそれほど多くはない。違いは主に内外装に集中している。外観でまず気付くのは目つきの違い。ヘッドランプユニット内にはそのカタチをなぞるようにLEDポジションランプが設えられ、ウインカーもやはりLEDに。そしてシングルフレームグリルに立体感を強調するクロームの縦方向バーが追加されて、表情はより現代的で精悍になった。
リアビューを見ても、やはりテールランプがLED化され、テールゲートの形状も変更されている。その他、ドアミラーが小型化されたり、ホイールのデザインが変わって4.2FSIクワトロに19インチが標準になったりといったあたりが変更の主なところ。内容としては軽微な化粧直しなのだが、それが元々Q7が備えているスタイリッシュな魅力を一層引き立てているのだから巧い。
インテリアもやはり違いは大きくない。スイッチ類の意匠に手が入れられダッシュボード助手席側にデコラティブパネルを追加。MMI=マルチメディアインターフェイスが7インチ高精細モニターと40GB HDDを用いた最新版へとアップグレードされている。
変更は確かに軽微だ。しかし効果は大きい。旧モデルを知る人は「これだけの違いなのに!」と驚くのではないだろうか?
カタログ燃費7〜7.5%アップ
メカニズムに関しては、違いはもっと少ないと言っていい。これまで通りV型8気筒4.2リッターとV型6気筒3.6リッターのいずれもFSIユニットは出力数値も変わらない。唯一違うのは10・15モード燃費の数値で、4.2FSIクワトロは6.7km/リッターから7.2km/リッターへ、3.6FSIクワトロは7.1km/リッターから7.6km/リッターへと、それぞれ向上している。減速時のエネルギー回生を見越して走行時にオルタネーターを停止するエネルギー回生システムの採用とECUのプログラム変更が、そのポイントである。
それなら走りっぷりにはそれほど違いはないだろう。試乗前にはそう高をくくっていたのだが、実際にステアリングを握ってみると、その感触は登場初期とは明らかに違っていた。
最初に試したのは3.6FSIクワトロ。走り出すと、アクセル操作に対してエンジン回転数が先走って上昇する感覚が薄まり、思った通りにクルマが前に出ることに気付いた。ECUのリセッティングでトルクが向上したのか、ATがより低い回転域でロックアップするようになったのか、格段に気持ち良さが増している。しかも回せばトップエンドまでしっかりパワーを持続させるのだ。おかげで箱根の山道でも、まったく不満を感じることはなかったほどである。
これは3.6FSIクワトロがベストバイだろう。そう思いつつ乗った4.2FSIクワトロは、しかし即座に前言撤回したくなる走りの魅力を放っていた。力強さは歴然。それだけでなく回転上昇は滑らかで、しかもそれに豊かなトルクがついてくる。この余裕の走り、甘美な感触は、軽快な3.6FSIクワトロとはまた別の歓びと言える。
もっとも心地の良い走り
シャシーのしつけも上々だった。試乗した2台はともにアダプティブエアサスペンション無しだったにも関わらず、突っ張り感がなく、かと言って容易に底付きするようなこともない、しっとりとした感触を味わうことができた。20インチタイヤを履くS-lineでも十分快適と感じられたのだからレベルは高い。
確かにコーナリングで追い込むと、ロールの戻りが唐突に感じられる部分もあるのは事実。しかし、そもそも絶対的な安定性を誇るシャシーだけに、大した問題ではないと言っていいだろう。ナチュラルなステアリングフィールと素直なレスポンスは、正直なところ、アウディの現有ラインナップの中でもっとも心地良い走りを実現しているのはQ7では? と思えたほどだ。今回は乗るチャンスを逃したが、アダプティブエアサスペンション付きも、これまでだって快適性は上々だっただけに十分期待していいはずである。
変化は小幅だ。しかし変える必要の無いものを無理に変えなくてもいい。Q7のフェイスリフトは、まさにそう言っているかのようだ。しかも進化、熟成は確実に進められているのだから、不満などあろうはずがない。新しいアウディQ7、高まる期待にしかと応える熟成度高い1台に仕上がっていたと言っていいだろう。
(文=島下泰久/写真=郡大二郎)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
ドゥカティ・ハイパーモタードV2 SP(6MT)【海外試乗記】 2026.5.15 刺激的な走りを追求した「ドゥカティ・ハイパーモタード」の2気筒モデルがフルモデルチェンジ。まったく新しい「ハイパーモタードV2」が登場した。エンジンもフレームも刷新されたニューモデルでドゥカティが追求した走る喜びとは? 伊モデナから報告する。
-
アストンマーティンDBX S(4WD/9AT) 2026.5.13 英国の老舗、アストンマーティンのハイパフォーマンスSUV「DBX」がさらに進化。名前も新たに「DBX S」となって登場した。シャシーを煮詰め、最高出力を727PSに高めるなどの手が加えられたその走りを、クローズドコースで確かめた。
-
マセラティMCプーラ チェロ(MR/8AT)【試乗記】 2026.5.12 イタリアの名門が放つ、ミドシップのオープンスポーツ「マセラティMCプーラ チェロ」。スーパーカーの走りとグランドツアラーのゆとり、そしてぜいたくなオープンエアドライブを同時に楽しめる一台からは、マセラティがクルマに込める哲学が、確かに感じられた。
-
ロールス・ロイス・ゴースト エクステンデッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.5.11 「ロールス・ロイス・ゴースト」が「シリーズII」へと進化。先進性の強化とともに目指したのは、ブランド史上最もドライバー志向のサルーンだという。ロングホイールベース版の「エクステンデッド」で雲の上の世界を味わってみた。
-
スズキeビターラZ(FWD)【試乗記】 2026.5.9 スズキが満を持して投入した、コンパクトSUVタイプの新型電気自動車(BEV)「eビターラ」に試乗。スズキの将来を占う量販BEVの第1弾は、「よいものを手ごろな価格で」という彼らのポリシーにたがわぬ一台に仕上がっていた。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2026.5.17ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIでクルマの走りを鍛えてきた辰己英治さんが、ホンダ渾身(こんしん)のスポーツクーペ、新型「プレリュード」に試乗。デートカーの全盛期を知る辰己さんの目に、このクルマと、この商品コンセプトはどのように映るのか? 実車に触れての印象を聞いた。 -
ホンダCR-V e:HEV RS(FF)【試乗記】
2026.5.16試乗記「ホンダCR-V」のエントリーモデルとして位置づけられる「e:HEV RS」のFWD車に試乗。ライバルとして北米市場で激しい販売競争を繰り広げる「トヨタRAV4」との比較を交えながら、世界規模でホンダの屋台骨を支えるグローバルベストセラーSUVの実力に迫る。 -
第870回:熱きホンダをとことん楽しむ これが「Honda All Type R World Meeting 2026」だ!
2026.5.15エディターから一言「シビック タイプR」をはじめ、“タイプR”の車名を持つホンダの高性能車ばかりが集う、激アツのイベントが開催された。気になるその内容は? 会場となったモビリティリゾートもてぎの様子を詳しくリポートする。 -
新しくなった「GRドライビングエクスペリエンス」を体験取材! GAZOO Racingのレーサーに運転を学ぶ
2026.5.15デイリーコラムトヨタのGAZOO Racingが主催するドライビングセミナー「GRドライビングエクスペリエンス」が大幅リニューアル! これまでとは何が変わり、どんなことが新しく体験できるようになったのか? webCG編集部員が、現役のレーシングドライバーから運転を学んできた。 -
ドゥカティ・ハイパーモタードV2 SP(6MT)【海外試乗記】
2026.5.15試乗記刺激的な走りを追求した「ドゥカティ・ハイパーモタード」の2気筒モデルがフルモデルチェンジ。まったく新しい「ハイパーモタードV2」が登場した。エンジンもフレームも刷新されたニューモデルでドゥカティが追求した走る喜びとは? 伊モデナから報告する。 -
第289回:最強の格闘家は破壊されるクルマに自分を重ねた 『スマッシング・マシーン』
2026.5.14読んでますカー、観てますカードウェイン・ジョンソンが映画化を熱望した伝説の格闘家マーク・ケアーの栄光と没落の人生を描く。東京ドームで行われた総合格闘技イベント、PRIDEグランプリ2000を完全再現!





























