ホンダ・フリード Giエアロ(FF/CVT)【ブリーフテスト】
ホンダ・フリード Giエアロ(FF/CVT) 2008.08.06 試乗記 ……252万円総合評価……★★★★
受注好調が伝えられるホンダのコンパクトミニバン「フリード」。キャプテンシートを備える7人乗り仕様に乗って、人気の理由を探った。
インテリアが絶品
環境にやさしく、しかもバリアフリーな乗り物として、最近見直されているのがトラム=路面電車だ。70年ぶりに復活したフランスのパリ、地方活性化の切り札となったわが国の富山など、世界のあちこちで見直しの動きが起こっている。もちろんそこを走るのは昭和的な「チンチン電車」ではなく、大きな窓とノンステップフロアで滑るように走るモダンな車両たちだ。
そんななか、ホンダは「ユーロトラム」をデザインコンセプトとした「モビリオ」に代えて、ごくごく一般的なミニバンスタイルのフリードを送り出してきた。モビリオのデザインは不評ではなかったというし、昨今のトラムの隆盛を考えると、「空気読めてるのか?」という気さえした。
でもキャビンに入った瞬間、そんな不満は吹っ飛んでしまった。長さ4215mmのなかに7人のおとなが座れるパッケージングも賞賛ものだが、なにより2段式のインストゥルメントパネルがすばらしい。圧倒的な開放感を生み出しつつ、使い勝手も最高レベル。しかも初代シビックに似ているというヘリテージ性もある。
エクステリアで選びたくなるミニバンから、インテリアで選びたくなるミニバンへ。無味乾燥な道具に陥りがちなこのカテゴリーに、2代続けてデザインの魅力を盛り込んできた。スポーツマインドとは別の意味で、ホンダらしさにあふれたクルマだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「フリード」は、ホンダの現行ラインナップのなかで、最もコンパクトなミニバン。2001年12月にデビューした「モビリオ」の後継として、2008年5月末に発売された。
モノフォルムのボディ形状に、両側スライドドアは継承。広くなった室内およびパッケージングをセリングポイントとする。定員は1人増えて、コンパクトクラス最多となる8人を許容。さらに2列目を独立型キャプテンシートとした7人乗り仕様、3列目スペースを荷室に充てた5人乗り仕様と、インテリアのバリエーションは3タイプから選べるようになった。
パワーユニットは、1.5リッター直列4気筒(118ps/6600rpm、14.7kgm/4800rpm)の1種類のみ。鼻先をコンパクトにし取り回しのしやすさを向上すべく、コンパクトカー「フィットRS」の心臓がエンジンルームごと移植された。トランスミッションは、FFがCVT、4WDは5段ATとなっている。
(グレード概要)
試乗車は、「2+2+3」の7人乗り仕様。2列目を独立型のキャプテンシートとしたことで、クルマから降りることなく1列目から3列目までウォークスルーできる。
素のグレード「G」と異なり、「Gエアロ」には前後バンパーやサイドガーニッシュなどのエアロパーツがあらかじめ備わる。インテリアでは、センターパネルのダークシルバーメタリック塗装やインナードアハンドルのシルバー塗装などがエアロの特徴。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
フリードの前席はキャビンの前寄りにあって、高い位置に座る。もしインパネが一般的な造形だったら圧迫感を覚え、しかもメーターの位置が低すぎて見にくいと思うはずだ。そこでインパネを2段とし、メーターを高台の奥に置くことで問題を解決してしまった。
ピラーの細さのおかげもあって、外の景色があふれてきそうなほど開放的。カーナビをフローティングタイプにしたのも手に近づけるためで、とても使いやすい。とにかくすべての造形に理由がある。★7つくらいあげたいグッドデザインだと思う。多くの収納スペースがフタなしなのもいい。フタがあるとモノの出し入れが2アクションになり、運転の安全面では劣るからだ。
(前席)……★★★★
前にも書いたように、たとえばコンパクトモデル「フィット」と比べると着座位置は高めだが、乗り降りしにくいほどではない。座面は硬めで、厚みは感じないけれど、傾きがしっかり取ってあり、背もたれともどもカラダにフィットする。ドアトリムの縦割りも奥行き感を出している。建築の世界で使われる、奥行き感を出すためのテクニックだというが、たしかに1.5リッターのミニバンらしからぬ広がり感はある。とにかくこのクルマのインテリアデザインは工夫がいっぱいだ。
(2列目シート)……★★★★
シートはステップワゴンと共通。おかげで身長170cmの自分にとっては、前後、上下方向の寸法はたっぷりしているものの、前席と比べると幅はやや狭く、座面や背もたれは薄い。それでも座り心地は悪くないが、走行中は路面によっては上下左右に揺すられる。前後スライドをもっとも後ろにすると、自分サイズの人間なら、ヒザの前には15cmほどの空間が残る。ただし前席下に燃料タンクを置いたフィットと違い、薄型タンクを2〜3列目の床下に置いたために、着座位置に対して床が高く感じた。
(3列目シート)……★★★
こちらもステップワゴンの流用。背もたれは短めだが肩の下までホールドし、座面はじゅうぶんな長さ。2列目のスライドを中間にセットすれば足が楽に入り、頭上空間には余裕があった。ただし中央席はシートベルトが2点式で、ヘッドレストはなく、安全性に不安を覚える。形状も座るのに適していない。初期受注状況をみると、2列目も3人掛けの8人乗りより、この7人乗りのほうが売れている。ユーザーはもはや、乗車定員は多いほどいいとは考えていないんじゃないだろうか。3列目は2人掛けとしたほうがあらゆる面で自然だ。
乗り心地は直下にある後輪からの突き上げをうまく抑えるなど、2列目より快適に思える。エアコンの吹き出し口はインパネにしかないが、効きは最後席でも不満なかった。
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(荷室)……★★★
とにかく床の低さに圧倒される。そのぶんリアゲートは天地に長く、開けるときに後ずさりする必要があるが、リアサスペンションの出っ張りも最小限で、天井は高く、かなりの大物が積めそうだ。3列目の折り畳みはレバーで背もたれを前に倒したあと、ストラップを引っ張りながら持ち上げてフックを引っ掛け、最後に足を畳むのだが、イスを持ち上げながらフックを引っ掛けるのは、かなりタイヘン。このクラスの3列目は、もっと軽く簡潔な作りでいいと思うのは自分だけだろうか。年に1〜2度しか6人以上を乗せる予定がないという人は、2列シート5人乗りの「フレックス」シリーズを買ったほうがあとあと「こっちを選んでよかった」と思えるはずだ。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
1.5リッターi-VTECエンジン、FFがCVTで4WDが5段ATのトランスミッションという組み合わせは「フィットRS」と共通。118ps/14.7kgmというスペックもほぼ同じだ。今回乗ったFFでボディは200kgほど重くなるが、加速に不満はない。以前『webCG』で試乗記を紹介したフィットRSでは、MTの楽しさを帳消しにするような回転落ちの悪さをはじめ、スポーツマインドが感じられないことが気になったが、フリードはミニバンだからそういう気持ちは抱かずに済んだ。発進時の飛び出しはなく自然で、その後もリニアな加速を示してくれ、100km/hは約2000rpmと低い回転に抑えてくれるので、あらゆるシーンで車格を超えた、落ち着いたドライビングを味わうことができた。
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(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地は街中では硬めに感じることがあるものの、姿勢をフラットにキープし、鋭いショックはうまく丸めてくれる。シビックより長い2740mmのロングホイールベースも、快適性に効いているはずだ。もっとも高速道路や山道に入って、路面からの入力がしたたかになると、もう少しストローク感が欲しいと思ったのも事実。
電動パワーステアリングは軽めだけれど、切れ味にフィットのような曖昧さはなく、しゃきっとしている。聞けば上級車に採用しているブラシレスモーターをおごったという。高速道路では意図的な重さに違和感を持つこともあったが、直進安定性そのものはいい。その後の身のこなしも自然で、なおかつロングホイールベースならではのゆったりした動きが、ミニバンにふさわしい穏やかな空気を作り出していた。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2008年6月24日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:3720km
タイヤ:(前)185/65R15(後)同じ(いずれも、ヨコハマS76)
オプション装備:プレミアムナイトブルーパール(3万1500円)/Honda HDDインターナビシステム(23万1000円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(5)
テスト距離:313.2km
使用燃料:26.4リッター
参考燃費:11.86km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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