レクサスISプロトタイプ【海外試乗記】
 大器の予感 2012.12.25 試乗記 レクサスIS250“Fスポーツ”プロトタイプ(FR/6AT)/IS350“Fスポーツ”プロトタイプ(FR/8AT)/IS300h“Fスポーツ”プロトタイプ(FR/CVT)ダイナミックに変貌しつつあるレクサス。次なるニューモデルは「IS」だ。カムフラージュが施されたプロトタイプにロサンゼルスで試乗した。
待望のハイブリッド仕様が登場
ロサンゼルス郊外の、普段は競馬場の駐車場だというクローズドの会場に到着すると、そこには何台もの擬装が施されたモデルが並べられていた。これから乗るのは、まだ世間には概要が明らかにされていない次期「レクサスIS」のプロトタイプ。それゆえに厳重なカムフラージュが行われていたのである。
提供された情報もごく一部だけ。ボディーサイズについては、全長が75mm伸びて4660mmに、全幅が12mm広がって1812mmとなるなど、わずかに拡大されていると説明された。その主な理由は後席、そして荷室の拡大で、特に後席はホイールベースが同時に70mm延長されたこと、前席シートバックの形状見直し等々も相まって、前後長が95mmも大きくなったという。
このボディーは、剛性アップも徹底的に図られている。スポット溶接箇所を増やすのみならず、「LS」から先に採用されたものの本来はこのISにて開発を進めていたレーザースクリューウェルディング、接合面への接着剤の塗布といった新しい生産工程を採り入れることなどにより、土台をしっかり鍛えているのである。
シャシーは端的に言えば「GS」用の短縮版だ。中立付近の操舵(そうだ)感を改善するべくステアリングギアが見直されたほか、サスペンションも形式こそ変わらないながら、すべてが刷新されている。
パワートレインは3種類を用意する。「IS250」には従来通りのV型6気筒2.5リッター直噴エンジン+6段ATを搭載。「IS350」には同3.5リッターユニットに新たに8段ATを組み合わせた。そして新設定の「IS300h」は、新開発の直列4気筒2.5リッター直噴エンジンを用いた待望のハイブリッドシステムを積む。今回は、この3つのパワートレインすべてを、クローズドコース内でのパイロンスラローム、そして高速道路やワインディングロードなどの一般道にて試すことができた。なお、用意されていたのは全車、内外装をスポーティーに設(しつら)えたほか、シャシーを専用セッティングとした「Fスポーツ」であった。
乗り心地がより上質に
まず乗ったのはIS350。D-4Sユニットは相変わらずパワフルかつ爽快な吹け上がりを楽しませてくれる。一方、通常の加速の際には8段ATが矢継ぎ早にシフトアップを繰り返して、エンジン回転を高めることなくスルスルと速度を上げていく、今っぽいフィーリングがもたらされている。
新しいシャシーは、このパワーを余裕で受け止めている。剛性感の高いボディーを土台にしなやかに動くサスペンションが路面の凸凹を滑らかにいなし、姿勢の乱れの少ないフラットな乗り味を実現。AVS(減衰力可変ダンパー)の恩恵もあるが、やはり基本となるボディーとシャシーのポテンシャルが格段に高まっているのだろう。パツンとした現行ISの乗り味からすると、一気に上質感が増した印象である。
開発の狙いの通りステアリングはセンター付近が締まっていて、直進時でも気持ち良さが味わえる。「IS350 “F SPORT”」にはVGRS(ギア比可変ステアリング)が備わることもあり、ターンインも上々の心地よさだが、ノーズが内側を向き始めた辺りからは、ちょっと切れ味が鈍る。鼻先が入らないというか、リアが粘り過ぎるという感覚。切り足せば曲がるのだが、舵角は全体にかなり大きめだ。
IS250のパワートレインは基本的には変わっておらず、違いはサウンドジェネレーターが装備されたことぐらい。しかし、もともと気持ちの良いエンジンであり、6段ATとのマッチングも悪くないだけに、実は走らせていても案外気持ち良かったというのが正直な印象だ。とはいえ、少なくとも将来的には、やはり多段ATにアイドリングストップぐらいはほしいところではある。
ファン・トゥ・ドライブな「IS300h」
期待のIS300hは、ヨーロッパでCO2排出量100g以下を狙う戦略モデルである。しかし草食系というわけではなく、2.5リッターエンジンの排気量の余裕もあって、走りはしっかりパワフルだ。トランスミッションには疑似マニュアルモードが備わり、パドルシフトもできるが、ダイレクト感はそこそこ。むしろCVT特有のエンジン回転先行感が薄められたDレンジの方が、リニアで意のままになる走りを楽しめた。
面白いのはフットワーク。バッテリーを荷室下に積むIS300hは、おかげで前後重量バランスに優れ、ハンドリング特性は最もニュートラルに感じられた。乗り心地も上々で、シャシー性能の面でハイブリッド特有のネガはないという印象だ。
雄大なワインディングロードを攻めたてた後、クルマを止めて、あらためてその姿を眺める。横から見たシルエットなどは、いかにもISらしい個性を踏襲しているが、模様の奥に透けて見えるヘッドランプは結構大胆な造形と映るし、サイドパネルも抑揚が増している。タイヤが小さく見えるのが気になるが、さて擬装の奥には一体どんな肢体が隠れているのだろうか。
一方のインテリアは、横基調レイアウトの今のレクサス流。外観同様、少々落ち着いてしまった感もあるが、 F SPORTには大画面液晶と可動式メーターリングを使った「LFA」譲りの“Fメーター”も備わるなど新しさも備わっている。
デビューは1月のデトロイトモーターショーとうわさされる新型IS。発売は、つまり春ごろだろうか。どこまで熟成された姿で登場するのか、期待したい。
(文=島下泰久/写真=トヨタ自動車)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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