ホンダ・フリードハイブリッドG Honda SENSING(4WD/7AT)/フリード+G Honda SENSING(FF/CVT)/フリード+ハイブリッドEX(FF/7AT)
すべての人を満足させよう 2016.11.07 試乗記 ホンダのコンパクトミニバン&ハイトワゴンの「フリード」シリーズがフルモデルチェンジ。ハイブリッドのFF車、ハイブリッドの4WD車、そしてガソリンエンジンのFF車と、3つの仕様に一斉試乗し、2代目となった新型の実力を確かめた。フィット譲りで安心のフォルム
「8割9割の方はポジティブに受け止めていただいていますが、なんでこんな形にしたんだと言う方もいらっしゃいます」
2015年8月、「トヨタ・シエンタ」の試乗会で主査の粥川 宏さんが語っていた言葉である。フレンチな感触のオシャレ系デザインは際立っていたが、誰もがなじめたわけではない。コンサバな感性を持つ人々にとっては、「フィット」との近縁性が明らかな、ホンダ・フリード/フリード+のフォルムには安心感がある。
フリードがデビューしたのは2008年。3列シートを備えるコンパクトミニバンで、さらにさかのぼると2001年の「モビリオ」に行き着く。2002年には3列目を取り去った「モビリオスパイク」が登場し、2010年に「フリードスパイク」へと進化した。今回のモデルチェンジで車名が統一され、3列シートがフリード、2列シートがフリード+となったわけだ。
フリードは累計生産台数が58万台になり、ホンダの主力車種の一つに成長した。新型も1カ月で2万7000台を受注する好調なスタートである(販売計画は月6000台)。シエンタが売れ行きを伸ばすのを横目に、フリードのモデルチェンジを待ち望んでいたユーザーも多かったのだろう。1.5リッターガソリンエンジンとハイブリッドの2本立てなのはシエンタと同じで、27.2km/リッターという最良の燃費もまったく同一。新しいボディーカラーの「シトロンドロップ」はシエンタの「エアーイエロー」にそっくりだ。ユーザーの選択を左右するのは、デザインやユーティリティーである。
販売状況を見ると、フリード:フリード+の比率は74:26、ハイブリッド:ガソリンは53:47となっている。シエンタはガソリン車が6割ほどを占めていて、フリードはハイブリッドが健闘していると言える。
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雪国ユーザーに朗報のハイブリッド4WD
ボディータイプとパワーユニット、駆動方式の違いで豊富なバリエーションが展開されている。今回試乗できたのは、4WDのフリード ハイブリッド、FFのフリード+、FFのフリード+ ハイブリッドの3車種。新しいハイブリッドシステムで注目されているのは、モーターの磁石にジスプロシウムやテルビウムなどのレアアースが一切使われていないこと。従来の焼結工法ではなく熱間加工法を用いることで、耐熱性を確保する技術が採用された。ジスプロシウムは99%が中国産で、2013年の輸出制限騒動で肝を冷やしたのは記憶に新しい。エコカーを安定して作り続けるための、地味にスゴイ技術なのだ。
雪国のユーザーに朗報となったのが、初めて設定されたハイブリッドの4WDモデルである。低燃費と滑りやすい路面での安全を両立したのだ。従来は3列目シートの下に置かれていたIPU(インテリジェントパワーユニット)を前席下に移動し、リアディファレンシャルの配置を可能にした。プロペラシャフトを通すために、4WD用のIPUは専用設計となっている。ユニットの前後長が55mm短くなり、重量は43kgから37kgにダウン。システムの小型化で車内スペースが拡大した。低床化の恩恵で、フリード+には車いす仕様車の設定もある。
フリード ハイブリッド4WDは、思いのほか重厚な乗り味だった。あるいは、少々重ったるいと言ってもいいかもしれない。実際にFFモデルより重いのはもちろんだが、数字以上に重量感がある。発進加速では強めのモーターアシストを感じるのだが、それが必ずしも力強い走りに結びついていない。
今回のモデルチェンジでは、2列目シートの居住性向上がアピールポイントとなっている。1~3列目のヒップポイント間距離が先代より90mm伸ばされていて、6人乗りのキャプテンシートは360mmのロングスライドを実現。「ステップワゴン」並みというのは言いすぎだが、ゆったりとした空間なのは確かだ。3列目はまあこんなところだろう。ガマンを強いられるというほどではないが、できれば2列目に座りたい。3列目は従来通りの跳ね上げ式で、収納するには多少の力を要する。
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荷室がセミダブルベッドに
フリード+のリアハッチを開くと、衝撃的な違和感に襲われる。ぽっかりと口を開けた空洞が異様なのだ。床面は地面につきそうなほど低い。「フリードスパイク」に比べて開口部地上高は185mmも低い335mmとなった。ゴルフバッグをタテ積みで4個も置ける大空間である。3列目シートは常に収納したままという使い方のユーザーは、フリード+を選んだほうがいいだろう。
大荷物を載せる機会はそれほど多くないだろうから、通常は「ユーティリティボード」を使って上下に分割して使うことになる。荷室の左右にはそれぞれ10個ずつ「ユーティリティナット」が備えられていて、工夫次第でいろいろな使い方ができそうだ。ダブルフォールダウン機構を持つ2列目シートを収納すれば、ユーティリティボードを使って広大なフラットスペースを作り出せる。そのままでは段差があるが、クッションマットを敷けばセミダブルサイズのベッドとして使えるのだ。
耐荷重は200kgなので、メイプル超合金クラスでなければ2人並んで車中泊ができる。荷物はアンダーラゲッジスペースに積んでおけばいい。ルーフラックやラゲッジマルチボード、テールゲートカーテンなどのオプションが充実しているので、テントを持たずにキャンプに行ける。あまり考えなくないが、万が一災害に遭った時もしばらくはこれでしのげるだろう。
ガソリンエンジンモデルを運転してみると、先ほどのハイブリッド4WDより動きははるかに軽快だ。鼻先が軽い感じで、キビキビとした走りが心地よい。1.5リッター直噴エンジンは130psだから110psのエンジンと29.5psのモーターを組み合わせたハイブリッドシステムより数値的には劣るが、加速性能は上回っているという。路面の細かな凹凸を拾って振動が生じるのが少し気になるものの、大問題というほどではない。
最後に乗ったFFのフリード+ ハイブリッドが、最も印象がよかった。乗り心地はしなやかで、元気さではガソリン車に劣っても高級感のある走りだ。4WDモデルで感じた重ったるさはなく、ハイブリッドの利点のみが前面に出ている。最上級グレードの「EX」でアルミホイールが装着されていたことが影響したのかもしれない。ブレーキの感触は、4WDモデルも含めてナチュラルだ。
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自然な働きの車線維持支援システム
いずれのモデルでも、運転席は居心地のいい場所である。広々とした視界が開放感をもたらす。フロントピラーを2本にして三角窓としたのは昨今のトレンドに沿っている。メーターパネルを薄くして上面をフラットにしたのも最新のスタイルだ。前方視界は上下左右ともに広がり、運転席からの眺めは良好である。
エアコン操作のダイヤルは、温度を高くしようとすると赤く、低くしようとすると青く光る凝った仕掛けだ。メーターの照明は、青・赤・黄色など6色から選んでカスタマイズすることができる。メーター色は乗るたびにランダムに色が変わる設定もあるが、ピンクやバイオレットだと落ち着きのない空間になってしまうことを覚悟しなければならない。
先進安全運転システムの「ホンダセンシング」はグレード名になっている。スバルの「アイサイト」と同じ扱いだ。ホンダセンシング装着率は82%に達しており、今や必須の装備なのだろう。ミリ波レーダーと単眼カメラを連携させてクルマのまわりの状況を認識し、衝突軽減ブレーキや歩行者事故低減ステアリングなどで運転を支援する。
高速道路上で、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)とLKAS(車線維持支援システム)を試してみた。意外だったのはLKASの作動ぶり。車線の真ん中を保って走るようステアリング操作を支援する機能で、日産の「プロパイロット」もどきである。しかも、ハンドルへの介入はこちらのほうがマイルドで自然だった。ただ、たまに車線を認識できなくなることがあったし、ACCも渋滞時の追従走行には対応していない。日進月歩の技術であり、まだまだ改善の余地は残されている。
フリードに乗るのは子育て層の女性が多く、フリード+は子離れ層の男性がメインだという。2つのパッケージングを用意することでより多くの需要に応えようとしている。先代の「ちょうどいい」というキャッチコピーに、今回は「いつでも・どこでも・だれでも」という言葉も加えられた。フィットのCMでは「世界のすべての人をたった1台のクルマで満足させよう」と語られているが、この言葉はフリードにこそふさわしいのかもしれない。
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ホンダ・フリード ハイブリッドG Honda SENSING
- ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4265×1695×1735mm
- ホイールベース:2740mm
- 車重:1490kg
- 駆動方式:4WD
- エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
- モーター:交流同期電動機
- トランスミッション:7AT
- エンジン最高出力:110ps(81kW)/6000rpm
- エンジン最大トルク:13.7kgm(134Nm)/5000rpm
- モーター最高出力:29.5ps(22kW)/1313-2000rpm
- モーター最大トルク:16.3kgm(160Nm)/0-1313rpm
- タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(ダンロップ・エナセーブEC300)
- 燃費:25.2km/リッター(JC08モード)
- 価格:272万8200円/テスト車=296万5800円
- オプション装備:Hondaインターナビ+リンクアップフリー+ETC車載器<ナビ連動>(18万9000円)/i-サイドエアバッグ+サイドカーテンエアバッグ(4万8600円)
- テスト車の年式:2016年型
- テスト開始時の走行距離:2525km
- テスト形態:ロードインプレッション
- 走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
- テスト距離:--km
- 使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
- 参考燃費:--km/リッター
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ホンダ・フリード+ G Honda SENSING
- ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4295×1695×1710mm
- ホイールベース:2740mm
- 車重:1360kg
- 駆動方式:FF
- エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
- トランスミッション:CVT
- エンジン最高出力:131ps(96kW)/6600rpm
- エンジン最大トルク:15.8kgm(155Nm)/4600rpm
- タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(ダンロップ・エナセーブEC300)
- 燃費:19.0km/リッター(JC08モード)
- 価格:212万円/テスト車=231万4400円
- オプション装備:ボディーカラー<ホワイトオーキッドパール>(3万2400円)/ナビ装着スペシャルパッケージ(4万3200円)/LEDヘッドライト+LEDアクティブコーナリングライト(7万0200円)/Cパッケージ+コンフォートビューパッケージ(4万8600円)
- テスト車の年式:2016年型
- テスト開始時の走行距離:1005km
- テスト形態:ロードインプレッション
- 走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
- テスト距離:--km
- 使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
- 参考燃費:--km/リッター
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ホンダ・フリード+ ハイブリッドEX
- ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4295×1695×1710mm
- ホイールベース:2740mm
- 車重:1430kg
- 駆動方式:FF
- エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
- モーター:交流同期電動機
- トランスミッション:7AT
- エンジン最高出力:110ps(81kW)/6000rpm
- エンジン最大トルク:13.7kgm(134Nm)/5000rpm
- モーター最高出力:29.5ps(22kW)/1313-2000rpm
- モーター最大トルク:16.3kgm(160Nm)/0-1313rpm
- タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(ダンロップ・エナセーブEC300)
- 燃費:26.6km/リッター(JC08モード)
- 価格:267万6000円/テスト車=286万5000円
- オプション装備:Hondaインターナビ+リンクアップフリー+ETC車載器<ナビ連動>(18万9000円)
- テスト車の年式:2016年型
- テスト開始時の走行距離:1038km
- テスト形態:ロードインプレッション
- 走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
- テスト距離:--km
- 使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
- 参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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