第421回:キーワードは“電化”と“自動運転”
「Honda Meeting 2017」でホンダの最新技術に触れた(後編)
2017.06.15
エディターから一言
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(前編)からの続き。
ホンダが、現在開発中の新技術をメディア向けに紹介する「Honda Meeting(ホンダミーティング)2017」を開催した。自動運転をはじめとした注目の新技術とともに、八郷隆弘社長が語ったホンダの未来像を紹介する。
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間もなく実現する自動運転技術を試す
およそ1年半ぶりに開催されたホンダの技術イベント「ホンダミーティング2017」。前編では電動車両の技術を中心に紹介したが、後編となる今回は、自動運転を中心とした安全・安心技術を中心に紹介する。
今回のイベントでホンダが公開したのは、高速道路での自動運転を想定した実験車両と、一般道での自動運転を想定した実験車両の2種類だ。このうち、高速道路での自動運転を想定した実験車両は「ほぼこの構成で2020年に実用化する」(開発担当者)というもので、完成度は高い。
実験車両は「レジェンド」をベースにしたもので、高精度のGPS(全地球測位システム)アンテナや、高精度地図データ、各種センサーを搭載したものだ。特徴的なのは、センサー系をミリ波レーダー系とレーザーレーダー系の2系統に完全に分けたことで、仮にひとつの系統が故障したとしても、残りの系統で安全に停止できるように配慮している。
ひとつのセンサー系は1台の単眼カメラと5台のミリ波レーダー、もうひとつは1台の単眼カメラと5台のレーザーレーダーで構成されており、それぞれの系統に専用のECUが組み合わせられている。またブレーキ、電動パワーステアリング、電源系なども、それぞれ二重化されている。
走行中の車内でテレビ電話を体験
試乗は、本田技術研究所内の周回コースで実施された。まずは手動運転で周回路に入り、ステアリングホイールに設けられた自動運転開始のスイッチを押す。インジケーターが青く点灯してクルマは自動運転モードに入り、所定の速度まで加速。前方を走る車両に近づくと、自動的に車線変更をして追い抜き、追い抜きが完了すると元の車線に戻った。その一連の挙動は非常に安定していて、不安を感じることはなかった。
次にクルマは別の先行車両に近づくと、今度は追い抜くのではなく、渋滞走行を想定してその後ろをゆっくり走り始めた。ここでスカイプを利用したテレビ電話がかかってきて、カーナビ画面の向こう側の女性と対話するというデモを体験。この段階では車両は「レベル3」を想定した自動運転モードに入っており、ドライバーはクルマや周辺環境を監視する必要がないのだ。
そうこうするうちに先行車両が速度を上げて、車間距離が開く。渋滞走行モードを解除する必要があるが、そのためにはドライバーが走行の監視に戻っていることをシステムにアピールする必要がある。ドライバーが顔を正面に向けると、渋滞走行モードは解除され、クルマは再び加速し始めた。周回コースから外れてクルマの発着場に戻るためには、再び手動運転モードに戻す必要があるが、その方法はステアリングを手で握るだけでいい。
カメラだけで一般道を自動走行
もう1台の実験車両は一般道の走行を想定したもので、大きな特徴は3台のカメラだけで自動運転を可能にしていることだ。ただホンダは、カメラだけで自動走行することは考えていない。「人間は目だけで運転しているので、カメラだけでも人間並みの安全性には到達できるはず。そこに他のセンサーも加えることで、人間以上の安全性を実現する」(開発担当者)というのが開発の狙いだ。
今回の実験車両に搭載されているのは、道路を認識し、正しく走行する機能である。3台のカメラは正面と左右をそれぞれ向いており、広い画角を確保している。ただし、歩行者や他の車両を認識する機能や、標識の意味を認識する機能などはまだ搭載されていない。まずは一番基本となる道路をきちんと認識して走行する技術を確立してから付加していくとのことだ。
道路の認識で難しいのは、白線が消えかかっていたり、雨による路面の反射で見えにくくなっていたり、あるいは夜間で明るさが足りないような場合だ。今回の実験車両では、人工知能技術の一種である「ディープラーニング」を使い、こうした状況でも高い認識率で車線を把握できるようになった。
デモでは運転席に座ることはできず、同乗試乗となった。本田技術研究所敷地内の移動用の道路を一般道に見立てて、カーブに沿った自動走行や、停止線での一時停止、再発進しての交差点での右折などを体験した。こちらは、車内のモニター画面で、カメラが車線を認識して走行軌跡を生成する様子をリアルタイムで確認することができるのだが、車線を認識できない状況に陥ることはなかった。
生活を豊かにする企業を目指したい
電動化と自動運転以外では、二輪車の安全技術に関する展示もあった。世界中で二輪車の安全教育に用いられている「ライディングトレーナー」、急ブレーキをかけるとハザードランプが高速で点滅する「エマージェンシー・ストップ・シグナル」、小型スクーターにも搭載できる二輪車用エアバッグの3つだ。
このうち、二輪車用エアバッグはすでに大型二輪車では実用化しているが、搭載スペースやコストで制約のある小型スクーター用のエアバッグは実用化されていない。開発中のエアバッグは、二輪車が中型セダンの側面に衝突したことを想定した試験で、エアバッグなしでは瀕死(ひんし)のレベルの負傷をするところが、エアバッグありでは傷を負わないレベルまで負荷が低減されたという。
こうした個々の技術の公開に加え、ホンダは2030年にあるべき自社の姿を「2030年ビジョン」としてまとめ、今回のイベントで公開した。その中には「モノづくりだけでなく、コトづくりを含むソリューション創出力」「すべての人に生活の可能性が拡がる喜びを提供する」 といった、これまでの「パーソナル・モビリティーメーカー」としてのホンダの枠を超える内容が含まれていた。八郷隆弘社長にその真意を聞いた。
Q 「2030年ビジョン」には「コトづくり」や「生活の可能性」といったモビリティーの枠を超えた内容が含まれています。ホンダはモビリティー企業をやめるのでしょうか?
A ホンダは、創業者の本田宗一郎が自転車にエンジンを付けた「バタバタ」で創業して以来、一貫して人々の生活を豊かにするための製品を作り続けてきました。その意味で、人々の生活の価値を高めていく、というこれまでの方針に変わりはありません。ただ、高齢化社会の中で移動困難な方が増加したり、あるいは所有ではない価値といった新しい社会の動きが出てきたりしています。こうした新しい価値にどう対応していくかを、いま考えているところです。
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未来を見据えた大きな方向転換の表れ
今回のイベントを通じて感じたのは、ホンダが研究開発の方針を大きく転換しようとしていることだ。これまでホンダは電動車両としてはハイブリッド車(HEV)や燃料電池車(FCV)に力を入れてきたが、今回のイベントの中で、今後は電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)に力を入れる方針を明確にした。
また自動運転でも、これまでは完全自動運転の実用化には慎重だったが、今回のイベントではパーソナルユースでの「レベル4」(速度領域や走行エリアなど限定された条件下での完全自動運転)を2025年をめどに実用化することも表明した。ライドシェア向けの車両では、独BMWや米フォード・モーターなどが2021年のレベル4の実用化を表明しているが、パーソナルユースの車両でのレベル4の実用化を表明したのはホンダが初めてだ。
こうした研究開発の成果の一部は、今年秋の東京モーターショーで展示される見込みだ。変わりつつあるホンダの今後を引き続き注目したい。
(文=鶴原吉郎/写真=本田技研工業、webCG/編集=堀田剛資)

鶴原 吉郎
オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。
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