第200回:色即是空のカーマニア道
2021.02.15 カーマニア人間国宝への道マイチェンで走りは変わったのか?
「ポルシェ・タイカン」だ「GRヤリス」だと、さまざまな超ど級マシンで夜の首都高に出撃している今日この頃だが、実は私は、もっと落ち着いた穏やかなクルマが好きである。バカでもわかる大パワーもいいが、本当はじわ~っと良さが伝わるようなシブ~いクルマが大好物なのである。
打ってつけのクルマに乗る機会がやってきた。マイナーチェンジを受けた「マツダ3ファストバック」の「15S」で、6段MT車だ。傑作との誉れ高いあのデザインに、最もショボい1.5リッター直4の「スカイアクティブG」を積み、トランスミッションは6段MT、タイヤは16インチ、お値段222万1389円(車両本体価格)。まさに良識のカタマリだ。これぞカーマニアにしかわからない色即是空の世界。
マツダ3といえば、1年半前の登場時は、期待が高すぎたせいでスカだった。マツダがあれだけ自信満々で送り出した割に、サスペンションがしなやかに動かず、路面の凹凸でポンポン跳ねて不快だった。今回のマイナーチェンジでは、そのあたりも改善されたという。
どんなもんかと思って走りだすと、おおっ、確かに改善されている! しとやかに走るぜ! じわ~っといいじゃないか! これならカーマニアとして合格点を出せる。
カチカチ決まる6段MTのフィーリングは、「ロードスター」よりも気持ちいいくらいである。エンジンはさすがに非力だが、よくできた6段MTを駆使し、乏しいパワーを有効に使うヨロコビもまたカーマニア的に奥深い。インテリアの質感も高く、安グルマに乗っている感覚はゼロ。これぞ真の貴族カーかもしれない。うむう、コイツで夜の首都高に出撃せずにおらりょうか。
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首都高はマツダ祭りの様相
首都高に乗り入れると、さすが色即是空の15Sだけに、なんのドラマ性もない地味~ないいクルマ感が満点だ。1.5リッターのスカイアクティブGは、いかに6段MTを駆使したところで、どこから踏んでもスカスカだが、フツーに流すにはこれで十分。その晩はマニアックなクルマとの出会いもないままに、首都高・辰巳PAに到着した。
このクルマ、夜のモーターショー会場・辰巳PA的には非常にショボい部類に入るが、傑作デザインのオーラはすさまじく、むしろ真のカーマニア物件ここにあり! という空気感すら漂わせている。隣にポルシェやフェラーリが止まっても、気後れはしないだろう。さすが15Sの6MTだぜ!
帰路。淡々と走っていると、後方からカーマニアの気配がほのかに漂ってきた。
おおっ、あれは現行型ロードスター! しかも真冬のオープンだ! これぞカーマニアのかがみ!
私はロードスターが走る姿を眺めるため、ためらわず尾行した。
やはりロードスターは美しい。マツダ3も美しいがロードスターはもっと美しい。ああ、日本にロードスターがあってよかった。
江戸橋JCTでロードスターと別れ、今度こそ帰路につくべく淡々と走っていると、激しいヤル気をほとばしらせたマシンが迫ってきて、思わず道を譲る。
ブチ抜いていったマシンは、最後のロータリーといわれている「RX-8」~~~! うおおおお、今夜はマツダ祭りだぜ!
私は“エイト”を尾行すべく、1.5リッターのスカイアクティブGにムチをくれた。
さすがエイトはロードスターとはケタ外れのヤル気に満ち、尾行はなかなかに困難である。いかにクロウト受けの1.5リッタースカイアクティブGといえども、こういうシーンでは全域でのパワー/トルクの薄さがものすごいハンデ! シフトダウンしようが何をしようが全域で遅い! うおおおお、夜の首都高では遅すぎるぜ、マツダ3の15S 6MTよ!
エイトに引き離されつつ、最後は「アバルト595」にブチ抜かれて戦線離脱。さすがに色即是空すぎたか……。もっとパワーを!
ベストなマツダ3は?
数日後。私はマツダ3のマイナーチェンジモデル試乗会に参加すべく、横浜へ向かった。
そこには、1.8リッターディーゼルおよび2リッター「スカイアクティブX」の、新旧(マイチェン前と後)マツダ3が用意されていた。同時に乗り比べてその違いをご体感くださいという、いかにもマツダらしいこだわりである。
ディーゼルもXも、改良により微妙にエンジンフィールが向上していたが、私が衝撃を受けたのはそこではなく、足まわりだった。なんと新旧、ほとんど違いがなかったのだ!
つまり、1年半前に「ポンポン跳ねて不快」と感じたクルマ(同じ個体)の足まわりが、走行約1万km前後ですっかりなじみ、改善されたはずの新型(走行1000km台)と、ほぼ変わらなくなっていた!
「そういうことだったのか~~!」
ロードスターをはじめ、最近のマツダ車に感じていた足まわりの突っ張り感は、新車ゆえのもので、1万kmも走れば別の印象になるらしい。
マイチェンされたマツダ3は、その初期の当たりのキツさ含めて乗り味を改善すべく、全グレードのサスペンションに手が入れられた。フロントサスは、スプリングとバンプストッパーの特性変更に加え、ダンパーも減衰特性を変更。リアサスも、ダンパーの特性変更が行われたという。
目で見てわかりやすい変更はバンプストッパーということで、画像を見せてもらったが、ゴムの溝が2つから3つに増えて、見るからにちょっとだけ当たりが優しそう~! ただし、「形だけでなく、素材も変化しているので、見た目の違い=特性ではないことをご留意いただければ幸いです」とのこと。そこまでこだわって説明するマツダ開発陣のマニアックさに脱帽するしかない。
結局、マツダ3のベストな選択は、マイチェンを受けた「XD」(1.8リッターディーゼル)の6段ATだなと思いました。応答性の良くなったディーゼルターボなら、エイトに軽くちぎられることもあるまいて。
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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