第640回:個性よりもバランス グッドイヤーのミニバン専用タイヤ「エフィシェントグリップRVF02」を試す
2021.02.26 エディターから一言 拡大 |
快適性を追求したミニバン専用タイヤ──そう銘打たれた新製品が、「グッドイヤー・エフィシェントグリップRVF02」である。偏平率が65%から35%で、13インチから20インチの全40サイズがオープン価格で2021年3月1日に発売される。
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コンフォート系に路線変更
タイヤに詳しい人は、その商品名からこのタイヤが、やはりミニバン専用をうたった同社の「RV-F」の実質的後継モデルであることに気づくはず。さらに博識な人ならば、同じようにミニバン専用をうたうモデルでありながら、これまでの「イーグル」から「エフィシェントグリップ」へと、グッドイヤーのタイヤラインナップ内で冠するブランド名、すなわち属するカテゴリーが変更されたことにも気づくだろう。
グッドイヤーの乗用車用サマータイヤは、スポーティーさを前面に押し出したイーグル系と、快適性や経済性を前面に押し出したエフィシェントグリップ系に大別できる。かくして、ミニバン用タイヤは今回、商品戦略上の立ち位置を前者から後者へと移すことによって、より明確に快適性の高さを訴求する方向へと舵を切ったといえる。
専用タイヤならではの工夫
従来モデルであるRV-Fが発売されたのは2014年2月。それから丸7年が経過してのニューモデルであることから、骨格構造から採用するコンパウンド、さらには商品力にも直結する見た目(パターンデザイン)などに至るまで、主たる進化ポイントは枚挙にいとまがない。
同じ乗用車とはいえ、セダンやステーションワゴンに比べれば、「重量がかさみ、車高・重心高がより高い」というミニバン特有のハンディキャップに対応するべく、まずはクルージング時のふらつきやコーナリング時の腰砕け感、さらに使用過程での偏摩耗への対策として、左右非対称で接地部分、いわゆるランド比を多めにとった新デザインのパターンを採用するというのが、ミニバン専用たるRVF02の特徴のひとつ。
さらに快適性の追求における代表的な技術が、「新形状ラウンドサイドウォール」である。これは、トレッド端からサイドウォールにかけての曲率をプログレッシブなものとすることで振動周波数を分散させ、マイルドな乗り心地を実現させるというものだ。
同様に、振動周波数にピークをつくらずあえて広範囲に散らす工夫が、トレッド面にもみられる。ショルダーブロック部分のピッチ数を増やすと同時にその間隔もランダムとすることで、踏み込み音とパターンノイズを低減させるという。
燃費性能にも自信あり
車重がかさみ車高も高いという特徴ゆえコーナリング時にタイヤ外側に負担が集中し、結果的に偏摩耗を起こしやすいというミニバンにありがちな弱点を克服すべく、走行時の接地圧分布のコントロールにあらためて注力したのも、エフィシェントグリップRVF02の特徴だ。具体的には、断面プロファイルやトレッド内部のベルト/オーバーレイヤーの最適化などによって接地形状を見直すことで、接地圧分布の均一化が図られているという。
こうして、摩耗ライフ性能を向上させるとともにこのタイヤで見逃せないのは、ラベリング制度で全サイズ「AA」ランクを獲得したという優れた燃費性能である。
これは先に、「振動が分散されることで快適性が向上する」と紹介した新形状ラウンドサイドウォールが、同時に軽量化と発熱抑制も実現し転がり性能の向上にも寄与。さらにより微細化されたシリカがポリマーと効率よくつながり、こちらも発熱を抑制し燃費性能を向上させる新コンパウンド「フューエルセービングラバー02」が効果を発揮した結果であると説明されている。
そんな新タイヤを装着しての試走を、今や日本を代表するミニバンである「トヨタ・アルファード」を用いて行った。テストフィールドは富士スピードウェイ内の施設であるトヨタ 交通安全センター モビリタ。完全舗装が施された路面は基本均一で、交通量が少なく管理が行き届いているために荒れた部分がほとんど見当たらない。そこにパイロンで屈曲コースなどが設定されたが、試走がリアルな路上からは少々現実離れした舞台に限られてしまったのは残念だ。
それでも、散水によるウエット区間や路面の継ぎ目などを模したセクションも用意され、ひと通りのシチュエーションチェックを行うことができた。荒れた路面での乗り味や摩耗に関する部分など、今回用意された舞台では確認し切れていない領域はあるものの、エフィシェントグリップRVF02の第一印象は、まずはミニバン専用を名乗るのに不満のないものだった。
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うたい文句に偽りなし
スタートしてみると、感じられたのはいい意味で「普通の乗用車タイヤだな」という印象であった。ミニバン専用をうたうタイヤの場合、重量級のモデルにも対応するべくケース剛性なども高めとした構造を備えるのが常。しかし、そうした特徴を意識させられるような硬さを覚えることもなく、むしろ路面に対する当たりはマイルドであると好意的に捉えることができた。
また、ステアリング操作に対する遅れなども感じられず、クルマの動きはすこぶるリニア。このあたりが良い意味で、普通のタイヤという感想につながったのだ。
平滑な路面では減速時の前輪やコーナリング時の外側輪など、特に荷重が増すタイヤからのパターンノイズが耳につきやすいものだが、それがほとんど感じられなかった点にも好印象を抱くことができた。普段乗り慣れない路面でのチェックゆえ絶対的な評価を下すことはなかなか難しかったが、「ロードノイズも比較的小さいタイヤだな」と思えたのは事実。少なくとも静粛性を追求し、快適性を向上させたというそのうたい文句に偽りはないといえそうだ。
ランド比をアップしたとアナウンスされつつも、高い排水性を備えることは複数の太いストレートグルーブが目を引くトレッドパターンからも予想できたが、実際にウエット路面でも何ら不安なく、高めの速度でも水膜の上をしっかりした接地を感じながら通過することができた。
良くも悪くも際立った個性は見当たらない一方で、それが幅広い車種とマッチしそうなトータルバランスの高さへとつながっているという印象のニュータイヤであった。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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