レクサスCT200h“バージョンL”(FF/CVT)【試乗記】
プリウス以上、レクサス未満 2011.02.28 試乗記 レクサスCT200h“バージョンL”(FF/CVT)……470万3200円
“ハイブリッドのプレミアムコンパクト”をうたう「レクサスCT200h」。あまたの高級車を試してきた巨匠 徳大寺有恒は、どう評価する?
拡大
|
拡大
|
拡大
|
プロトタイプはダメだった!
松本英雄(以下「松」):今日の試乗車は「レクサスCT200h」。昨年秋にプロトタイプを試乗しましたが、あれの市販モデルです。
徳大寺有恒(以下「徳」):はっきり言って、プロトタイプのデキは感心しなかったよな。
松:ええ。試作車だから個体差が大きかったのかもしれませんが、われわれが乗ったクルマはお世辞にも褒められる仕上がりではありませんでした。
徳:NVHがキツくて、とてもじゃないがプレミアムと呼べる代物ではないと思ったよ。
松:そうでしたね。ですが、さきほど開発スタッフに話を伺ったところでは、あれからかなり改善されたそうですよ。
徳:ほう。具体的には?
松:ボディパネルそのもの、および組み付けや溶接の精度を上げることによって、よりしっかりしたボディを作り上げ、いっぽうでは吸音材を増やしたり、パフォーマンスダンパーの周波数をチューニングするなどのブラッシュアップを重ねたということです。
徳:なるほど。
松:スペック上は変わりがなくても、たとえばドアヒンジに付けるグリースの粘度や量をグラム単位で調整するといった、ごく細かな変更によってもドアの閉まりが変わる。ドアの密閉度が高まれば、走りのフィーリングも変わってくる。そういう数値に表れない部分を徹底して追求したということなんですね。
徳:ファインチューニングってことだな。その言葉にウソはないんだろうが、だったらなぜそんな改善の余地のあるプロトタイプに、わざわざ試乗会まで開いて乗せたんだろう? キミが聞かれても困るだろうが。(笑)
松:たしかに。ほかの人たちは知りませんが、少なくともわれわれはネガティブな印象を抱いてしまいましたから。巨匠なんて「あんなのはレクサスじゃない。俺は認めない!」って怒ってましたものね。
徳:だってさ、約20年前に「レクサスLS400(日本名:トヨタ・セルシオ)」が出たとき、NVHを徹底的に抑えたそのスムーズな走りに、本当に世界中のメーカーが驚愕したんだぜ。LSが出てからしばらくしてジャガーの本社を訪ねたら、LSのパーツが飾ってあったんだ。ジャガーのスタッフの「俺たちもこういうクルマを作りたい」という言葉を、俺はこの耳で聞いたんだよ。
拡大
|
拡大
|
松:それから20年を経たいま、いくらボトムレンジとはいえ、レクサスを名乗る以上はこれではいかんだろう、というわけですね。
徳:そういうこと。
松:じゃあ、クルマを見てみましょう。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
凝ってはいるけど……
松:どうですか、この色は?
徳:好みじゃないが、こうした日本のユーザーにウケそうにない色をラインナップした心意気は買う。(笑)
松:ちなみに初期受注での人気色は白で、約半数。次いで黒、シルバーだそうです。
徳:やっぱりそうなっちゃうんだな。ところでガンメタは無いのかい? 先日乗った新しい「ヴィッツ」のガンメタがなかなか良かったんだが。
松:残念ながら無いですね。スタイリングはどうでしょう?
徳:これも好みの問題だから……とりあえず新鮮味は感じられないな。
松:たしかに。とはいえ細部の作り込みは相変わらず見事なもんですね。ヘッドライトユニットに組み込まれたLEDの処理とか、先に使い出した欧州車より凝ってるし、質感も高いですよ。
徳:そうかい。
松:(ボンネットを開けながら)さて、表から見えない部分の作りは? あれっ、ボンネットダンパーじゃなくてステーなんだ。プレミアムを名乗っていて、これはないでしょう。
徳:ペナペナの樹脂製のエンジンカバーも残念だな。あれだったら、付けないほうがいいのに。
松:見える部分にスポット溶接の跡があるのも、ちょっぴり興醒めですね。高級車はそういう部分を見せないものですよ。オーナーが自らボンネットを開けることなんてめったにないから、これでいいだろうってことなんでしょうかね?
徳:っていうか、ユーザーはそんなことに気付きゃしないって思ってるんじゃないか。
松:なるほど。次、インテリアを見てみましょう。
徳:ダッシュまわりの質感は、プロトタイプより良くなってるんじゃないか。
松:ええ。シートはどうですか?
徳:革張りか。高級車イコール革シートというのが、今や輸入車を含めた多くのブランドにおいて常識化してしまったのは残念だな。
松:これ以外のグレードではファブリックも選べるんですが、「バージョンL」というこのトップグレードは本革だけなんですよ。
徳:やっぱりそうか。
松:座面長が長い前席の座り心地は悪くないけど、後席はやけに平板ですね。
徳:このクルマに5人乗ることはめったにないと思うんだが、4人乗りと割り切れないからこうなっちゃうんだろう。
松:プレミアム感を演出すべく、ステッチなんかはけっこう頑張ってる感じがしたんですが、前席のバックレストにファスナーが見えてますね。レトロフィットのレザーカバーをかけたみたいで、これはいただけません。
徳:さっきのボンネットダンパーと同じだな。トヨタはわかっているくせに「こんなもんでいい」と見切ってるんだろうよ。そいつが俺は気に入らないんだ。
松:というところで、そろそろ乗ってみますか。
まだまだ磨ける
徳:プロトタイプに比べて、乗り心地は格段に良くなったな。
松:まるで違うクルマみたいですね。改善したという話を聞いて、想像していたレベルを上回っています。
徳:なぜプロトタイプに乗せたのか、ますますわからなくなった。
松:生産型との違いを際立たせるために、わざと……なんてことはありえませんね。(笑)
徳:パワートレインは基本的に「プリウス」と同じなんだろう?
松:ええ。NORMAL、ECO、SPORTの3つのドライブモードを選べること、CVTなのにパドルでシフト操作が可能なこと、といったアレンジはされてますが。ちなみにドライブモードをSPORTに変えるとインパネの照明が青から赤に変わります。
徳:「だからどうした?」って思うけどな。
松:まあそうおっしゃらずに。(笑)
徳:パワートレーンは同じでも、プリウスに比べるとボディはカッチリしてるようだな。
松:プリウスのボディはいかにも開口部が大きいというか、安普請な感じが否めませんが、これは剛性感が高いですね。ステアリングもしっかりしてるし、ボディとシャシーはなかなかいいんじゃないですか。
徳:うん。
松:あと、回生ブレーキのフィーリングも自然になったように思います。
徳:というように褒めるところもあるんだが、パワーユニットは気に入らないな。加速時に発するがさつなエンジン音はなんとかならないものか。
松:プリウスに比べ、当然ながら防音対策はおごられているわけなんですが、たしかに加速時のエンジン音は耳につきますね。
徳:これこそ興醒めだよな。
松:全体的に静粛性が高まったぶん、かえってエンジン音が目立つようになっちゃったんでしょうか。
徳:なんにせよプレミアムを名乗るのに、このエンジン音はないな。そもそもこれ、いくらするんだっけ?
松:車両価格で430万円です。
徳:ということは、「クラウン」の下のほうが買えるわけだよな。俺ならあっちを買うよ。
松:価値観の違いと言われたら、それまでですけどね。
徳:なにもクラウンが絶対と言ってるわけじゃないぜ。年を取ると運転も下手になるから、できれば小さいクルマのほうがいいんだ。だからコンパクトで取り回しの楽な高級車があれば、むしろ大歓迎なんだよ。
松:たとえばLSを縮小コピーしたような乗り味のコンパクトなレクサスがあれば、ということですね。
徳:そう。セダンじゃなくてハッチバックでもいいし、ハイブリッドだって、それこそEVだっていいんだよ。クオリティが高ければ。
松:しかし、プロトタイプから生産型になって劇的に乗り心地が向上したことから考えても、このCTの素性はけっして悪くはないんじゃないですかね。
徳:ああ。だからこそ、より一層のブラッシュアップを望みたいわけだ。
(語り=徳大寺有恒&松本英雄/まとめ=沼田亨/写真=峰昌宏)

徳大寺 有恒

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。

沼田 亨
1958年、東京生まれ。大学卒業後勤め人になるも10年ほどで辞め、食いっぱぐれていたときに知人の紹介で自動車専門誌に寄稿するようになり、以後ライターを名乗って業界の片隅に寄生。ただし新車関係の仕事はほとんどなく、もっぱら旧車イベントのリポートなどを担当。
-
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】 2026.7.18 ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
NEW
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
NEW
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。





























