ボルボV60リチャージ ポールスターエンジニアード(4WD/8AT)
にじみ出るすごみ 2023.02.27 試乗記 「ボルボV60リチャージ ポールスターエンジニアード」に試乗。外観のアピールこそ控えめなものの、その中身はシステム出力462PSのプラグインハイブリッドシステムを搭載した俊足のスポーツワゴンである。国内の割り当て150台は、残りわずかということだ。最後のポールスターエンジニアード
1990年代からボルボのモデルをベースとしたレース車両を手がけ、ツーリングカー選手権に参戦してきたレーシングチームを源流とするポールスターレーシング。そのエッセンスを市販車に反映するエンジニアリング部門がボルボ・カーズに買収されたのは2015年のことだ。以降、ボルボはこのブランドネームを自らのスポーティネスと重ねて、「ポールスターエンジニアード」と銘打ったコンプリートモデルを幾つか手がけてきた。
が、ポールスターはすでにボルボ本体とは一線を画するかたちで、電動車両専門のブランドとしてリスタートを切っている。車名は数字。電気自動車(BEV)の「ポールスター2」は欧米中などで販売中、「ポールスター3」も予約を開始している。そのうち間がもたず、『望郷一番星』とか『怒りのアフガン』とか副題でも乗っかると面白そうだが、大枠としてポールスター物件は油をたくものではないという流れは定まっている。
それもあってか、このモデルは最後のポールスターエンジニアード物件であることがすでにアナウンスされている。2030年には販売全量のBEV化をアナウンスしているボルボのラインナップにあって、その礎となるアーキテクチャーは2022年秋に、「EX90」として発表されている。下位のラインナップもフルモデルチェンジのタイミングでBEV専用といわれるそのアーキテクチャーを採用することになるだろう。ただし、EX90を見るに、前側には内燃機を横置きするくらいは可能そうなスペースも残されている。「EQS」くらい吹っ切ればと言われても、なかなかできるものではない。それはどこの自動車メーカーでも同じだろう。
システム出力は1割アップ
ベースとなるのはV60の「T8」。300PS超の2リッター4気筒直噴ターボの前後軸にモーターを配するPHEVという構成を踏襲しながら、前型のポールスターエンジニアードではエンジン側の出力をより高めることで動力性能の差別化を図っていた。対して今回のポールスターエンジニアードは、エンジン出力こそベースモデルと同じ317PSながら、モーターの出力を大幅に向上させたところが新しく、システム総合出力は462PSに達する。これは前型の420PSからちょうど1割の上乗せだ。ちなみに搭載するリチウムイオンバッテリーは18.8kWhとPHEVのなかでも大容量を確保しており、EV走行換算距離は91km。充電は200Vの普通充電のみとなっている。
この強力なパワーを御するべく、ブレーキはフロント側にブレンボ製6ピストンモノブロックを採用。スリット入りディスクの径はφ371とかなり大径のものを装着している。また、バネ下重量の軽減と高剛性化を両立した19インチ鍛造アルミホイールや、フロントのストラットタワーバーなどのエクイップメントは前型と変わらない。乗り味をつかさどるサスペンションもダンパーにはポールスターエンジニアードではおなじみのオーリンズのデュアルフローバルブ式を採用。低速域での穏やかな乗り心地を実現する一方で、中高速域では減衰のしっかり効いた動きを両建てしているという。
モーター走行時の力強さは言うに及ばずで、充電状況次第では日常的な走行は100%カバーできる。走行中にエンジンを稼働させてバッテリーの充電に充てるチャージモードなども備わっており、帰宅エリアでは静かにEV走行といった組み立てができるのも相変わらずだ。シートはサポート重視のスポーティーな仕立てで肌触りも硬質ながら、点で支えるようなとがりは感じられない。面で全体的に支えるように保持してくれるその掛け心地にボルボらしさをみることができる。
分かる人にだけ分かればいい
一転、ボルボらしからぬものといえば猛烈な速さだ。ツインエンジンのパワーはワインディングロードでもコーナーの間をあっという間につないでしまう瞬発力をもたらしている。やはり印象的なのはその加速の質がかなり低中回転寄りに厚いことで、体感的には5リッター級のエンジンでも扱っているかのようだ。一方で、高回転域の伸び感はさすがにドイツ御三家の3リッター級スポーツ銘柄のようにはいかない。駆動の制御はエンジンとモーターの協調域でも違和感はなく、コーナリングの挙動も自然だ。低速域で前型よりも少し筋張った印象を覚えたサスも、この域になれば横力の粘り感やバウンシングの処理などでほれぼれするような動きをみせてくれる。
このクルマの通をうならせるセリングポイントは、これほどのものを持っていながらこれみよがしなコスメティックが無に等しいことかもしれない。クルマ好きが見ればブレーキまわりなどでそれと見分けるだろうが、唯一の明確な識別点として与えられているのは、前後の控えめな白いエンブレムくらいだ。それこそ前述のドイツ御三家のやる気満々ぶりに比べると、むっつりスケベにも程がある。分かる人にだけ分かればいいという自信というか、黙せどにじむすごみというか、そういうのが好きな方は日本には意外と多いのではないだろうか。ちなみに150台の限定枠は、2月中旬時点で残り50台くらいとなっているそうだ。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ボルボV60リチャージ ポールスターエンジニアード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4780×1850×1430mm
ホイールベース:2870mm
車重:2050kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:317PS(233kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3000-5400rpm
フロントモーター最高出力:71PS(52kW)/3000rpm
フロントモーター最大トルク:165N・m(16.8kgf・m)/0-3000rpm
リアモーター最高出力:145PS(107kW)/3280-1万5900rpm
リアモーター最大トルク:309N・m(31.5kgf・m)/0-3280rpm
システム出力:462PS
タイヤ:(前)235/40R19 96W XL/(後)235/40R19 96W XL(コンチネンタル・プレミアムコンタクト6)
ハイブリッド燃料消費率:15.2km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:91km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:91km(WLTCモード)
交流電力量消費率:209Wh/km(WLTCモード)
価格:999万円/テスト車=1056万9650円
オプション装備:プレミアムメタリックペイント<クリスタルホワイト>(15万円)/Bowers & Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1100W、15スピーカー>サブウーファー付き(34万円) 以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー<フロント&リアセット>(8万9650円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2087km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:232.4km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.0km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ(FWD)【試乗記】 2026.3.11 「プジョー3008」の電気自動車版、その名も「E-3008」が日本に上陸。新しいプラットフォームに未来感あふれるボディーをかぶせた意欲作だが、その乗り味はこれまでのプジョーとは明らかに違う。ステランティスのような大所帯で個性を発揮するのは大変だ。
-
ジープ・アベンジャー アップランド4xeハイブリッド スタイルパック装着車(4WD/6AT)【試乗記】 2026.3.10 「ジープ・アベンジャー」のラインナップに、待望の「4xeハイブリッド」が登場。既存の電気自動車バージョンから、パワートレインもリアの足まわりも置き換えられたハイブリッド四駆の新顔は、悪路でもジープの名に恥じないタフネスを披露してくれた。
-
三菱デリカD:5 P(4WD/8AT)【試乗記】 2026.3.9 デビュー19年目を迎えた三菱のオフロードミニバン「デリカD:5」がまたもマイナーチェンジを敢行。お化粧直しに加えて機能装備も強化し、次の10年を見据えた(?)基礎体力の底上げを図っている。スノードライブを目的に冬の信州を目指した。
-
ホンダCB1000F SE(6MT)【レビュー】 2026.3.7 ホンダから満を持して登場した、リッタークラスの4気筒マシン「CB1000F」。往年のCBをほうふつさせるスタイルと、モダンなパフォーマンスを併せ持つネイキッドスポーツは、先行するライバルを追い落とすことができるのか? ホンダ渾身(こんしん)の一台の実力に触れた。
-
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】 2026.3.5 スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。
-
NEW
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】
2026.3.14試乗記英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。 -
テスラ・モデルYプレミアム ロングレンジAWD(4WD)
2026.3.13JAIA輸入車試乗会2026電気自動車(BEV)「テスラ・モデルY」の最新モデルは、これまで以上に無駄を省いた潔いまでのシンプルさが特徴だ。JAIA輸入車試乗会に参加し、マイナーチェンジによってより軽くより上質に進化したアメリカンBEVの走りを確かめた。 -
ルノーから新型車「フィランテ」が登場 仏韓中の協業が生んだ新たな旗艦はどんなクルマ?
2026.3.13デイリーコラムルノーが韓国で新型クーペSUV「フィランテ」を世界初公開! 突如発表された新たな旗艦車種(?)は、どのようないきさつで誕生したのか? フランス、韓国、そして中国の協業が生んだニューモデルの概要と、そこに込められたルノーの狙いを解説する。 -
第865回:ブリヂストンが新タイヤブランド「フィネッサ」を発表 どんなクルマに最適なのか?
2026.3.13エディターから一言ブリヂストンが2026年1月に発表した「FINESSA(フィネッサ)」は、同社最新の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載する乗用車用の新タイヤブランドである。高いウエットグリップ性能と快適な車内空間の実現がうたわれるフィネッサの特徴や走行時の印象を報告する。 -
新型「リーフ」は日産の救世主になれるか BEVオーナーの見立ては?
2026.3.12デイリーコラム日産自動車は3代目となる電気自動車(BEV)「リーフ」の受注台数が、注文受け付け開始から約4カ月で6000台を超えたと明らかにした。その人気の秘密や特徴を、自らもBEVを所有するモータージャーナリスト生方 聡が解説する。 -
ホンダN-ONE e:L(前編)
2026.3.12あの多田哲哉の自動車放談軽自動車の世界において「N」シリーズで存在感をみせるホンダ。そのフル電動バージョンたる「N-ONE e:」の仕上がりやいかに? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんがチェックした。















































